待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
「んん……っ、ふあ……ぁっ」
欠伸が出る。どうにも寝不足じゃ。体も重い。体育祭が終わった日の晩は朝まで被身子に抱いて貰って、それはもう恥ずかしい思いをした。で、その後ろくに休む間も無く生理が来て、一日中大変じゃった。翌日になって
まぁ結局、寝る前にもう一度したんじゃけど。被身子に対して恋心を抱いてから、どうも抑えられん欲求と慣れることがない気恥ずかしさに振り回されているような気がする。それが嫌とは思わんが、もう少し落ち着きたいと思っているのも事実じゃ。
今朝じゃって、寮を出る前に軽く
……なるほどのぅ。恋をするとこんなにも自制が出来ぬものなのか。被身子が色々と我慢出来ぬのも納得じゃ。
「じゃあ、またお昼休みに」
「うむ。昼にの」
「……手、離してくれないと教室に行けないのです」
「お主が離していないだけじゃろ?」
「もう離してるのです。ほら」
……教室前。被身子との別れ際。繋いだ手を見せ付けられて、顔を赤くする羽目になった。中々被身子が手を離さぬと思っていたら、離そうとしていないのは儂じゃった。とっくにこやつは手を開いているのに、儂は思いっきり握っておったわ。いや、これは……じゃな。何でこうなっているのか儂にも分からん。変な汗が出てきた。目を合わせられん。
いかん。こんな場所で照れている場合ではない。こんな場面をくらすめえとに見られたら、どんなからかい方をされるか分からん。があるずとおくは勘弁じゃ。
「あ。おはよう廻道さん、渡我先輩。今日も仲良しだ……!」
「うむ、おはよう」
「おはようございます、お茶子ちゃん。今日もカァイイですね」
「そ、そんな事言ったらアカンよ。ほら、廻道さんが嫉妬して……」
「させたいので」
「あ、ああ〜〜……なる、ほど……?」
……何を言っとるんじゃ、こやつは。儂を嫉妬させたい? 片腹痛い。別にお主が誰と話していようが、誰をかぁいいと褒めようが、そんな程度の事で嫉妬するほど子供じゃないわ。ほれ見てみい。貴様が変な事を口走るから麗日が困っているぞ。目を泳がせて挙動不審じゃ。まったく、今朝から変な言動をしおって。仕方無い奴じゃな、儂の許嫁は。
「んふふっ。やきもちさんな円花ちゃんも、カァイイです」
「は? 妬いとらんが?」
妬いとらん妬いとらん。何で朝からくらすめえとに嫉妬せねばならんのじゃ。なぁ麗日よ、こやつに何か言ってやれ。
おい。何で儂から目を逸らす。苦笑いして、教室に逃げるな。おいこら、待たんか貴様。
「またお昼休みに。ね?」
「……うむ。また昼にの」
楽しそうに笑いおって。別に良いがな。そうやって笑っていれば良い。それはそれとして、別れ際に耳打ちをするのは止めんか。
……さて。被身子と名残惜しく別れたところで、教室に入るとするかの。先程の件について、麗日に聞いておきたい事がある。おい貴様、被身子は儂の―――。
◆
「コードネーム。ヒーロー名の考案だ」
「胸膨らむヤツきたああああああ!!」
喧しいっ。相変わらず喧しいんじゃ貴様等っ!
何でいちいち叫ぶんじゃっ。叫ばなくても良かろうっ!? 寝不足の頭に響くんじゃっ!!
分からん。
で、こおどねえむとは?
……ううむ。儂は儂じゃしな。どのように呼ばれようが、廻道円花であり加茂頼皆で在ることは変わらん。そう考えると、自らを示す名が更に増えるのは面倒じゃな。名前なぞひとつで良いが……。
それで? 何で偽名など決めなければならんのじゃ? 指名? ぷろから?
そう言えばそんな話もあったのぅ。
「例年はもっとバラけるんだが、今回は大分片寄った」
相澤が黒板を指差すと、各々の名前と指名数が表示される。どれ、儂は……三番目か。ううむ、数が多い。それだけ儂に対して、ひいろおは興味が有るらしい。で、二番目に指名が来てるのが舎弟。ひいろお、正気か? あやつに興味持つのは良いが……小僧じゃぞ? ああいや、観客として観ている分にはこやつの内面が見えんか。指名した後で後悔しなければ良いが……。
ちなみに、一番指名が来てたのは轟じゃ。
「はっ。勝った」
指名数で勝ったぐらいで喜ぶなよ。だから小僧なんじゃよ貴様は。
儂の指名が少ないのは、恐らく表彰式での事が原因じゃろうて。……思い出したらまた顔が熱くなってきた。そろそろ頭から湯気でも出るんじゃないか、これ。被身子め、やってくれおったわ。まぁ、許すが。
「この結果を踏まえ、全員職場体験に行って貰う」
「相澤先生よ。その職場体験、儂は行けなくないか?」
職場体験は構わん。構わんが、儂の場合雄英から離れられない理由が幾つかある。ひとつは
つまり儂も被身子も、基本的に学校の敷地内から出ることが出来ん。なのに、何処ぞの
「そうだな。現状お前は要警護の身。眼鏡の作成もある。だが、これを理由に職場体験を逃させるつもりも無い。
つまり……」
「つまり?」
「今回は特例として、
「マジでーーーっっ!!?」
「うっそ!? オールマイトやイレイザーに見て貰えんの!?」
「これが雄英体育祭優勝者に与えられる特典っ!?」
うるさい。いい加減叫んでくれるな、くらすめえと共。耳が痛くなるじゃろうが。しかし相澤先生や、おおるまいとの下で職場体験か……。英雄免許取得の為に、あれこれ聞いておきたい所がある。それを聞くには、ちょうど良い機会かもしれん。
「勿論お前が他の事務所に行きたいと言うなら、相応の準備が雄英にはある。どうする?」
「お主とおおるまいとの所で構わんよ。色々教えてくれると助かる」
「なら決まりだな、手配しておく。さて、それじゃあコードネームの方を決めていこう。今回は、ミッドナイト先生に見て貰う」
儂の職場体験先が決まったところで、話が戻る。
加茂は、付けなかった。結局前世で、当主を継ぐことは出来なかったからの。
じゃから、ただの頼皆で良い。まっこと、そう思うんじゃよ。
※えっちな方は執筆中ですので少々お待ち下さい。今662文字ぐらいです。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ