待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
予約投稿忘れてました!!!
結局、土曜日は被身子と布団の中に籠ってばかりじゃったの。こう、しつこく求められてしまうと、なし崩し的に応えてしまうと言うか。そんな訳じゃから、昨日は被身子が満足した後で呪具を作る羽目になってしまった。気怠い身体で呪具作成をするのは面倒で、やる気が起きん。だらだらと作業を進めて、一区切り付いたのは日付が変わって暫くしてからじゃったな。その後は寝て、目が覚めたら昼前じゃ。またも朝食を兼ねた昼食を食べて、腹ごなしついでに呪具作成に勤しむ。
被身子はと言うと、
「……ふう……」
慣れたものとは言え、呪具作成は面倒な作業じゃ。常に一定の呪力を一定の速度で注ぎ込むのは、ただ単に手間じゃ。時間も掛かる。が、呪具は儂にしか作れぬからの。黙々と作り上げていくしかない。そうしなければ、子供達の安全に関わる。
……それにしても。何か被身子にしてやれる事はないかのぅ。いつも儂の面倒を見てくれるだけではなく、儂の為にも呪術界に飛び込んで来た。伴侶としても補助監督としても、色々な事をやってくれる。儂に向かぬことを何から何までやってくれてるんじゃ。まっこと、出来た許嫁じゃなぁ。まだまだ結婚は出来ぬけど、早くしてやりたいとも思う。何より、貰いっぱなしは気が引ける。んじゃけども……。
儂が、被身子に出来ること。してやれること。被身子に、したいと思うこと。
情けない話、そう多くないように感じる。愛に応えるとか、そう言うのは……うむ。出来てると思いたい。気恥かしい限りじゃが、とっくに身も心も被身子に渡しとる。じゃけど、もっと何かしたいと思う。してやれる事が有るんじゃないかと、つい考えてしまう。とは言え、何も思い浮かばないのも現状でのぅ。
そもそも、じゃけど。被身子は何故、ここまで儂に尽くしてくれるのか。それはまぁ、愛故に……と言ったらそうなんじゃろうけども。幼い頃から、儂を好いてくれている。これでもかと、愛してくれている。時折圧が物凄いが、それは御愛嬌ってやつじゃ。……多分。
そんな被身子に、何かしたい。恋人らしいことは、……まぁ出来とるじゃろう。なら、許嫁としては? ほら、甲斐性とかそう言うのはどうじゃろうか?
では、生活力は……。うむ、無い。元々無いようなものじゃが、更に無くなってしまった。もはや独りでは生きれん。
……経済力は? ……これは有る。呪術師としての稼ぎが、かなり有る。被身子一人を養うことぐらい、何の問題も無い。この先、何十年でも養えるんじゃろう。儂が死にでもしない限りはな。そもそも儂は、何が有っても死んでやらんが。
「……んんむ……」
儂が被身子に出来ること。してやれること。やはり直ぐには思い付かん。一度作業の手を止めて、被身子に目を向ける。難しそうな問題集を睨んで、またも唸る。もうしばらく、そっとしておこうかの。儂も自分のすべき事に集中するとしよう。被身子の事を考えてしまうと、いつまでも考え込んでしまう気がするし。
……さて。呪具作成の方じゃが。これはまぁ、順調と言って良い。毎日何時間も呪力を流し込んでるんじゃ。どうしても平日は忙しくなってしまうが、それでも何とかなっている。多少遅れが出たとしても、問題無い。土日は訓練も任務も無いからの。時間を忘れて被身子と求め合う、なんてふしだらな真似をしなければ遅れは取り戻せる。
っと。うむ、ひとつ出来たの。では次の分を作るとしよう。作業台の上に置いといた脇差で、後ろ髪を切る。それを血と共に投入口に入れて、……っと。
がしゃがしゃと音を立てて作業台が動き始めたので、少し放っておく。
とにかく、じゃ。呪具作成は概ね順調。日々の訓練や任務じゃって、忙しい事を除けば何か問題が有るわけでもない。わがままを言うなら、好きな時に
あぁ、そうじゃ。
「……って、何じゃ? どうかしたか?」
「んーん。何でもないですよぉ」
どう見ても、何か悪どい事を考えとるのぅ。今度は何が思い付いたのやら。藪蛇になりそうじゃから、何も聞かないでおく。どうせ儂には理解不能で、最後は振り回されるだけじゃし。その時が来るまでは見て見ぬ振りをしよう。そうしよう。
……あれこれ考えるのは一旦止めて、呪具作成に戻ろうかの。明日からまた忙しくなるんじゃから、今の内に少しでも進めておきたい。儂個人の鍛錬もしたいところじゃけども、そっちは後回しにするしかないか。もう一月が終わってしまう。猶予は残されておらん。五月までに、出来る限りの事をしておかなければな。
◆
『……円花が被身子ちゃんにしてあげれること? それ、僕に相談するの?? えっ、今更???』
「ぬぐ。し、仕方ないじゃろ。こういう話はほら……母とか父ぐらいにしか出来んし……」
今日の作業を引き上げ、夕飯を済ませた後。被身子が洗い物をしとる間に部屋に戻り、儂は恥を忍んで父に電話してみた。ほら、母は身重じゃからの。昨日も今日も電話を掛けるのはどうかと思ったし、
『て言うか、何で急に? そういうの、お母さんに聞いた方が良いんじゃない?』
「……いやまぁ、うむ……。それはそうなんじゃけど。一応、父の意見も聞いておこうかと思ってのぅ」
ぽんこつが過ぎる父ではあるが、愛する人と結婚したんじゃ。何かこう、先達だからこそ出来る助言が有るかもしれん。有ると信じたい。が、父はぽんこつじゃからなぁ……。
『まぁ、良いけど……。つまり、恋人や許嫁として被身子ちゃんに何かしたいって思ったってことで良い?』
「うむ。……何と言うか、儂は貰ってばかりじゃから」
いつもいつも、被身子には貰ってばかりじゃ。いつの間にか、何でもかんでも任せてしまっている。私生活はまだしも、補助監督としても頼りっぱなしでの。儂にしか出来ん事は儂がやるが、それ以外はどうにも。適材適所とは言うが、被身子にばかり負担が掛かるのは良くない。儂を楽させる為に、被身子が忙しくなってしまうのは……それはそれで違う。頼りにはしとるが、今のまま何でもかんでも頼るのは流石に気が引ける。せめて何か、儂の方からも被身子にしたい。こう、何か。何かこう、出来ることが有る筈じゃ。……有るよな?
『でも、恋人とか許嫁らしい事はしてるんでしょ?』
「まぁ、うむ。それは出来とると思う。でも、他にもしたいと言うか。儂が被身子に、何が出来るんじゃろうなって。
……父は、母に何を?」
『え? そりゃ……夫としての責務を果たしつつ、感謝を忘れず、ぁ、愛を捧げる……とか?』
「……よく有りそうな回答じゃな」
夫としての責務。まぁ儂の場合、嫁としての責務になるんじゃろうけども。それは果たしてるじゃろう。被身子が一番大事で、被身子の為なら何でもしたい。感謝もしとる。これまでもこれからも、被身子の全部を受け止めるつもりじゃ。父の言うことは、もう既に出来ていると思う。じゃけど、もっとこう。……こう。いわゆる、更に向こうへ……的な。
『そもそもさ。円花はもう十分なくらい、被身子ちゃんにしてあげてると思うけど?』
「……そうかの?」
『そうだよ。怒らないで聞いて欲しいんだけど、ぶっちゃけ被身子ちゃんっていわゆる……普通じゃないでしょ』
「あ゛?」
『だから怒らないでって。境遇なんて、世間では稀な方だよ? あんな風に実の両親に見放されて、全くの他人の家で育った……なんてさ。
今思えば、どっかでグレちゃってもおかしくなかったんじゃないかな。まぁあの家に居たら、どっちみちグレてたと思うけど』
「……」
……。……まぁ、……うむ。残念ながら否定は出来ん。つい頭に血が昇ったが、父の言う事は何も間違いではない。事実を語ってるだけじゃ。
確かに、被身子の置かれた境遇は客観的に普通とは言えんかもな。幼い頃からよその家、つまり廻道家に入り浸って、儂と共に育って来た。そうなった原因は、少なくとも半分以上は儂のせいじゃけども。あんな糞野郎共を前にして、儂は黙って居られん。
『まぁ渡我さんを殴り飛ばしたのは、今でも親としては褒められないよ。暴力は良くないね、暴力は。ちゃんと改めるように』
「ぅ、うむ……。まぁ……善処する……」
『でも、そうまでして被身子ちゃんを救けたかった。守りたかった。その気持ちは分かるし、あれは殴り飛ばして当然だよねー。いやぁ、良くやったようん』
「いや、おい。どっちじゃ」
『どっちも。親としては叱る、でも褒めたいから褒めたの。
……とにかく。そうやって円花が被身子ちゃんを守ろうとしたから、救けようとしたから、今の被身子ちゃんが居る。そんな被身子ちゃんを、円花は大切にして愛してる。そんな円花を、被身子ちゃんは大好きで愛してる。
ほら、もう十分何かしてあげてるんじゃない?』
……んん。んんむ……。間違いとは言えん。けど、正しいと言えるかは疑問が残る。
じゃって。儂は、渡我夫妻が気に食わないから殴り飛ばした。我が子を解ろうともせず、愛そうともしない親が憎いから……殴ったんじゃ。被身子の為に殴ったと言えば、それは嘘じゃない。じゃけど半分は、儂の主義に従って殴った。半分は儂の為なんじゃ。それを正しいと言われるのは、やはり違う。
『そんなに何かしたいなら、やっぱほら。プロポーズとか?』
「……それは、とっくにしたと思うが?」
した。と言うよりは、意図せずにしてしまった。が、正しいんじゃけども。あの時、そう……被身子と出会った日に、儂は求婚紛いの言葉を言い放ってしまっての。被身子と来たら、完全に勘違いしてしまったようじゃ。そして十三になるなり、猛烈に求婚して来てのぅ。殆ど押し切られるような形で受け入れてしまった。被身子と結婚すると腹を括ったのも、その時じゃけども。
まぁつまり。今更求婚なんて……。いや、まぁ……。んんむ……? もしや、儂の方からはしてない……? ただただ被身子に押し切られただけか?
『まだ結婚は先だけど、改めてしたって良いんじゃない? ほら、十八歳になる時にとか』
「……考えておく」
『かっこ悪いプロポーズはしないように。これ、経験者のアドバイスね』
「ぉ、おう……。相分かった……?」
格好悪い
『ちなみにお父さんは思いっ切り舌噛んで、その痛みでテーブルに頭を打ち付けて、仰向けにひっくり返ったわよ』
『り、輪廻……! それは言わないでおくれよっ!?』
「ぽんこつめ。何やってるんじゃまったく……」
どうやら、大事な場面でも父はぽんこつだったようじゃ。求婚ぐらい、真面目に出来んのか真面目に。まぁでも、それが父らしいと言うか何と言うか。反面教師にするとしよう。同じような真似はしたくない。両親の惚気話を聞きたいとも思わんから、もう相談は終いじゃ。ひとまず、参考になった……と思っておく。
『あ、ちょっと待ちなさい円花』
「……何じゃ?」
電話を切ろうとしたら、母が話し掛けて来た。何か用が有るようじゃが、何か嫌な予感がするのぅ。切っては駄目かこれ? 駄目なのか?
『いっそ被身子ちゃんに聞いちゃうのも手よ』
「……それじゃいつもと変わらん」
まぁ、うむ。思い切って被身子に聞いてみる手も無くはない。じゃけども、何て答えるか目に見えとると言うか……何と言うか。もちろん被身子の要望は聞き入れるが、時には儂が自分から行動することに意味が有ると思う。いつもは流されっぱなしじゃからの。たまには、儂の方から儂自身の意思で。そう思ったから、こうして父に相談したんじゃ。
『もし被身子ちゃんに何か大きな事をしてあげたいなら、被身子ちゃんがどういう子なのか改めて見つめ直しなさい。下手真似したら逆効果になるから、気を付けること。良い?』
「相分かった。覚えておく」
『被身子ちゃんによろしく。じゃあね』
助言をするだけした母が、電話を切りおったわ。言われた事は覚えておくとしようかの。念の為、父が言っていた事も覚えておく。被身子に何が出来るのかは分からぬままじゃけど、何か思い浮かびそうな気がしないでも……。
……いや。んんむ。やはり直ぐには思い浮かばぬ。いずれ何か思い浮かべば良いんじゃけども、果たしていつになる事やら。我ながら、伴侶としての甲斐性が無いように思えて来る。はてさて、いったいどうしたものか。
「まーどーかー、ちゃんっ!」
「ぐおっ!?」
あれこれ考えていると、後ろから被身子に抱き付かれた。そのまま勢い良く布団に押し倒されて、顔が枕に埋まった。
お、お主なぁ……っ! 急に抱き付くのは危ないから止さぬかっ。まったく!
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ