待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
納得行かぬ。この優勝は納得行かぬ。やり直しを要求したが、却下されてしもうた。どうしても、解せぬなぁ。隣で舎弟が笑いを堪えている件については、後で締めるとしよう。儂を見てほくそ笑むのは止めんか。はぁ……。
まぁ、もう過ぎたことじゃ。がちばとるとおなめんとの決まり事からして、儂が全身氷漬けになった時点で轟が罰則を受けるのは仕方がない。決まりは決まりじゃ。そこは飲み込むことにする。
折角の一番なのに、こうも嬉しくない一番になるとはのぅ……。医務室に運び込まれた時は、くらすめえとが押し寄せてきて喧しかった。被身子と母も来た。心配させたのは申し訳無く思う。
……そんなこんなで、表彰式じゃ。儂は一位、轟は二位、舎弟は三位。用意された表彰台に立つと、母が見えた。手を振ってるから、手を振り返しておく。ところで、被身子は? あやつ何処に行った? 何か……何か嫌な予感がするのぅ。
「メダル授与よ! 今年メダルを贈呈するのは、勿論――」
めだる。めだるか……。要らんなぁ。今回に限っては辞退したい。が、そうも行かないようじゃから大人しく受け取るしか無いのか。何気無く空を見上げると、おおるまいとが回転しながら降って来た。相変わらずの筋肉大男じゃな、お主。これだから平和の象徴は……。
おい、待て貴様。何で背中に被身子を背負っておる。被身子、何でおおるまいとの背中にくっついておるんじゃっ。何でめだるを持ってるんじゃ!? 何しに来たんじゃ貴様っ!! おい、悪どい笑みを儂に向けるなっ!! 何で舌なめずりしたっ!?
いかん、嫌な予感が膨れ上がってきた。変な汗が出てきたわ。頼むぞ、頼むから大人しくしててくれ。もうこれ以上、何かしてくれるなよ!?
「爆豪少年。準決勝では凄まじい活躍だった。しかし、自らを痛め付けるような戦い方は駄目だ。そんなやり方は、ヒーローとしても先生としても褒められないな」
「……っす」
「君ならもっと上手くやれる、頑張れ。期待してるよ。……渡我少女」
「はい、銅メダルなのです」
表彰が、始まった。嫌な予感が消えない。
おおるまいとよ、何で被身子を連れてきた? 何で被身子にめだるを授与させる? あと、頼むからその体で儂を抱き締めようとするなよ? 男に抱かれても何も嬉しくないからの? そういうのは被身子に……待て、おい待て。そういう事か? 被身子よ、そういう事か?
「轟少年。準優勝おめでとう。君の個性は強力だが、半歩誤れば取り返しが付かなくなる。その点は胸にしっかりと留めて、来年こそは一位になろう。君なら出来る」
「はい。ありがとうございます」
「はい、銀メダルなのです」
「……どうも」
迫ってくる。悪どい笑みを絶やさぬ被身子が、徐々にこちらに近付いてくる。おおるまいと、儂は逃げるから後は貴様が何とかしろっ! よし逃げる、直ぐ逃げるっ!
おいっ、肩を掴むな! 離せっ! これはせくはらじゃっ! 貴様っ、教師が人前で
「廻道少女。優勝おめでとう。凄まじい活躍ばかりだったな。決勝戦は残念な決着になってしまったが……一位は一位。誇るべきだ。
それで。君は、どんなヒーローを目指すのかな?」
「知らんっ。
「HAHAHA! その前にメダル授与だ、渡我少女!」
被身子が、来た。あ、もう無理じゃ。逃げられん。だって今、頬に手を添えられた。然り気無く腰に手を回された。抱き寄せられた。顔が上に向かされた。おい、迫るな。そんな笑顔で近付くな。頼むから、時と場合と言うものを考え―――。
「んふふっ。今日の円花ちゃん、カッコよくて、カァイくて……ちょっと夜まで我慢出来そうにないのです。
だからぁ、私の許嫁を……ここで自慢させてくださいね♡」
◆
酷 い 目 に 遭 っ た 。
何でじゃ。何で表彰台の上で被身子に唇を奪われなければならんかったのじゃ。あやつ、舌まで絡めて来おって。然り気無く耳まで撫でおってっ。股に膝を擦り付けおってっ!
するなとは言わん! したければすれば良い! じゃがな、じゃがなぁ……っ!
流石に人前では駄目じゃろっ! 後で聞いた話によると、全国放送されてたんじゃぞっ!? そりゃあ慌てて大人達が止めに来るわっ!! と言うか、止めに来るのが遅いわ教師共!!!
そんなこんなで。表彰式が被身子の暴走で滅茶苦茶になった後。儂はくらすめえと達と共に教室で連絡事項を聞いておる。教壇に立つ相澤先生の顔が見れん。じゃって、明らかに怒っておるし……。いや、そもそもじゃ。何で儂が怒られる? おい、悪いのは被身子じゃろっ。
「お疲れっつうことで、明日明後日は休校だ。廻道、お前渡我の手綱はしっかり握っておけ。許嫁だろ。次は無いからな」
「何で儂が怒られるんじゃっ。被身子を怒れ被身子をっ!」
思い出したら、顔が熱くなってきた。帰りたい。穴があったら入りたい。これからどんな顔で教室に居れば良いんじゃ。おい貴様等、全員して生暖かい目で儂を見るな。舎弟、笑うな。峰田、気色悪い気配を出すな。相澤、儂を睨むんじゃないっ。
「渡我なら今、職員室で根津校長とミッドナイトさんが説教中だ。公序良俗について、一から叩き込んでる。今後反省の様子が見られなければ、特待生剥奪だ」
……それは、良くないの。良くない、
しかし、やらねば。流石に特待生剥奪は駄目じゃ。あやつは出来る限り親に頼らないで居たいから、頑張って雄英の特待生になったんじゃ。今なお、成績を維持し特待生で居続けている。その為にどれだけ努力しているかを、儂は知っている。いかん、いかんぞ……。どうにかしなければ……っ。
「……休み明け、プロからの指名等をまとめて公表する。ドキドキしながらしっかり休んでおけ」
ぷろからの指名? ……あぁ。確か雄英体育祭は、
……そうか。ぷろも目撃したのか、あれ……。これ、儂に指名は来ない気がするぞ? いやまぁ、指名などに興味は無いが。儂は呪術師を世間からのお咎めなくやる為に、英雄免許を取りたいだけじゃからな。
こうして、雄英体育祭は幕を閉じた。
この後、儂はくらすめえと達からの打ち上げの誘いを断り、寮に帰って被身子と話し合うことにした。
流石にの、特待生剥奪は良くない。あやつを縛り付けるつもりは無いんじゃが、今回ばかりは心を鬼にして叱らなければ。言う事を聞かないようなら……何か手を打たなければ。打てるのか?
……無理じゃないか? じゃって、被身子じゃぞ? いや、やらねば。いやしかし……しかし……っ!
ここは許嫁として、何とかしなければ……っ!
またトガちゃんがしでかしたところで、雄英体育祭は終わりとなります。円花、カメラに映りながらベロチューされるの巻。
それはそれとして、次回はイチャイチャの予定です。えっちな方更新したい感じもあるんで、実質事前シーンになるかもです。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ