待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
急がねば。気を急いても仕方ないのは分かっておるが、出来る限り迅速に動かなければならない。街は未だに騒然としておる。遠くを見れば、黒い煙が幾つも上がっている。誰が何の目的で、保須で暴れているのかは知らん。知らんが、じゃからって動かずに居る理由は無い。
緑谷と別れた儂と被身子は、まにゅあるとか言う
建物の外で周囲を見渡すと、やはりそこら中に呪霊の姿が見える。不幸中の幸いと言って良いのか、人間を襲う素振りは見せない。ただ……この状況を眺めているように見える。
呪霊が、傍観? この騒動の中で?
……有り得ん。可能性は無くもないが、どうも引っ掛かる。つまりこの街に居る呪霊は、黒沐死と同じ可能性がある。誰かの支配下に置かれていると言うことじゃ。
ならば、いつ暴れ出すか分からん。支配者の一言で、見境無く街の人々を襲うじゃろう。となれば……。
「ちっ。今は面倒じゃの」
呪霊を祓いながら、飯田を探すしかないのぅ。こんな時でも呪霊を祓って回らなければならないのは、手間でしかない。しかし、無視は出来ぬ。ひとまず、そこらに居る呪霊に向かって血を飛ばしながら騒動の中心へと向かっていく。黒煙が幾つも上がっている方じゃ。騒動の中心に近いところに飯田が居るかは分からぬが、呪霊を祓いつつ向かうしかあるまい。この辺りの路地裏は、緑谷が探してくれてる筈じゃ。同じ所を探す理由は無いから、儂は別の場所を見て回らねば。
その前に、轟に連絡を。どれ、すまほを取り
「ぬおっ!?」
出そうとしたところで、空からおおるまいとが降ってきた。驚いて変な声が出てしまった。あやつは、二転三転と地面を転がっておる。直ぐに立ち上がったから大きな怪我は無いように見えるが、咳き込んでいるな。
「おい、どうしたっ!」
何で平和の象徴が、ここまで吹き飛ばされた? ここは騒動の中心からは遠い位置じゃろ。なのに、こんな場所までおおるまいとが吹き飛ばされたようじゃ。
おおるまいとを、吹き飛ばす程の
「げほっ。いやなに、大丈夫さ。ただ少し、厄介な相手が居てね」
「……あれか?」
暗い空を見ると、何かが建物の屋根を踏み台にしつつこちらに迫っている。狙いはおおるまいとのように、見えなくもない。
しかしまぁ、奇っ怪な姿の悪党が居たものじゃな。緑谷が言っていた、脳みそをおっぴろげた
あの悪党は、確かに呪力を纏っておる。見間違いじゃない。あれは呪力じゃ。
「ごほっ。すまないが、周囲の避難誘導を任せる。ここは私が」
「呪力持ちじゃぞ。あれは呪詛師の類いじゃ。なら、儂も」
「少し手こずってるが、何! 大丈夫だ! 私は、まだまだ平和の象徴!」
「……」
どこが大丈夫なんじゃ貴様。咳き込みながら吐血している辺り、相応に手強い相手じゃろあれは。
おおるまいとが手こずる悪党。それも呪詛師。血が騒ぐが……今回もお預けになる。飯田を探す方が先じゃ。あやつの無事を確認した後、まだ倒されていないようならその時は。
……いや待て。ここであの悪党とおおるまいとが戦えば、少なからず周囲に被害が出る。それに被身子が巻き込まれることだけは避けねばならん。となると……おおるまいとと協力して、この脳みそ
じゃから、おおるまいとの言う通りにしなければならぬのか。それは、つまらん。まっことつまらんっ。
……などと考えていると、おおるまいとを吹き飛ばせる程の悪党が儂等の前に着地した。たったそれだけのことで、固い地面が砕けておる。
くそっ。もうあれこれ考えている暇は無いか。何で満足行くまで呪い合えないんじゃ。いい加減、何も気にせず大暴れしたいんじゃが?
……ああもうっ! 苛つく!!
「赤縛っ!!」
つまらん。つまらんつまらん、つまらんっ!
頭に来る!
……とにかく! 避難が先じゃっ!! 脳みそをおっぴろげた真っ黒悪党は縛っておいたから!! あとは貴様でどうにかしろ!!
◆
「おい!
相手が呪詛師である以上、おおるまいとも呪力を使う。本気のあやつが個性を呪力強化した上で振り回したら、周囲がどうなるかも分からん。多少離れたぐらいじゃ、巻き込まれる可能性もある。
「えっ、オールマイトが来てるのか……? だったら大丈夫だろ! この騒動も直ぐに収まって……」
「そのおおるまいとが手こずってると儂は言ったんじゃ阿呆! 死にたくないなら楽観視するな! 今すぐここから逃げろ、たわけ!!」
つい、楽観的に事を捉えている誰かを怒鳴り散らしてしまう。半分八つ当たりになっている気がするが、それでも怒鳴ったことは間違いでは無かったらしい。事務所の中は一瞬静まり返り、事務員が急いで避難誘導を始めようとする。
が。儂が怒鳴ってしまった誰とも知らぬ一般人は、怪訝そうじゃ。もう良い。勝手に疑って勝手に死んでくれ。貴様、大人じゃろ。逃げ遅れて死のうが、儂の知ったことじゃない。
「被身子! 来いっ!」
「はいっ!」
よし。取り敢えず被身子は連れ出せる。後の事は知らん。此処も危険であることは伝えた。後は大人共で勝手にしたら良い。儂も勝手に動く。
まずはこの事務所から離れる。あの脳みそ術師から、とにかく距離を取らなければ。儂一人じゃったら逃げる必要は無いが、被身子が居る以上はそうも言ってられん。
外に出ると、地面が揺れた。少し離れたところを見ると、おおるまいとが悪党と真正面から殴り合っておる。ここも直ぐ、危なくなるじゃろう。
「円花ちゃん、行きましょうっ」
遅れて事務所から出て来た被身子に、手を掴まれた。一刻も早く此処から避難した方が良いのは、分かってる。そしていつ、あの脳みそが一般人に狙いを変えるかも分からない。今はおおるまいとと戦うことに集中しているようじゃが、少しでも不利になれば
追い詰められた悪党がすることは、単純なものだからの。目についた人間を人質にするぐらいのことは平然とするじゃろう。そうでなくても、被害規模は広がる筈。なるべく急いで、此処から離れなければな。
「円花ちゃんっ! これって、飯田くんを見付けたってことですよね!?」
歩き始めるなり、視界に被身子のすまほが割り込んだ。画面には、何かの地図。今こやつが言ったように、どうやら飯田の居場所が分かったらしい。
何で緑谷が被身子の連絡先を知っているのか問い質すのは後にするとして、とにかく助かった。飯田さえ見付けてしまえば後はどうとでもなる。どうとでも出来る。
「場所は?」
「こっち!」
「待て、お主は避難を……。いや、もう良い。儂から離れるなよ」
あんな悪党が暴れ回っている時点で、この街には安全な場所など無いじゃろう。ならば、もう避難などさせるだけ無駄かもしれん。こうなってしまったら、儂が直接守るしかない。
「はいっ!」
何じゃ貴様、急に嬉しそうに笑いおって。状況は少しも改善されていないし、むしろ危険が大きくなってるんじゃぞ。こんな時でも儂と一緒が良いなどと思っているのか? まっこと、仕方ない奴じゃなお主は。
などと思いながら再び歩き始めた、その時じゃった。
「おいおい、どっか行くのか? 折角だから、オールマイトが殺されるところを見ていけよ」
突如として現れた黒い靄の向こう側から、見覚えのある手小僧が現れた。
という訳で脳無に呪力があります。まぁ黒霧が呪力持ってるってことが伏線でしたね。いや伏せて無いので前置きでしたが。
これにより敵連合の戦力はヴィラン+脳無(呪力持ち)+呪霊です。AFOがその気になった時点で日本の終わり。まだ呪霊だけなら呪具に呪眼でどうにか対抗出来ますが、そこに脳無まで加わるともう大惨事。脳無の数が特別多くないのが救いでしょうか。
あれ? 敵連合に数を増やせるやべー奴が居るな? あ……っ。いやでもトガちゃん居ないから覚醒しないかもだし……。居なくても仲間の危機なら覚醒しそう? はい、その通りだと思います。
で、原作では高みの見物してる弔がさらっと出てきました。本来USJで出てくる脳無も一緒。あーあ、もう滅茶苦茶だよ。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ