待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
眠い。いや、もう……眠い。目蓋が重い。頭が回らん。今の儂は結構な寝不足でのぅ。昨晩調子に乗った被身子が二度も儂を抱いたからじゃ。後で理由を聞いたら、耳への
……いや、そんなの知らんが? まさかとは思うが、被身子が儂の耳を触りたがるのはそういう意味じゃったのか?
まぁ、確かに。思い返してみれば耳を触られた後はだいたい抱かれておる。そうか、耳に触れるのはそういう合図ということか……。これは覚えておいた方が良い。今後は外で触られることがあったら、断固として拒否しなければ。
「ふわぁ……」
いかん。欠伸してしまう。幾ら眠くても、しっかりしなければ。儂、今は二年の教室に居るからの。立ったまま寝てしまいそうなぐらいの眠気を感じているが、起きて居なければ……。
今朝、儂は被身子と雄英に帰って来た。被身子は寝不足のまま授業に出て、儂は寝不足のまま被身子の警護じゃ。と言うのも
とは言え手小僧と黒靄はおおるまいとと相澤先生に捕縛され、一度は留置所の中に入った。が、今朝になって問題が起きた。雄英に着いた辺りでおおるまいとから連絡が有っての。何かと思って電話に出れば、
なので、夕方になったら再び東京に向かわなければならない。また被身子を連れ出す事になったのは気乗りしないが、どうしても儂に現場を見て欲しいそうじゃ。呪術師としての見解が欲しいとか、何とか。今日は職場体験が終わったら寝るつもりじゃったが、そうもいかないらしい。
……んん。眠い。寝たい。昼休みになったら、少しでも良いから横になりたい。いや、そんな真似をすれば夜まで寝てしまう気がするのぅ。結局、起きているしかない……か? こんなに眠い時は被身子と昼寝するに限るんじゃが……職場体験中はそうも言ってられない。
どうにかして、眠気を振り払いたい。思いっきり頬をつねってみるが、痛いだけで眠気が消えない。まだ昼休みまで、かなりの時間がある。具体的には三時間。今やっと、一限目の授業が終わったところじゃ。
「円花ちゃん、大丈夫?」
「……眠い。お主は、眠くないのか……?」
「眠いですよー。寮に帰って、寝ちゃいたいぐらい……」
「儂もそうしたいのぅ……」
授業が終わると、被身子は少しふらつきながらも真っ先に教室の後ろにやって来た。目の下に隈が出来てしまっているこやつは、殆ど目蓋が閉じたまま儂に抱き付いてきた。今は止めてくれ。気恥ずかしさもあるが、気が抜けて余計に眠くなる。ただでさえ我慢出来そうにない強い眠気が、更に強くなってしまう。
「お昼になったら、お昼寝するのです。一緒に寝ましょうねぇ……」
「それは構わんが……起きれるのか……?」
「んん……。駄目かも……」
「じゃよなぁ。まったくお主は……ふわぁ……」
昼休みになったら、昼寝したい。じゃけど昼寝してしまったら、まず間違いなく起きれない。そうなると被身子が授業に出れなくなってしまう。それは駄目じゃ。駄目ったら駄目なんじゃ。今日は、儂がしっかりせねば……。
「円花ちゃんが悪いんですよぉ。トガを誘惑するから……」
「いや、あれは被身子が悪いんじゃあ……」
ねむい。寝てはいけないのに、自然と目蓋が閉じる。儂も被身子も眠気で頭が回っていなくて、もう今日は駄目じゃ。こんな状態では何も出来ぬ。人前で
……ああ、いかん。こやつに我慢をさせたくはないが、こんな状態を今後も続けてはならぬ。被身子も儂も律しなければ……。何か上手い言い訳を考えなければ……。この眠気の中で?
今度で良くないか? いやしかし……。
被身子の阿呆。馬鹿。許さんからなぁ……。
……すぴぃ……。
◆
夜。儂は再び被身子を連れて東京にやって来た。寝不足は未だ解消されていないが、昼休みや新幹線の中で寝惚けたことで今朝ほど眠たくはない。結局何事も無かったから良いものの、夕方まで自分が何をして居たかまったく覚えておらん。何なら、今だってまだ眠い。被身子だって眠そうにしておる。何なら少し辛そうじゃ。こやつは人並み程度にしか体力が無いからの。ろくに寝てない状況で新幹線に乗ったり授業に出ていたりしたのだから、体力的に相当しんどくなっている筈じゃ。
今宵は、何としても寝かし付けなければ。儂も朝までぐっすり寝たいし。
「待ってたよ。雄英に戻ったばかりなのに、すまないね」
「良い。直ぐに済ませよう。現場は何処じゃ?」
「案内するよ」
保須警察署にて。儂と被身子はおおるまいとの案内で、事件現場へと向かう。建物の中に入ると、変な臭いがした。嗅ぎ覚えがある。人が焼け死んだ時のそれじゃ。今生では初めて嗅いだが、やはり良いものではないな。気分が悪くなる。こんな臭いを被身子に嗅いで欲しくはないが……行動を共にしなければならない以上は仕方ない。
「呪霊は見えるようになっても、呪術的なことはさっぱりでね。今度、その辺りの事を教えて貰いたいんだが……」
「儂の知ってる範囲ならな。そうじゃな、ひとまず残穢について教えておく」
「残穢?」
「そう、残穢じゃ。術式を使用すると痕跡が残る。それが残穢」
こやつには呪力操作や呪霊についてしか教えておらんからの。ちょうど良い機会じゃから、色々教えても良いじゃろう。いずれは緑谷にも教えてやらねばな。
細かい事を調べるのは苦手じゃけど、呪術に精通しているのは儂しか居ない。つまり、やらざるを得ない。まぁ、残穢を見ることなら術師なら誰でも出来る。
おおるまいとに案内され、儂と被身子が辿り着いたのは地下室。留置所じゃ。目を凝らすと……うむ、残穢が残っているの。であればこれは、呪霊の仕業と見て良い。
「目を凝らして見てみろ。薄く、何かが見えるじゃろ?」
「んん……? ああ、何かぼんやりしたものが……」
「私は見えないのです」
「被身子は術師じゃないからな。それに、ここはあまり見るな」
留置所にある廊下は、正直言って酷い有り様じゃ。壁には人の形をした染みがあるし、所々が焼け焦げて最早炭のように見える。臭いだって酷いものじゃ。うっすらとしか見えぬ残穢よりも、凄惨な光景の方が目に入り易い。
こんな場所、被身子に見て欲しくはないのぅ。どれ、抱き寄せて意識を逸らさせるか。
「侵入者の形跡は無く、突然人が燃えたんじゃろ? 遠隔での呪殺と言う線も無くはないが、まず呪霊の仕業じゃな」
「……私が付いていながら、こんな事になるとは……」
「向こうが上手だったってだけじゃ。気にするな。しかしこうなると、警察にも呪眼や呪具が要るのぅ」
それに。黒沐死のような特級呪霊が来た場合、最低でも游雲程の呪具が必要になる。そう考えると、今後
ううむ。面倒な事になってきたな。呪眼の作成をしっかり進めなければならん。それだけでなく、呪霊の存在を警察に明かす必要もある。これについては、おおるまいとに任せるのが手っ取り早いじゃろう。
呪術に詳しいとは言え、儂はまだ学生じゃ。大人達が素直に儂の言うことを聞いてくれるとは思えん。しかし平和の象徴が言うのであれば、多少信用して貰える筈じゃからな。
「今回は呪霊の仕業と見て良い。今後、警察も対策した方が良いな」
「……分かった。私の方から説明しておくよ。ところで廻道少女、今晩も私の事務所に泊まるかい?」
「泊まる。鍵を借りても?」
「はいこれ。紛失は厳禁! あ、渡我少女に渡しておくから!」
おい貴様。鍵を紛失する程、儂はぽんこつではないが?
……まぁ、良い。用事が済んだのなら、今晩こそはしっかり寝たい。今から雄英に戻るのも面倒じゃし、またおおるまいとの事務所に泊まらせて貰うことにする。明日の朝はまたも早起きする羽目になるが、今すぐ布団に入って寝たいんじゃ。
よし。じゃあ被身子。おおるまいとの事務所まで、案内を頼むぞ。はよ連れて行け。寝る時間が少なくなってしまうじゃろ?
さらっと弔くんや黒霧が脱獄したところで職場体験編は終わりとなります。次回から期末テスト編+αを始められたらなと。
三人称による補完は要りますか?
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ