待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
「円花ちゃん、大丈夫ですか?」
すていんとの、つまらん戦いの後。儂を待っていたのは心配そうな顔をした被身子じゃった。儂は特に怪我をしておらん。刀を掴んで止めた時に少し切り傷が出来てしまったぐらいで、それについてはもう
飯田・轟・緑谷、それと誰とも分からん
結局。儂には欲求不満だけが残った。すていんの殺気は心地好いものじゃったけど、思う存分暴れることは出来なかったからのぅ。殺気だけが心地好かったせいか、黒沐死を祓った時より不満かもしれん。
「……」
「円花ちゃん?」
「……いや、別に。儂は大丈夫じゃよ」
いかん。つい、被身子を見詰めてしまう。欲求不満じゃからって、こやつを求めるのは違う。被身子は戦闘の代用品じゃないんじゃ。それはそれとして、後でこやつが満足するまで血を吸わせてやらなければ。怪我人の応急処置など、被身子には毒みたいなもんじゃからな。後で夢中になって求めてくる筈じゃ。その時は、甘やかしてやるとしよう。今夜は激しくなりそうな予感が今からするのぅ。……別に、それが嫌とは言わぬけども。
とにかく、じゃ。今はすていんを警察や
「円花ちゃんに何もなくて、良かったのです」
「儂も、被身子に何もなくて良かった」
被身子を保須に連れて来たのは、間違いだったような気がしないでもない。
すていんを引き摺りながら表通りに出ると、見知らぬ
「……みんな、すまない。何も、見えなくなっていた……っ、何も……!」
「しっかりしてくれよ。委員長だろ」
「その件については後でもう一発殴るからな、たわけ」
飯田のした事は、仕方がないとは思う。儂だって復讐に身を堕とした。復讐は理屈で行うものではなく、感情で行ってしまうものじゃ。理性で止まることが出来るんじゃったら、そもそも復讐なんてものはこの世の中から消えてなくなっている筈じゃからの。
儂自身、偉そうに説教出来る立場でもない。まぁ殴りはするがな。そこは譲らん。反省はしているようじゃが、それでも殴る。全員生きているからまだ良いが、儂と被身子以外は無事とは言えぬからな。
「これにて一件落着なのです。みんな、早く病院に行きましょうか」
両手を叩き合わせ、口許を少し隠した被身子が急に場を纏めた。どうやら一刻も早く、この場から離れたいようじゃ。どう見ても我慢の限界が来ている。儂としても、これ以上こやつを我慢させてくはない。させたくはないが、少し落ち着かせた方が良いかもしれんな。そんな熱っぽい目で儂を見るな。仕方ないのぅ、欲しがりな奴め。
なんて、思っていたその時。聞き覚えがあるような、ないような風切り音がした。何事かと思い音がした方向を見ると、脳無と目が合った。先程見た奴と違い、色が白い。その上、片目が潰れている。咄嗟に隣に居た被身子を突き飛ばすと、儂の体は宙に浮いた。
「は?」
掴まれた。持ち上げられた。いや、この浮遊感は飛んでいる時のそれじゃ。おおるまいとに抱えられて飛んだ時に似ている気がする。しつこいのぅ、
「円花ちゃんっ!!」
さて、どうするか。逃げるのは容易。ああ被身子、そんなに心配するな。地面はどんどん遠ざかっているが、問題は無い。あまり高くなり過ぎると着地出来なくなるが、まぁこの程度の高さならば怪我無く着地出来る。仮に足の骨が折れようが、頭と意識さえ無事なら治せる。
なので。
「苅祓」
血の刃にて、この脳無を切り刻む。直後、儂の体は宙に放り出された。さて、着地着地……。
「ブラッディ!!」
「おぐっっ」
げほっ。き、貴様っ。急に脇から飛び出てくる奴があるかっ! 人の体に向かって突撃しおって! 助けるのは別に構わんが、もう少し気遣え!! おいこら、おおるまいと!!!
「び、びっくりした。連れ去られてしまうかと……!」
驚いたのはこっちじゃ、たわけ。急に出てきおって。お陰で脇腹が痛むわ。骨は……折れていないようじゃな。なら良しとするか。冷や汗をかいてないで、さっさと地面に降ろせ。いつまでも抱き抱えてるつもりじゃ筋肉阿呆。
「あのくらいの高さなら着地ぐらい自分で出来たが? それと、早く降ろせ」
脇腹が痛むので、睨んでおく。
「いちいち慌て過ぎじゃ貴様。もう少し落ち着いて助けに来んか」
「いや、すまない。急に連れ去られたものだから……」
「頼皆、無事か?」
「無事じゃ。何じゃ何じゃ貴様まで」
地面に降りると、いつの間にかやって来ていた相澤まで儂を心配している。大の大人が揃って子供を心配するでない。……いや、するか。儂も見知った子供が危ない目に遭ったら心配するわ。しかし担任や平和の象徴に心配されるのは……どうにも落ち着かんな。儂を心配するのは、身内だけで良い。
「円花ちゃんっ!」
「ごはっ」
今度は真後ろから被身子に突撃された。背中が痛い。危うく転ぶところじゃった。まったく、こやつの前では油断も隙も出来ぬのぅ。ほれほれ、そんなに抱き締めるな。心配かけた儂が悪かった。
「お、オールマイト、何で保須に……?」
「緑谷少年っ!? だ、大丈夫!?」
「あ、大丈夫です……。あっちこっち怪我してるけど」
「先生だけじゃなくて、オールマイトまで保須に来てたんですね」
「ややっ、轟少年まで傷だらけじゃないかっ! それはステイン……!? まさか君達だけで……!?」
「テンヤ。ここで何をしている? 事務所待機を命じた筈だが?」
「すみませんイレイザー・ヘッド! ステインを探しに外へ出ました! 弁解の余地もありません!」
……喧しくなってきた。何でどいつもこいつも儂の周りに集って来るんじゃ。黒沐死を祓った後もこんな感じじゃった気がするの……。もういい加減にしてくれ。儂は被身子をどう落ち着かせるか考えるので忙しいんじゃ。
ううむ、離してくれぬ。このままにしておくしかない、……か?
「―――ハァ。オール、マイト……!」
その一声に、儂も含めた全員が振り返った。今度は、いつの間にかすていんが縄から抜け立ち上がっておる。どうやら気絶から回復したらしい。手には、小振り過ぎる
「来い……俺を止めて見せろ……! この
朦朧とした意識でありながら、こやつは進む。頼りない武器を片手に、真っ直ぐおおるまいとへ向かっていく。
それは、狂った執念と言っても良い。執着、もしくは渇望。こやつが放つものは前向きな感情とは言い切れん。じゃが、負の感情が人に何をもたらすのか。呪術師はそれをよく知っている。こやつにもう少し実力があれば、或いは儂にとっても……。
ちっ。貴様だけ楽しそうにしおって。ここまで来ると、ただただ羨ましく思えるのぅ。
「オール……マイトォ……ッッ!!」
凄まじい威圧感が、この場を支配する。子供達どころか、相澤やおおるまいとすら怯ませる程の。儂にとっては、思わず笑えてしまう程のものでしかないが。もしかすると、悪党の中には居るかもしれんな。脳無やすていんのような、儂を楽しませてくれる猛者が。
そう考えると……
さて。また動き始めたこの悪党をどうするか。もう儂が手を出す理由は無いが、次に何をされても良いように準備はしておく。この期に及んで子供達に手を出すようなら、それなりの対応をせねばならんからな。いつ何があっても良いように、呪力は練り上げ、……て……。
……気絶してるな、こやつ。情けない奴め。啖呵を切ったなら、最後までやり通さんか。
どうにも拍子抜けな気がするが、それでもこれで一件落着と考えても良いか? いや、また脳無が飛んでくるかも知れぬしまだ警戒はしておこう。気を抜いて何かあったら、また被身子に心配されてしまうからの。
ステインがオールマイト目撃で喜んだところで職場体験編の終わり。って訳でもないです。もうちょっとだけ続きます。
三人称による補完は要りますか?
-
欲しい
-
要らん
-
良いから一人称で突っ走れ