待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
儂は中学に入った。円扉中学校じゃ。子供に紛れて小学校に通うのは何とも言えん気分じゃった訳じゃけど、それは中学生になっても変わらない。まっこと、微妙な気分じゃ。でもまぁ、仕方ないところじゃのぅ。儂はまだ十二歳。この夏に十三歳になる。じゃからの、義務教育を受けねばならん立場じゃ。
この時代は、最低でも九年は学業に勤しまねばならん。それがこの超常時代の常識であり、
それでじゃな? 今現在、ひとつ困ったことがある。それはじゃな……。
「……教室は何処じゃ?」
入学式を終えた後。儂は厠に行きたくなっての。教室に戻る途中で厠を見付けたから列から勝手に外れて、用を足した。で、厠から出てみると廊下に人は居なかった訳じゃ。何となく来た方向とは逆に向かって歩いてみたんじゃが、はてさて……。何故か人気が無くなってしまってのぅ。何処じゃここ? 儂は今、何処をどう歩いて……?
うむ。道に迷っ……ては無いが。迷ってないぞ? しかし、何故か現在地が分からん。まっこと、分からん。お陰で入学式後に行われる、ほぉむるぅむ……に参加出来ん。これ、下手すると叱られるんじゃよなぁ。じゃってほら、教員に廻道円花は行方を暗ましたと思われても仕方なくて。つまり、入学初日から不真面目な生徒じゃと思われてしまう。それは一応、避けておきたい。いきなり不良扱いされてしまうのは、流石に駄目じゃ。将来的にそういう扱いを受けるならまだしも、入学初日に不良と見なされるのは勘弁じゃ。
「ま、まぁ……! そのうち辿り着くじゃろっ。がははは!」
……。…………。………………。
……何をしとるんじゃろうな、儂。誰も居ない廊下で胸を張って笑ってる場合ではない。いかん、いかんぞ。どうにかしなければ。何で入学初日から危機感を抱かねばならんのかっ。げ、解せぬ……! って……。
「む……?」
「っっ!?」
えぇ……? いや、えぇ……? 何じゃこやつ。何なんじゃこやつ。いや、この時代に異形型と呼ばれる人間が居ることは知っておる。小学校の頃は、熊みたいな奴とか犬みたいな奴が居たからの。でもじゃからって、鳥頭をした奴が居るとは考えんかった。うむ、鳥頭じゃな……。これは立派な鳥頭じゃ……。いや、それよりも。それよりもじゃ。おい、鳥頭。お主の側に居るその黒い何かは……式神か? 何やら不安定のように見えるが、それはもしや影を媒体にした式神では……?
……! ……もしやっ!! もしかすると、こやつ……!!
「何ダ、テメェ……! 何見テンダヨ!!」
「待て……っ! 静まれダークシャドウ! 逃げろ、闇に呑まれるぞ……!!」
お、おぉ? 喋……った? いや別に、場合によっては式神は喋るが……。いやしかし、こうも自我を顕にして急に人様に襲い掛かる式神か。さてはこやつ、術式をろくに扱えておらんな? 察するに、何かの拍子に暴走してしまったんじゃろう。
で、その暴走してしまった式神が儂に向かって突っ込んで来た。うむ、許そう。受けて立つぞ、十種影法術! 前々から、手合わせしてみたいと思ってたんじゃ! まずは小手調べと行こうかの!!
「せぇ、のおっ!」
呪力を纏い、迫る式神に向かって拳を放つ。儂の一撃は、確かに式神の面にめり込んだ。
「フギャッ!?」
「ダークシャドウ!?」
「……、は?」
は……? いや待て。おい、待て。小手調べじゃぞ? 小手調べのつもりで、程々の力で殴ったんじゃぞ?? なのに、一瞬で引き下がったじゃとっ!?
ふ、ふざけるな……! こんな程度で消えるなっ。さてはこの鳥頭、まったく術式を扱えておらんな!? 十種影法術を持っておきながら、何と情けないっ。そんなのは宝の持ち腐れじゃ……!! 貴様、いったいどういうつもりじゃ……!?
「す、すまない……。緊張でダークシャドウが不安定になって、困ってたんだ。独りになったところで暴走してしまって。……助かった、ありがとう」
「は? いや、おい……」
「これで暗黒を広げることなく、叡智の学び場に舞い戻れる」
「ぉ、おい……」
「戻らねば。暗君と成るには時期尚早……」
こ、この鳥頭……!? おいっ、式神を引っ込めて教室に戻ろうとするなっ! 何処に行こうとしてるんじゃこやつはっ!! 見せろ、もっと見せろ!! その術式を、貴様の力を魅せてみろ鳥頭!!!
―――とまぁ。これが、後に儂の友となる……常闇踏陰との出会いじゃった。訳の分からん喋り方をすることが多い、変な奴じゃ。しかも鳥頭じゃし。この時の事は当面許せそうにないが、いずれ本気で手合わせして貰おう。まさか、十種影法術と出会えるとはのっ! 早速中学に通う楽しみが出来たぞ、がははは!
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ