待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
疲れた。この二日間は、それはもう大変じゃった。保須に行くためには雄英近隣の住宅街を綺麗にしなければならなくての。ろくに休んでる暇も無かった。広大な街中を掃除して回るだけでも大変なのに、何かあればおおるまいとは儂を抱えて飛んでしまう。平和の象徴が何か事件を解決する度に人集りは出来るし、ついでに儂の事を売り込もうとするしで、心休まる暇がなかった。
奉仕活動を二日……正確には一日半で終わらせることが出来たのは、もはや奇跡みたいなものじゃ。何でこんな大変な目に遭わねばならんかったのか。これは飯田を殴っても許されるんじゃないか?
いや、儂の勝手が招いた事態なんじゃから奴に殴られる筋合いは無いかもしれんが……無性に殴りたい気分じゃのぅ。
まぁ、良い。儂の疲労はともかくとして、保須に向かえることになったんじゃ。この疲れは、目的地に辿り着くまでの間に癒すとしよう。
現在、午後四時。儂は新幹線の中におる。座席に座って、被身子に寄り掛かる形でお休み中じゃ。夕方の六時頃には保須に着くらしい。それまでに一度、電車に乗り換えなければならん。その辺りは、被身子やおおるまいとに任せるとする。儂に保須までの道程は分からん。これっぽっちも知らん。じゃから、二人に道案内して貰うとする。絶対に一人で動くなと言われたのは、解せぬところじゃけどな。
「今日の円花ちゃんは、いつもより甘えんぼなのです。カァイイねぇ、カァイイねぇ」
被身子に寄り掛かっていると、頭を撫で回される。嬉しそうに笑いおって。別に甘えたって良いじゃろうが。今の儂は疲れてるんじゃ。保須に着くまでに少しでも休んでおきたい。じゃから貴様に身を預けてのんびりしておるんじゃよ。
ううむ……。本格的に基礎体力を増やした方が良い気がするな。体育祭の時に必要性を感じて以来、結局儂は体力作りに集中することが出来なかった。日々の授業に、呪眼作成。それから被身子の相手。体を鍛えるには、単純に時間が足りないんじゃよ。別に今のままでも大きな問題は無いんじゃけども、おおるまいとに振り回されても平然としていられる程度には体力が欲しい。気がする。
「別に良いじゃろ。そうしたい気分なんじゃから」
「もぅ……。実は誘ってたりします?」
「何でそうなるんじゃっ」
おいこら、悪どい笑みを浮かべて首を擽るな。囁くのも止めろっ。それはせくはらじゃぞ! せくはらは外では禁止じゃと言ったじゃろうがっ!
まったく、こんな調子で居られたら油断ひとつも出来ん。少しでも楽をしたいと言うのに、こやつときたらっ。
「外じゃ何もしませんよぉ。そういう約束なのです」
「分かってるなら止めんか、たわけ」
「ちょっと悪戯したくって」
「貴様……」
儂が睨んでも舌を出して笑っている辺り、さては何も反省しておらんな? そろそろいい加減にしておけよ?
いつまでもいつまでも、儂が甘やかすと思ったら大間違いじゃからなっ。いつかお灸を据えてやるっ。
まっこと! 仕方のない許嫁じゃよ貴様は!
「ところで、寝泊まりはオールマイトの事務所なんですよね?」
「そうじゃな。六本木……とか言うところじゃったか? あやつが言うには、宿泊施設は充実してるらしいが……」
急に話題を逸らされた気がしないでもないが、せくはらは止まったので良しとする。出来ればその物欲しそうな目も止めて欲しいところじゃが、こればっかりは仕方ない。後で人目を盗んで、血を吸わせてやらねば。
なにせ、明日の早朝になったら儂と被身子は雄英に戻らなければならないんじゃ。つまり夜更かししてる時間はあまり無くてのぅ。
いつものようにしておったら、間違いなく寝不足になってしまう。まぁこやつに限っては朝が早くとも新幹線で寝れば良いんじゃが、儂がそうも行かなくてな。出来れば睡眠はしっかりしておきたい。向こう数日、或いは職場体験が終わるまで儂は忙しいんじゃ。
「でも、ヒーローが使う宿泊施設ですよね? しかもオールマイトは最近、事務所は閉じっぱなしって話ですけど……」
「……」
そう言われると、不安になるのぅ。儂等、まともな寝床にありつけるのか? いや、平和の象徴ともあろう
大丈夫、じゃよな……っ!?
◆
今晩の寝床に一抹の不安を覚えつつ、儂と被身子はおおるまいとに連れられて保須にやって来た。目的地は、飯田が職場体験先に選んだ
もう日が沈んでおるのに外に居るのは、少し不思議な気分じゃのぅ。最近は警護されながらの寮生活を送っているから、午後五時以降に出掛けることが無い。それまでには寮に戻るわけじゃしな。休日だって、外出自粛中故に外に出ることが無いんじゃ。
……あれ? もしや儂も被身子も、実は引きこもりとか言うやつなのでは……?
気づいてはいけない事に気付いてしまった気がする。寮で過ごすのも構わんが、たまには外に出るべきじゃな。次の休みの日は、被身子と何処かに出掛けても良いかもしれん。最後に
「で、おおるまいとよ。飯田は何処じゃ?」
被身子と手を繋いだまま見知らぬ街中を歩いている儂は、右隣のおおるまいとを見上げた。しかしこやつ、背が高いのぅ。筋肉が膨らみ過ぎて、威圧感が凄い。目を合わせて会話するのも大変じゃ。筋肉を萎ませることが出来るんじゃから、ついでに身長も縮めてくれんか? いやまぁ、事情も知らぬ人前で縮む事が出来ぬのは知ってはおるが。
「もうそろそろ事務所に着くよ。確かこの辺りに……」
「意外と駅から遠かったのです」
「そうじゃな。大分歩かされた」
「た、タクシーの方が良かった……?」
実は既に、それなりの距離を歩かされておる。途中で電車に乗り換えたこともあって、日はすっかり暮れておる。駅から直ぐ近くとおおるまいとは言っておったが、どう考えてもこやつの基準で直ぐ近くじゃったわ。しっかり位置を聞いておけば良かったのぅ。荷物を持って歩くには、少し遠い道程だった気がする。
とは言え、そろそろ着くじゃろ。なぁに、朝まで掛からなければ誤差みたいなもんじゃ。今回は、そう思うことにしよう。街中を見回っている
なんて、思っていた時じゃった。耳を
「……は?」
平和だと思っていた街中に、爆発音。これは穏やかではないのぅ。おおるまいとは……もうおらんわ。空を見れば、遠ざかっていく背中が見える。仕方ない、あやつの事は一旦放っておこう。平和の象徴の心配など、するだけ無駄じゃ。それより、被身子の安全の方が先じゃ。飯田の事も気になる。この状況ですていんとやらが動いてるなら、それは厄介と言って良い。
騒動の中心は……それなりに離れたところか。まさか
「ちっ。面倒じゃな」
ああ、面倒な事になった。まずは被身子じゃ。こやつを騒動の中心から離れた場所に連れていく。巻き込むわけにはいかんからの。
「一旦この場から離れるぞ。儂の側に居ろ、何かあったら……儂を置いて逃げろ」
被身子を避難させつつ、飯田を探さなければ。ここからは間違えるなよ、廻道円花。そして頼皆。手の届く子供は、全員守れ。決して命を見捨てるな。儂の主義に反するような真似は、儂が許さん。
……何でよりにもよって、儂が保須に来た途端に何か起こるんじゃっ。まっこと、面倒この上無いっ!
保須騒動の幕開けです。三人称で視点分散するか悩ましいころですが……まぁ頑張って円花視点で進めていこうかなと。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ