待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!! 作:一人称苦手ぞ。
夏休みが始まった。ので、儂はこれから飛行機とやらに乗らなければならない。今日から一泊二日で、被身子と
ここ最近は学校の敷地内から出ることが出来んかったからのぅ。被身子が儂と出掛けたがってたのも事実じゃし、儂だってたまには被身子と出掛けたい。じゃからこの招待を受けることにした。今回外出許可が出て、
何せ、林間合宿に向けた準備の為の買い物すら許して貰えなかったぐらいじゃ。そろそろ
そうそう、林間合宿と言えばくらすめえと達がどこぞの商店街へ買い物に行ったんじゃけどな。そこでたまたま、緑谷が
で、じゃ。飛行機に乗らなければならない。空港とか言う場所には初めて来た。これから儂と被身子は空の旅をするんじゃけど……。
本音を言うと、飛行機に乗りたくない。
「なぁ、やっぱり船では行けんのか?」
色は違うがお揃いの服を着た被身子を見上げる。ここで船に変えようと言ってくれたら、儂は嬉しい。
「行けませんよ? 円花ちゃん、もしかして飛行機怖いんですか?」
「いや……別に……。怖くはない、が……」
乗り物が怖いなんて、そんな筈は無かろう。あんな鉄(?)の塊に乗って空を飛ぶことの何が怖いんじゃ。ただ単に、船に乗りたいだけじゃ。そう、儂は船旅がしたい。じゃから駄目元で聞いてみたってだけのことじゃ。
おい、何じゃ。そんなにじっと見詰めるな。こら、外じゃぞ。人前で抱き締めるな。そんな事したって、儂は船が良いぞ。
「意外なのです。怖いものなんて無さそうなのに……」
「じゃから、別に怖くは……無い、が……?」
「大丈夫ですよぉ。じゃあ、ずっと手を握っててあげますから。ね?」
まぁ、それならば怖くはない、……か? いや別に、飛行機なんて怖くないが。怖くない、怖くない。職場体験以来、高過ぎる所に行きたくないだけじゃ。おおるまいとのせいで死にかけたからの。
「……離したら怒るぞ。本気で怒るからな?」
「んふふ。今日の円花ちゃんはカァイイですっ! いっつもカァイイですけど!」
喧しいわ。ほら、さっさと手を握らんか。気が落ち着かない儂を安心させろ。そんな楽しそうに笑うな。つい見惚れてしまうじゃろ。いや、被身子が今日を心待ちにしていたのは知っているし、儂だって楽しみにしていたのは事実じゃけどな。
手を繋ぐと、少し安心出来た……気がする。やっぱりそうでもない。飛行機、嫌じゃなぁ。何で船で行くことが出来ないんじゃ。不便な島じゃな、あい・あいらんどとやら。
そんなこんなで。儂は結局飛行機に乗ることになってしまった。
◆
飛行機に乗った。今、空を飛んでおる。被身子は窓の外を見て楽しそうに浮かれているが、儂はとても外を見る気にはなれない。柔らかな椅子に座っているのに、実はこの乗り物が空を飛んでいるなんて、恐怖でしかない。まさかこんなに空を飛ぶことが嫌になっているとは……。昔は空を飛べたら迷子にならなくて良いなんて思っていたのにのぅ。
くそっ、あの筋肉阿呆め。許さん。末代まで呪ってやる。
ああ、もう嫌じゃ。帰りたい。いや、帰れないが。大丈夫なのか? この飛行機、
早く目的地に着いてくれ。一秒でも早くっ。
「もぅ、そんなにくっ付いちゃって。そんなに怖がらなくても、大丈夫ですよぉ」
手を繋ぐどころか腕に抱き付いていると、頭を撫でられた。子供扱いされている気がする。解せぬ。誰だって怖いもののひとつやふたつぐらいは有るじゃろっ。貴様だって怖いものぐらい有るじゃろうに!
「被身子よ、人は高い所から落ちると死ぬんじゃぞ?」
「それは知ってますけど」
「死ぬのは怖かろう?」
「んー。怖いと言うより、嫌です。でも円花ちゃんと一緒に死ねるなら嬉しいですけど」
「……何を言っとるんじゃ貴様」
ううむ。それは笑顔で言う言葉では無いと思うが? さも当然のように、重いことを口走るな。そういうところじゃぞ貴様。まぁ、駄目とは言わんが。儂は被身子を残して死ぬつもりは無いし、被身子より後に死にたい。残されるのは構わんが、残して逝くのは嫌じゃからな。
それより、手が止まってるぞ。もっと撫でろ。飛行機が無事に着陸するまで、儂を甘やかさんか。そもそも、窓の外など眺めるな。せっかくの
って、おい。何じゃその顔は。悪どい笑みを浮かべおって。貴様がその顔をした時は、大抵ろくな事にならん。今度は何をするつもりじゃ。
「たった四時間ぐらいですから、大丈夫なのです。怖くない怖くない」
何で子供扱いするんじゃ貴様。抱き締める……のは許す。今は許す。何ならあと四時間ぐらい、こうしていろ。儂もそうするから。
……それにしても、今日の被身子は良い匂いがする。何かの柑橘の、爽やかで甘い感じの……。香水でも付けているのか? 久し振りの
ふと、首にある細い鎖が目に入る。いつものように首からぶら下げている古ぼけた指輪も、目に入る。十一年も肌身離さず身に付けている割りには、綺麗なままじゃ。まぁ儂の呪力が多少染み付いておるからの。いっそ完全に呪具にして、何年経とうと大丈夫なよう頑丈にしておくか?
んん……。なんかこそばゆいのぅ。別の意味で落ち着かなくなってきた。あと四時間もこやつにくっ付いているのは、間違いかもしれん。あの時の思い出をまだ大事にされていると思うと、心が落ち着かない。
なんなんじゃもう。そんなに儂を愛し続けて。儂とてこやつの事は愛しく思っているが、ここまで愛されるとは思わなかった。
つい、被身子の顔を見上げてしまう。猫のような瞳を見詰めていると、見詰め返される。顔が熱くなって来たような気がするから、目を逸らす。そんなに見詰めるな。気恥ずかしい。
「んむっ。こら、被身子っ」
「ごめんなさい。つい、したくなっちゃって」
貴様。外ではするなと言っているじゃろうが。まぁここは飛行機の中で、周囲に居るのは知らん顔の大人ばかり。雄英教師は居ないわけじゃし、そもそも雄英の外じゃし。久々の、
……。まぁ、今日ぐらいは良い、……か?
いや、いかん。ここで儂がしっかりしないと、更にあれこれと要求されてしまう。歯止めが効かなくなってしまう。それは良くない。まっこと良くない。
「今日と明日は、いーっぱい楽しみましょうね?」
「……うむ。せっかくじゃしな。楽しもうか」
「はいっ。ところで、そのぉ……」
「何じゃ?」
「もう一回、しても良いですか?」
……。迫られる。抱き締められて、逃げ場がない。そもそも逃げる気なんて無いが。
仕方ないのぅ。今日は、今日ぐらいは許してやるか。久し振りの
「……雄英に帰るまでじゃぞ」
今回の
明日! 雄英に帰るまでじゃからなっ!
始まりましたI・エキスポ編。オールマイトのせいで高所恐怖症気味になってしまった円花です。カァイイね。
三人称による補完は要りますか?
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欲しい
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要らん
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良いから一人称で突っ走れ