仮面ライダーレイブン   作:rusty17852〆6247

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仮面ライダーレイブン 第3夜 第3幕

 

キリクは大剣を軽々と振り上げて斬りかかってきた。

スイングスピードは並のアークスのそれではない。半端に躱そうとしても当てられると

判断し、おれは刀を構えて初撃をしのいだ。剣はおれの首先で何とか止まり、

強い衝撃がアーマー越しに伝わってくる。パワーも精度も凄まじい。強敵だ。

 

続けざまに大剣が何度も振り下ろされる。刀を振るい、辛うじて

打ち合えているが、このままではジリ貧だ。

 

「戦い慣れテいル……お前アークスダな?」

 

容赦ない連撃を仕掛けながら、独特のしゃがれ声でキリクが問いかけてきた。

 

「オレたチはアークスとしテ任務を遂行しテいルに過ギん。

同じアークスが何故邪魔をすル?」

 

「その任務とやらに納得がいかないからだ。命令に疑問も抱かないのか?」

 

 

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答えながら、おれはキリクの大剣に生えている棘に刀を引っ掛けて攻撃を打ち払い、

一旦距離を取った。……ヴォイドは市民を襲撃し、それを隠蔽している。

任務だろうと自分たちの行いが非人道的なものだとわかっているはずだ。

 

「昨日も言っタろ。コレは人類の進化と安寧ノための行動ダ……」

 

「子供達をさらった先に進化も安寧もあるものか。

……お前の上司、人間の脳を部品にした制御装置にご執心だそうだな」

 

「ホう?」

 

「ファウ・タオーノス……ハーフキャスト化技術の主任研究者だ。

優秀な……優れた脳を持った子供を大勢知っているだろうな」

 

キリクはやれやれと肩をすくめて見せるや否や、すさまじいスピードで突進してきた。

斬撃を何とか刀で受け止めると、大剣の棘がじりじりと眼前に迫ってくる。

 

「それデ?義憤に駆らレたカ?浅はかな奴ダな」

 

「何が浅はかだ!昨日の化物……あんなモノを制御するために

人の命が脅かされて良いわけないだろう!」

 

言い返しながら打開策を考える。

力では負けている……奇襲を仕掛けて短期決戦に持ち込まなければ

勝ち目はなさそうだ。意表を突くには視覚を奪うのが効果的か。

クロウバレットで閃光弾を放つべく、おれは片手を刀から離した。

 

「昨日の今日でソコまで調べたカ。優秀なアークスだ」

 

キリクはさらに剣を押し込んでくる。ねじ伏せるつもりだろうが、そうはさせない。

 

「それは光栄!」

 

取り出したクロウバレットをキリクの顔面へ向けたその刹那。

 

「ダが所詮はヒーロー気取りダ!」

 

銃を持った左手はキリクに蹴り上げられていた。

咄嗟に刀を横に構えた次の瞬間、両腕に強烈な衝撃が走ると同時に

今まで戦っていた建物の屋上が一気に遠ざかっていった。

 

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一瞬思考が停止したがすぐに我に返り、状況を把握する。

大剣のフルスイングを正面から防御し、吹っ飛ばされたのだ。

落下する前に体勢を立て直すと、数秒後大きな水しぶきが上がった。

 

 

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どうやらおれは吹っ飛ばされた挙句、大学寮付近……自然公園の池に

落ちてしまったらしい。受け身は取れたものの、全身を鈍い痛みが駆け巡っている。

何とか池から這い出て立ち上がると、血と生肉が混ざったような強い臭いを感じた。

 

「鉄くさ……血か?」

「今のところ大して痛くないが、大ケガに気付いて昏倒するパターンか……?」

 

全身を触って確認したが、アーマーに大きな破損はなかった。

マスクのモニターにも特に異常は表示されず、徐々に痛みも引いてきた。

この鉄くささは出血によるものではないようだ。

 

ふと池に目をやると、自分が落下したあたりの水が石鹸水のように虹色に光っていた。

よく見ると、水には油のようなものが浮かんでいる。すくって嗅いでみると、

先程感じた血のような強烈なにおいがした。鉄くささのもとはこの油のようだ。

 

「何だ、これ……」

 

油はおれが落ちた場所以外には浮いていない。体を手で拭って嗅いでみると、

やはり血のような強いにおい。水に浮いている油は、恐らく池に落下した時に

レイブンのアーマーから落ちたものだろう。

しかし、アーマーに元からこんな油がついていたとは考えにくい。

 

今までの行動を振り返ると、思い当たる点が1つ。

戦闘員の装甲服から噴出していた蒸気だ。彼らを倒すたびに浴びてしまっていたが、

この油はその際に付着したのかもしれない。においに気付かなかったのは

緊張状態のせいか……あるいは時間経過でにおいを発する物質という可能性もある。

 

キリクはこのにおいを何らかの手段で正確に感知し、おれの位置を把握して

強襲してきたのではないか。戦闘員達に油が噴き出す装置を装備させておき、

戦闘員が倒された場合は自らにおいを辿って敵対者を始末にかかる手筈。

……隠密性の高い敵を、マーキングしてから叩く周到な手段だ。襲撃を阻止しに

おれが現れることを、キリクは予測していたのかもしれない。

 

キリクは間もなく追撃に現れるだろう。このままでは危険だが、この状況は

チャンスでもある。においさえ無ければ、敵は視覚以外でおれを感知する手段を失うのだ。油を洗い落とせば、においを辿ってきたキリクをこの場所まで引き付けて奇襲できる

かもしれない。池の水に潜り、全身をこすると多量の油が浮きだした。

 

全身を洗い終えて周囲を確認すると、丁度いい高さの建物が公園に隣接していた。

急いで屋上まで跳び上がり、閃光弾を再装填したクロウバレットを構える。

キリクは池に残った油のにおいを辿って、おれが落ちた池までやってくるはずだ。

 

十数秒後、予想通り池の前にキリクが現れた。手にした大剣を様々な方向へ向けて

確認するような素振りを見せている。剣でにおいを感知しているのだろうか。

……そういえばあの剣は獣のような唸り声をあげていた。

仔細はわからないが、敵はおれを見失っているのは確かだ。

 

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おれは跳躍しながら閃光弾を発射し、炸裂と同時に体を回転させて斬りかかった。

 

「ッ!シャラくさイ!」

 

手に伝わったのは鈍い衝撃……斬撃は防がれた。

キャストのくせにどういう勘をしているんだ、コイツ。

だが閃光弾は効いたようだ。キリクは大剣で反撃してきたものの大きく空振りした。

おれが見えていない。

 

「お前の策は見切った。ふんじばって尋問させてもらう!」

 

空振りの隙を突き、おれはキリクの右腕を斬り飛ばした。大剣を握った前腕部が吹き飛ぶ。

 

「……ウォラアァッ!」

 

 

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キリクは全くひるまずアイカメラを換装し、飛び回し蹴りを放ってきた。

凄まじい速度のカウンターキックで、レイブンヤイバーは弾き飛ばされてしまった。

さらに跳び蹴りで弾丸のように突っ込んでくるキリク。

 

「良いゼ!その浅はカな正義!力ずくデ押し通シてみろッ!」

 

「聞き取りにくいんだよ!カタコト野郎!」

 

 

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おれは突撃するキリクを飛び越え、全力でその頭を蹴り落とした。

 

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頭部に打撃がクリーンヒットし、キリクは昏倒した。

すかさず拘束用のワイヤーを取り出し、手足を拘束。襲撃部隊はこれで全員撃破だ。

だがこれで終わりではない。

市民襲撃の首謀者……「ファウ」の居場所を聞き出さなければ。

おれは銃を眉間に突きつけ、キリクをムーンアトマイザーで蘇生した。

 

「お前たちの上司……ファウの居場所を教えろ。

それから昨夜お前が使っていたテレパイプガン……アレもよこしてもらおうか」

 

目を覚ましたキリクは暴れもせず、転送装置を作動させて特殊な形状の銃……

テレパイプガンと、カードキーのようなものをおれの足元に落とした。

 

「……装甲車のキーだ。ファウの研究所の座標ガ登録さレていル。好きに使エばいイ」

 

あまりにも素直すぎる。おれはすぐには拾わなかった。

 

「どういうつもりだ」

「造龍兵計画はお前ノ言う通リ、非人道的なモノだ。

だガ、人命を守ルことを考え抜いタ果ての産物でもあル」

 

静かに語りだすキリク。

 

「個人ノ命と、人類の進化ト安寧。どちラが重いカ。天秤にかケて良いのカ。

オレは何ガ正しいのか、ワカらなくなっタ」

 

「……お前ノような真っスグすぎる甘ちゃんを、オレは待っテいたのかモしれン」

 

「昨日お前が現レた時、こうスることに決めタ。お前を誘い出シて戦い……

オレが勝テばそレでいい。だガ万一負ケたラ……オレが諦めた正義に、

未来を託す。そういうコトにシた」

 

「おい、さっきから何を言ってる」

 

おれに負けた場合は未来を託す?意味が分からないが、抵抗してくる気配もない。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「お前は正義を貫ケる力と信念を持っていルかな。

貫いた正義には責任を持テよ、クク……」

 

本当に抵抗の意志は無いらしい。銃を突き付けたままテレパイプガンと

カードキーを拾い、おれはキリクの前を去った。あとはファウのもとへ向かって

子供達を救う。きっと大丈夫だ。

 

……その時は、そう思っていた。

 

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