待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
午前中の種目は無事終わったので、儂は観客席にて被身子や母と昼食中じゃ。めいど服は障害物競走での地雷で汚れたり破けたりしてしまったから、体操着に着替えようと思ったんじゃ。そしたら被身子の奴め、別のこすぷれ衣装を用意しておったわ。今度はちあがあるとか言う衣装らしい。何でこんな腹を出した服を着ねばならんのか、儂は聞きたい。聞いた。そしたら「カァイイからに決まってるじゃないですか」と満面の笑みで返された。黙るしか無かった。こやつが笑顔なら、儂はもう何だって良い気がするんじゃよ。
……いかん。控え室での事を思い出したら、また顔が熱くなってきた。何で今更、こやつを意識して顔を赤くしなければならんのじゃ。困った。さっきから全然顔が見れん。何でじゃ。
「んふふっ。照れちゃってカァイイ……」
食事中じゃ、たわけ。儂はお結びを食べるので忙しい。肩を抱き寄せるな。頭を撫で回すな。何じゃもう、仕方ない奴じゃなぁ。
などと思っておったら、父と入れ替わりで姿を見せた母が生暖かい眼で儂を見詰めておる。父は午後から仕事とのことで、名残惜しそうに帰っていったわ。去り際に被身子を煽るようなことを言ったのは許さんが。
父よ、後で儂が大変なんじゃぞ。被身子はすっかりその気になってしまった気がするし、今晩は大変な気がする。いや、今晩だけで済むのか? 体育祭が終わった直後から大変かもしれん……。
「あらあらまぁまぁ。ちょっと見ない内に進展しちゃってまぁ」
「何がじゃ。何も進展しとらんよ」
「強がらなくて良いのよ円花。それ、初恋でしょ?」
「は?」
夜勤明けで寝惚けとるのか? 母よ。そんな丸い
「良かったわね被身子ちゃん。円花、被身子ちゃんに恋したわよ。しかも初恋」
「ほんとですか!?」
「ほんとよほんと。魂がそんな感じ。滅茶苦茶文句言ってるけど、これは間違いなく恋」
おい母。魂を見るな。霊能を使うな。恋などしておらん。何で今更、儂が被身子に恋するんじゃ。そんな段階はとっくにすっ飛ばしたと思うんじゃが?
許嫁じゃぞ、儂。こやつとは許嫁じゃぞ。今更恋など、そもそも初恋なんて。初恋、なんて……。
……熱い。火照る。何でじゃっ。被身子、こっちを見るな。止めろ、顔を覗き込むな。
何か知らんが、恥ずかしいんじゃ。
「にしても円花、何で今になって被身子ちゃんに? あぁ、なるほどなるほど。そうかそうかぁ」
「おいこら。人の魂を見るな。それは狡いじゃろ母」
「と言われても、見えちゃうからね。そもそも円花の魂は自己主張が強いのよ」
何じゃそれ。魂の自己主張が強いって何じゃ。もう良い、もう知らん。儂はお弁当を食べるのに忙しいんじゃ、勝手にしておれっ!
「何かねぇ、我慢してたみたいよ? で、とうとう我慢の限界が来たみたいで……急激に自覚した感じ? 被身子ちゃん、何かした?」
「んー……。いつも通りなのです。あ、でもさっき不満をぶつけたら、それからずっとこんな調子で……」
「ふーーん? ほーーっ、あーー、なるほどなるほど……」
母の視線が鬱陶しいっ。いつまで儂の魂を覗くつもりじゃ。狡いぞそれは。なんで本心が筒抜けにならなきゃいけないんじゃ。百歩譲って覗くのは構わんから、被身子に言うな。
せくはらではないのか? これ、さてはせくはらじゃな??
何で実の母にまでせくはらされるんじゃっ! おかしいじゃろっ!!
「被身子ちゃん、怒って良いのよ。この子、今更恋心を自覚した感じだけど」
「んー……。まぁ、それはムカつきますけど。でもこうなるようにしたくて、抱いてたのですっ!」
「あらぁ、まずは体から分からせたのね。円花にはそっちの方が効果覿面よ。これからもどんどん調教しちゃって」
……もう儂、ここから逃げて良いか? 逃げて良いよな? 何で飯を食いながらこんな話を聞かねばならんのじゃ。そもそも母よ、そこは被身子を止めんか。何で当たり前のように許可を出してるんじゃ。親じゃろうが、儂の親じゃろうがっ。
もう良いっ。見回りに出る。オールマイトだけに任せっきりにするわけにはいかん。ちょうど良いから逃げるぞ、儂はここから逃げ……っ!
「一人でどこに行くんですか? 迷子になっちゃいますよ?」
「円花、見回りなんてオールマイトに任せておけば良いのよ」
おいっ、膝上に座らせるな。腹に腕を回すなっ、ついでに太股を撫でるなっ! 人前じゃぞっ!? 母の前じゃぞ!? 何をする気じゃ被身子っっ!!
「はいはい被身子ちゃん。そういうのは二人っきりの時が良いって言ってるわよ、円花が」
「こんなところじゃしませんよぉ。寮に帰ったらたぁっぷり、……ね?」
魂 を 見 る な !
耳 元 で 囁 く な っ !
◆
昼休みは、酷い目に遭った。折角のお弁当なのに、全然楽しむことが出来なかった。被身子も母も、途中から生々しい話をしおって。変に気疲れしてしまった。やはり、があるずとおくは苦手じゃ。母が
特に被身子っ、貴様は首を洗って待っておれ!! せくはらばかりしおって!! 耳に息を吹き掛けたことは許さんからなっ!!!
……さて。復讐を誓ったところで、観客席で儂の母と談笑している被身子を睨み付ける。数秒だけ、いや……十秒は睨み付けておきたいのぅ。何ならいつまでも睨みたいきがしなくもないが、そろそろ目の前の事に集中するとしよう。
がちばとるとおなめんと、とやらの抽選が始まった。くじ引きをして初戦の対戦相手を決めるらしい。
とおなめんとに参加出来るのは、騎馬戦で得点上位を取った四組のみ。つまり十六人。の予定じゃったそうだが、少し都合が変わった。このままだと十五人でとおなめんとをやる事になり、公平性が欠けると言うことらしい。なので、上位四組以外から一人だけ選出されることとなった。
正直に告白してしまうと、誰が選出されようが儂にはどうでも良い。誰が増えようがやる事は変わらんしの。今回も一位を獲るんじゃ儂は。そうすれば被身子が笑、う……笑う……。
落ち着け。落ち着け。何で被身子が笑うと想像しただけで心が跳ねるんじゃ。また顔が熱い。何じゃこれは、どうなっとるんじゃ。
「円花ちゃん、大丈夫?」
「うぇええっ!?」
「円花ちゃん!?」
奇声を上げてしまうた。じゃって驚いてしもうたんじゃ、急に後ろから話し掛けてくるから。誰じゃ儂の心を乱す不届き者は!
……梅雨か。そうか、梅雨か。貴様、貴様ぁ……っ。
「な、何でも無いぞ。少し考え事をしておっただけじゃ……」
「円花ちゃん。私、思った事は何でも言っちゃうの」
「な、何じゃ?」
そんな事は、いちいち申告されんでも知っておる。お主はそういう奴じゃ。じゃってそういう所が被身子に似て……。待て、待て待て。落ち着け、何で被身子を思い出すと直ぐに顔が熱くなるんじゃ。というか、何でもかんでも被身子に結び付けようとするな。どうかしてるぞ。まっことおかしな事になっておる。
「被身子ちゃんに、恋したの?」
「……う……っ」
「そうなのね?」
「……悪いか? 今更じゃって、儂も思っとるんじゃよ……」
……あやつと許嫁になってから、早三年。もう少しすれば四年。幼なじみになってからは十一年も経っておる。それだけの長い時間を共に過ごしてきたのに。どうしてか今になって、恋をしてしまった。
これまでだって愛していたのに、急に愛してるの種類が変わったというか……。ううむ、謎じゃなぁ……。謎が過ぎる。
「ケロケロ。それはちゃんと伝えてあげてね。被身子ちゃん、きっと待ってるもの」
「……言われんでも、伝えるつもりじゃ」
「そう? ところで、円花ちゃんの相手が決まったみたいよ?」
……む、そうか。儂の一回戦の相手が決まったか。誰じゃ?
「一回戦よろしくな! 俺は漢らしく全力で行くから、廻道もそうしてくれ!!」
がちばとるとおなめんと。その一回戦の儂の相手は、赤い髪や尖った歯が目立つくらすめえと。つまり、切島じゃ。
ちなみに、選出された一人は紫頭の奴。心操……とか言っておったか? 何でも上位四組の次に得点を持っていた組の一人で、
昨晩更新するつもりが寝落ちしてこんな時間に。
負けを認めた円花がトガちゃんに今更な恋をするってのは予定通りです。愛の形が切り替わったとも言います。しばらくはテレテレ円花をお楽しみください。
復讐する気のようですが、上手く行くのかなー(すっとぼけ)
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ