仮面ライダーレイブン   作:Retsu-

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仮面ライダーレイブン 最終夜 第5幕

 

[Repairing……]

[Photon leakage stopped]

[……Complete.]

 

「フォトン漏出ストップ……?これで合ってるのか?」

「……おおっ、モニタが復活した」

 

 

【挿絵表示】

 

 

ヒューイの手配したキャンプシップ内。

おれはレイブンを装着し、破損したマスクをアウルから受け取った

修理用テープで補修していた。見た目は何の変哲もない透明テープ。

本当に効果があるのか正直半信半疑だったが、

マスクの破損個所にテープを貼り付けるとフォトン漏出はすぐに止まり、

マスク内のモニタまで復活した。

 

通信端末を見ると、アキからの着信が何件も入っていた。

「刺客」の話をしている途中でいきなり通話を切ってしまったし、

心配してくれているのだろう。しかし、今ゆっくり話している暇はない。

後で怒られそうだが「無事です。また連絡します」と、

ショートメッセージだけ送っておいた。

 

これで準備は万端だ。キャンプシップのテレプールは、

昨夜造龍兵と戦った研究室と直接つながっているとヒューイからは

聞いている。

飛び込んだらいよいよ最後の戦いというわけだ。おれは一旦ヒューイに

連絡を入れることにした。

 

「ヒューイさん、準備完了です。制御装置の受入れ先の算段は付きましたし、

スーツも直った。いつでも行けます」

 

「意外と早かったな!いや、この化物……隙が無さ過ぎて怖いぞ!

こっちに来たら援護を頼む!」

 

「わかりました。では、行きます!」

 

_________________________________

 

テレプールに飛び込んだおれの身体はテレパイプ空間に送られた。

早くなっていく鼓動。おれは深く息を吸い込み、ゆっくりと吐き出しながら

手筈を確認した。

 

「ヒューイが造龍兵を抑え込んでいる間に」

「テレパイプガンで制御装置をアキの元へ転送」

「後はヒューイと協力して造龍兵を倒してしまえば」……終了だ。

 

転送が完了し、目を開けると見覚えのある研究室の風景が広がった。

すぐ目の前で、ヒューイが造龍兵と激しく打ち合っている。

手にしているのはワイヤードランス。一般アークスも使用するモデルだ。

すさまじい速度で繰り出される彼のラッシュを、造龍兵は影のような

触手を伸ばして防いでいる。造龍兵は大きなダメージこそ負っていない

ものの、ヒューイの連撃に釘付けの状態だ。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「よく来た!ごらんの通り、こいつは俺が抑え込んでる!制御装置を

早速逃がしちゃってくれ!」

「了解……ッと!?」

 

テレパイプガンを取り出し制御装置に接近しようとしたおれを察知したのか、

造龍兵はこちらにも鋭い槍のような触手を伸ばしてきた。

バックステップで躱して再び制御装置に接近しようとしたが、

造龍兵は触手の槍をさらに無数に生成して攻撃してくる。

 

走って躱しながら制御装置に近付くチャンスを伺ったものの、

装置が近くなるほど槍での攻撃が苛烈さを増す。

これでは制御装置をテレパイプガンで転送する隙が無い。

ヒューイは造龍兵にラッシュをかけ続けているが、

造龍兵は依然攻撃を防いでいる。ヒューイのラッシュを凌ぎながら

おれに攻撃を仕掛ける余裕があるということだ。

 

「すまん!ワルフラーンを使えばごり押しで倒せそうなんだが、

あれはすごい熱を発して機械を故障させたりするから……マズいだろ!?」

 

ヒューイの声が室内に響き渡る。ワルフラーンはヒューイの「創世器」。

凄まじい威力を持つ彼専用の炎の鋼拳。

使えば造龍兵などひとたまりもないが、確かに熱で制御装置が故障すれば、

組み込まれた子供たちの脳はどうなるかわからない。

今は「普通の」ワイヤードランスを使ってもらうしかない。

おれは一旦テレパイプガンをしまった。

まずはなんとかして造龍兵の力を削がなければ。

 

「おれが隙を作ります。何とか今の武器でヤツを封じてください!」

「よし!頼むぞ!!」

 

ヒューイの攻撃は今の武器でもかなりの威力のはずだ。造龍兵をかく乱して

防御を疎かにさせてやれば、勝機は十分にある。

____________________________________

 

おれはレイブンヤイバーを取り出し、造龍兵の背後へ向かって走り出した。

再び触手の槍が無数に伸ばされおれに迫ってくる。躱しきれない槍は

刀を振るって捌きながら、ひたすらに造龍兵の背後へ向かう。

死角から絶え間なく攻撃を仕掛けられれば、

ヒューイに対する防御が甘くなるかもしれない。

 

 

【挿絵表示】

 

 

何とか造龍兵の背後を取ったおれはクロウバレットを取り出し、

攻撃用の弾丸を連続で撃ち放った。残っていた弾丸は10発。

狙いを少しずつずらしながら全て撃ったが、

造龍兵は影の盾を生成して弾丸を1発ずつ正確に防いでいた。

造龍兵は振り向かずに反撃の槍を伸ばしてくる。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「まだだッ!」

 

槍をジャンプで躱し、そのまま造龍兵の後頭部へ向けて

おれはレイブンヤイバーを投げつけた。

造龍兵は再び影の盾を生成。刀は盾に食い込んだが弾き飛ばされてしまった。

その間もヒューイの攻撃は続いていたが、有効打は与えられていないようだ。

 

造龍兵の反撃を躱しながら、おれはレイブンヤイバーを回収した。

ヒューイの凄まじい攻撃を防ぎながら、背後からの連続攻撃も

正確に防ぐとは……。

 

「おいおい!あの連撃を見ずに防いだぞ!

背中にも目がついてるんじゃないか!?」

 

ヒューイの声色は明るい。余裕綽々といった印象に、おれは気を持ち直した。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「背中にも目がついている」……。

 

たしかにそう思えるほどだ。

造龍兵は自身の周囲からの攻撃に対して異常に早く、正確に反応する。

制御装置の力によるものだろうが、それにしても死角からの

攻撃まで完璧に防げるのは不自然だ。

それこそ目が背中についていなければ……。

 

ふと研究室の天井を見ると、四隅に取り付けられた小型カメラが目に入った。

防犯カメラにしては数が多い気がする。造龍兵の視覚補助用カメラ、

ということは無いだろうか。

カメラと制御装置が繋がっていて、造龍兵への攻撃を全て把握したうえで、

回避や防御をさせているのだとしたら。……もしかするかもしれない。

 

フェザーダートを取り出したおれは、ナイフを造龍兵に

投げ付けるそぶりを見せた。

即座に反応した造龍兵は、背中を影の盾で覆っている。狙い通りだ。

 

「……お前が防ぐべきは、そこじゃないぜ」

 

天井の四隅に向かってナイフを投擲する。

慣れない投擲武器には不安があったが、ナイフは全てカメラに命中。

直後、造龍兵は触手の槍を伸ばしてきた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

カメラを壊したのは正解だったようだ。

狙いはでたらめで、躱すことは容易い。

カメラという「背中の目」を失い、おれが見えなくなったのだ。

 

[Strike Raven READY]

 

必殺の跳び蹴りの発動準備が整ったらしい。

これで決着をつけなくては!

おれは造龍兵の頭上へ向かって跳躍し、足を突き出して突撃した。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「うオリャァァァァッ!!」

 

キックが造龍兵の後頭部に命中すると同時に、

ヒューイの打撃も造龍兵の顔面にクリーンヒットした。

大ダメージを負った造龍兵は膝から崩れ落ちたものの、まだ

立ち上がろうとしている。

 

「よし!ナイスだ!!ホールディングカレント!!」

 

ヒューイの両手から伸ばされたワイヤーが、造龍兵の全身を瞬時に拘束した。

さらにワイヤーを激しい炎と電流が伝っていく。炎のダメージと感電で、

造龍兵は完全に身動きを封じられている。とんでもない威力。

……おれの知っているホールディングカレントと違う。

 

「今だ!やれ!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

おれはテレパイプガンを取り出し、制御装置に向けてトリガーを引いた。

銃口からゆっくりと伸びた光が、制御装置を包み込んでいく。

数秒後、制御装置はその場から消えていた。テレパイプガンの液晶に

「転送完了」のメッセージが表示されている。その直後。

 

「目醒めろ!!破拳!!ワルフラーン!!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

ヒューイの雄叫びが響き渡った瞬間、造龍兵の全身が一気に燃え上がった。

ヒューイが創世器で造龍兵を殴りつけたのだ。

見たこともないようなまばゆい炎の中で造龍兵は倒れこんで動かなくなり、

その身体は徐々に灰となっていった。

 

制御装置はアキの元へ転送でき、造龍兵も撃破できた。作戦は成功だ。

 

____________________________________

 

「うまくいった!すべて!一件落着だ!」

「ありがとうございます。……おれにチャンスをくれて」

 

ヒューイはおれの中途半端な人助けを体を張って支援してくれた。

感謝をしてもしきれない。装置を受け入れてくれているアキにも、

今後どうにかして礼をしなければ……

 

「さ、君は早く脱出した方が良い。本部の命令に背いて動いているんだしな」

「すみません、この恩には必ず報います。」

 

今はヒューイの言うとおりだ。おれはレイブンの緊急脱出機能をマニュアルで

作動させ、脱出することにした。

 

____________________________________

 

「ヒューイさん!すぐに脱出を!」

 

おれが緊急脱出のメニューをマスクのモニタで表示させたところで、

ヒューイの部下と見られるアークスが研究室に飛び込んできた。

ヘルメットで表情はわからないが、かなり焦っている様子だ。

 

「おいおいどうした、落ち着いて状況を説明してくれ」

 

部下の背中をさするヒューイ。

 

「ヴォイドの特命で、アークス本部が、ば、爆撃機を……!

ここはあと10分ほどで爆撃されます!」

 

造龍兵は撃破されたにもかかわらず、研究所を爆撃……

それがヴォイドの特命なら、この場所で行われていた非人道的な

研究が表ざたにならないよう、証拠を早い段階で消し去りたいのだろう。

 

しかし、すぐ脱出という訳にはいかない。

この研究所には病院が併設されているのだ。このままでは市民が

巻き込まれてしまう。

 

「何だと!病院の避難は!事前に進めておくよう言っただろう!」

 

ヒューイは万一の場合に備え、部下に命じて併設された病院の

患者やスタッフを避難させていたらしい。

 

「ほとんど完了していますが、コールドスリープ患者の転送がまだ……

あと15分はかかります」

 

「その状況で脱出しろというのか?」

 

ヒューイの声はいつものような大声ではない。

だがその声色には確かな怒りが感じられる。

ヒューイは正義感の塊のような男だ。彼に民間人へ迫る危機を放って

脱出することなどできないだろう。……無論おれにだって無理だ。

 

しかし……爆撃機はあと10分でやってくる。

今からできることは、あるのだろうか。

 


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