待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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うっかり更新日を間違えていました。3日の晩にお待ちしてた方には、本当に申し訳無い。


教えの時間。反転術式、そのに

 

 

 

 

 

 

 朝の走り込みを終えた後、くらすめぇと達の殆どは体力の大部分使う羽目になった。倒れる者は居なかったが、全員肩で息をする羽目になったの。儂も疲れた。おおるまいとが用意した内容(ぷらん)は、儂とて中々追い込まれる。こうも走り込んだのは、果たしていつ以来じゃったか。これを毎日続ければ、基礎体力の向上は間違いないじゃろう。尚、緑谷だけは終始楽しそうにしとったが。走りながらこっそり聞いたら、雄英を受験する前はこんな感じでおおるまいとに鍛えられてたとか何とか。そう言えば、身体を鍛え始めておったの。今思えば個性継承の為じゃったんじゃな、あれ。

 

 そんなこんなで。ひとまず朝の鍛錬は終わった。この後で授業が待っとる事を上鳴とか峰田を筆頭に何人かが文句を言っていたが、そこは乗り越えてくれとしか言えん。儂も儂で、授業以外でやらねばならん事が有る。そう、呪眼(のろいまなこ)の作成じゃ。走ってる最中に話を聞いた限り、眼鏡では不便と全員に言われたわ。じゃからそれぞれの要望を後で反映させる形になる。今作っとる分は試作品として総監部に渡しておこう。試しに保護眼鏡(ごぉぐる)型で作っとることじゃしの。えんでゔぁ辺りに品評してもらうのが良いかもしれんが、まぁその辺は総監部の方で勝手にしてくれとしか思わん。

 

 それから。

 

「で、どうじゃ?」

「どうって言われても……。んん……」

 

 緑谷に反転術式を教えてる最中でもある。呪具作成と並行する形にはなってしまうが、出来ることなら緑谷には反転術式を早い段階で会得して欲しい。じゃから授業に出るのは止めて貰って、こうして呪術科の寮で学んで貰っている。と言っても、簡単には行かないんじゃけどな。何せ反転術式(はんてん)には高度な呪力操作が要るからのぅ。儂とて、会得には苦労したもんじゃ。さらっと使いこなせるようになったあの筋肉阿呆がおかしいだけじゃ。何なんじゃあやつは。大抵のことは直ぐに覚えおって。

 

「ええっと、おさらいなんだけど」

「うむ」

「反転術式は呪力を掛け合わせて作る正のエネルギーで、その正のエネルギーは肉体を回復出来る。で、良いんだよね?」

「うむ。呪力は腹で練り、反転術式は脳で回す」

「ってことは、脳で呪力を掛け合わせるってこと……なんだけど……」

「うむ」

 

 間違っとらん。呪力を脳で掛け合わせれば、正の力となる。それを身体に流し込めば、肉体が治癒される。この一通りの流れを出来るようになれば、反転術式(はんてん)は会得したと言って良い。言うは易し、行うは難し……なんじゃけどな。しかし緑谷の場合、呪術師としては並の連中よりは上に居る筈じゃ。黒い火花を起こしたんじゃから。あれを経験したか否かで、呪力が何なのかを理解出来るんじゃから。あの時以降、緑谷の動きに呪力が遅れることは無くなったように思う。

 

「脳で呪力を掛け合わせるってことは、呪力を二つ練る……ってこと?」

「いや、練る呪力はひとつで良い。それをふたつに分けて、脳で掛け合わせる」

「ふたつに分けて、脳で掛け合わせる。それって、具体的にはどんな感じで……? 出来ればイメージから入りたいけど……」

「どうって……」

 

 まぁ、そうじゃなぁ。改めて反転術式を使って確かめてみるか。まずは呪力を練り、それを身体の左右に分けて流して行く。途中で混じったりしないように気を付けつつ、首を通して脳へ。で、脳で掛け合わせてじゃな。これを何か分かり易いものに例えるとすると、……んんむ。迂回して合流する川……か? 呪力は流すと言うし。いやでも、体内を川と想像しろと言うのは中々に難しいのでは?

 

「血管ですよぉ。太い血管が二本、おへそから脳まで続いてるってイメージすれば良いのです」

「ぬおっ!?」

 

 驚いた。授業に出た筈の被身子が、後ろから椅子越しとは言え儂に抱き付いて来たんじゃから。お主いつの間に戻って来たんじゃ。と言うか、授業はどうした授業は。とっくに始まっとる時間なんじゃけど? 寮に戻って来て良いのか??

 

「コツはふたつに呪力を分けたら、おへそには呪力を残さないことです。後は脳まで流して、ひゅーひょいで反転術式が出来ます」

「な、なるほど! 太い血管が二本、脳まで流してひゅーひょい。……ひゅーひょい……?」

「ひゅーひょいです。ひゅーとやって、ひょい。ねっ、円花ちゃん」

「じゃから、それでは分からんて……」

 

 何が、ひゅうひょい、じゃ。もっとこう、分かり易く説明して欲しいんじゃけど。脳での呪力の掛け合わせ方も具体的な説明をしていた方が良いと思う。掛け合わせるつもりで呪力を衝突させてしまったら、脳がどうなるか分からん。下手をすれば大惨事じゃ。

 

「んー……、そうですねぇ。呪力を紫のインクと思えば良いんじゃないですか? 最初は赤い呪力と青い呪力に分離させて、最後にもう一回混ぜる……みたいな。

 あ、混ぜる時は優しくやらないと駄目ですよ? そこを雑にやっちゃうと、脳が壊れるかもしれないので」

「えっ。反転術式に、そんなリスクが……!?」

「まぁ理屈的には危険が伴うの。とは言え、反転術式(はんてん)を会得した時点で高度な呪力操作が出来とるって証拠じゃ。会得した者が脳を壊すことはない」

 

 ……筈。もしかすると、反転術式を行おうとして脳を壊して死んだ……なんて者も存在していたのかもしれん。そんな話は聞いたことがないが、全くあり得ない話でも無いとは思う。そう考えると、緑谷に反転術式を学んで貰うのは早急じゃったか? もっとこう、ひとつひとつ教えてやった方が良いのかもしれん。現にこやつの場合、そうやって様々な事を学んで来たんじゃから。

 

 と、なると。まずは、高度な呪力操作を覚えて貰う方が先じゃな。急ぎたい気持ちばかりが先行してしまうが、急いては事を仕損じる。とも言うし。少し気を長くせねばならんか。時間が有るとは言えないんじゃけど、やれるだけやるしかない。

 

「ん、んん……。となると、段階を踏んだ方が良いのかな……」

「……そうじゃな。すまん、少し急いてしまったの。何処まで出来るかは分からんが、基本から積み重ねて行こう」

「うん、分かった。それじゃあ……」

「ひたすら儂と手合わせじゃな。ほれ、外に出ろ緑谷。稽古を付けてやる」

「もちろん! よろしくお願いします!」

 

 む? おぉ、やる気満々のようじゃ。まさか躊躇いなく手合わせを承諾されるとは思わなかった。そこまでやる気に満ちているのなら、少し追い詰めてやろうかの。って、いかん。被身子が不満そうじゃ。儂に抱き付く力が段々強くなっているような……。

 

「円花ちゃん、緑谷くん」

 

 ぬおっ。い、いかん。被身子がすっかり不機嫌になってしまった。こうなってしまうと後が怖い。何とか弁明しなければ……! お、おい緑谷っ。怖気を感じて震えるんじゃないっ。上手いこと被身子を納得させる言い訳を、言い訳を……っ!?

 

「そうやって簡単にタスクを増やさないでください。良いですか二人共? 今、円花ちゃんはとっても忙しいんです。なのに緑谷くんにまで稽古を付けちゃったら、休む時間が無くなっちゃうのです。

 そしたら、トガとの時間が減っちゃうじゃないですか……!」

「ぅ、うむ……。それはそうじゃけども……」

 

 確かに被身子の言う通りではある。やる事が多く、色々と忙しいのが現状じゃ。そんな中で緑谷に稽古を付けようと思ったら、時間を作るのが大変じゃ。被身子が言うように、被身子との時間が減ってしまうじゃろう。儂としても、それは避けたいところじゃ。が、じゃからって呪具作成やくらすめぇと達の訓練時間を減らすことは難しい。元々、皆が生き残る為の訓練じゃ。時間を減らしてしまうと、訓練する意味が無い。

 

「と、言うわけで。緑谷くんに個人的な稽古を付けちゃうのはトガ的には猛反対です、……けどぉ……。

 ……まぁ、そうも言ってられない状況なのも分かってるつもりです。緑谷くんが戦力になってくれれば、何か起きても円花ちゃんの負担が減りますし」

「な、何か……すみません。なるべく早く、廻道さんが頼れる戦力になります……!」

「そうしてくれないと困るのです。でも、円花ちゃんの休憩時間を奪うような真似は許しません! そこは上手いことやってくれないとっ!」

 

 うぅむ……。被身子の言い分は分かるし、文句を言いながらも譲歩してくれてる。とてもありがたいことじゃが、それはそれとしてこう。こう……、何と言うか。

 

 ……。……つまり、じゃな? 儂も儂で、これ以上忙しくなるのは良くないと思った。呪具作成に、くらすめぇと達の訓練。儂自身の鍛錬に、任務の選定。ながんや被身子、二人以外にも教師達の協力を経て尚、緑谷に稽古を付ける時間を作るのは簡単ではない。とは言え、緑谷を鍛えない訳にもいかん。呪術師になって欲しいとは思わんが、いざという時に呪術師として立ち回れるだけの実力は付けて欲しいと今は思っとる。

 

 どうやら。これは一度、予定を組み直さねばならんようじゃ。このままの調子であれやこれやと続けていると、いずれ無理が来る。一度過労で倒れた身としては、休む事を怠ってはならん。余計な心配を掛けさせるような真似は避けるべきじゃ。しかし、儂にしか出来ん事が多いのもまた事実で。どうしたものかのぅ、これは。

 何をするにしても、人手が足りん。せめてどれかひとつでも短縮出来れば、緑谷に稽古を付けることぐらい出来る筈なんじゃが……。風防眼鏡(ごぉぐる)を与える人数を絞るべき、……か? いや、何が有っても良いよう全員に持たせておきたい。となると、朝の走り込みを減らす? いやいや、基礎体力は大事じゃ。昼の訓練も時間を短くする訳にはいかん。かと言って、任務を減らすわけにもいかんし。

 

 ……いかんな。上手い案が何も思い浮かばん。そもそも何かを削ること自体、無理が有る。困った、もしや八方塞がりかこれは?

 

「……もぅ。そういうとこですよ円花ちゃん。直ぐそういう感じになっちゃうから、良くないの」

「むぐっ」

 

 頬を摘まれた。不満全開の被身子が好き勝手に引っ張るもんじゃから、喋れん。仕方ないから振り返ろうとしたものの、椅子越しに抱き付かれて居てはそれも出来ん。

 

「独りで悩んだりしないで、もっと相談してくれなきゃヤです。何でもかんでも独りで抱え込むから、私もみんなも心配するんですよぉ」

「……すまん、気を付ける。じゃけど、儂にしか出来ん事が多いじゃろ……?」

「それはそうですけど。特に呪術的な事は、どうしても円花ちゃんが要ですし」

「……あの、渡我先輩。オールマイトと僕で、ある程度代われないかなって。僕も一応呪術師って扱いだから、昼の訓練で呪詛師役が務まると思います」

「それは駄目じゃ。何を言っとるんじゃ貴様」

 

 まぁ、緑谷には緑谷の考えが有るのは分かっとる。が、この提案は却下じゃ。

 まず、呪詛師役をして貰うには実力が足りん。そもそも緑谷にこそ、対呪詛師の経験を多く積んで貰いたい。儂やおおるまいと以外で、唯一呪力を扱えるんじゃから。もしかすると、緑谷に任せなければならん時が来るかも知れんし。そんな事態は起きて欲しくないが、悪党(ゔぃらん)連合との戦いでは何が起こるかは分からん。

 

「んん……。でも、廻道さんばかり忙しいのはやっぱり良くないよ。五月に起きることは、呪術師だけの問題じゃないんだ。

 だから、何か手伝える事が有ったら手伝わせて」

「……そう言われてものぅ……」

 

 それはそれで、困る。じゃって、緑谷に手伝って貰えるような事は何も無いんじゃ。呪具作成は儂にしか出来んし、訓練における呪詛師役もそうじゃ。任務の選定についてはながんや被身子に任せてあるが、来週になったら儂も参加しようと思う。任せっきりなのは、それはそれで良くない気がするからの。

 

 じゃから、ほら。緑谷に手伝って欲しい事は何も無い。強いて言うなら、儂を気にする暇が有るなら英雄(ひいろお)候補生として、しっかり鍛えろ。儂に迫るぐらいの力を身に付けてくれ。そうしたら、常闇みたいに頼ってやらんでもない。

 

「……まぁ、気持ちだけ受け取っておく。何か有れば、その時は頼む」

「うん、任せて。渡我先輩が言ってたけど、独りで抱え込まないでね。みんな、心配になっちゃうから」

「……、……相分かった」

 

 緑谷に頼めることなど、今は思い浮かば……なくもないか。呪術師としては頼りに出来んが、まぁ学友としてなら頼りにしても良い。道案内とか、ばれんたいんでぇ……とか? いや、後者は砂藤とかに既に頼んである。わざわざ緑谷にまで頼まんでも良いか。そう考えると、うむ。今のところは何も無いな。

 

 あぁ、それから―――。

 

「それでその。緑谷に稽古を付けても良いかの……?」

 

 一応、被身子に確認を取っておく。恐る恐る聞いてみると、盛大な溜め息が聞こえた。

 

「……じゃあ、取り敢えず五十分だけ許してあげます。ただし! 明日からは、ちゃんと時間を作ってからにしてくださいっ!」

「あ、相分かった。……すまんの、色々と」

「すみません……。その、なるべく早く渡我先輩にお返ししますので……!」

「当然なのです……! せっかく根津校長に交渉して、授業に出なくても良いようにしたのに……っ!」

 

 う、うむ……? 何やら聞き捨てならん事を言っているが、取り敢えず緑谷と一緒に外に出ることにする。……まぁこれは分かってたことなんじゃけども、被身子も付いて来た。

 

 ……とにかく。こうして、緑谷に個人的な稽古を付けることにした。明日からどうやって時間を取るべきなのか、それは後で被身子に相談するとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 






やっぱり反転術式の詳しいメカニズムが分からないので、捏造しました。円花流、トガちゃん流ということでどうかひとつ。

年内最後の更新となります。いつも通り5話分です。あと4回有ります。未だ読んでくださってる読者様には、本当に感謝しております。今年もお世話になりました。また来年、よろしくお願いします。

良いお年を!

三人称による補完は要りますか?

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