待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
「円花ちゃん!!」
吹き飛ばされたわ。いかん、おおるまいとの相手をしている脳みそ
しかしこの体、儂より大きな体格を持った奴に力ずくでこられると踏ん張ることが出来ん。お陰で、何かの建物の壁に体がめり込んでしまった。やはり、もう少し身長が欲しいのぅ。せめて被身子ぐらいは欲しい。いっそ太れば良いのか? いや、被身子に嫌われるか……。
「死んだか?」
「まさか。あれだけの呪力を持っているなら、そう簡単にやられませんよ」
「見えてないから分かんねって」
「……巨大過ぎる水槽とでも思ってください。廻道円花の呪力が尽きない限り、殺せないと思っていただければ。恐らく、あらゆる傷を即時治癒出来るでしょう」
「なんだそりゃ。チートか?」
人が壁から抜けている間に、何やら悪党共が話し込んでいるな。そうか、黒靄と違って手小僧は非術師か。であれば、思ったより楽に済ませることが出来そうじゃ。問題は、たった今吹き飛ばされてしまったことで被身子と離れてしまった事か。目の前には脳無とやら。その奥に悪党二人と被身子。面倒な事になってしまった。いや、そうでもないか。一番奥で、おおるまいとが動き出したのが見える。
「ブラッディ! 無事か!?」
「円花ちゃんっ!」
相変わらずの筋肉阿呆じゃな貴様。個性に呪力を合わせていることで、動きがとんでもない。何で動いたと思った瞬間には、儂の前に被身子を抱えて立っておるんじゃ。お陰で助かった。あと被身子、今は抱き付くな。儂は大丈夫だと見て分からんか。取り敢えず頭を撫でてやれば落ち着くか? おい、腕に力を込めるな。息苦しいじゃろ。仕方ない奴じゃなお主は。
「……随分苦戦しているな。貴様にしては珍しい」
「ごほっ、面目無い。でも大丈夫。この程度の壁、幾らでもぶち破って見せるさ。
「で、あの脳無とか言う奴の個性は? 貴様が苦戦してるんじゃ。それなりに面倒くさいんじゃろ?」
「恐らく、打撃無効。何度打ち込んでも手応えが無い」
なるほど。おおるまいとを殺すつもりなだけはある。
それはそれとして、いい加減離れんか被身子。気が抜けるじゃろうが。
「その脳無はなぁ。ショック吸収や超再生、そして呪力を持ってる。本来あんたを殺す為に拵えたんだ」
何じゃあの手小僧。味方の手の内を口走るなよ。個性は開示したところで底上げしないじゃろ。もしや呪力が合わさっていれば術式と見なされ、効果が底上げされるのか? じゃとしたら更に面倒じゃが、特に心配する必要は無いじゃろう。脳無自身が喋ったのならともかく、今話したのは手小僧の方じゃからな。
「それなのにまだ殺せてないってのはどういう事だ?」
「信じ難いですが、平和の象徴は呪力を扱っているようです。呪力量は……廻道円花と大差無いかと」
「また呪力かよ。流行ってんのか?」
どうも、あの手小僧は非術師のようじゃな。呪力を認識出来とらんということは、そういう事じゃ。
であれば、少しでも術師は削っておきたい。やはり殺すべきか? 術師を捕らえておける牢がこの時代にも有ると言うなら、捕らえるのも悪くは無いが面目じゃ。
「おおるまいと。あの黒靄は距離を無視して移動出来る。対象は自他を含むから、逃げられ易い」
「……ワープの個性持ちが居るとは聞いてる。彼がそうか」
「打撃が効かぬ方は儂で対処出来る。じゃから貴様は残りの二人を」
「いや、君は渡我少女を連れて逃げるんだ。ここはプロに任せてくれ」
「おい」
この期に及んで儂を除け者にするつもりか? 脳無一人に苦戦している貴様だけで、黒靄や手小僧まで相手にすると?
冗談も大概にしてくれんかのぅ。貴様の実力はここ三日で何度も見たが、何でも一人でやろうとするな。いつか死ぬぞ、儂みたいに。
「ここはオールマイトに任せて逃げましょう、円花ちゃん」
「無理じゃな。距離を無視して移動出来る奴がそこに居るんじゃ」
あの黒靄が居る以上、逃げたとしても直ぐに追い付かれる。あやつの個性は、厄介じゃ。
それはそれとして、まだ被身子が離れん。じゃから、そろそろこやつの腕から抜け出すとする。
よっと。
おい、何で少し不満そうなんじゃ。貴様、さてはどさくさに紛れて儂を
「あの脳みそと、
まだ儂を遠ざけようとするおおるまいとが、視線だけを上に向ける。それは時間にして一瞬じゃったが、こやつが何を言いたいかは分かった。
「……はぁ。どうやらそのようじゃの」
ちっ。貴様等だけ楽しみおって。儂はすっかりその気になっていたのに、結局は除け者じゃ。本格的に
とは言え今回は……と言うか今回も諦めるしかない。儂も見えてしまったからの。少し前に何処かへ向かっていた筈の相澤が、この場に戻って来ている姿が。あやつの個性があれば、黒靄から逃げることは容易い。脳無の個性も消えるんじゃから、おおるまいとが苦戦することも無くなる。
幾ら個性が何でも有りな力とは言え、抹消は狡い力じゃの……。
「行くぞ被身子。避難じゃ避難」
「はいっ」
不満じゃ。まっこと不満じゃ。この不満については後で発散するとして、今は飯田を探そう。位置情報は緑谷から届いておる。被身子も居るし、迷子にもならん。さっさと飯田や緑谷と合流してしまおう。
「……逃がすとお思いですか?」
悪党共に背を向けて歩き始めると、目の前に黒靄が現れた。便利で厄介な個性じゃよ、
捕縛布が、上から飛んできた。それは黒靄の首にしっかりと絡まる。
「
「また貴方ですか……っ!」
相澤が来た。同時におおるまいとが、脳無に向かって駆け出した。儂は被身子の手を引き、黒靄の脇を通り抜ける。すれ違い様、ついでに赤縛して殴っておいた。この黒靄は術師じゃ。個性が無くとも呪力操作だけで相澤と戦える。また手小僧を抱えて逃げるかも知れんが、今回はおおるまいとも居るしな。つまり、この場では詰みじゃ。
被身子に合わせた速度で走り始めると、後ろの方からとんでもない音が鳴り響く。おおるまいとが再び脳無と戦い始めた。直に相澤が加勢するから、あの脳無も終いじゃろうて。
「で、被身子。どこに行けば飯田が居るんじゃ?」
「こっちですっ」
悪党共のせいで、向かうのが遅れてしまった。頼むから無事で居ろよ、飯田に緑谷。何事もないと思いたいが……街はこの有り様じゃ。下手すると悪党と戦っているかもしれん。
儂が辿り着いた時に死んで居たら、許さんからなっ。
弔くんは非術師となります。オールマイトとイレイザーを残して、円花はトガちゃんにナビされつつ飯田くんの所へ。つまり次回はステイン戦です。
それはそうとイレイザー、あっちいったりこっちいったりしてますね。多分オールマイトがマニュアルの事務所方面に吹っ飛ばされたのを見て、慌てて戻ったんでしょう。
三人称による補完は要りますか?
-
欲しい
-
要らん
-
良いから一人称で突っ走れ