待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
くじ引きの結果、上鳴・青山・八百万が儂に同行することに決まった。そこに砂藤も加えた面子で、これから呪霊退治に向かう。と言うか向かっている。ながんが運転する車に全員乗って、目的地に向かっている真っ最中じゃ。もちろん、道中に説明しておけることは全て説明しておくつもり……じゃったんじゃけども。
「はいこれ、全員目を通してくださいね。今回の任務は、お墓の調査です。何でも、お墓参りした人達が次々と体調不良になって病院送りになったとか。
これを呪霊の仕業と考えた総監部は、円花ちゃんへの出動命令をしたわけです」
とまぁ、こんな感じで。被身子が率先して説明を始めてしまったわけじゃ。こうなると、儂が口を挟む余地が無くなる。補助監督らしく働いてくれるのは助かるんじゃけども、任せっきりにしてしまうのはそれはそれで……こう。何と言うか、こう。
「……承知致しましたわ。けれど渡我先輩、これが呪霊の仕業である確証はあるのでしょうか?」
「無いですねぇ。案外
「つまり、最終的な判断は廻道さんってことだね☆」
……まぁ、その通りじゃの。まず、呪霊の仕業と思われる事案は任務として儂に振られる。じゃが個性と言う力を誰もが持っているこの時代、目に見えぬ不可解な事象の全てが呪霊の仕業とは限らん。とは言え今のところ、総監部に振られた任務の全てに呪霊が絡んでおる。いつかは呪詛師や悪党の仕業が原因、なんて場合も出てくるんじゃろうけども。
「呪霊の仕業か、
「まぁ、そこは現場に行けば分かりますねぇ。どっちにしろ、円花ちゃんに視て貰うのが一番手っ取り早いかなぁって」
「でもそれって、彼女にとって負担じゃない?」
「空振りしてしまうと、徒労ですわね。この辺り、総監部は何か対策をなさってるのでしょうか?」
「何もしてないって事は無いだろうさ。ただ現状、最終的な判断はその子かオールマイト、それと緑谷任せになってるな。……そうなってるのは、呪霊を視認出来る人材が少な過ぎるからだ」
……んんむ。話すことが無い。被身子やながんが直ぐに答えてしまうからのぅ。お陰で暇じゃ。仕方ないから、被身子の手を弄り回してやるとする。儂よりも長い指を摘んだり握ったり、手のひらを揉んでみたり。長年家事に勤しんでいる手にしては、滑っこい。多分肌荒れとは無縁なんじゃよな。母の手はもう少し荒れていたような気がするんじゃけど、これは歳の差かのぅ。
「呪霊が見えないんじゃ、そうなるよな〜〜。けどさ、それならこの眼鏡を配るってのは? そしたら、誰でも判断出来そうじゃね?」
「
「あー、そうだった。まだまだ廻道や緑谷に任せるしかねー……ってことか……」
「それなら、僕達で調査するのはどうかな? 全部は無理でも、インターン先ぐらいなら」
「駄目じゃ。それは許さん」
……まったく。被身子の手で遊んでいたら、青山が恐ろしい事を口走りおった。何故儂の任務についての判断を、くらすめぇと達にさせねばならんのか。確かに今のままでは儂に掛かる負担は大きいものかもしれんが、そもそも儂自身が負担に思っとらん。それにここ最近は、被身子とながんがよく働いてくれとるからの。細かな些事は二人が片付けてくれるから、最初の頃と比べたら楽をさせて貰ってる。儂はただ現地に赴いて、呪霊を祓うだけで良い。
つまり。そう心配されるような状況ではない。まぁ忙しいと言えば忙しいんじゃけども、呪霊を祓ったり
「……でも、心配はしちゃうよ。だって君は、一人で飛び出しちゃうから」
「その辺り、緑谷と一緒なんだよなー。平気で無茶するって言うか、見てる方はやっぱこえーって」
「私達ではお役に立てないとしても、友達が一人で危険に立ち向かうのは……見過ごしたくありませんわ」
頑固者共め……。そういうところは少しも変わらんらしい。仲間意識を持つなとは言わんが、適材適所って言葉を学んでくれ。いや、儂も逆の立場じゃったら同じ事を口走るんじゃけども。
まぁ、色々と心配させてしまった儂にも非は有る。……んじゃろうな。
とは言え。とは言えじゃ。呪霊や呪詛師が相手となると儂しか戦えん。仮にくらすめぇと達が呪術師じゃったとしても、儂の代わりに戦わせるなんて真似はしたくない。
「……まぁでも、前よりは良くなったって。アメリカじゃ、頼ってくれたんだぜ?」
「そうですよぉ。これでも、少しずつみんなに頼ろうとしてるのでっ。その為にこうして訓練しようとしてるのです!」
「……マジ……!? マジか……!?」
「だとするならば、より一層邁進いたしますわ……!」
「そう、……だね☆ もっと眩しく輝いて、廻道さんが霞むぐらいに目立たないと……!」
……んんむ。急に喧しくなるな。上鳴は驚きつつも喜んどるし、八百万は妙に張り切っとるし。青山については放っておこう。何と言うか、前々からよく分からん奴じゃから。
「……で? いつになったら着くんじゃ?」
「もう十分程だ。それまでに説明出来ることはしておきな」
いや、特に無いんじゃけど? 貴様と被身子があれこれと話してしまったから、儂が喋ることは無いんじゃけど??
◆
墓地に着いた。それなり広い墓地で、海が近い。地図上では、西に向かっても東に向かっても五百
そんなこんなで。取り敢えず、見える範囲で帳の内を見渡してみる。そしたら、うむ。居るの呪霊。殆どが蠅頭じゃけども、そうでなさそうな奴も居るの。体調不良程度の人的被害が出てるんじゃから、蠅頭よりは等級が高そうな呪霊がちらほらと目に付く。仮に子供達が呪われたとしても、被身子が居るから大丈夫じゃろう。とは言え、誰も呪われぬように気を付けねばな。被身子に頼るのは最終手段じゃ、最終手段。そもそも、昼間の訓練で被身子は呪力が尽きとる。少し時間が経ってるから僅か程度に回復しとるじゃろうけど、流石に反転術式は使えんじゃろう。
そう考えると、やはり誰一人呪われぬ内に済ませた方が良いな。さて、今一度全員に釘を刺して―――。……って。
「さてじゃあ、ここでおさらいです。帳って何でしょうか?」
「はい、渡我先輩。帳は、外部からの視界を遮る結界。呪術師の活動を秘匿する為のものですわ」
「百ちゃん、正解です。上鳴くん、呪具って何ですか?」
「えっ、俺っ? ええっと……、ほら。呪霊が見えたり、祓えたりするアイテム……だよな?」
「はい、正解です。それじゃあ青山くん、円花ちゃんはどうやって呪霊を祓ってると思います?」
「呪力と術式だね! 簡単☆」
「正解でーす。でもみんなは呪力も術式も無いので、呪具を使って呪霊を視て、呪具を使って呪霊を祓うことになります。
つまり個性は、攻撃には使えません。防御にも……呪いを防ぐという点では使えませんねぇ」
いや、おい……。おい、被身子。なんで車から降りるなり、対呪霊の授業を始めとるんじゃ。その椅子や机、
「頼皆、呪具を出すのを手伝ってくれ。全員に持たせるんだろ?」
「……うむ。そうじゃけども」
ち。被身子に近寄ろうとしたら、ながんに呼び止められたわ。仕方ないから、車の後部に積まれた呪具を取り出して行く。根津校長が各地から集めた古びた呪具じゃ。どれも等級が低い代物じゃが、雑魚呪霊程度は問題無く祓えるじゃろう。念の為、まずは儂が試すけどな。
それにしても。よくもまぁこれだけの呪具を集められたものじゃ。脇差に小刀に、薙刀。鎖分銅やら手斧やら、手鎌まで有る。他にも槍やら槌やら鉈やら、鉤爪まであると来た。こうも大量に持って来る必要は無かったのでは? と、思わんでもない。次回から、どの呪具を使うか決めさせてから呪霊退治に赴くとしよう。現地でわざわざ選ばせるのは、時間の無駄じゃし。
「つまり、みんなが呪霊を祓う為に呪具の扱いを覚える必要があります。呪具術とでも言いましょうか。これは必修なので、しっかり学んでくださいねぇ」
「武器を扱えるようになれってことかー。……なんかワクワクすんなっ?」
「武器の扱いでしたら、私にお任せください! 廻道さんに言われて、磨いて来ましたのよ!」
儂が呪具を出しとる間にも、着々と話が進んでいる。何故儂が言おうとしていた事を、被身子が全部話してしまうのか。助かると言えば助かるが、出番が取られた気がしてならん。つい被身子を睨むと、直ぐに気付かれた。で、悪どい面になったわ。軽い足取りで儂に近づき始めた時点で、意図に気付いてしまった。
つまりじゃ。被身子が率先して、皆に説明をしていたのは。
「まーどか、ちゃんっ!」
「ぐえぇっ」
儂とこうする時間が、少しでも欲しいからで。まったく、仕方のない奴じゃ。隙あらば抱き着いて、好き勝手にするんじゃから。駄目とは言わんけど。むしろ望むところじゃけども。
「此処に色々と呪具があるから、使いたいやつを選んでおけっ」
何とか被身子を抱き止めつつ、その一言だけは伝えておく。直ぐ隣でながんが呆れた顔をしているが、見なかったことにしておこう。もういい加減に諦めてくれ。と言うか慣れてくれ。気持ちは分かるが、儂ではどうしようもない。そもそも誰一人として被身子を止められないんじゃから、これはもう仕方ない事じゃろっ??
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ