造龍兵は素早く接近し、両腕のクローで攻撃を仕掛けてきた。
左右から揺さぶるような連撃が、防御の甘い箇所を正確に攻めたててくる。
辛うじて対応できていたが、徐々に加速する攻撃におれの反応が追い付かなくなってきた。右肩、左腕、右腿。弾き損ねた攻撃が掠り、レイブンのアーマーに傷がつき始めている。
これが……子供たちの脳を組み込んだ制御装置の力か。
制御された造龍兵の攻撃動作には隙がない上、おれの隙は的確に突いてくる。
空間認識能力も非常に高いようで、ダイナミックな動きをする割に、床に散乱した
部材に躓いたりもしない。まるで目が二組付いているかのようだ。
戦闘能力はすさまじい。造龍兵と制御装置が共に量産されれば、
ダーカーはたちどころに殲滅されるだろう。
だが、それは多数の子供たちが脳を抜かれて部品にされることを意味する。
「君、照合できないがアークスだろう!
どうだい、君達が戦うより戦争が早く終わりそうだろ!」
勝ち誇ったように叫ぶファウ。
「この……ッ!」
おれはクロウバレットを取り出してファウに向けた。直後、造龍兵が
カバーするような動きでこちらに接近し、銃を弾き飛ばそうと腕を伸ばしてきた。
予想通りの動きだ。造龍兵のクロー攻撃を刀で受け止め、
おれはクロウバレットで造龍兵の肘に狙いを定めた。至近距離で関節を撃てば
動きを鈍らせられるはずだ。
トリガーに指をかけたところで、刀にかかっていた力が弱まり、
造龍兵が突然飛び退いた。再び両腕のクローを構えてはいるが、動きが目に見えて
遅くなっている。
「エネルギーが…仕方ない、輸液システムを…」
苛立った様子でキーボードを打ち込み始めるファウ。
どうやらエネルギーが十分ではない状態で激しい攻撃を仕掛けたことで、
造龍兵はガス欠を起こしたらしい。このチャンスを逃すわけにはいかない。
一気に踏み込んで斬り付けるべく足に力を込めると、造龍兵は力をためるように
その場にしゃがんだ。
造龍兵の全身が黒いもやで包まれていく。これは……強力な攻撃の
予備動作のように見える。危険を察知したおれはその場に踏みとどまった。
ファウは造龍兵にエネルギーを注入しようと、無防備に突っ立ってキーボードを
打ち続けている。
「……!おい、伏せろッ!!」
ファウに向かって叫んだ次の瞬間。
「え」
造龍兵の纏うもやから黒い影の棘が伸び、ファウの胸部が貫かれていた。
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ファウが断末魔の叫びをあげるより早く、胸部を貫いた影の棘から大量の黒いもやが
放出され、ファウの全身を包んだ。影の棘は無数に生成され、おれの方にも迫ってくる。
なんとか躱しながら、ファウの様子を見てみると、
放出されていたもやは徐々に薄れながら消えていた。
……いや、消えたのはもやだけではない。ファウの姿が跡形も無くなっている。
「まさか……食ったのか……?」
咆哮を上げる造龍兵。同時に衝撃波が発生し、おれは吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。意識が飛びかけたが何とか持ちこたえて眼を開くと、造龍兵の姿が
変化しているように見える。装甲があった箇所には黒ずんだ甲殻。背中からは触手の
ような影が揺らめく。ファウを食ってエネルギーを補給すると共に、自己を強化したのか。
造龍兵は制御装置に向かって歩いていく。次は制御装置を取り込むつもりか。
造龍兵と制御装置が一体化してしまえば、装置に組み込まれた子供たちの脳を救い出す
ことがいよいよ難しくなってしまう。そんな事態は何としても避けたい。
おれは制御装置の前に立ちふさがるように飛び出し、渾身の力で両袈裟斬りを放った。
確かな手ごたえがあったが、造龍兵はダーカー「ダガン」を呼び出し、
盾代わりにして斬撃を防いでいた。ダガンは造龍兵の拳でコアを握りつぶされて
死んでいるようだが、甲殻は殆ど傷付いていない。
反撃が顔面に迫る中、おれはレイブンヤイバーの特性を思い出した。隠密性のために
刀身にフォトンを使用していないのだ。ダーカーの甲殻に効果が薄いのも当然だ。
造龍兵の拳がおれの顔面に叩きこまれ、脳が揺れるほどの衝撃が走る。
幸い意識は保てている。おれは受け身を取り、即座に刀を構え直した。
……視界がおかしい。左側だけ妙に鮮明だ。顔面に手を当てると、手はおれの素肌に
触れた。マスクを割られたのだ。直後、マスクのモニタに警告が表示された。
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[Emergency bail out system active]
マスクの破損により、緊急脱出機能が起動したのだ。脱出までのこり30秒。
転送先は……確かマイルームに設定されている。このまま逃げ帰る訳にはいかない。
この場で造龍兵を倒せずとも、子供たちの脳だけでも救い出したい。
おれはテレパイプガンを取り出し……直後、自身の無力さを再認識した。
テレパイプガンで制御装置を撃てばマイルームへ転送できるが、転送したところで
装置に組み込まれた脳の生命を維持する手段をおれは持っていない。
脳を抜かれてしまった時点で、どうやってもおれ一人では子供たちを救えないのだ。
脱出まで20秒。造龍兵が追撃を仕掛けてきたが、反応が遅れた。防御が間に合わない。
眼前に迫る造龍兵の手刀。脱出まで10秒……防御も脱出も間に合わない。
手刀の直撃を覚悟した刹那、背後からフォトンの光線が発射された。
造龍兵は光線を回避して飛び退く。振り返ると、見覚えのある華奢な青年……
あの日、おれにレイブンドライバーを託した謎の青年がライフルを構えて立っていた。
「生きていたのか、あんた…」
「逃げてくれ。君にここまでさせるつもりはなかった、申し訳ない」
青年はおれをカバーするように造龍兵の前に立ちはだかっている。
直後、脱出装置が作動。おれの身体はテレパイプ空間へ飛ばされた。
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気が付くと、おれはマイルームで立ち尽くしていた。
視界に急激に広がる、静かな自室。日常空間。直前までの死闘がまるで
夢だったかのようだ。
……夢なんかじゃない。ここにあるのは情けなく、救いもない現実だ。
結局誰を救うこともできず、おれは逃げ帰ってきてしまったのだ。
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仮面ライダーレイブン 第3夜 終わり。最終夜へ続く。