待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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対期末試験。円花の悪癖

 

 

 

 

 

「穿血」

 

 さぁ、本気で呪い合おう。始まってしまったなら、待ったは無しじゃ。儂は全身全霊で貴様に挑む。殺すつもりで、やる。でなければ敵わん。そうしなければ貴様を相手に出来ぬ。何より、儂自身がもう我慢出来ないんじゃ!

 

 小手調べに本気で放った穿血は、瞬く間におおるまいとに迫る。避けるか、防ぐか。どちらでも良い。儂に魅せてみろ! 貴様の実力を!!

 

 

「DETROIT SMASH!!」

 

 

 けひっ。ああ、ああ! 防ぐでもなく避けるでもなく、拳で迎え撃つか!! この一撃を、重りを付けたまま打ち払うのか!!

 

 良いっ。良いな貴様! 堪らんっ。堪らなく、嬉しい! ずっと欲しかった。この場所に身を置きたかった! この愉悦の中で、息をしたかった!

 

 他の誰と居ても、この感覚は味わえぬ。他の誰と向かい合おうと、ここまでの喜びは無い。ああもう、こんなに嬉しくなれるなら! もっと早く貴様と呪い合うべきじゃった!

 

「苅祓」

 

 首と両の手首から血刃を飛ばす。狙うは四点。おおるまいとを縛る、超圧縮重りとやら。重りを付けていたとしても楽しめそうな相手ではあるが、重りなんぞにこの楽しみを邪魔されたくないっ。

 

「CAROLINA……」

 

 飛来する苅祓を、前に駆け出すことであやつは避けた。おい、避けるな! 重りを付けたまま儂と戦うなんて真似は、許さんぞっ。殺すぞ貴様!!

 

「SMASH!!!」

「ぬおっ!?」

 

 まだ拳が届く距離でも無いのに、おおるまいとは交差させた両腕を振った。結果、何が起きたか。あやつの手は再び暴風を作り出し、それが真っ直ぐ儂を襲う。踏ん張ろうとしてみたが、駄目じゃ。この体は軽い。ある程度近い距離で突風なんぞ起こされたら、後ろに後退してしまう。

 が、吹き飛ばなかっただけ良しとする。儂の後ろには、未熟者が二人も居るからな。儂が吹き飛んでしまえば、次に狙われるのは小僧と緑谷じゃ。それは許さんぞ、おおるまいと! 儂だけ見ろ! 儂だけに集中しろ!!

 

 ―――赫鱗躍動・載。

 

 生半可な距離では駄目じゃ。吹き飛ばされる。穿血を使う暇は無いじゃろう。そんな隙が、これ以降有るとは思えぬ。じゃから、敢えて距離を詰めるっ。一足で距離を潰し、おおるまいとの懐へ潜り込む。小さな体は、こういう時には便利じゃ。

 

「速いな!?」

 

 懐に潜り込めたなら、やるべき事がある。おおるまいとの身のこなしならば、直ぐにでも距離を離せる。後ろでも横でも、上でもじゃ。なので、逃げられないようにこやつの足を踏み付ける! それから、目の前にある腹を、思いっきり殴り抜く!

 

「どっこいせえっ!!」

 

 大振りの、右。ただ打ち込んだだけなら防ぐも避けるも容易な、安直な一撃。じゃけど、足を踏み付けられていたら避けることは出来ぬ。可能なのは、防ぐか迎え撃つか。

 

「しかし、私相手に近付くのは……愚策じゃないかな?」

 

 かはっ。効いとらん。思いっきり腹を殴ったのに、平然と笑っている。あの時は、職場体験の時は呪力のみで殴った。けれど今は、限界まで引き上げた赫鱗躍動に呪力を合わせた。なのに、おおるまいとは笑みを浮かべている。しかも、しかもじゃ。まるで動かん!

 

 良い! 良いぞ! 儂が本気で殴って怯みもしない! その頑丈さは、壊すだけの価値がある!!

 

「お返し、だっ!」

 

 視界の外で、拳が振り下ろされる気配がある。避けることは容易。防ぐことだって難しくはない。じゃから、無視しよう。狙うは四点。まずは両足からじゃ!

 

「ぐお……っ!」

 

 重、い……っ! 当然じゃ。おおるまいとと儂の体格差は大き過ぎる。自分より遥かに大きな肉体が、重りを付けたまま殴って来たんじゃ。この拳骨が頭ではなく肩に当たったのは、運が良かった。頭なら、気絶していたかもな。

 こやつの拳が左手肩にめり込むと、鈍い音がした。骨でも折れたか? 関係ないなっ。痛みなど、今の儂には心地好いものでしかない!

 

 こんな程度で儂が止まると思うなよっ!

 

「苅祓っ」

 

 殴られながら、もう一度血刃を撃ち出す。狙いはふたつ。おおるまいとの両足に付いている、重りじゃ。同時に、左拳の中で限界まで血液を凝固し圧縮。硬質化させていく。これによって生じる血栓の危険は、無視する。

 

 血星磊。この技に、速さは無い。あるのは硬度ひとつ。離れた位置から撃ち出せば、避けられるじゃろう。けれど、これだけの近間なら当てられる。この筋肉阿呆の肉体を貫けるかは知らんが、殴るよりは良いかもしれん。試す価値はある。

 

 右拳を振りかぶる。もう一度、本気で殴る!

 

「おぉおっ!!」

 

 さっきと同じ軌道で、同じ速度で拳を突き出す。が、今度は容易く拳を掴まれた。阿呆め、そっちは囮じゃよ。本命は、左に隠した血塊じゃっ! こいつを、右の脇腹に向かって撃ち込んでくれるっ!

 

「い゛っ!?」

 

 ……は? 速度は無いとは言え、人体ならば容易く貫通出来る血塊が刺さるだけ……じゃと?

 貴様、筋肉で物事を解決するのもいい加減にしろよ!? ここまで来ると感心を通り越して呆れるんじゃが!?

 

 まぁ、良い! それでも良い!

 

 刺さったなら、血星磊は有効と言える。これを軸に戦法を組み立てるのは難しいが、要所要所では使っていける。何よりまだ、儂はこやつの全力を見ていない。

 

 こやつの全力は、これから出させる。

 

「けひっ」

 

 ああ、楽しい。猛者と呪い合うのは、堪らん。何事にも代え難い喜びが、ここに有る。 いつまでもいつまでも、この心地好さに浸っていたい。

 大好きなんじゃ。戦うことが。好きで好きで、どうにかしてしまいそうな程に。

 

 赤縛で、おおるまいとを縛る。手足を絡め取って、一秒にも満たない時間を稼ぐ。この間、殴ることを忘れない。左肩の痛みなど、最早気にならん。そんな事より、縛った側から力で血縄を引き千切られる事に心を奪われてしまう。

 

 まだ、じゃ。まだ。まだ始まったばかり。いや、始まってすらおらん。苅祓を立て続けに撃ち込みながら、目の前の肉に何度でも拳を打ち込む。

 

 肩から変な音がして、左腕が動かなくなった。構わん。

 力任せに右拳を振るい過ぎて、もう拳の感覚が失せた。構わん。

 何か、鈍い音が響いた。おおるまいとの手足から、何かが落ちた。

 

 ……やっとか!!

 

「ほんとに、とんでもないな君は!」

「がっ……!?」

 

 硬く、大きく。そして重い拳が、腹に突き刺さった。息が出来なくなる。体が硬直して、胃袋の中に有るものが逆流してくる。直後、視界が揺れた。気が付けば空を見上げている。背中が痛む。

 

「げほっ、がはっ!」

 

 血が混じった胃液が、口から飛び出た。苦しい。こんなにも重い衝撃が腹を貫いたのは、何時以来じゃったか。見上げた空は歪んでいて、脳が揺れている。

 

 肩を殴られ、腹を殴られ、頭を殴られ。この小さな体は、たった三度の打撃で打ち倒された。呪力で防御していたのにも関わらず、じゃ。

 

「か、廻道さん!?」

 

 黙れ緑谷。近付くな。倒れた儂を起こそうとするな。必要無い。ここからじゃ。ここからが本番じゃ。

 反転術式(はんてん)を回し、受けた傷を全て治す。胃の不快感も背中の痛みも、肩の骨折も脳の揺れも、血液の減少すらも、全て綺麗に治した。

 

 そして、おおるまいとが付けていた重りは全て壊した。

 

「けひっ、ひひっ」

 

 さぁ、ここからじゃ。これから、もっと楽しくなる。もうあやつを縛る物は何も無いからのっ。

 

 倒れた体を起こし、立ち上がる。おおるまいとは重りが壊され、儂の傷は全て治った。仕切り直しじゃ!

 

「下がっとれ緑谷。小僧っ、何もするなよ!!」

 

 距離が、離れている。僅か、数めえとる。こんな距離、儂にもおおるまいとにも有って無いようなものじゃ。しかし距離が出来たのであれば、それすらも使おう。

 もう一度、両手を叩き合わせる。この構えが何を意味するか、おおるまいとも知っている。

 

「おいたが過ぎるな、ブラッディ。重りを壊すなんて、どういうつもりかな?」

「愚問じゃ。本気の貴様と、やる為じゃよ」

 

 強い。おおるまいとは、今生で儂が戦って来た者達の中で、最も強い。じゃからこそ、重りなんて野暮な物は必要無い。必要無いから、壊した。そこに何の不満がある? 不満なんてものは、何処にも無いじゃろう?

 

「敢えてヴィランの力を解放してしまうとは。イカれたヒーローだな!」

 

 おおるまいとの姿が、視界から消えた。直後、真横から大きな呪力を感じる。手を動かし、狙いを定める暇は無い。百斂を維持したまま、その場から跳び退く。直後、地面が爆ぜた。四方八方に、砂利混じりの衝撃が走る。緑谷も小僧も、衝撃に飲まれて地面を転がった。

 

穿(せん)け」

 

 居ない。穿血を放とうと狙いを定めた場所に、もうおおるまいとの姿は無い。今度は、背後に人の気配を感じる。後ろ襟が掴まれた。

 

 っは、これは……! いかんなっ!

 

「OKLAHOMA……」

 

 振り回される。目に映る風景が、線になるっ。

 

「SMASH!!」

 

 猛烈な回転の後、儂は地に叩き付けられた。体の内側から、聞いたことがない音がする。骨が何本も折れ、幾つか内臓が潰れたんじゃろう。酷い激痛じゃ。が、こんな程度で儂を倒せると思うか? 儂を止めたければ、一撃で頭を潰せっ!

 

「苅祓!」

「あだだだだ!?」

 

 叩き付けられようが、骨が折れようが内臓が潰れようが関係ない。頭さえ無事ならば、術式は使える。反転術式(はんてん)もじゃ!

 

「まったく君は、とんでもないなっ! けどねブラッディ!」

 

 拳が迫る。その場から転がることで、何とか避けた。振るった拳が地面に突き刺さってはいるものの、先程の衝撃波は来ない。貴様、何を勝手に加減しておるっ。

 

「私は協力して掛かって来いって言ったんだぜ。

 聞いたよ。USJの時も保須の時も、君は一人で戦おうとしたんだって? それは君の悪い癖だ!」

 

 はっ。何を言い出すかと思えば。笑わせるなよ、おおるまいと。

 

「そして君達も! ブラッディ一人に戦わせて、見てるだけか? ヒーローの風上にも置けないな!」

 

 もう一度傷を治し、立ち上がる。再び赫鱗躍動を使い、今度はその力を目に集中させる。

 現状、おおるまいとの動きは目で追えぬ。じゃから追えるようにする。動きが見えないから決着が付いた、なんてつまらんからなっ。

 

 

「さぁ、くたばれヒーロー共!!」

 

 

 まだまだこれからじゃ、たわけ! もっと、もっと儂を楽しませろ! おおるまいとぉ!!

 

 

 

 

 

 









重り付いたまま穿血を迎撃するオールマイトの図。
そして自分が楽しみたいからって、超圧縮重りをぶっ壊す円花の図。

双方化け物なので、書いてて「こ、こいつら……!」ってなりますね……。

三人称による補完は要りますか?

  • 欲しい
  • 要らん
  • 良いから一人称で突っ走れ
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