待て! 止さぬか! 儂じゃなかったら死んでおるぞ!!   作:一人称苦手ぞ。

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逢瀬の時間。あい・あいらんど

 

 

 

 

 

 四時間程に渡る空の旅が終わった。帰りも同じ目に遭わなければならないと考えると、今から憂鬱じゃ。何で楽しい時間の後に、また怖い思いをしなければならないんじゃ。まぁ寝てしまえば何て事は無いと気付けたから、帰りは最初から寝よう。でないと、何度被身子に唇を貪られるか分からん。実際、飛行機の中で何回接吻(きす)されたか分からん。途中から音を立てるようになったことは、許さんからな。恥ずかしかったんじゃぞ。貴様、外で儂を辱しめて何が楽しいんじゃ。もうずっと、嬉しそうな顔をしおって。

 

 ……許さん。許さんからな。断じて許すまじ。後で覚えておれよ、被身子の阿呆。たわけっ。接吻(きす)魔っ!

 

「ごめんなさい。ちょっとやり過ぎました」

 

 謝るなら舌先を出すな。さてはろくに反省しとらんな?

 

 まったくこやつと来たら。何でこんな女子(おなご)に儂は惚れてしまったのか。愛だの恋だのに理由は要らんとは思うが、謎は謎じゃ。初めて会った時は、ただ放って置けぬだけじゃったんだけどなぁ。それが気が付いたら許嫁で、気が付いたら恋をして。

 ああ、もう。顔が熱い。今は真夏じゃから、多分そのせいじゃ。断じて、被身子の顔を見ていたら胸が高鳴ったわけではない。少し熱中症気味なだけじゃ。この熱中症は反転術式(はんてん)しても治らぬから、困ったのぅ。

 

「ん。ほれ、時間が勿体無いから立ち止まるな」

 

 今は被身子の顔を直視出来ぬので、仕方なく顔を逸らして右手を差し出す。さっさと空港を出て、逢瀬(でえと)をしよう。と言っても、この動く廊下を歩くのは……何とも変な感じじゃな。歩く度に僅かに地面から跳ね返される体験は、これまでしたことが無いしの。しかも歩く度に、何もない宙に儂らの顔写真やら個人情報やら、荷物の中身なんかが映し出される。

 

「えへへ……。じゃあ、行きましょうか!」

 

 ずっと嬉しそうにしている被身子が、儂の手を取った。当たり前のように指を絡めてくる。余程気分が上がっているのじゃろう。絡まった指が手の甲を押したり、擦ったりしてくる。じゃから仕返しに、同じ事をしてやった。そしたら益々ご機嫌になって、どんどん口角が吊り上がっていく。これこれ、今からこの調子じゃと後で疲れてしまうぞ? まったく仕方の無い奴じゃ。

 

「ね、円花ちゃん。ひとつ、お願いがあるのです」

「何じゃ? 言うてみろ」

「その、I・アイランドって個性を自由使用しても良いんですけど」

 

 ……ああ、確かそんな話を聞いた気がするの。この都市は、日本と違って外で個性を使っても犯罪にならない。勿論、悪い事をするのは駄目じゃ。人に危害を加えない範疇であれば、個性の使用が許されておる。

 で、被身子よ。何でそんな話を今するんじゃ? これからの逢瀬(でえと)には関係ないじゃろ?

 

「だからぁ、今日は……円花ちゃんに変身しても良いですか……?」

「……」

「やっぱり駄目、……ですか……?」

 

 何を言っとるんじゃこやつは。儂に、変身する? せっかくの逢瀬(でえと)なのに?

 それは……、ううむ……。儂に変身した被身子と、逢瀬(でえと)か。儂が思い浮かべていたものとは掛け離れてしまう気がする。それは反対したいところじゃが、こやつの趣味嗜好は把握しているつもりじゃ。被身子の趣味を否定するつもりはないし、好きにしたら良いと思っては居る。

 私生活の中でも、たまに儂に変身して儂の服を着てる時があるしの。それを咎めるつもりはないし、好きにさせてるのは儂の方じゃ。

 

 ……ううむ……。そうじゃなぁ……。

 

「……明日」

「はい……」

「……明日も儂とでえとしてくれるなら、今日一日は変身してても良いぞ?」

「……!」

 

 まぁ、せっかく個性が自由に使えるんじゃからな。個性が無ければ出来ない楽しみじゃって、有る。特にこやつの場合は、個性を使うことがひとつの楽しみになっておるしの。

 

「それと! 夜までじゃっ。ぱぁてぃいがあるし、あと……儂は自分に抱かれたいとは思わんからな」

「はいっ。ありがとうなのですっ」

 

 んぐっ。こら、急に抱き付くな。今は慣れない履き物をしてるから、急に来られると踏ん張りが……!

 

「うぐっ。き、貴様……っ」

 

 押し倒されたわ。思いっきり押し倒されたわ。お陰で背中が痛い。頭も打った。

 

「大好きです! 好きっ、愛してますっ!」

 

 ああ、これは……。しばらく落ち着かないやつじゃ。間違いない。こうなった被身子は、当分は気分が昂ったままじゃ。ここが寝室なら流れのままに抱かれるんじゃが、ここは外じゃ。これ以上は良くない。絶対に駄目じゃ。何とかせねば。でないと、とんでもない事になってしまう。

 

「こらっ! 人前ではするなっ。それは夜、ほてるでじゃっ!」

 

 いかん。いかんぞ。早く立ち上がらなければ。さもないと、始まってしまうっ。そうなったら、今日一日が台無しになる!

 

 外では公序良俗は守らんか!! こらっ、被身子っっ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 危ないところじゃった。いやもう、(まこと)に危なかった。寸前のところで被身子が自制してくれたから良かったものの、接吻(きす)されていたら何がとは言わんが始まってしまうところじゃった。まだ逢瀬(でえと)は始まっていないのに、英雄(ひいろお)や警察捕まってしまうなんて事態にならなくて良かった。

 その後、歩く床の上から起き上がった儂と被身子は、少しの手続きを経て空港を出た。これから、一度宿(ほてる)に向かう。荷物を置いて、被身子が変身を済ませたらそこから逢瀬(でえと)じゃ。少々予定が変わってしまったが、儂に変身していようが被身子は被身子。こやつと過ごすことに変わりはない。

 

 そんなこんなで、今は見慣れない街中を歩いておる。日本とは大分様相が違う風景に、目が奪われる。何と言ったら良いんじゃろうなこれは。華やかと言うか、輝かしいと言うか。人の数も多いが、日本人は殆ど居ないようじゃ。目に付く人のだいたいが外国人で、それがより一層ここが日本でないことを強調している。

 思ったんじゃけど、この島の公用語は英語か? じゃとしたら儂、誰とも喋れんのぅ。通訳は被身子に任せるしかない。こやつは英検準一級じゃ。儂の何倍どころか十数倍は英語が出来る。つまり……迷子になったらいつも以上に大変と言うことか? 迷子になるつもりはないが、一応気を付けなければ。

 

「円花ちゃん、これ付けてください」

「何じゃそれ」

 

 見知らぬ風景を眺めていると、被身子に小さな機械? を差し出してきた。何じゃこれ? 何をどうしろと?

 

「耳に付けますね」

「っ、こら! 耳に触るなっ!」

「んふふ、ついでです。ついで」

 

 ついでで耳を撫でるなっ。さも当然のようにせくはらしおって……! 貴様、今日は(まこと)に自制出来ておらんな!?

 

「これ、周囲の言葉を日本語に変換してくれるんですよ。英語が出来ない人でも言葉は聞き取れるようになる優れ物なのです」

「……?」

「例えばぁ……。let's have a lot of sex tonight(今夜は沢山えっちしましょう)

「っっ」

 

 貴様、耳元で何を囁いて……っ! そんな事、いちいち言わなくて良いが!? どうせ言っても言わなくても、貴様はそのつもりじゃろうがっ!

 

 ……。……ああ、なるほど。これを付けていれば、英語を日本語にして聞かせてくれるのか。機械から誰とも知らぬ声が聞こえてくるのは何とも言えぬ気分じゃけど、何も分からないよりは良いか。便利な道具があるんじゃなぁ。

 

「それ、失くしちゃ駄目ですよ? 一応GPSは付いてるんですけど、壊したり紛失すると弁償しなきゃいけないので」

「幾らじゃ?」

「十万円なのです」

 

 ……高いの。失くさないように気を付けねば。そんな高価な物を耳に付けて歩かねばならないとは、便利じゃけど恐ろしいのぅ。

 

「じゃあ、行きましょうか。はぐれちゃ駄目ですよ? ここで迷子になったら大変なのです」

「ならんが? 手を繋いでるのに、どうやったら迷子になるんじゃ」

「だって円花ちゃんですし。ちょっとでも目を離したら、絶対迷子になっちゃうのです」

「ならんが? 迷子になんてならんが?」

 

 疑われている。物凄く、疑われている。じゃから、手を繋いでるのにどうやって迷子になるんじゃ。儂が方向音痴なのはその通りじゃけども、そこまで酷くは無い! ……筈じゃ。そうじゃよな……?

 

「ほんと、気を付けてくださいね? じゃあ、ホテルに行きましょうか」

 

 こうして、儂と被身子は宿(ほてる)へと向かう。幸いなことに、この都市に呪霊は見当たらない。何も気にせず逢瀬(でえと)を楽しむことが出来そうじゃ。

 

 

 

 

 

 








ここまでずっと触れるの忘れてた&そろそろ触れておかないとこの先機会が無いということで、変身デートになります。変身しないデートも書くつもりですので、シリアスはほぼ出番無しの予定です。

三人称による補完は要りますか?

  • 欲しい
  • 要らん
  • 良いから一人称で突っ走れ
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