待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
期末試験、その実技試験が終わった。領域の中におおるまいとを閉じ込めておくのは、そう難しい事ではない。ただ、領域展開の説明を終えた後、試しに赤縛を引き千切って結界の縁を殴るのは止めて欲しかったのぅ。結局こやつが脱出することは無かったが、力業で抜け出すんじゃないかと思って冷や冷やしたわ。結界の縁に亀裂が走った時は、流石に焦った。
筋肉で領域内から脱出しようとするな。幾ら呪力や個性が有るからと言って、無茶苦茶をするでない。たわけ。
とにかく、じゃ。おおるまいとに冷や汗をかかされはしたものの、領域展開が何であるかを説明することは出来た。何がどうして術式が必中になるのか詳しく説明を求められた時は、面倒ではあった。教えたところでこやつに領域をどうこうする術は無いんじゃけど、それで納得するのであれば教えておかない理由は無かった。ひとまず納得はして貰えたので、良しとする。
そんなこんなで、儂は呪力が完全に尽きてしまう前に領域を解いた。基本的に領域の中では、領域の外で何が起きているかを認知することは出来ない。逆もまた然り。領域を解くと、緑谷と舎弟が脱出したことが放送されて期末試験の課題は無事達成。儂はおおるまいとに連れられる形で街を模した運動場を出て、
車に乗り込むと、視聴覚室に連れて行かれた。早めに試験を終わらすことが出来た組は、他の組の試験模様を観戦していろとの事じゃ。疲れているから寮に帰りたかったが、そうもいかないらしい。と、言うわけで。
試験を終えた儂は現在、視聴覚室で他の組の試験模様を観戦中じゃ。投影された映像は幾つも有り、その内のひとつでは梅雨と峰田と瀬呂がみっどないと先生相手に頑張っておる。瀬呂は眠っているし、峰田は怯えているし、梅雨は大変そうじゃのぅ。芦戸と切島と上鳴の三人は、根津校長に追い詰められている。鼠にぐらい勝てと言いたいところじゃが、中々とんでもない策略に嵌められてもう駄目そうじゃ。この三人……実技試験を落とすかも知れん。
「廻道。試験はどうだった?」
「おお、常闇。おおるまいとと殴り合えて楽しかったぞ? あんな殴り合いがまたしたいのぅ」
視聴覚室。その出入り口付近の席に座って居ると、奥の方に居た常闇がいつの間にか隣の席に腰掛けていた。儂等三人より早く試験を終えたのは、僅か一組。常闇と轟、そして八百万の組じゃな。こやつ等三人の相手は相澤先生じゃったか? よく試験を終わらせられたのぅ? 個性を封じられながら、それでもどの組よりも早く試験を終わらせたのは大したものじゃと思う。何をどうして試験を終えたのか、後で詳しく聞くとしよう。
「オールマイトと……殴り合った……?」
「うむ、殴り合ったぞ。楽しかったのぅ」
思い出すと、笑顔になってしまう。猛者と呪い合うのは堪らなく楽しい。おおるまいととは、何度殴り合っても良い。次の機会はいつかのぅ!?
「狂気の沙汰。悪鬼羅刹め……」
……貴様。呆れるならまだしも、人を狂人扱いするでない。冷や汗をかきながら引くな、許さんぞ。儂の趣味嗜好は、くらすめえとの中では貴様が一番理解している筈じゃろ。何でいちいち、儂が何かする度に引くんじゃ。あと、人の事を鬼だの羅刹だの言うんじゃない。
よぅし分かった。その鳥頭を掻き回してやろう! こら、頭を差し出せっ! 抵抗するな! 何度言っても分からん鳥頭め!
「や、やめてくれっ! 渡我先輩に見られたら殺される……っ!」
「被身子なら試験中じゃろっ。この鳥頭め、儂は鬼でも修羅でも羅刹でもない!」
逃げれると思うなよっ。貴様が儂の腕を振り解けたことは無いじゃろうが。情けない奴め。
しっかし。この鳥頭は相変わらずの撫で心地じゃのぅ。真っ黒で刺々しいから固そうに見えるんじゃが、これが意外と柔らかい。触り心地が良いんじゃよなぁ。こやつの羽毛で座布団を作ったら、良い感じになるんじゃないか?
などと思いながら映像を眺めていると、峰田がみっどないとの動きを封じ、梅雨が瀬呂を舌で簀巻きにして脱出しおった。梅雨の指示か? 何にせよ、無事に試験を終わらせられたんじゃから大したものじゃ。
切島の組は……もう駄目そうじゃ。儂が迷子になった運動場がんまを駆け回っているんじゃけど、行く先々の建物を崩されて道を塞がれておる。あやつ等、補習地獄行きか? 何、気にするな。儂もそうじゃろうからな。
麗日と青山、そして葉隠の組は……これも良くないのぅ。相手は十三号なんじゃけど、あやつの指に吸引されそうになっている。柵に捕まって吸い込まれないように抗っているものの、いつまで耐えられるのか。途中で青山が膝から光線を出して抵抗していたが、十三号の指は光すら吸い込みおったわ。
耳郎・口田・障子の組は森の中で、あの喧しい英語教師相手に粘っておる。度重なる騒音に苦しめられて居るが、諦めている感じは無い。どうにかして大きすぎる騒音を掻い潜り、接近さえ出来れば何とかなるんじゃないか? 障子が居るしな。近接戦が出来ないわけじゃない。
最後に、飯田と尾白と砂藤の組。ぱわあろおだあが地面に穴を空けまくってて飯田の機動力が殺されている。更には尾白と砂藤の二人は接近しないと何も出来ん。なのにぱわあろおだあは、穴の中を移動しまくるわけじゃからまるで手が出せん。こやつ等も駄目か……? あ、いや。砂藤が穴に埋まる前に、飯田と尾白を脱出口まで投げ飛ばした。大した力じゃの。
お、麗日組が十三号を手錠で拘束した。何があったか見逃したが、ひとまず何とかなったらしい。そう言えば麗日の奴、職場体験で素手での戦い方を学んで来たんじゃっけ? まだまだ荒削りのようじゃが、それなりに形にはなっているようじゃの。でなければ、格上の
耳郎組は、ぷれぜんと・まいくが虫まみれになった所を障子が捕縛した。大丈夫かあの英語教師、泡吹いて倒れてるぞ? 障子は両耳から血を流しているし、耳郎だって片耳から出血しておる。どうやら二人とも、鼓膜が破られてしまったようじゃな。
切島組は……やっぱり駄目じゃった。時間切れとなった。この三人はやはり補習地獄行きか……。そう嘆くな。どうせ儂も補習地獄行きじゃ。学校に残るのは、きっとお主等だけではないぞ。
「……全チーム、終わったみてぇだな。着替えて教室に戻ろう」
「う、うん……! みんな凄かったね、轟くん! 特に砂藤くんのパワーや口田くんの個性による地中からの虫攻撃、あと葉隠さんに青山くんのレーザーが当たった時なんか最初は何が起きたか分からなかったけど、葉隠さんの個性は光を屈折させるみたいで!
本当にみんな凄かったよ! 障子くんは鼓膜が破られても耳を複製してたから意志疎通に問題無かったし、大きな体を生かして耳郎さん達を庇う姿は安心感が凄くって! それからそれから……!」
「……そうだな」
試験が終わると、視聴覚室が騒がしくなってきた。特に喧しいのは緑谷じゃけど。そんな一気に捲し立てないでやれ。轟が引いてるぞ。舎弟なんて、騒いでる緑谷を見て思いっきり舌打ちしとる。
さて。他の組の実技試験が終わったなら、更衣室に向かって着替えるとしよう。席を立つと、誰かに後ろから肩を叩かれた。振り返ると、八百万が立っていた。何故かは知らんが、試験が始まる前より表情が明るい。
「廻道さん。一緒に着替えに行きましょう」
「……うむ。道案内を頼む」
「お任せください! 私がきっちりエスコートしますから!」
何じゃ貴様、無駄に明るいの。そんなに実技試験を無事に終われたのが嬉しかったのか?
まぁ、浮かない表情をしているよりはずっと良い。常闇の頭を離すのは少し名残惜しい気がするが、今日はこのくらいにしておいてやろう。さっさと着替えて、寮に帰りたい。そろそろ昼時で、腹が空いてきたからのっ。
あと、常闇の頭を撫で回していたら被身子の頭を撫で回したくなった。普通科は午後も試験が有るから邪魔はしたくないんじゃけど、少しぐらいは……良いよな?
ちなみに。常闇組の実技試験は、八百万の作戦で何とかなったそうじゃ。そこまでに至るまで、常闇は個性を消されつつも何とか素手で相澤に抗い続けたらしい。体育祭で儂に負けたことで、近接戦が出来るように鍛えていたそうじゃ。密かに尾白に体術を学んでいたとか、何とか。言ってくれれば儂が鍛えてやったのに。水臭い奴じゃのぅ。
あと、個性を消されたことで新たに生み出した技が使えなかった事が不満じゃったらしい。
どれ、今度どの程度近接戦が出来るようになったのか儂が見てやろう! 新技とやらも、気になるからのっ!
脱出を推奨されない閉じる領域展開を拳で脱出しようとするオールマイトの図。これには円花もびっくり。
他のチームの様子もさらっと触れつつ、期末テスト編はこれで終わりになります。
次回はI・エキスポです。メインはデートで、バトルはオマケ程度に考えています。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ