早速アキに連絡しようと通信端末を取り出すや否や、電話がかかってきた。
電話の主は何とアキその人。手間が省けたが、妙な胸騒ぎがした。
「もしもし、アキさ……」
「やあ。この前話した造りゅ……っと……」
言い淀むアキ。造龍兵の情報はヴォイドの極秘事項だ。
アークス本部やヴォイドによる回線傍受の可能性を考えたのだろう。
「龍族……龍族の化物だよ。この前話しただろう?」
龍族の化物……造龍兵を言い換えたのか。
「あれですね、この前ロビーで教えてもらった……」
「ああ。知り合いから聞いたのだが……あの化物、どうやら暴走しているらしい」
妙なことになっている。誰かが造龍兵の暴走をアキに伝えたのだろうか?
「君、化物の噂を聞いたのだろう?杞憂であればいいのだが……
しばらく背後に気を付けた方が良い。」
ヴォイドは不祥事のもみ消しのためには手段を選ばない組織だ。
そして、アキには「造龍兵の噂を聞いた」体で話をしている。
「ヴォイドがおれに口封じの刺客を送る」ことを彼女は危惧しているのだろう。
「なるほど確かに……気を付けます」
ただ、造龍兵と戦うときは常にレイブンを装着していたため、
身分は隠せているはずだ。刺客のリスクは小さいだろう。それより今は、
脳の生命維持について相談しなければ。
「アキさん、その化物についてこちらからも相談が……」
説明を始めようとしたところで、
「パキッ」という小枝が折れたような音が背後から聞こえた。
この場所に一般のアークスは入れない。エネミーか、あるいは本当に刺客か。
何にせよ電話は一旦切った方が良さそうだ。
「お客さんが来たかも……後でかけ直します」
「何?おい、無理をするな」
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「うおッ!?」
電話を切って振り向くと、黒い戦闘服を纏った男が樹上から飛び掛かってきていた。
手にはナイフを握っている。咄嗟に後方へ小さく飛び退いて躱すと
男は大きく空振りし、体勢を崩しながら着地した。
「おいおい…あんたは味方だったじゃないか」
男の姿には見覚えがある……というより会ったばかりだ。
レイブンドライバーをおれに託してくれた青年だ。
昨夜の戦いで造龍兵に追い詰められたおれを間一髪で救ってくれた彼に、
今は刃を向けられている。訳の分からない状況に混乱する脳を冷却するように、
おれは小さく深呼吸した。取り乱している暇はない。早いところ撃退して
アキに連絡を取りなおさなければ。