俺のヒーローアカデミア   作:3z

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NO:10 病室ではお静かに

 物心ついた時に、初めて聞こえたのは耳をつんざく罵声だった。

 意味はわからなかったし、何で言われたのかすらわからない。ただそこには敵意があった。愛などあるはずがなかった。

 叩かれた。殴られた。蹴られた。切られた。叩かれた。蹴られた。殴られた。叩かれた。叩かれた。蹴られた。殴られた。蹴られた。吐いた。殴られた。蹴られた。叩かれた。蹴られた。殴られた。歯が折れた。乳歯でよかった。殴られた。蹴られた。切られた。人間は血を流しすぎると、動けなくなることが分かった。

 罵倒でしか呼ばれないせいで、自分の名前も忘れてしまった。

 生まれてきたことを呪うほどの感情すらなかった。

 それでも…死にたくなかった。

 別に生きて何かをしたかったわけじゃない。

 ただ、生きたいという生物として、最低限の欲求に従っていただけだ。

 でも、このままじゃ生きていけない、というのは子供でも分かった。

 だから俺は両親を殺した。

 人間は血がいっぱい出ると動けなくなるのは知っていた。

 だから寝ている両親を切ることにした。

 最初は父親から。どこを切ればいいかわからなかった。

 だからいっぱい切った。

 腹を切って、内臓をかき混ぜた。血と肉と、よく分からないブヨブヨした物がぐるぐる回っている。肉の匂いが、鼻に付いて嫌だった。

 腕を切った。手首を切ると血がいっぱい出てきて、少し面白かった。でも、手に付いた血は、べっとりしていて、気持ち悪かった。

 父親が何かを言っていた、けれど無視した。言葉の意味が文字通りわからなかったから、首を傾げることしか出来なかった。

 そして、首を切った。そうすると父親は何も言わなくなった。

 首を切れば、人は何も言わなくなるのが分かった。

 母親はいつの間にか起きていた。

 甲高い声で何かを言っている。何を言っているかわからない。ただ敵意があるのは分かった。

 どうすれば人を殺せるかは、さっき理解した。

 俺は母親の首を切った。

 そうしたら、母親だったものは何も言わなくなった。耳障りな音は、もう聞こえなくなった。

 

 

 家の外に出た。

 一度も外に出たことがない、という訳ではなかった。でも、こんなに落ち着いて、星空を見たことはなかった。

 ただただ、頭上に広がる景色に心奪われた。

 地面に素足で立つのが痛かった。だから、両親が履いていた靴を履こうとした。

 ダメだった。

 サイズが違いすぎた。

 

 仕方なく、辺りを歩いているとたくさんの靴が置いてある建物があった。

 

 

 

 

 靴を手に入れた。これで足が痛くない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目が覚めた。同時に今まで感じていなかった痛みを感じた。

 「痛え…」

 腕がぐちゃぐちゃになっているんだ、それは痛いに決まっている。それにしては痛みが軽い気もしたが。

 どうやら自分は保健室にいるらしい。

 バァンー!

 扉を思いっきり開いたのだろう。普段だったらどうも思わないが、この状態ではそうもいかない。脳みその中で音が反響している。

 「おい、少し静かに…」

 「無型サァァァァァァン!!!」

 扉を開けたその男。立派なリーゼントに百九十を超えているらしい恵まれた体格を持つ男。そんな男が体格相応の大声を張り上げやがった。

 「うるせえ。少し黙れ。」

 「アッハイ、スイマセン。」

 さっきまでの勢いはどうしたのか、一気にしおらしくなってしまった。流石に申し訳なかったので、フォローは入れようと思った。

 「まぁ、見舞いに来てくれたのは素直に喜ぶべきだな。ありがとな。」

 「無型さぁァァァん!!」

 「話聞いてた?」

 もういいや。

 「無型君!?起きたのかい!?」

 扉を開けて見慣れた顔が現れた。

 「おう、飯田か。」

 「…ところで、こちらの方は?」

 「自分!無型サンの舎弟の駆動鉄器って言います!」

 「こいつが勝手に名乗ってるだけだ気にすんな。」

 「…そうなのか。」

 まぁ、困惑するよな。どう考えても不審者な男が俺の舎弟名乗っているんだし。

 「それで、怪我は大丈夫なのか。」

 「無型サンなら大丈夫っすよ。」

 「お前なぁ。」

 この、ガッチガチにギプスで固定された腕が見えないのか。あと、今更ながら背中も何かで固定されているのに気づいた。

 「それなりに大怪我だぞこれ。」

 その時、よくわかってるじゃないか。と、どこからか声がした。

 また誰か来たらしい。扉の方を見やると、めっちゃ小さいお婆さんがいた。

 座敷わらしみたいな等身だ。

 「妖怪っすか?」

 このバカ。

 「なんてことを言うんだ駆動君!?彼女はリカバリーガール!雄英の古参教師。無型君の腕を治療したのも彼女なんだぞ!」

 え、まじで?

 「マジっすか!?スイマセェェンッッ‼︎」

 「やけに痛みが少ないと思ったが、あんたが治してくれたのか。」

 「完全には治ってないよ。かなりの重傷だったからね、これに懲りたらあんな無茶、二度とするんじゃないよ。」

 「…はーい。」

 リカバリーガールは何か言いたげな顔をしていたが、すぐに病室を出ていった。なんでも、俺並みのバカがまだいるらしい。腕の方は個性を使って二日くらいで治すと言っていた。

 「あっ、そうだ飯田。緑谷は大丈夫か?」

 「緑谷君か。重傷だったがリカバリーガール先生のおかげで大丈夫だ。」

 「そうか、良かった。」

 それからしばらく話をした。USJの時のこと。どうやら飯田は、しっかりと助けを呼べたらしい。

 ある程度時間が経つと、飯田と駆動は俺の病室を後にした。

 「さて、もう一眠りするか。」と、布団に包まろうとした時、ガラガラとドアの開く音がした。

 そこには尾白がいた。

 「無型。」

 そう言いながら、尾白は俺に近づいてくる。その表情はどこか険しい。そして俺は思い出す。ヴィラン達を尾白に押し付けたことを。

 どう言い訳しようかと考えている間に、尾白が口を開く。

 「俺を、弟子にしてくれ!」

 「は?」

 変な声が出た。

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