待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
「と、言うわけで。やってみろ」
「えっ、ぅ……うん。ここに呪力を流し込めば良いんだよね……?」
「そうじゃ。流す量は常に一定を保てよ。でないと、機械が爆発するかもしれん」
「爆発……!?」
これから儂は、緑谷に
昨日は、呪力を練り上げ方について指導した。じゃから今日は、次の段階として呪力の放出について学んで貰う。本音を言うと、子供に呪力の扱い方など教えたくない。まっこと、嫌じゃ。しかし、今後緑谷は呪霊や呪詛師と戦うことになるかもしれん。それを考えたら、教えないわけにもいかん。何も教えずに儂の知らんところで死なれたら、それはそれで儂の主義に反するからの。
まさか転生してまで、素質のある子供に呪術を教える羽目になるとは……。うぅむ……、何とも奇妙な話じゃ。
まぁ、こればっかりは仕方ない。そう思うことにする。今後こやつが
なので。被身子の反対を押し切って、緑谷を寮に連れ込んだ訳じゃ。こればっかりは仕方ないことなんじゃけど、被身子はまるで納得しとらん。幸いなのは理解はしてくれとるってことじゃけども……。まぁ、後でどうにかして機嫌を取るしかない。
ちなみに。被身子は今、居間の
仕方ない。これについては諦めよう。むしろ丁度良いのかもしれんし。如何なる状況でも呪力を一定に扱う為の鍛錬、とでも思うことにする。
「ともかく、ほれ。そこに指を差し込んで呪力を流せ」
「ぅ、うん。まずは、呪力を……!」
「過剰に練るな、たわけ」
「い゛っっ!?」
思いっ切り多量の呪力を流し込もうとしたので、取り敢えず拳骨して緑谷の意識を逸らす。すると、呪力が霧散して消えた。幾ら呪力を扱い慣れてないとは言え、頭を小突かれた程度で練り上げた呪力を霧散させてしまうのは良くないのぅ。こんな程度で呪力操作が乱れてしまうのは、三流以下じゃ。こやつを一流に育てたいとは思えんが、呪力の維持は体得して欲しいところじゃな。こんな調子で居られたら、それこそ呪霊に殺されてしまう。
「流す量はそんなに多くなくて良い。……そうじゃな、眼鏡の形をした容れ物に少しずつ水を入れるような感じで……」
「な、なるほど……。少しずつ、少しずつ……!」
お。少しだけ呪力を練ったの。いや、個性の内から引き出したのか。まぁ、どちらでも構わん。今は呪力を体外に出す感覚を知って貰えれば良い。って、おい。
「どうした? 呪力を流せ」
「ん、んん……っ。んぐぐ……!」
「緑谷?」
……んん? 何やっとるんじゃこやつ。呪力を身に纏ったまでは良い。が、しかし。機械の中に呪力を流しとらん。機械を睨んでないで、さっさと流し込まんか。このたわけ。でないと呪力放出の練習には……。
「えっと、廻道さん……っ。呪力ってどうやって放出すれば……?」
「……そこからか……」
こやつ、どうやら呪力の体外放出がまだ上手く出来んようじゃ。一瞬、個性の影響かと思ったがそれは違うのぅ。昨日行った軽い組手では、しっかりと呪力を放出しておった。拳の速度に呪力が追い付いていなかったのは事実じゃけども、それでも儂に時間差で衝撃を感じさせる程度には放出しておった。なのに今は、呪力放出が出来とらん。ただただ、手先に呪力を集めているだけじゃ。
「昨日は出来とったじゃろ? 拳に乗せて、放出してたではないか」
「え、出来てた……んだ?」
「出来とったが??」
おいおい……。まさかとは思うが、自分が何をしていたのか把握してなかったのか? さては呪力操作だけに意識を向け過ぎて、自分の呪力の流れなんかをまるで見とらんかったな??
……はぁ……。仕方ないのぅ。呪力操作の精度を上げるところから始めた方が良いな。呪力放出を教えるのは、呪力操作に慣れて来てからじゃな。
「……よし、緑谷。今日は呪力を引き出す練習だけにしよう。呪力放出や呪具作成は、お主がもう少し呪力の扱いに慣れてからじゃ」
「ぅ、うん……」
「取り敢えず、呪力を僅かに引き出して身に纏う。これをずっと繰り返して、呪力を引き出す感覚に慣れろ。良いな?」
「分かった。やってみるね……!」
んん……。そんな顔を輝かせて、変に意気込むんじゃない。呪術を学ぶのは、そんな楽しい事ではないと思うんじゃが。どうにもやり難いのぅ……。儂なんて、呪術を学ぶことは苦痛で仕方なかったんじゃが? まぁそれも、思えば最初の内だけだったような気がするが。
「……ちなみに、呪力を引き出し過ぎたら拳骨じゃ。上手く引き出せても、時折拳骨するからの」
「えっ」
「引き出す呪力は、常に一定でなければならん。何せ、呪力の乱れは死に直結するからのぅ……」
呪術師は……、と言うか呪詛師もじゃけど、練り上げる呪力は常に一定でなければならん。まぁ最初の内は、じゃけどな。慣れて来たら、自分の最大出力や最低出力に合わせて練り上げる呪力を増減させる。無闇矢鱈に最大出力で放出しては直ぐに呪力切れになるし、かと言って下手に出力を下げ過ぎるとそれはそれで命に関わる。練り上げる呪力は基本的に一定に、そして必要な分だけを随時練り足して出力を上げ下げする。それが出来るようになれば、まぁそう簡単に死ぬことは無い。
「とにかく。今は呪力を操る感覚を体に染み付かせろ。ある程度出来るようになったら、次は体を動かしながらやって貰うからな?」
「……分かった。なるべく早く、次の段階に行けるように頑張るよ……!」
「……まぁ、程々にな。誤って個性を暴発なんてさせるなよ……?」
緑谷の個性が暴発したら、それはそれで大惨事じゃ。周囲は間違いなく吹き飛ぶじゃろうし、ついでに緑谷は手足を骨折するじゃろう。そんな事が起きたら、まっこと大惨事じゃ。個性の扱いや呪力の扱いには細心の注意を払って欲しいものじゃが、さてはて……。
……うぅむ。呪力操作の鍛錬は、室内ではなく外でやらせるべきじゃな。今日はもう、今から場所を変えるのが面倒じゃからこのまま続けさせるが、次からは外で行うべきじゃの。何より……今から被身子を放置するのは色々と良くないし。
緑谷が体を光らせながら呪力を引き出す様を横目で見つつ、取り敢えず儂は被身子に近付いてみる。
なので。まぁ……、人前では有るんじゃけども……。
「ほら被身子。そんなに拗ねないでくれ」
「……拗ねてません」
「いや、明らかに拗ね」
「拗ねてません」
「いやでも」
「拗ねてませんっ」
い、いかん。拗ねとる。すっかりご機嫌斜めじゃ。こうなった被身子は、ちょっとやそっとじゃ機嫌を直してくれん。
ど、どうしたものか……。うぅむ……。
「ほんっと円花ちゃんって、男の子と仲良くしてばっかなのです……! ぷいっ!」
頬を膨らませた被身子が、勢い良く顔を逸らした。明後日の方向を向いて、頑として儂を見ようとしない。んんむ、どうにかして機嫌を取らねば……。ど、どうやって……??
「す、すまん。じゃけど被身子」
「ぷいっ」
「いや、被身子。こっちを……」
「ぷいっ!」
……。……駄目じゃこれ。どうにか顔を合わせようと動いてみたが、儂が正面に立つと被身子は勢い良く顔を逸らしてしまう。これでは機嫌を取るどころではない。何なら話も出来ん。まさかここまで拗ねてしまうとはの……。まったく、こやつと来たら……。
「すまんて。そんなに拗ねないでくれ……」
拗ねさせたのは儂……なんじゃけども。それはそれとして、こうも顔を逸らされ続けるのは何と言うか気に食わん。こうなったら意地でも儂の方に向かせよう。いつまでもそんな風にしていられると思うなよ??
ひとまず。被身子の膝上に乗ってみる。で、こう。顔を両手で挟んでじゃな……!
って。おい。首に力を込めるな。無理に固定しようとするんじゃない。首を痛めるじゃろ、まったく。
「ほら、被身子。こっちを見んか」
「……むーー……」
「すまんて。じゃからほら、こっちを見てくれ」
「……ぷいっ」
「……お主なぁ……」
駄目じゃこれ。言葉では絶対に、そっぽを向いたままじゃ。こうなったら、力尽くでも前を向かせるしかない。しかし腕力で解決するとなると、下手をすると被身子の首を痛め付けてしまうかもしれん。それは避けなければ。
んん……。んんむ……。
ん、んん……。仕方ないのぅ。そこに緑谷が居るんじゃけど、恥じている場合でもない……気がする。念の為緑谷の様子を確認してみると、しっかりと集中して呪力を引き出しておるの。この調子なら、儂等の方はまるで見えとらんじゃろう。まぁ念の為、念の為に視界は奪っておくか……。すまん、緑谷。
「うわっ!?」
目の付近に血を飛ばして付着させると、驚いた緑谷が椅子からひっくり返った。すまん、まっことすまん。でもほら、見られたくないからの。
「んっ」
「ひゃ……っ」
耳に、
ふふん。どうせじゃ。こうなったら、とことんまでしてしまおう。緑谷が悶えながら体を起こしているような気がするが、気にしないことにする。どれ、今度は唇にでも……。って、あっ。
「んむ……っ!?」
猛烈な勢い良いで、唇が奪われた。だけならまだしも、そのまま机の上に押し倒されたわ。お陰で、背中を打った。儂に覆い被さった被身子は、拗ねた顔のままじゃ。い、いかん……! これはいかん……!!
「そんな風にしたって許してあげないのですっ。トガはチョロくないのでっ!」
「い、いや被身……っ。ん、んん……っ」
こ、こやつ……っ! 何がちょろくないので、……じゃっ! 嬉しそうに口元を歪めながら
「たぁっぷり分からせてあげますから、覚悟してくださいねぇ……」
な、何を……!? いや、おいっ。こらっ、被身子っ。音を立てて
……この後。緑谷の前なのに目茶苦茶
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ