待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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教えの時間。二組で逢瀬、前日

 

 

 

 

 

 

 さて。何かと忙しい日々が続いているが、明日は逢瀬(でぇと)じゃ、逢瀬(でぇと)。ばれんたいん、じゃからの。一日だけ、呪具作成やら訓練やら任務とは無縁の時間を過ごす予定じゃ。

 もっとも、逢瀬(でぇと)する為に呪具作成も訓練も任務も密度を上げる羽目になったのはどうかと思うが。休む為に休み無く働くのは、何か間違っとるなぁ。もう少しこう、上手い具合に出来なかったものか。

 

 ……。……ま、まぁ良いじゃろ。休む為に頑張るなんてのは、よく有る話じゃ。がははは!

 

 それはそれとして。

 

「やっぱり、行かなきゃ駄目……?」

「諦めろ。被身子が一度言い出したら止まらんのは、知っとるじゃろ?」

「そうなんだけど……! そうなんだけどぉ……!」

 

 英雄(ひいろお)科の寮。文字通り山程有る、被身子の服を置く為だけの被身子の部屋にて。麗日が頭を抱えて唸っておる。何故こうなっているかと言うと、明日は二組で逢瀬(でぇと)じゃからじゃ。一組は、もちろん儂と被身子。もう一組は、緑谷と麗日じゃの。

 

 だぶるでぇとがしたい。と、昨日の昼に強請られたんじゃ。特に断る理由は無いし、そもそも言い出したら止められん。じゃから麗日も緑谷も巻き込む形になった。すまんとは思っているが、諦めてくれ。それに、実は満更でもないのは分かっとるんじゃぞ。昨日の夜、何だかんだで緑谷宛に貯古(ちょこ)を用意しとったし。

 

 まぁ、それも被身子に押し切られる形じゃったけども。妙に距離感が近かったのが印象的じゃった。……さては浮気か? 儂の目の前で堂々と浮気か?? 許さんぞ貴様等ぁ……!

 

「と、友達。渡我先輩とは友達だから……! そういうんじゃ無いからっ!?」

「別に何も言っとらんが?」

「いやだって、凄いヤキモチ顔……」

「どんな顔じゃ、たわけ。ほら、さっさと選ばんとどうなっても知らんぞ」

「ん、んん……。いやでも、この中から選べって言われても……!」

 

 その気持ちは分からんでもない。じゃって、儂の分と合わせると洋服の数が半端じゃない。服屋と見間違われても仕方ない程度には、この部屋は服で溢れ返っておる。母も父も、儂等に服を買い与え過ぎじゃろ。儂は和服が何着か有ればそれで良いと言ったのに、直ぐあれこれと洋服を買い漁るんじゃから。

 何が「円花って物欲無いから、お金が掛からない子よねぇ」じゃ。儂の分は被身子に回せば良かったじゃろ。……いや、回した結果がこれか。

 

 と、とにかくじゃ。麗日は明日着る服を、この洋服の山から選ばなければならん。実は儂もそうでの。洋服の事は被身子から聞き齧った程度しか知らんけど、麗日と違って取り敢えずの目処は立っとる。昔に儂が着させられた際、被身子が喜んだやつにしておけば良い。何を着ても喜んでいたような気もするが、何とかなるじゃろ。多分。

 

「ほんと、渡我先輩って強引で……。もぉ……!」

「そうじゃな。何せ我慢を知らんからの。かぁいいものじゃろ?」

 

 まっこと、被身子は我慢を知らん。少なくとも儂の前では、いつだって好き勝手にしとる。お陰で何度振り回されたことか。そしてこれからも、盛大に振り回されるんじゃろうなぁ。望むところじゃけど。

 

 で、じゃ。まだ頭を抱えとる麗日は一度放って置くとして、儂が着る洋服を選ぶとしよう。一人で着れるやつで、厚手のやつが好ましい。今は冬じゃからの、薄手の上着では体が冷えてしまう。風邪を引くなんて真似は出来んし、着ると(ぬく)くなるようなやつが良い。

 

 あ、そうじゃ。上着はこれにしよう。結構温かったしの。何故兎の耳を模した飾りが頭巾(ふぅど)に付いてるのかは謎じゃが。

 

「ぅ、うん。でも巻き込むのは止めて欲しいかなぁって」

「さっさと緑谷と付き合えば収まると思うが」

「んぐ……っ。か、廻道さんまで……っ!」

 

 そう文句を言われてものぅ。被身子に振り回されたくないなら、さっさと緑谷と付き合ってしまえば良い。付き合ったら付き合ったらで、また振り回されることになるじゃろうけど。

 結局のところ、どうしたって振り回される羽目になるなら諦めて楽しめば良いのでは? 別に、付き合うこと自体は悪くない事じゃと思うが。そんな暇が麗日や緑谷に有るかと言われると、何とも言えんところじゃけども。

 

「好きを隠さなくとも良いじゃろ? あけすけじゃ、あけすけ」

「……これはしまっとくの。デクくんも私も、今はそんな余裕無いんだし」

 

 それはそうじゃの。恋愛にうつつを抜かしている暇が緑谷や麗日に有るかと言うと、正直に言えば無い。どちらも英雄(ひいろお)になる為にすべき事が山程有る。その上で儂の力になろうとしてるんじゃから、余裕も暇も無いんじゃ。とは言え。

 

 とは言え、少し思うところが無い……とは言えんのもまた事実じゃったりする。半分は儂のせいじゃけど、子供が鍛錬のみに若い時間を費やすのはどうかと思う。一応、これでも中身は老人じゃからの。

 

 ……つまり。これは要らん老婆心なわけじゃ。それでも少し、尻を叩いてみても良いかも知れんな。緑谷はあんなんじゃし、麗日もこうじゃから。余計なお世話は何とやらと言うし、儂も一応、英雄(ひいろお)候補生の一人じゃ。それっぽく振る舞っておくのも、たまには良いか。

 

「明かすなら今の内じゃぞ? 緑谷はな、この先どうなるか分からん」

「え……?」

「少し先の話じゃけどな、……まぁ此処には居られんじゃろ。お主等と二度と会えん可能性すら有る」

「ま、待って。それって、どういう……?」

「儂は被身子やお主達に引き留められたから、此処に居る。そういう選択をした。

 が、あやつはなぁ……。多分、今の儂とは違う方に行くじゃろ」

 

 あくまでも、これは儂の予想じゃ。外れてくれた方が良い。ただ、予想通りになる可能性も無いとは言えん。

 じゃって、緑谷は次の平和の象徴じゃ。今はまだ未熟者じゃけども、いずれあの個性を完全に扱える時が来る。その時、世間が放っておかんじゃろ。そもそも、雄英を卒業したらもう大人じゃ。儂が隠れ蓑になる必要は無い。

 

 っと。上着の下に着るのは、……これにしておくか。如何にも着飾った感じのやつじゃけど、せっかくの逢瀬(でぇと)じゃからな。おめかしじゃ、おめかし。足が冷えそうなのを何とかしたいところじゃけども、多分にどうにもならんな。せめてもの防寒として、長靴下……いや、厚手のすとっきんぐでも穿こう。少しは寒くなくなる筈じゃ。色は、……黒は止しておくか。白じゃな、うむ。

 

「まぁ覚えておけ。緑谷はいずれ居なくなる。それがいつかは知らんが、居なくなってからでは遅いぞ?」

「―――」

 

 あ、いかん。儂としては少し焦って欲しかっただけなんじゃが、何やら麗日が真面目な面になってしまった。すっかり別の事を考え始めてしまっているの。これでは明日の洋服を選ぶどころではない。いや、儂はもう選んで……。……下着はまだじゃったか。ど、どうしたものかのぅ?

 

「……廻道さん。その話、詳しく聞かせて」

「……あぁ……、ええっと。んんむ……」

 

 ま、真面目な顔で迫られてもな? 話せることはもう無いんじゃ麗日。

 じゃって、緑谷の個性やその成り立ちも、おおるまいとの後継って話もしてやれん。言い触らすような奴ではないと思っとるが、それでも口は割れん。約束は守るし、これ以上破りたくはない。ただでさえ、既に英雄(ひいろお)科から呪術科に移籍しとるんじゃし……。何ならこれも話すことは出来んし……。

 

 と言うかじゃな、麗日。そこまで緑谷の事が気になるなら、早く打ち明けてしまえば良いじゃろ? 恋人になったとて話せる事ではないが、少なくとも緑谷を引き留める理由のひとつぐらいにはなれる……と思うが。いやでも、どうじゃろうな。儂が緑谷と同じ立場じゃったら、誰に引き留められても無視するのぅ。

 

 ……ひとまず、ここはじゃな。

 

「わ、儂が話せる事は無い。それよりほれ、服を選ばんと被身子がうるさいぞ……?」

「それなら、これとこれとこれにするから」

「う、うむ。なら、明日の準備は出来たな! がははは!」

 

 つい一歩下がりつつ、笑い飛ばしておく。いや、驚いたわ。まるで被身子みたいに迫ってくるんじゃもん。圧の掛け方が妙に似ていたというか、何と言うか。さては、影響されたか? 被身子直伝、……なんて事は無いよな?

 

「……どうしても、話せないこと……?」

「すまんが、そうじゃ。口止めされとる」

「……分かった。廻道さんは全部知ってて、デクくんを引き留めてくれる……よね?」

「まぁの。雄英を卒業するまではそのつもりじゃ」

「卒業まで、……なんだ」

「卒業したら大人扱いじゃからな。大人まで守る気は無い」

 

 まぁ、たまに気に掛けるぐらいはしてやっても良いが。それでもわざわざ守ったり救けたりするつもりは無いのぅ。

 大人なら自分の身は自分で守れとしか思わん。例外は被身子と両親じゃな。後は同い年じゃろうが年下じゃろうが知らん。年上なぞ、もっと論外じゃ。こればっかりは変わらん。変える理由も無い。

 

 ……ところで。

 

「真にそれで良いのか?」

「えっ。駄目かな……?」

「試着して見たらどうじゃ? まぁ、緑谷なら何を着てても喜ぶとは思うが」

「んん゛っ。べ、別にそんなつもりじゃ……! ただ可愛いなって思っただけで、そもそもデクくんの好みなんて分からないし……っ!?」

「かぁいい感じなら間違いないじゃろ。文化祭の時、見惚れとったし」

「見惚れ……っ。き、気のせいじゃない?

 うん、気のせいだって……」

 

 いや、浮くな浮くな。顔が熱いのは分かったから、天井まで浮くんじゃない。さっきから顔面が忙しい奴じゃな、お主。

 

 ……さて。儂も一応、試着しておくか。過去に着たことがある服じゃけど、一応袖を通しておこう。ほら、意外と背が伸びてて着れなくなってるかも知れんし。念の為、確認じゃ確認。

 

 

 まぁ、結局問題なく着れたんじゃけども。やはり背は一寸も伸びてないようじゃ。体重も変わっとらんしなぁ、儂。

 もしかして、一生この体型か……? いやいや、そんなまさかな。どこかで背が伸びたり、多少は太ったり痩せたりするじゃろ。

 

 

 

 ……、……するよな……?

 

 

 

 

 

 

 






三人称による補完は要りますか?

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