待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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対期末試験。小僧の作戦

 

 

 

 

 

「げほっ、ごほっ」

 

 む、いかんな。気を失っていた。酷く胸が痛むのは、おおるまいとの打撃から二人を庇ったせいじゃな。多分骨が折れとる。から、反転術式(はんてん)で治す。あの化け物め、儂じゃなかったら死んでおるぞ。

 呪力は、まだまだ残っている。体はそれなりに疲れているが、特に問題ない。全然戦える。どうやらまだ実技試験は続いているようじゃな。じゃったら、もう一度あの筋肉阿呆と呪い合える。まさか一度ならず二度も機会が有るとはのぅ。嬉しい!

 

「廻道さん! 良かった、気が付いたんだね!?」

「……どのくらい気を失ってた?」

「一分か、二分ぐらい。あ、起きないで! もしかしたら胸の骨が折れてるかも……」

「それはもう治した。で、ここは何処じゃ? おおるまいとは?」

 

 心配して覗き込む緑谷を片手で制し、寝ている体を起こす。見たところ、何処かの路地裏……か? 何でこんなところに居るかは知らんが、気を失った後に運ばれたんじゃろうな。と言うことはこやつ等、一度おおるまいとから逃げたのか?

 

 あの速度の化け物から、どうやって?

 

 ……いや、まぁ良い。何が何だか分からずとも、二人が無事ならそれで良しとする。

 

「よし、じゃあ儂はまたおおるまいとと戦うから貴様等は脱出しろ」

 

 この二人が居たところで、邪魔になるだけじゃ。小僧や緑谷が今のおおるまいと相手に何が出来るとも思わん。儂ですらあやつの攻撃を避けるのに手間取るぐらいじゃからな。もしあやつの呪力操作が完璧なものだったと考えると……戦闘にすらならなかったかもな。まだまだ呪力の流し方が正直過ぎるから、そこに助けられた。いずれは呪力の流れが読めんようになるじゃろう。

 

 ああ、その時が楽しみじゃ……!

 

「ま、待って。かっちゃんが作戦を立ててくれたから、まずはそれを聞いて」

「……作戦?」

 

 小僧が? いやそれよりも、今のおおるまいとに通用する作戦が立てれるとは思えん。しかも小僧、何で頬に痣を作っておる。筋肉阿呆に殴られでもしたか? ……いや、そんな筈は無いか。あやつに殴られて、痣で済むとは思えん。と考えると……何だ? もしかして緑谷にでも殴られたか? 何しとるんじゃ貴様等……。

 

「一度しか言わねえからよく聞け。あの馬鹿げた速さに破壊力。戦っても、今は勝てねえ。逃げても直ぐ捕まるのがオチだ。

 ……だから、俺とクソチビの最大火力で足止めしながらゴールを目指す」

 

 ……それは、無理じゃと思うが。呪力を得る前のおおるまいとならば、小僧の案でやれたかも知れん。が、今のおおるまいとには呪力がある。あやつの呪力量からして、恐らく小僧の爆破では足止めにすらならん。良くて目眩まし程度じゃろ。下手をすれば爆発の中を突っ込んで来る筈じゃ。

 体育祭で儂がやった事を、おおるまいとが出来ないとは思えない。

 

「ゼロ距離で最大火力。通用するとしたらそれしか思い浮かばねえ。手伝えやクソチビ」

「……ひとつ聞くが、貴様等はここから脱出するのに何分かかる?」

「ここからなら、表に出て二分もありゃ行けんだろ。それが何だ?」

 

 二分……。二分、か。その間の足止めは……儂一人でもやれるな。先のような肉弾戦ではなく、呪術戦を挑めばやれる。その為に必要なのは、一瞬の時間。一瞬あれば、どうにかなる。しかしこの手は取りたくないのぅ。やれば勝ちは確実じゃ。試験だって合格出来る。小僧と緑谷を脱出させること自体は容易じゃ。

 

 じゃけどなぁ。それじゃ儂がつまらん。

 

 やじゃやじゃ! もっと楽しみたい! あんなに楽しい時間を台無しにしたくないんじゃっ!

 

 ……なんてわがままは、もう言ってられんか。残り時間が何分あるか分からんしのぅ。筆記試験は駄目そうじゃったから、実技試験はしっかりと合格しておきたい。となると……やるしかないか。えぇ……? やじゃあ……。

 

「……はぁ。一瞬で良い。小僧と緑谷で足止めしてくれ。その後は……不本意じゃけど、儂が二分稼ぐ」

「そんな事……出来るの?」

「奥の手を使えばな。その間に貴様等は全速力で脱出しろ。それで試験には合格出来る筈じゃ」

「……てめえっ。そんな手があるなら最初から使えや! ナメプしてんじゃねえ!」

「阿呆か貴様。いきなり奥の手を使って直ぐに倒してしまったら、つまらんじゃろうが。儂は心行くまで戦いたいんじゃ」

「何で目的が戦闘なんだよてめえはっ! 頭イカれてんのか!!?」

 

 喧しいわ。失敬な奴じゃな貴様。人の趣味嗜好にとやかく言うでない。儂とて苦渋の決断なんじゃぞ。領域なんぞ、使わずに済むならそれに越した事は無いんじゃからな。

 

「と、とにかく……! やってみようよ! 僕も精一杯手伝うから!」

「ったりめーだクソデク!! おら、これ使えやクソが!! 使い方知ってんだろ!」

「えっ!? い、良いの!?」

「うるせえさっさと受け取れや!!!」

 

 何じゃこやつ等。仲が悪いくせに、急に協力的になりおって。さてはあれか? 喧嘩する程仲が良いとか、そんな感じか?

 いや、それは無いか。小僧の顔が物凄いことになっておる。どうなっとるんじゃその面は。緑谷は緑谷で気後れしとるし……。協力しあうなら、もう少し友好的にならんか貴様等。

 

「おら行くぞ!」

 

 何とも妙な感じになって来た。仕方ない。楽しむのは、ここまでにしておこう。もう十分楽しんだと思うことにする。

 ……丁度良いから、少しおおるまいとに教えてやるとするか。領域展開が、どのようなものであるのかを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まず、儂と小僧で表通りに飛び出した。当然即座に、おおるまいとは反応してくる。と、同時。筋肉阿呆の後ろを取るように、緑谷が飛び出した。右腕には、小僧の籠手。特大の大爆発を起こせるあれじゃ。

 

「ごめんなさいオールマイト!!」

 

 爆発が起こる。と、同時。呪力を練り上げ掌印を組む。おおるまいとの姿は爆発に呑まれて見えていないが、呪力は見える。ならば問題は無い。ここからは、時間稼ぎじゃ。この試験に、合格する為の。

 

「領域展開」

 

 おおるまいとが動けないのは、一瞬じゃろう。じゃけど一瞬あれば、展開出来る。何も問題は無い。緑谷と小僧を領域に入れてしまわぬよう追い出しつつ、領域を構築していく。

 

 

奉迎赭不浄(ほうげいあかふじょう)

 

 

 やがて出来上がる、見慣れた血の海。この場に居るのは、儂とおおるまいとの二人のみ。もうこれで、勝負は着いたようなものじゃ。ここから、こやつを逃がすつもりはない。そもそも逃げられん。こうなってしまった以上、もうどうすることも出来んじゃろう。

 それだけ、領域展開は強い。招き入れた者を理不尽に、そして不可解に終わらせてしまう。

 

 まぁもっとも、おおるまいとを殺すつもりはない。時間を稼ぐだけじゃ。傷付けるつもりもない。

 

 じゃから。

 

 

「赤縛」

 

 

 あと二分弱。ここで止まっていて貰うぞ。おおるまいと。

 

「っ、これ……は……!?」

「……ついでじゃ。教えといてやる」

 

 赤縛により縛られたおおるまいとを前に、儂は血の海に座り込む。もう戦う必要は無い。ただひたすらに、こやつを縛り続けるだけじゃ。残りの呪力量や維持時間を考えても、余裕はある。特に問題は起きないじゃろ。ただし、今宵の呪眼(のろいまなこ)作成は無しになってしまうがな。ここまで呪力を使わされたのは、今生では初めてじゃよ。まったくこの筋肉阿呆と来たら、とんでもないのぅ。

 

「これは領域展開と言っての。相手を閉じ込め、殺す為の結界じゃ。まぁ、呪術の奥の手と考えれば良い」

「……必殺技、と言うところかな?」

 

 赤縛を力ずくで引き千切ろうとしているが、無駄じゃぞ。さっきまでの赤縛と今の赤縛とでは、物が違う。仮に引き千切ったとしても、直ぐまた縛れば良いだけの話じゃし。

 

「いいや。儂の領域展開に、必殺は付与されておらん。する理由が無いからの」

「……何だかよく分からないけど、その領域展開とやらで私を足止めするのが目的のようだね」

「そうじゃな。あの二人が脱出するまで、お主にはここに居て貰う。ついでに領域展開について教えてやるから、ちゃんと覚えておけ。

 何せ、そろそろ知っておかなければ命に関わるからのぅ」

 

 この先、おおるまいとが領域展開を使える呪詛師や呪霊を相手にする可能性は有る。もっと手っ取り早い領域対策を教えることは出来ぬが、それでも領域展開について詳しく説明しておかなければな。

 

「……呪術の授業ってことかな? 試験中に?」

「そんなところじゃ。さて、領域展開と言うのはじゃな―――」

 

 もう少ししたら、小僧と緑谷が脱出する。そしたらひとまず、実技試験は終わる。合格出来るかは知らんが、補習は嫌じゃ。

 

 おおるまいととの呪い合いは、楽しかった。こやつのような猛者とまた呪い合えるのは、いつの話になるんじゃろうか?

 儂としては、別に毎日でも構わんのじゃけど……。

 

 何はともあれ。こうして儂の実技試験は幕を閉じる。殺し合いにならなかったのは残念じゃけども、そこは仕方ない。中々に楽しめたと、思うことにする。

 

 

 

 

 

 









三人称による補完は要りますか?

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