待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
持ってきた荷物は赤縛で、目についた電柱に縛り付けた。勿論被身子の分も。これから動き回るのであれば、身は軽い方が良い。荷物は後で回収すれば良い。この場所を忘れずに居られるかは知らんが、とにかく今はこれで良い。周囲は既に騒然としておる。爆発音に釣られて外に出て来た一般人や、事態を察知した
まず儂が優先しなければならないのは、被身子の安全の確保。次点で飯田の捜索。まずはこやつを安全な所に連れていって、その後で飯田を探すしかない。おおるまいとが飛んでいった方向がこの騒動の中心だと仮定して、その周囲をしらみ潰しに探すしかない。
とにかく、立ち止まってる場合ではない。直ぐに動かねば。
「ま、円花ちゃん、ちょっと待って……!」
「何じゃ? 今はお主の避難が優先じゃ。話は動きながらしてくれ」
遠く離れた所から、何度も爆発音が聞こえる。察するに事態は悪化し続けているようじゃ。ならばこの場所も、いつまでも安全とは言えん。いずれ
じゃから、儂は被身子の手を引いたまま歩みを止めない。ひとまずは真っ直ぐ、爆発音から遠ざかるように進み続ける。おおるまいとが飛んでいったのに、まだ爆発音が聞こえるんじゃ。今回の騒動は、どうやらあやつでも手こずる程度に大きなものらしい。でなければ、とっくに街は平和に戻っている。
「だから、待って……! 飯田くんはどうするんですか!?」
「まずはお主が先じゃ。安全な場所まで避難して、その後で探す」
「一人で!? 駄目ですっ、円花ちゃん迷子になるからっ」
喧しい。こんな時でも方向音痴扱いは止さんか。
「あと、手が痛いのですっ」
「む、それはすまん」
言われて気付いた。思いっきり被身子の手を握っておったわ。とっくに呪力強化しておるから、こやつが痛がったのはそのせいじゃろう。
儂の普段の握力は、平均値も無い程度には弱い。が、呪力強化してる今は話が変わってくる。力を緩めなければならんな。緩めるだけで、ここでこやつと話し合うつもりは無いが。そんな余裕は無いと言っても良い。
「飯田くんを探すなら、私も手伝います。だから、一人で動いちゃ駄目っ」
腕を引かれる。それも思いっきり。じゃから、歩みを止めざるを得なかった。別に引き摺ってでも歩けるが、被身子が儂の言う事を聞こうとしない。困ったのぅ。こんな時にわがままを言われても、素直には頷くことは出来ぬ。
「……駄目じゃ。危険じゃから、お主は避難してくれ」
「嫌ですっ。円花ちゃんが迷子になる方が危ないですし!」
「頼むから避難してくれ。被身子を危険な目に遭わせるのは、儂の望むところじゃない」
人目に付きやすい表通りで、こんな言い争いをしてる場合じゃない。いつ悪党が儂等の側に来てもおかしくない状況なんじゃ。なのに被身子と来たら、こんな時でも言うことを聞かん。いや……こんな時だから聞きたくないのか。不安と心配が混ざった顔をしおって。
こうなったら、力ずくで連れていくか? そちらの方が手っ取り早い。呪力強化していれば、被身子を抱えて走るなんて朝飯前じゃ。
とにかく。今は被身子の避難が最優先。保須に連れて来たのが儂である以上、怪我ひとつ負わせることは出来ん。
仕方ない。ここは無理矢理にでも避難させよう。機嫌を損ねることになってしまうが、まだそちらの方が良いと思えるからの。
どれ、強引に抱えて……。
「えっ!? か、廻道さんっ!?」
被身子を抱える為に、被身子の体に腕を伸ばしたと同時。聞き覚えのある声が近くの路地裏から聞こえた。
思わず声がした方向を見ると、路地裏を駆けていたであろう緑谷が儂等の前に飛び出してきた。体から淡い光を放ちながら、それなりの速度で。それと、前に見た時とは違うこすちゅうむ姿をして。
「緑谷? 何でお主がここに居る?」
「えっ、いや僕は新幹線に乗ってたら脳みそおっぴろげたヴィランに襲われて。その時はグラン・トリノが追い払ってくれたし待機命令も出たんだけど、街の状況を見たら動かずには居られなくって……!」
お、おう。慌ててるのは分かったから、一息に話すな。貴様の都合は何となく理解出来たから、少し落ち着いて欲しい。距離が近いんじゃ。ほれ見ろっ、こんな時でも被身子がむっとしたじゃろ! と言うか、脳みそおっぴろげた悪党って何じゃっ!
「脳みそおっぴろげたヴィランが街で暴れてるってことなのです? それより緑谷くん、飯田くんを見ませんでしたか?」
「飯田くんは僕も探してるところでっ。こんな時にステインを探してなきゃ良いけど、保須に居るってことは多分……っ。
あの脳みそヴィランについては分からないけど、保須はこんな状況だから、もしこれがステインの策略だとしたら……!」
なるほど。緑谷の推測が正しいなら、間違いなく飯田はすていんとやらを探しに動いているじゃろう。この事態が、後どれだけの時間で解決されるのか分からん。
ならば、急いだろうが良いじゃろう。
「おいっ、何でお前等が
「今度は何じゃっ!」
何で今度は上の方から相澤の声が聞こえるんじゃっ。と思ったら、今度は目の前に相澤が着地した。遅れて解けた捕縛布が落ちてくる。
なるほどこやつ、建物の上を捕縛布で飛び回っていたな? 器用な真似をしよって……。いや、そんな事はどうでも良いんじゃ。
「相澤せん……っ、イレイザー・ヘッド! 僕は渋谷に向かう途中でこの騒動に出会して……!」
「私と円花ちゃんは飯田くんを止めに来ました! オールマイトも来てるのです!」
「……何でオールマイトが……。いや、まぁ良い。お前達はこのまま避難しろ」
「待て相澤、飯田はどうした?」
「爆発音がした時点で、マニュアルさんの事務所に戻した。お前達も行け。戦闘は避けろよ、特に頼皆」
「相分かった」
ひとまず、飯田は無事。……とは思えんな。儂なら相澤の指示は無視する。むしろ、目を付ける大人が居なくなった絶好の機会じゃ。まして、もしかすると仇が彷徨いているかもしれないこの状況。大人しく避難しているなど、まず無理じゃ。
飯田は、動く。早く合流しなければなるまい。既に悪党と遭遇してしまっている可能性は決して低くない。甘く見積もっても、半々。急がねばな。
「相澤、事務所の位置は?」
「向こうだ。このまま道なりに進めば見える」
「助かる。取り敢えず、儂はこやつ等と事務所に向かう」
返事は待たない。二人の手を引いて、儂は指差された方角に向かって真っ直ぐ歩き出す。何をするにしても、今は相澤の目から離れる。こうして避難を優先している姿を見せれば、直ぐにあやつは目を離してくれるじゃろう。そうでなくては困る。
事務所に向かって歩いていると、直ぐ後ろで相澤が動いた気配を感じた。念の為にもう数歩だけ進んで、振り返る。もうあやつの姿は先程の場所には無い。上を見上げれば、捕縛布と電柱を頼りに飛んでおる。急いでいる辺り、後ろを振り向くことは無いと思いたい。
「緑谷、飯田を探すぞ。間違いなく避難などしておらん。しておったとしても、いつ抜け出すか分からん。相澤の言うことは無視しろ」
「……うん。僕もそう思う。それで、多分なんだけど……もしステインが動いてるなら、ヒーロー事務所周辺の路地裏が怪しいかもしれない」
「その辺りの判断は任せる。儂は被身子を事務所に送ってから動く。もし先に見付けたら、まず儂に連絡しろ。良いな?」
「分かったっ! 渡我先輩っ、ヨリミナに付いてれば大丈夫です! でも気を付けて!」
緑谷は駆け出した。個性を使って、路地裏に向かって進んでいく。知らぬ内に、少し個性が使えるようになっておるのぅ。じゃがまだ、少しだけじゃ。悪党に打ち勝つことは出来んかも知れんが、飯田を連れて逃げるぐらいなら出来るかもしれん。
……よし。被身子を避難させなければ。あと、轟に連絡も。この騒動じゃ、多分あやつも動いておる。儂と緑谷と、轟。三人で動けば、直ぐに飯田は見つかるじゃろ。そうであって欲しい。
頼むから、相澤の言う通りにしていてくれ。こんな時に死なれたら、夢見が悪くなるじゃろっ。
およそ原作通りに保須が襲撃されてます。オールマイトとイレイザーが来てる上にエンデヴァーも居るのでヒーロー側は戦力過多。でもオールマイトが動いていながらまだ騒動が続いているので……つまり……。まぁ、次回をお楽しみにして頂けたらなと。
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