待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
度重なる大爆発で、ちあがある衣装が駄目になってしまった。なので控え室で体操着に着替えようとしたら、案の定被身子がこすぷれさせようと迫って来た。どうやらまだ、こすぷれ衣装は有るらしい。
もうここまで来たら体操着で無くても良いわ!
と啖呵を切ったのは間違いじゃったなと今では思う。
大きな鞄から出てきたのは、すくうる水着・ちゃいなどれす・なあす服・ばにいがある衣装。他にもあれやこれやと色々と出て来て……儂に何を着せるか悩みに悩んだ被身子は最終的に「いっそ円花ちゃんが選んでください」と満面の笑み言いおった。ので、黒いせえらあ服にした。
もっとも無難な選択だったと思っている。何故か被身子が大喜びしたので、間違いでは無かったのかもしれん。制服姿は普段見てるじゃろうが。何でそんなに……まぁ、良い。笑ってるなら儂はそれで良い。
そんなこんなで、決勝戦じゃ。相手は轟。こやつの個性をどう対処するか考えていたんじゃが、やはり赤血操術ではどうしようもない気がする。単純な呪力操作のみで戦うことになりそうじゃ。氷と炎はな、血ではどうしようもない。
まぁその点で言えば舎弟の爆破もそうじゃ。血で真っ向から打ち破ることは出来ん。
個性は強いのぅ。儂も個性を使うべきか? いやしかし、爆破や半冷半燃と比べたら儂の個性は大したものじゃない。強いとは思えぬから、やはり頼りにするのは術式の方じゃろうて。
さて。そろそろ集中するとしよう。これまでの戦いぶりを見るに、あやつが最初に取っている行動は決まっておる。呪力だけであれだけ大規模な氷を防げるとは思えんが、どの道やるしかあるまいて。轟と戦う以上、術式は殆ど役に立たぬ。じゃがまぁ、一切使わぬと言うのも違う。色々と試して見なければな。
『さァいよいよラスト! 決勝戦!!
轟!! VS 廻道!!』
舞台の上。立っているのは儂と轟。ここを勝てば儂が優勝、被身子が喜ぶ。観客席を見ると、被身子と目が合った。
……何でお主が緊張しとるんじゃ? そこは信じて待っておれ。いつものように、笑って居れば良いんじゃよ。
『今!! START!!!』
始まった。と、同時に呪力を最大限引き出す。身体を強化し、周囲に血を撒く。対面から物凄い勢いで、氷が迫っておる。儂に届くまで一秒も無いじゃろう。……間に合うか?
地面に撒いた全ての血を、真上へと引き上げる。出来上がるのは、石の壁。氷が届く寸前に、間に合った。結果、氷は少し上へと逸れる。やはり、とんでもないな。これだけの規模で攻撃出来る者は、前世でも中々見なかった。
体が小さくて良かったのぅ。もう少し身長が高かったら、頭だけが凍っているところじゃった。
うぅ、寒い。目の前に巨大な氷山が出来たのじゃから、当たり前と言えば当たり前じゃ。せえらあ服を着ていて良かった。ちあがある衣装だったら、くしゃみのひとつでもして―――。
「いっきしっ!」
くしゃみ出たわ。寒い。儂、暑いのも寒いのも苦手なんじゃが? 夏は冷房が欲しいし、冬は人肌で暖を取りたい。暖房でも良いけどな。そこはやはり、被身子の方が……。いや、今は被身子がどうこうでは無い。恋心は厄介じゃの。何をしていても、被身子を考えてしまう時がある。
阿保か儂は。今は、轟にのみ集中しろ。まずは目の前の氷山からじゃ。血で壊すのは無理じゃ。出来ないわけじゃ無いが、時間も掛かるし効率が悪い。なので今回は……。
殴って砕こう。
一度肩を回し、まずは右拳を振りかぶる。それから思いっきり前へと踏み込んで、腰を捻り肩を入れ、呪力を流しながら……殴るっ!! 石の壁ごと!!
……ううむ。砕けはした。鈍い音と同時に砕けはしたが、それは氷山の一角でしかない。向こう側に行くには回数が要るな。氷が大きすぎて、流石に貫通まではせんかった。地道に砕いていくしかあるまい。もう一度拳を振りかぶって……っと。
「どっこいせぇ!!」
思いっきり、殴る。すると氷の一部が砕け、そこから亀裂が走っていく。もう一度殴っておくか? ……いや、その必要は無さそうじゃ。何やら大きな音がする。亀裂があちらこちらに向かって走っておるの。そろそろこの氷山そのものが砕けるかもしれん。
この位置に居て、儂は大丈夫か? 上から氷が降って来てもおかしくはないぞ?
氷が降ってきたぐらいなら別に大丈夫じゃけど、生き埋めは勘弁願いたい。脱け出す自信はあるが、寒いじゃろうから嫌じゃ。
仕方ない。強引に氷の向こう側へと行くとするか。
今度は左拳で、氷を殴る。これが思いの外、上手く行ったわ。向こう側に続く穴が出来た。
氷の中を歩くのは、何とも不思議な感じがするのぅ。雪に降られている時とは違った寒さが有る。悪くはないが……好きでもないな。
そんなこんなで氷の穴を抜けた先では、轟が待っておる。白い息を吐く儂を見て、即座に
「左は使わんのか?」
右だけでも対処が面倒。左を使って来られたらもっと面倒じゃろう。氷も炎も、血ではどうしようもない。もはや、こやつの存在自体が儂の天敵と言っても良いな。術式による攻撃の殆どは、左右どちらでも簡単に対処されてしまう。領域は……使ったら自殺になる。そもそも、子供相手に使うつもりも無いが。
「……」
「そうか。好きにしたら良い」
炎も体感しておきたいところじゃったが、使う気配は無いの。こやつが戦闘で左を使ったのは、緑谷に対してのみじゃ。それ以外は右だけで済ませておる。儂相手に本気を出さんと言うのなら、それでも構わん。儂とて本気にはならんしな。
この決勝は、氷を赤血操術と呪力でどう対処するかだけを考えよう。
「百斂」
「っ!」
両手を合わせると同時、氷が迫る。やはり穿血は警戒されるか。当然じゃろうて。撃たせないことが前提。轟は舎弟程目が良いわけでは無さそうじゃし、自由自在に空を飛べるわけでもない。
今度は左に跳び退いて、地面を走る氷を避ける。穿血を出すにはある程度の溜めが要る。最大限の速度を出そうと思ったら、隙を晒すことになる。畳み掛けられると、両手で圧縮してる暇は無いのぅ。
じゃがまぁ、問題はない。そもそも穿血が通用するとは微塵も思っとらん。使うふりをするだけじゃ。こうして警戒させておけば、その分穿血に意識を向けてくれるからの。
「苅祓」
どうせ無駄になるが、どのように無駄になるかは見ておきたい。ひとまず苅祓をひとつ、真っ直ぐ轟へと飛ばしておく。
迫る血の刃を前に、あやつは即座に氷の壁を出す。苅祓はそこに激突し、氷を切り裂くこと無く凍り付いた。高速で回転してるが故に、氷に触れると即座に熱を奪われて凍ってしまう。そうなるともはや、儂の支配下には無い。穿血を撃っても、似たような結末が待っている筈じゃ。
やはり、遠距離攻撃は轟には通用しないな。となると、体内操作で完結させるしかあるまい。
分かっていた事じゃけど、赤血操術では氷の突破は出来ぬ。同じ事が炎にも言えるの。
結局は、こうした方が無難ではある。
「赫鱗躍動」
身体強化で押し通るしかあるまい。凍らされても少しぐらいなら大丈夫じゃが、血液の温度を上げ過ぎるとそれはそれで危険じゃからな。氷は避ける。或いは、殴るなり蹴るなりして迎撃するしかない。幾ら呪力が多かろうが、術式を自由自在に扱えようが、儂に緑谷のような氷対策は出来ぬ。舎弟とて、儂よりは断然対処し易いじゃろう。
……まっこと、天敵じゃなあっ! 丁度良いから長く付き合ってくれよ!
轟との間を、一足で潰す。狙うのは、敢えて右側。押し通るのならば、むしろ氷に挑まねば。まずは氷は儂に通用しないのじゃと、錯覚させよう。
速さのみに重きを置いて、拳を突き出す。狙うは腹。顔面を殴りたいところじゃが、身長差がな。身を屈めるように踏み込むと、顔が遠いんじゃ。背丈が欲しい。もう少しだけでも良いから、背丈が欲しい。
小兵には小兵の戦い方があるのは分かってはおるが……ちびとか言われるのは嫌なんじゃっ!
「ぐっ!」
速さしか考えておらん拳じゃ。それでも、腹を殴られた轟は少しばかり怯みつつ儂の左拳を凍らせる。接触時間は一瞬も無いじゃろう。なのに、凍るのか。あれだけの氷山を瞬時に出現させてしまう個性なんじゃ。このくらいは……まぁしてきてもおかしくはない。
しかしこうなってくると、中々大変じゃ。殴ること自体に危険が伴う。右側は避けて、左側を……。
狙うのは、雑魚の理屈じゃよなぁ?
「ふっ!」
続けて、拳を繰り出す。腹を、脇腹を、肩を、腰を、次々と殴る。拳が凍っていく。一時的にでも体温を上げるしかあるまい。血の流れが滞ってしまえば、赫鱗躍動の維持に支障を
拳は止めん。蹴りも加える。反転術式を使うことも視野に入れる。負けんが? 氷なんかに儂は負けんが??
「負けるな!!! 頑張れ!!!」
緑谷の声が聞こえた。儂に向けてじゃ無い。轟に向けてじゃ。そうじゃな、こやつは貴様に勝った男じゃ。そんな奴が負けるところは、見たくないじゃろうて。儂とて、儂より強い奴には負けて欲しくはない。儂が打ち負かすその時まではな。
「―――っ」
うおっ、炎を出しおった。炎出しおったぞこやつ!!
丁度良い、暖を取ろう。儂は手が冷えとるんじゃ。おお、暖かいのぅ。いや熱い! 馬鹿か貴様!! もう少し勢いを弱めんか!!
……ふぅ、危ないところじゃった。慌てて跳び退かなければ、焼かれているところじゃったわ。幸い手足は暖まったので、問題は無い。
さて、どの程度の炎なのか小手調べと行こう。と思ったら、炎消しおったわ。何じゃ貴様、一度出したものを引っ込めるなど……。
いや、迷いが見て取れるの。大方、親に思うところがあって力を使うか否かを考えあぐねておるんじゃろう。儂にもそういう時期があったわ。単純な呪力操作だけで呪霊を祓い続けていたのぅ。
仕方ない。どれ、少し話を聞いてやるとするか。足元に血を滴し、地面を引き上げる。椅子とも呼べぬ石の隆起じゃが、まぁ良い。腰を降ろせれば今はそれで良しとする。
「どっこいせ」
目の前で不恰好な石に腰掛けると、轟が怪訝そうな顔をしおる。まぁ競い合っている相手が呑気に座ったんじゃ。そんな顔になっても仕方ない仕方ない。
「轟、少し話すか。茶もない席じゃが、話し合うには十分じゃろう?」
轟の分も、座れる石を用意してやる。すると。
「……話すって、何を?」
乗って来おったわ。素直か? いや、これは天然……。まぁ良い。性格について言及するつもりは無い。
「なあに、迷っているように見えたからな。話を聞いておこうかと思ってのぅ」
「……」
「ひとつ謝っておく。貴様が緑谷としてた話を聞いてしまった。すまん」
「……聞いてたのか」
「うむ。じゃからまぁ、少々お主が気になる。儂の親も似たようなものじゃったし」
「……!」
轟の親は、前世での儂の親と似ている部分がある。我が子に力を求めて、生き方を選ばせようとしない。じゃからこやつが歩んで来た人生は、恐らく儂と同じようなものじゃろう。呪術師の家系は糞みたいなものじゃが、こやつの家も糞みたいなものかもしれん。
なら、話は聞いてやれる。答えを出してやるつもりは無いが、共感ぐらいは出来る。現に、今の轟は過去の儂のように見えとるしの。
「廻道も、色々あったんだな……」
「まぁの。儂もお主のような時期があった。さっき炎を引っ込めたのは、どうすべきか分からないからじゃろ?」
「……分かるのか?」
「お主のような時期があったと言ったじゃろ? 親との確執で悩み、この力を使わないで居た時期がある」
首から血を出し、数秒ほど浮かせた後に、また体内へ戻す。
親から継がされたこの力をどう扱うか。自らがどうして行くべきか。何も分からず迷って、無茶もした。……こうして思い返してみれば、よく生きてたな儂。死んでてもおかしくなかったぞ。いや、結局最期は死んだんじゃけど。
『おいおい! 二人揃って試合放棄かァ!?』
「喧しい!! 話が終わったら再開するから黙って見とらんか!!」
まったく、茶々を入れるでない。空気が読めん教師じゃな。呪うぞ?
「ぷれぜんと・まいくは放っておけ。気にするな。
……それで、お主はどう在りたい? 自らをどう定義して、その力をどう扱う?」
「それは、分からない」
そうじゃろうな。自分がどう在るか、どのように力を扱うか。それに悩んでいるから、こやつは炎を引っ込めたんじゃ。その答えは直ぐに出るようなものじゃない。人次第ではあるが、儂は三年かかったぞ。まぁそのお陰で反転術式を扱えるようになったから、無駄な時間では無かったと今では思う。今ではな。
「勝手に助言するが、好きにしたら良い。悩んで迷って、後悔して。……その上で気付くこともあるじゃろうて。お主の自由じゃよ、轟」
儂がどうこう言ったところで、何が劇的に変わるわけでもない。じゃけど、こうして伝えておく必要はあった。お主が独りではないことを、お主は知っておくべきじゃ。
あ、そうじゃそうじゃ。ついでにもうひとつ言っておこう。
「どうしても両親が許せなかったら、儂が呪ってやるからその時は言え。任せろ、儂は呪術師じゃからな! がははっ!」
「……いや、本当に呪いたいとまでは思わねえが……。でも、ありがとな」
「礼には及ばん。さて、それでは再開するか」
話は、もう終わりじゃ。殆ど儂が喋っておったけどな。まぁ、勝手にあれこれと伝えておきたかっただけじゃし。老婆心じゃったかもしれんの。
とは言え儂、七十越えた爺いじゃし。いや、婆あ……と言うにはこの体は若いか。でも前世含めたら婆あと言える年齢なのは確かじゃ。
さぁて。あの氷も、炎もどうしたもんか。氷は殴り砕くしかない。じゃが炎はなぁ。振り払えても殴ることは出来んし。かと言って大人しく焼かれるつもりも無い。血液で消火は……どう考えても無理じゃ。少しぐらいの火ならまだしも、あれだけの炎はなぁ。
あれこれと考えてみるものの、儂のやれる事で炎をどうこうするのは……やはり無理じゃな。素直に避けるしかあるまい。受けるだけなら問題は無いが、服が焼け焦げるのは良くない。
この服、少しだけ気に入っとるからの。じゃって被身子が……被身子は良いんじゃ。ふとした時にあやつを思い出すのは止めんか、馬鹿者が。
石の上から立ち上がった儂と轟は、立ったその場で構える。
……仕方あるまい。こうなったらもう、真っ直ぐ行って殴り飛ばすか。右の拳で殴り飛ばす。単純に呪力強化で、思いっきり腹を殴ってやろう。炎が来たら、それしかない。氷が来ても同じ事じゃ。
「ほれ、かかって来んか」
「ああ。言われなくても、そうする」
轟が、右足を踏み出す。同時に儂も拳を振りかぶる。
迫ってくる氷を、殴り付ける!
が。そのまま儂は氷に呑まれたわ。ううむ、冷たい寒いっ。なるほど、生きたまま氷に包まれるとこんな感じか。……動けん。から、動けるようにしよう。幸いにも今生の儂の呪力はとんでもない。ならばこの呪力を思う存分振るって、無理矢理にでも周囲の氷を砕いて見せよう。大丈夫じゃ、まだ体は動かせる。体の芯までは、凍り付いておらぬ。息が尽きる前に、どうにかして見せる。
四肢に力を込める。呪力を流し込んで、無理矢理にでも。こんな経験をするのなら、体を鍛えておくべきじゃったなぁ。呪力量が多いからと体を鍛えないままで居たのは、ただの怠慢じゃ。大抵の事は呪力ひとつでどうにか出来る身ではあるが、流石に限度と言うものがあるのぅ。
……良し。少しだけ手足が動くようになった。なら十分じゃ、僅かでも動けばやりようがある。赫鱗躍動で、体温を上げる。ひとまずは、周囲の氷を少しずつでも溶かしていく。手足が満足に動かせるようになるまで、その為の空間が出来るようになるまで。
ううむ。気持ち悪くなってきた。当たり前じゃ、血を通して体温を無理矢理上げとるんじゃからな。なぁに、まだまだ死にはせん。意識がある内は死なんじゃろ、多分。
やがて、氷の中にある程度の空間が出来た。拳を振るうには十分な程の。そろそろ息が苦しい。
後は、呪力を多量に込めて殴るだけじゃ。いかん、まっこと苦しい。窒息死しそうじゃ。空気が吸いたい。急がねば。
……どっ、こいしょお!!
お、砕けおった。また氷の洞窟が出来たの。空気の流れを感じたから、ここでようやく息を吸い込む。
「っはあ! 死ぬかと思った……っ!!」
空気、うまい。まったく、死ぬところじゃったぞ。もう氷漬けにされるのは嫌じゃ。人は冷たくて寒いと死ぬんじゃ。轟め、どうしてくれようか……。決めたぞ、貴様は場外まで殴り飛ばす。
「とぉ、どお、ろおぉきぃい……っ」
段々と憎たらしくなってきたなぁ……! 許さん。あやつは、許さん。
ぜっったいに許さんからな!!
「はぁあああ!? 何で自力で氷の中から出てこれんだよ!? 完璧に氷漬けだったろ!?
おい、あいつどうなってんだイレイザー!!」
「知らん。元から化け物なんだろ。
廻道、大丈夫か? 轟、やり過ぎだお前。少し加減しろ」
おい、儂を化け物扱いするんじゃない。儂が今やったことは、多分おおるまいとも出来るぞ。あやつの場合はもっと力業じゃろうけど。
ほら、別に化け物なんかじゃなかろう? まったく雄英教師共は、仕方ない連中じゃなぁ。
後で文句を言っておこう。
それはさておき。
氷の中から脱出したんじゃ。決着はまだ着いておらぬ。さぁ、轟。勝負はここから―――。
「わりぃ廻道。大丈夫か? これで暖まってくれ」
……おい。何で儂を心配する。駆け寄って火を起こすな。何を心配そうな顔をしとるんじゃ貴様は。まだ勝負の最中じゃろうがっ! よし、殴る!!
「さぁさァ! デストロイコスプレガールの無事も確認出来たところで表彰式にしようぜ!! ステージ片付けるから、三十分後な!!」
……は?
「わりぃ……、やり過ぎた。本当に大丈夫か? お前を氷漬けにしたら……試合が止められて」
「……は?」
「はーい廻道さん。元気そうだけど、ひとまず医務室に行きましょうか。はい、そこの担架に寝て!」
……おい、待て。待たんか。腕を掴んで引っ張るなよ主審。まだ戦えるが? 儂、まだ戦えるが? 全然元気じゃが!!?
と言うかじゃな、何で舞台に大人が集まっておるんじゃっ。よく見たら担任も、喧しい英語教師も居るの?
おい、勝負の最中じゃが? 何で轟の父親が氷を溶かしとるんじゃ? その隣で、何でおおるまいとが大慌てで氷を殴り砕いておるんじゃ? 他にもくらすめえと達が氷を砕いておるの?
「こんな結果だけど、優勝おめでとう!」
ふっっっ、ざけるなよ!? 何を勝手に終わらせとるんじゃ主審!! どういう判断じゃ!!?
無事に!
氷から!!
出てきたじゃろうが!!!
終わらせるな!!! 儂はまだ戦える、戦いたいんじゃあっっ!!!
轟ぃ!!! 貴様も何か言わんか!!!
まったく納得出来ぬが、こうして儂は雄英体育祭を優勝した。
何でも? 轟が儂を氷漬けにした時点で勝負が中断され?
いや、儂は無事じゃったし。氷から脱け出した後も戦う気満々じゃったが?
何で勝手に止めたんじゃ! おいこら! 納得出来んぞ!!
いらんいらん! こんな優勝など欲しくはないが!?
やり直し!! やり直しを要求する!!!
三人称による補完は要りますか?
-
欲しい
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要らん
-
良いから一人称で突っ走れ