待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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きるすこあ。そのに

 

 

 

 

 

 きるすこあ計測訓練。個性による攻撃がどれだけ危険であるかを再認識させる為のこの訓練、儂は教える側に立つことになった。何で教える相手が轟と緑谷、そして舎弟なのかを相澤に聞きたい。何なら文句の一つぐらい言いたい気もするが、言ったところで無駄な気もしている。

 まぁ、轟と舎弟の個性については身を以て知っているので教え易くはある。じゃが問題は、緑谷じゃ。こやつの個性による攻撃を受けた事は無い。これまでの学校生活の中で見て来た限り、こやつの個性はとんでもない。儂が呪力で防御したとしても、傷を負うことは避けられないじゃろう。それだけ緑谷の持つ個性は強力じゃ。

 

 もしかすると、くらすめえとの中で最も強いかもしれん。

 

 ひとまず。最初は舎弟のきるすこあを計測するとしよう。相澤に渡されたこのすまほを操作すれば計測ろぼが動くんじゃが……はて? これは何処をどう操作すれば良いんじゃ? 分からん。まるで分からん。

 

「緑谷、これ操作出来るか? 儂、機械とか分からんのじゃけど」

「えっ。う、うん。どうすれば良い?」

「取り敢えず、舎弟から測る。ろぼを一体、動かしてくれ」

 

 現在。体育館の中では散り散りになったくらすめえと達が、各々のきるすこあを測っておる。

 

 例えば、切島。一撃でろぼの顔面を壊してしまい、早速きるすこあをひとつ獲得してしまった。ろぼの死因は頭蓋骨骨折。あやつは個性で硬くなるからのぅ。硬くなった拳で頭なんて殴ったら、力の伝わり方次第で人は死ぬ。

 例えば、麗日。ろぼを浮かせて落下させた結果、足から落とす筈のろぼは頭部から床に落ちて、死んだ。見事、きるすこあを獲得。死因は頭蓋骨骨折及び、頚椎損傷。高いところから落ちれば人は死ぬ。当然じゃな。

 例えば、芦戸。ろぼに酸を吹き掛けたら、顔面が重度の化学熱傷を起こし、死亡。酸を浴びたら、程度にもよるが人は死ぬのぅ。

 例えば、青山。臍から出た光線はろぼの胴体を貫きはしなかったが、火傷と衝撃で心停止が起きた。あの光線、眩しい上に危ないの……。知っては居たが、あんなものが臍から出るのか……。

 

 どうやらこの計測ろぼ、割りと簡単に死んでしまうように設計されているらしい。くらすめえとの殆どが、きるすこあを獲得してしまっている。現状ろぼに攻撃を加えてきるすこあを持っていないのは、葉隠・峰田・口田・梅雨くらいのものか。

 

「出来たよ、廻道さん。一体で良いんだよね?」

「助かる。おい舎弟、貴様からやってみろ」

「あ゛あ゛っ!? 俺に命令してんじゃ、ねえっ!!」

 何で怒るんじゃ。おい、力任せに爆破するな。おいおい、死んだわ。ろぼが。

 ……貴様、この訓練の趣旨が分かっておるのか? 殺さんようにする為の訓練じゃぞ? 何で頭を粉々に砕いとるんじゃ。さては、阿呆か?

 

「何だこれっ! 脆過ぎんだろっっ!! おいクソナード! もう一体出せや!!」

 

 思いっきり爆発しておいて、脆過ぎるも何も無いと思うが……。それに、次は貴様の番では無いが?

 

「次、轟」

「ああ」

 

 緑谷の操作で近付いてきた計測ろぼに向けて、轟は氷を出した。室内と言うこともあり、大規模には出しておらん。それでも、ろぼは足元から凍り付く。結果は……何とか生きているらしい。が、少し時間が立つと表面がひび割れて重傷となった。氷漬けじゃものなぁ。そうなってもおかしくはない。

 

 で。舎弟、轟と続いたら最後の一人は緑谷じゃ。

 

「よし緑谷、殴ってみろ」

「うん。でも廻道さん、その……どっちで?」

「どちらでも構わんと思うが、個性にしておけ」

「分かった。じゃあ、個性で……」

 

 緑谷は、既に呪力を得ている。まだ個性の中にある呪力を僅かに引き出すことしか出来ぬが、そのうち自らの呪力も扱えるようになるじゃろう。じゃが今回は、個性の殺傷能力を知る為の訓練じゃからな。使うとするなら、個性の方が良いじゃろう。

 

「イメージ……、電子レンジの……っ、爆発……しないっ!」

 

 右拳が、ろぼの顔面を捉える。個性による身体強化から繰り出されるその一撃はろぼを少しだけ吹き飛ばし……辛うじて、殺してはいないようじゃ。ただ、重傷判定になっておる。

 しかし、電子れんじが爆発しない……とは? そんな事を考えながら殴り掛からなければならないとは、まだまだ個性の扱いが出来んようじゃのぅ。

 

「……全員一度は試したか。集合!」

 

 相澤先生の号令が掛かった。二回目の挑戦に挑もうとしていた者も、ろぼの耐久力に議論していた者も、ろぼの脆さに驚愕していた者も、一斉に担任の下へと集合する。勿論、儂も。素直に従っておかないと、また髪の毛が逆立つからの。こやつを怒らせると、下手したら除籍じゃし。

 

「全員一度試して分かったと思うが、人は簡単に死ぬ。お前達が加減しているつもりでも、殺すつもりはなくとも、殺してしまう時もある。

 この計測ロボは受けたダメージや、それによって出来る傷の度合いを詳細なデータとして出してくれるものだ。今度は殺害しないよう、各々細心の注意を払い、計測を続けろ。良いな?」

「はいっっ!!!」

 

 そんなこんなで、授業は続く。このあと儂は轟や舎弟に助言をしつつ、自分もきるすこあ計測を行った。殺さないように手加減する事は誰よりも出来ると自負しておるが、それでも重傷を負わせてしまうことが殆どじゃった。知っては居たが、穿血や苅祓では加減していたとしても当たり所が悪ければ人は死ぬ。

 殺さないようにする為には更なる手加減を加えるか、そもそも赤縛を主に使うべきじゃの。悪党を捕まえる時には、あまり攻撃的な術式操作は行うべきではない。それも分かっていた事じゃが、こうして改めて計測してみると……少し面倒に思えてしまう。しかし、この訓練で得られるものは身に付けて置かなければな。今生で人を殺すつもりは、あまり無い。

 

 が、殺すべき場面では殺すつもりじゃ。英雄(ひいろお)とて、悪党(う゛ぃらん)を手に掛けてしまう時はあるじゃろう。その場合はどのような罪に問われるのか。何が理由で有罪となり、何が理由で無罪になるのか。この辺りは、後で個人的に調べておいた方が良いかも知れぬ。法律の勉強などしたいとは思わぬが……やっておいて損は無い。分からぬ事が有ったら、素直に相澤かおおるまいと辺りに聞いてみることにしよう。

 

「だぁああっ! またくたばりやがった!! 根性足りてねえぞおいっ!!」

 

 小僧、また計測ろぼを殺しておるのか。もっと加減したらどうなんじゃ貴様。顔面に爆破なんてしたら、人が死ぬのは当たり前じゃろうに。それと、機械に根性を求めるのはどうなんじゃ?

 

「爆豪、計測ロボに根性を組み込んで貰うのはどうだ? こう、プログラムか何かで……」

「どんな発想だ!? ロボが根性持つわけねえだろ半分野郎!! 寝言は寝て死ね!!!」

「寝言は寝ないし、死なねえと思うが……」

「か、かっちゃんっ。そんな怒らなくても……」

「だあってろクソデク!! 話し掛けんじゃねえっ!!」

「もう少し爆破の威力を抑えるか、爆破する位置を遠ざけた方が良いんじゃねえか?」

「俺にアドバイスしてんじゃねええっ!!!」

 

 ……。相変わらず、とんでもない態度と発言をしておるのぅ。少し離れた所に居る砂藤や頼呂が苦笑いを浮かべておるぞ。

 どれ……。物分かりが悪い舎弟に、少しお灸を据えてやるとするか。

 

 

 

 

 

 

 ちなみに。これは訓練の終わり際で相澤先生が言っていた事なんじゃが……。

 

 轟・舎弟・緑谷・儂の四人に充てられたロボは、他の生徒達のものと比べてかなり厳しい判定がされるように細工してあったらしい。上鳴なんかも判定は厳しくされていたようじゃが、それでも儂等四人と比べたら甘いものじゃったとか。

 

 結局、今回の訓練で計測ろぼを六度も殺したのは儂一人。舎弟は辛うじて五回で済んだ。それと、この訓練を定期的に行うと通達された。舎弟は面倒くさそうにしていた。気持ちは、分からんでもない。

 

 儂もこの訓練は、あまり好きではないからのぅ。計測ろぼと向かい合っている時は、ただただ退屈じゃったし。まだ舎弟の暴言を聞いていた方が、退屈しないで済むと思ったぐらいじゃ。

 とは言え訓練は訓練。授業は授業。真面目に受けなければならない。次にこの計測訓練をやる時は、もう少し手加減しようかのぅ……。

 

 

 

 

 

 

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