待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
雄英体育祭が終わった後、儂はひとまず被身子を叱ることにした。流石に公衆の面前であんな真似をしたのは、良くないからの。叱るつもりは別に無かったんじゃが、特待生剥奪が懸かってるとなると話が変わってくる。職員室で長い説教をされた被身子に、更に説教をするのは気が引けたが……今回ばかりは心を鬼にするしかない。
なので儂は、人前で
じゃから、その代わり。人前でなければ、つまり寮の中でならば、いつ何時でも好きにして良いと伝えた。飽くまで良識の範囲の中で、じゃけども。外で我慢させることになるんじゃから、家の中でぐらいは好きにさせてやりたい。そう思うのは間違いではない筈じゃ。
……それに、儂も……、したくないわけじゃ……ない。……からの。いかん、顔が熱い。何でじゃ。
うおっほん。
で、じゃ。教師や儂から叱られた被身子を、今夜は甘やかさそうと思う。ここで甘やかすのは良くないと思うんじゃけど、しっかり反省しているし……何より儂がしたい。じゃって、今日は色々と不満じゃったし。体育祭は楽しい部分もあったが、やはり物足りない部分があったのも事実で。本気を出し切れぬのは、やはり不満が募る。
我ながらどうかと思うが、要するに欲求不満じゃから早いところ解消しておきたい。被身子だって、したそうにしているし……。反省している手前、いつものように触れて来ないことが……正直不満じゃ。
叱り飛ばしたのは、儂……じゃけども。やはりここで甘やかすのは、甘いか? でもなぁ……。
現在。夜の十一時を越え、そろそろ日付が変わる夜更け。被身子はそろそろ勉強を止めて、布団に入ろうとするじゃろう。じゃからその前に、色々と準備しようと思っての。被身子が勉強に集中し始めた頃を見計らって、儂は
鏡に映る儂は、今。べびいどおる……とか言う何か透けている下着を着ている。いつぞやに被身子が買って来て、儂が着用を拒否したやつじゃ。何か、こう……あの時は着たくなくて。その時、被身子が非常に残念そうな顔をしていたのぅ。そんなに着て欲しかったのか? こんな、ひらひらして透けている下着を……?
分からん。やはり下着は分からん。でもこれで被身子が喜ぶなら……儂は……。
……、顔が熱い。鏡に映った顔が真っ赤になっておる。こんな格好で、被身子の前に立つのか?
こんな格好で、抱かれに……行く……のか?
何か、何かとんでもない間違いを犯してしまっているような気がするのぅ。被身子は、喜んでくれるじゃろうか。拒否されたら、どうしよう……。いや、拒否なんてされぬとは思うが、今夜の被身子は反省中じゃし。余計に我慢させてしまうのでは?
ううむ……。やはり止めにする、か? 今晩ぐらいは儂も我慢して……。いやしかし、今宵の被身子は気が沈んでいて。普段なら「やってしまった事は仕方ないのです。次から気を付けます!」とか開き直るくせに、今回はそうじゃなくて……。
それが、堪らなく嫌じゃ。腹の底から不満じゃ。もう反省したんじゃから、いつも通りにして居て欲しい。明日から外では気を付けてくれれば、それだけで良いのに。
ええいっ。行ってしまえっ。この格好のまま、戻ってしまえ! あれこれ悩んで、変に照れている場合ではないっ。男は黙って抱きに行けっ。いや、儂の体は女じゃけどもっ。性自認は未だ男じゃし!
……誰に言い訳しとるんじゃ儂は。分からなくなってきた。冷静さを失っているような気がする。いや、ここで冷静になっては駄目じゃ。じゃって今日は、あまり被身子の顔が直視出来ぬ。顔を見ようとすると、何でか恥ずかしくなる。微笑みかけられると、心臓が喧しいんじゃ。表彰台でされた時だって、物凄く恥ずかしくて。最後はつい、突き飛ばしてしまって。あんな事、別にされ慣れてる筈なのに。嫌じゃないのに。
寝室に入るための
部屋の電灯は……まだ点いているの。寝ては無い、筈じゃ。
準備はしてある。後は、中に入って話し掛けるだけ。だけ、なのに……。
「……っ」
何を、照れておる? 緊張して、固まっている? さっさと開けば良かろう? 勢いのまま、抱いて貰えば良かろう??
何で、今日はこんなに恥ずかしいんじゃ。直ぐに顔が熱くなって、赤くなって、心臓が喧しくて。変に喉は渇くし、手のひらから汗は出てくるし。どうにかしておる。今日の儂は、まっこと変になっておる。
……。……、やはり……止め……よう。恥ずかしい。こんな格好を見せても、きっと被身子は喜ばんじゃろ。うむ、止めよう。止めておこう。脱衣所に戻って寝間着を着直して、今宵はもう何もせずに寝て……。
「円花ちゃん?」
「っっっ!!?」
逃げようとしたら、襖が開いた。見られた。こんな格好を、被身子に。いかん、恥ずかしい。顔どころか全身熱い。血が沸騰しているような気さえする。
「……その格好……」
「い、いや、そのっ、これはっ。べ、別に着たからどうこうってわけじゃなくてじゃなっ!? じゃって被身子、元気無いし、これ着たら元気になるかなって、いやそうではないっ!
と、とにかく! 何でも、何でもないんじゃからなっっ!?」
いや、おい。何でこんなに慌てとるんじゃ儂は。おかしい。今日はまっことおかしい。もう、訳が分からん。逃げたい。何処かに逃げてしまいたい。
もう嫌じゃ。被身子の前におれん。今日は居間で寝よう。そうしよう。
「円花ちゃん、待って」
「っっ」
立ち去ろうとすると、後ろから抱き留められた。思いっきり、力強く。嬉しく思う。やっと、しっかり抱き締めてくれた。体育祭が終わってから、全然こうしてくれなくて。それが、不満で不満で……。
「……私の為に、着てくれたの?」
「……ぅ、む……。わ、悪い……か?」
「ううん、嬉しい。でも、その……良い……の?」
「……良くなかったら、こんな格好しとらん」
「ほんと?」
「……嫌われちゃったかと、思ってたのです」
「は?」
「体育祭終わってから全然目を合わせてくれなくて。怒ってたし、近寄っても直ぐ離れちゃうし……。だから、その……」
「……待て。何でそうなる」
怒ってなどおらん。目を合わせないのも、距離を取ったのも、恥ずかしくて仕方なかったからじゃ。そもそも、儂が今さら被身子を嫌うなんて……あり得んじゃろうが。
「だって、やり過ぎちゃったなって。今日は本当に嬉しい事ばっかりで、舞い上がっちゃって。それで嫌われちゃったかも、って……」
「……まぁやり過ぎた部分は有ったのぅ。表彰式とかな」
「ごめんなさい」
「反省してるなら、もう良い。それに、その……逃げてたのは……恥ずかしかったからで」
「えっ」
「じゃって、今日は何だか……途中からずっと恥ずかしくて。お主を見てると、……お、落ち着かんのじゃ。何でか知らんが!」
……何を言っているんじゃ、儂は。何で赤裸々と本心を語っておる。いかん、落ち着かねば。流石にそろそろ、落ち着かなければ。また逃げたくなってきた。抱き締めて貰ってるのに、嬉しさより恥ずかしさが勝っているような気がして。
……に、逃げたい……っ。恥ずかしい……っ!
「私を見ると……恥ずかしいんですか?」
「ぅ、うむ……。じゃ、じゃから離せ。恥ずかしい……っ」
「私と居ると、……ドキドキしてる?」
「し、しとりゅ、……が?」
恥ずかしすぎて、舌噛んだ。いたい。恥ずかしい。おい、胸に手を当てるなっ。もっと恥ずかしくなるじゃろっ。
「本当に……私に恋してくれたの?」
「っっ」
さ、囁くなっ! 今は耳元で囁くなっ! そもそもそんな恥ずかしい事を聞くなっ! 母が言っておったじゃろ!? 何で今更……っ!
「……わ、悪い……か? 被身子に、恋、し……たら……」
「……っっ、もう! 今更ですよぉ……っ!」
「んむっ!? ちょっ、ひみ……っ、んん……っ!」
お、おい待てっ。急に
「んっ、ふふ……っ。今夜は、寝かさないのです……っ!」
……っ、言ったな? ほざいたな? 期待させるような事を軽々と言いおって……っ! 貴様、朝までしないと許さんからなっ!?
※この後、朝まで滅茶苦茶(ry
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ