待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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ぶらっでぃ。

 

 

 

 

 

 ああ、これは死んだなと儂は思う。別に呪霊に襲われたわけでも、悪党(う゛ぃらん)連合が襲撃してきたわけでもない。ただ単に、高所から落下しているだけじゃ。

 何故こうなったかと言うと、それはもう深い訳がある。いや、浅いわ。何なら僅か数秒前の出来事なのに、思い出そうとすると頭が痛いぐらいじゃ。

 まっこと残念な事なんじゃが、人間は高い所から落ちると死ぬ。流石の儂も、これには逆らえん。幾ら呪力が大量にあろうと、自然落下ばかりはどうしようもない。落下の衝撃の相殺を試みたいところじゃが、相殺出来るか大分怪しい。駄目元で試してみるか……? いやもう、諦めてしまって良い気がしないでもない。

 

 まさか今生の最期はこんな事になるとはのぅ。人生何が起こるか分からん。もしまたこの時代に生まれ変われるのなら、今度はもう絶対におおるまいとに背負われて空など飛ばん。

 

 そう。儂は数秒前……いやもう十秒前? まで、儂は掃除をしておった。ごみ袋と火ばさみを持って、雄英近隣の住宅街に奉仕活動しておったんじゃよ。小さなごみも大きなごみも拾い上げながら、ついでに雑魚呪霊を祓いながら街を清掃しておったんじゃ。そしたら、じゃな? 何処ぞから悲鳴が聞こえてきたと。で、儂の隣にはおおるまいと。こやつは平和の象徴で、街の些細な異変を決して見逃さない。悲鳴が聞こえたら、そりゃあこやつは迅速に動くじゃろうて。英雄(ひいろお)だしな。

 そんな訳で即座に事故現場、或いは事件現場に駆け付けたいおおるまいとはこう言ったんじゃ。儂に背を向けて跪きながら。

 

「廻道少女……、いや、ヨリミナ! 私の背中に!」

 

 もうそれだけで何を儂に求めているかを察したが、この時の儂は拒否するよりも先に興味が勝ったんじゃな。英雄(ひいろお)に興味は無いが、この国の英雄(ひいろお)の頂点の真の実力が見れるかも知れぬと、少しわくわくしてしまった。なので、おぶって貰った。筋肉の塊に。そしてあの筋肉大男は儂を背負うなり跳んだと。いやもう、飛んだと。

 とんでもない速度で、人に許されぬような速さで。そしたら儂の小さな体あまりの速さに耐えられず、空高い所でおおるまいとの背中から落ちてしまってのぅ。

 

 で、現在。落下中じゃ。すまん被身子、儂もう死んだわ。結婚出来なくて申し訳ない。儂より良い男を見付けて、どうか幸せになってくれ。あまり悲しむなよ。儂が居なくても、笑って生きてくれ。

 

 

「廻! 道! 少! 女ぉおおおおっっ!!?」

 

 

 おぶっ!? 落下してたら横から筋肉大男に抱き留められたわ……。脇腹、痛い……。反転術式(はんてん)を回し続ける癖があって良かったわ。お陰で痛みは直ぐに消えた。ひとまず落下死もしないで済んだ。こんな阿呆みたいな死因で、被身子を泣かせるわけにはいかんからの。

 お、地面じゃ地面。大層慌てた面のおおるまいとが、儂を抱えたまま地面を削りながら着地しおった。そして直ぐ、儂を地面に立たせた。

 

「あ、危なかった……! オジサン、口から心臓飛び出るかと思った……!」

 

 よし、貴様。歯を食い縛れ。胸に手を当てて息を乱している場合ではない。これより本気で殴り飛ばす。加減はしない。殺すつもりで殴るからな貴様っ。何なら、黒く光っても良いぞ! むしろ光れ!!

 

「たわけ!! 危うく死ぬところだったぞ!!?」

「ぐぉおっっ!!?」

 

 よし。満足した。流石の平和の象徴とて、儂が本気で殴れば吹き飛……んでおらん。

 

 ……は? 何じゃこやつ! 儂が本気で殴っても、数歩分後ろに体が下がった程度で済ませおった!! 筋肉も大概にしておけよ!!?

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に申し訳ない。しっかり掴まってくれと言い忘れてしまった」

 

 ……許さん。たまたま目についたくれえぷ屋のくれえぷで儂の機嫌を取ろうとしても、そうはいかんぞ。もぐ。この筋肉阿呆め。もぐもぐ。甘い。もぐもぐ。美味い。もぐもぐもぐ。けぷっ。美味かった。くれえぷは偉大じゃ。幸せな気分になれる。じゃからと言って、さっきの出来事を許すつもりはないがの。

 ちなみに、悲鳴の原因はひったくりだったそうじゃ。儂が背中から落っこちた事にも気付かずひったくり犯を成敗したおおるまいとは、背中が軽いことに気付き、慌てて空を見たと。そしたら儂が地面に向かって落下していたから、慌てて儂を受け止めに飛んだそうじゃ。

 

「も、もうひとつ食べる……?」

「要らん。夕飯が食べれなくなる。それよりこの人集りをなんとかせい」

 

 何処ぞの大通りに面した、くれえぷ屋の前。儂とおおるまいとの周りには、人集りが出来ておる。何でこんな人数に囲まれなければならないのか。いい加減にして欲しい。英雄(ひいろお)は人気商売でもあると授業で聞いたが、平和の象徴は人気でも一番の男らしい。どいつもこいつもおおるまいと目当て……と思っていたんじゃけど、何でか儂の方にも人が寄ってくる。おい、すまほを向けるな大人。子供、のおとを持って押し寄せてくるな。

 

 さいん? 確か名前を書くことじゃったか?

 

 ……書いてやるから、せめて並ばんか。四方八方からねだるな。一度に一人分しか書けないんじゃ。と言うか、儂よりおおるまいとに書いて貰え。儂にばかりに書かせるな。

 なに? もう全部書いた、じゃと? いつの間に……。筋肉阿呆は文字を書くのも人目に留まらぬのか。恐ろしいのぅ。

 

「HAHAHA! すっかり人気者じゃないかヨリミナ! ファンサービスもヒーローの仕事だから、しっかり励もう!」

「……ひいろおは大変じゃの。ほれ、書き終わったぞ。こんなのが良いのか?」

「うん! ありがとうブラッディ!」

「ぶらど……なんじゃって?」

 

 のおとに儂の名前を大きく書いてやると、何でか知らんが子供が喜ぶ。で、坊主。ぶらっでぃ、とは? 儂はそんな名前ではないが? 今、頼皆って書いたじゃろ。もしや漢字が読めんのか? しまった、平仮名で書いてやるべきじゃったか。

 

「学校じゃ、みんなそう呼んでるんだぜ! 血を操る個性だから、ブラッディ!」

 

 ……また変なあだ名が付けられておる。修羅や鬼の次は、ぶらっでぃ、じゃって? あだ名を付けるなとは言わんから、もう少しまともなあだ名を付けてくれんかのぅ。

 

「儂の事は頼皆と呼べ。ぶらっでぃと呼ぶのは止めんか」

「えー! ブラッディの方がかっこいいじゃん!」

「まぁまぁヨリミナ。ファンからの愛称ってのは大事だぜ? ヒーローは人気商売と言う側面もある。だから大切にしていこう!」

 

 ……貴様。他人事だと思って、いい加減な事を口走るなよ。妙に説得力があるのが腹立たしい。こやつ、こんなでも最も人気な英雄(ひいろお)じゃからな。むしろこんなだから、人気なのか? 分からん。分かりたくない。もうこの筋肉阿呆の事を知るのは止めよう。頭が痛くなってくるし、下手に関われば命が幾つ有っても足りなさそうじゃ。現に先程、危うく死にかけたからの。

 

「はぁ……。もう好きに呼べ。頼むから広めてくれるなよ……」

 

 仕方ない。諦めるとするか。儂、どうにも子供には弱いんじゃ。

 それに……変なあだ名で呼ばれるのは、今に始まった事じゃないからの。前世もそうじゃったし、今生だって小学校や中学校では修羅だの羅刹だの鬼だの言われて来た。何でどいつもこいつも、儂に変なあだ名を付けたがるんじゃか……。やはり、解せぬのぅ。

 

「で、おおるまいと。ごみ拾いはもう良いのか?」

「ああ、うん。まだ夕方まで時間が有るから続けよう」

「相分かった。ところで、袋と火ばさみが無いんじゃが? それと、この人集りはどうするつもりじゃ?」

 

 依然として、儂等二人を大勢の人間が囲っておる。ごみ拾いを再開するのは構わんが、人通りの多い場所に居るだけで儂等は注目されてしまう。じゃから、なるべく人目が少ない所に移動しておきたい。移動しておきたいんじゃけど、こうも一般人の群れに囲まれてしまうとのぅ。儂はいつまで子供の相手をしなければならないんじゃ? いい加減、さいんするのは疲れて来たぞ。

 

「こう言う時はね、ブラッディ」

 

 貴様もそのあだ名で呼ぶのか。と文句を言いたいところじゃが、大人しく次の言葉を待つことにする。話は聞いてやろうじゃないか。貴様は最も人気がある英雄(ひいろお)なんじゃから、人集りから逃れる術ぐらいは持っている筈じゃ。

 お、何じゃ手招きしおって。耳を貸せってことか? ほれ、それ以上近付かずに言ってみるが良い。

 

「実は……さっさと立ち去ってしまうのが手っ取り早い」

 

 ……それで良いのか、平和の象徴。愛好者(ふぁん)を大事にしろと言ったのは貴様じゃろうが。なのにそんな事を囁いてしまって良いのか?

 

 て、おい。待て。何で儂を脇に抱えるんじゃ。膝を曲げるな、足に力と呪力を込めるなっ。個性と呪力の併用をすっかり身に付けおって!

 

「それでは皆さん。今後とも私とブラッディを、応援よろしくねーー!!」

 

 ぬおっっ! 飛ぶな!! 儂を抱えて空を飛ぶな!! いい加減にしろよ貴様!!!

 

 

 

 

 

 

 この後。儂はおおるまいとに抱えられながらもごみ拾いに戻った。

 

 ……とは、ならなかった。

 

 おおるまいとは、街で何かが起これば直ぐにでも動いてしまうんじゃ。こやつはこの街の何処かで何かが起こる度に、儂を抱えて空を飛ぶ。で、悪党を現場到着と同時に叩きのめす。或いは、取っ捕まえる。そんな光景を何度も間近で見ることが出来る儂は、恵まれていると言って良い。

 

 しかし、しかしなぁっ。いちいち空を飛ぶのは止めんか! 常に身の危険を感じて落ち着かないんじゃ!!

 

 

 

 

 

 






ブラッディと言う愛称は急に思い浮かんだので差し込みました。

OFA(残り火)+呪力による身体強化なので、オールマイトは原作より化け物です。次の話で詳しく触れたいですね。つまり次回は説明回ってことです。多分ですけど!

三人称による補完は要りますか?

  • 欲しい
  • 要らん
  • 良いから一人称で突っ走れ
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