待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
くらすめぇと達の訓練に、儂自身の個性鍛錬。呪具作成に、任務。少しは被身子と負担を分配しているものの、それでも忙しいと言わざるを得ない。土日は休養日として、訓練も任務も一切無しじゃ。とは言え、昼から夕方までは呪具作成に費やしとる。ついでに緑谷の鍛錬が順調かどうかも確認しておく。一応、牛歩ながら進んでいると言っておこう。えんでゔぁが雄英に滞在しているから、その分訓練の幅が広がって実に有益じゃ。
……まぁ、勝手な勘違いで舎弟を叱り飛ばしたのはどうかと思うが。あやつがいじめてたのは、緑谷なんじゃよなぁ。さっさと謝れ、たわけ。今更謝れん気持ちは分からんでもないが、じゃからって訓練に参加させてやるつもりは無い。
あぁ、そうそう。日々の訓練で手合わせした感じ、くらすめぇと達の成長は馬鹿にならん。まだ遠いが、それでも儂に迫りつつある。儂を目標に鍛えているんじゃから、そうでなくては困る。が、僅かずつでも儂に追い付きつつあるのは喜ばしい。そろそろ突き放してやりたい気もするが、儂自身の鍛錬は然程進んどらん。子供達の成長が最優先じゃけども、個人的にはもう少し個性伸ばしがしたい。そんな暇は全く無いんじゃけどな。
結局のところ。日々何かしらやるべき事が有って、暇な時間は少ない。そんな風に過ごして居たら、毎日が過ぎ去るのはあっという間での。そうこうしている内に一月が終わってしまい、気が付けば二月の初週が終わっていた。……どころか、もう二月の十日じゃ。
ばれんたいん、は十四日。その日は麗日や緑谷を巻き込んで、朝から被身子と
「と、言うわけじゃから。貴様等、ちょこの作り方を教えろ」
「あー……。まぁ、そろそろだとは思ってたけどよ」
「お任せください廻道さん。今日の為に、女子一同で勉強して来ましたのよ!」
「最後の晩餐」
食堂の奥にある、広々とした台所にて。今日は日曜日と言うことで、平日よりは時間が有る。じゃから昼食を済ませて直ぐ、儂は砂藤や八百万、ついでに常闇にも声を掛けた。被身子を食堂から追い出すのは、何故か簡単じゃったわ。たまたま
それと、常闇。何か失礼なことを口走った件については、後で問い詰めるから覚悟しておけよ貴様ぁ……!
「一応確認するけど、渡我先輩へのチョコレート……だよな?」
「ぅ、うむ。まぁ……本命ってやつじゃの」
取り敢えず砂藤の質問には答えておくが、言ってて気恥ずかしくなって来た。別に今更、被身子との関係を言う必要は無い。そんな事は、もはや誰もが知っとる。が、それでも気恥ずかしい気がするんじゃ。たかが
「しかし砂藤、八百万。これは深淵なる儀式。赦されざる禁忌だ」
「……十二分に分かってるつもりですわ。廻道さんに料理をさせるのは末恐ろしいですが、私達でサポートしましょう」
「だな。まぁ、幾ら廻道でも分量さえ間違えなきゃ何とかなるんじゃねーか?」
「き、貴様等……」
三人に好き放題言われてしまっているのは、気のせいではない。解せぬ。反論したい。が、菓子作りについては生憎と何も分からん。なんかこう、あれやこれやと調理器具を使うことしか知らん。被身子が菓子作りしている姿を眺める機会が何度か有ったが、何をどうしていたかは今でも分からんままじゃ。
「と、とにかくじゃ。ちょこはどう作るんじゃ? 一から教えてくれ」
「一からってなると、カカオからだな。でもそっちは時間も手間も掛かるし、全部教えてくとバレンタインには間に合わないだろ?」
「となると、廻道さんの場合は既製品を使うのが手早いかと」
「あぁ。だが、深淵の観察には気を付けねば。取り込まれては命取りだ」
……それで? 儂は何をどうすれば良いんじゃ?
取り敢えず、調理台に広げられた食材や調理器具を見渡して見る。色々有るようじゃが、何をどうすれば良いのやら。
「まぁ……、そうだなぁ。廻道の場合、シンプルに湯煎して固めるのが良いんじゃね?」
「湯煎? ちょこを?」
「そうそう。お湯で温めて、一度溶かすんだ。その後テンパリングして、型で固める」
「えぇ、廻道さんにはちょうど良いかと」
溶かして、てんぱ……? 型で固める……? 何を言っとるんじゃこやつ等。いまいち理解が追い付かん。が、ここは素直に従っておくとしようかの。
ええっと、まずは湯煎じゃったか? となると、必要なのはお湯か。鍋に水を張って、火にかけるとしよう。確か鍋は、そこの戸棚に……。
「待て廻道。湯は俺が沸かそう」
「お、おぅ。では任せる」
戸棚を開くと、何故か割り込むような形で常闇が鍋を持って行きおった。若干青ざめているような気がするが、何でじゃ? 砂藤や八百万が苦笑いしているのも解せぬ。幾ら儂でも、鍋で湯を沸かすぐらい出来るんじゃが??
「常闇さん、お湯の温度は50℃から55℃がちょうど良いそうですわ」
「承知」
「じゃあ廻道はチョコを刻もう。まな板の上で、細かく均一に」
「……相分かった」
まぁ……、湯の用意は常闇に任せておくとして。儂は砂藤の指示に従うとするか。調理台の前に立つと、既にまな板の上に板
それでじゃ。この
「最初は角から斜めに、大まかに刻むと良いそうですわ」
「うむ。……こうか?」
「そうそう。そんな感じそんな感じ」
八百万の助言を聞きつつ、まな板の
それはそれとして。台所に立つのは随分と久しぶりな気がするのぅ。儂は基本的に立ち入り禁止じゃからの。少しぐらいなら出来ると言うのに、何じゃってどいつもこいつも儂を炊事から遠ざけるのか。たまに失敗することもあるが、うどんや雑炊ぐらいなら作れるんじゃぞ。
なんて考えながら手を動かしていると、すっかり
「……廻道さん。あの、まさかとは思いますが湯煎をご存知なくて……?」
首を傾げていると、何故か八百万から妙な質問が飛んで来た。いやいや、何を聞いとるんじゃこやつ。料理には疎いが、流石にそのくらいは分かるんじゃが?
「つまり、茹でるってことじゃろ? そのくらい分かるが??」
まったく。儂が料理とか、菓子作りについて何も知らんと思うなよ。これでも、少しぐらいは知っとるんじゃ。何故何かしようとする度に、周囲から疑いの眼差しを向けられねばならんのか。こうなったら、儂にじゃって料理や菓子作りぐらい出来るってことを知って貰わねば。ふふん、今に見てろよ。
「待て廻道! 何を―――!?」
「湯煎じゃ湯煎。そのくらい出来るが?」
湯、……はまだ沸いてないようじゃが、このまま火に掛けていれば直ぐに沸く筈。じゃったらもう、湯煎するものを放り込んでしまっても構わんじゃろ。手にした
って、おい常闇。なんで頭を抱えた? 八百万や砂藤は、何故天を仰ぎ見ているのか。つまるところ、これから
「あー……、廻道。チョコを溶かす場合、直接湯に入れるわけじゃないんだ……」
……どうやら、盛大に間違っていたらしい。早速材料が無駄になってしまったようじゃ。何と言うか、すまん。
あ、そうじゃ。今からでも、鍋の中から
◆
三度目の挑戦ともなると、両脇に立った砂藤と八百万が儂の一挙一動を監視するようになっての。少しでも何かを間違えそうになると、横から指摘が飛んでくる状況じゃったわ。多少煩わしい感じじゃったけども、二人の監視もあって溶けた
「すまんな。助かった……」
疲れが滲み出て来た。お菓子作りは大変なんじゃなぁ。細かい作業が多いと言うか、気を付けることが多いと言うか。溶かして固めるだけなのに、こうも疲弊する羽目になるとは。儂、菓子作りは向かぬの。細かい事は苦手じゃし、もう来年からは既製品で良いのでは? いやでも、被身子は毎年手作りじゃからなぁ。儂だけ買ってきたものを渡すのは、何かこう……気が引けるというか。
とにかく。八百万と砂藤、そして常闇には礼を言っておく。三人とも、すっかり疲労困憊気味じゃ。儂以上に疲れているように見えるのは、多分気のせいじゃ。多分。
「お役に立てて何より、ですわ……」
「まぁ、何とかなって良かったよ。もう少し教えてやりてーけど、廻道にはこのくらいで良いかもな……」
「あぁ、この先は奈落だ。一度墜ちれば、二度と這い上がれまい……」
……ふぅ……。……まぁ、取り敢えず。取り敢えず、被身子に渡す
壁に掛けられた時計を見てみると、もう二時間以上も時間が経っとるわ。じゃから疲れているのか。慣れない事をするもんじゃないのぅ。
「……この礼は、そのうちする。八百万、風呂でも入らんか?」
「はい、ご一緒させていただきますわ。ですがその前に、後片付けをなさいましょう」
「……だな。とっ散らかってるし」
「ぅ、うむ……。そうしよう」
調理台の上は、それはもう滅茶苦茶じゃ。なにせ、そこらに溶けた
……こうして。ひとまず、
円花が湯煎の際、お湯にチョコレートをぶち込んで溶かそうとしたのは私の経験談から来るものです。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ