朝月は鋼鉄纏う勇者である   作:ミートソースカブトムシ

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勢いで書きました後悔はしてないです。



朝月拓海の章
プロローグ


俺、朝月拓海は兄の剣を見るのが好きだ。

朝月の剣は祖父から始まった歴史の浅い物であり、なんでも祖父が戦争時に思い付いた物らしい。

兄にその剣を教えている父は祖父から直接習う事は叶わず、祖父の弟子に教えて貰ったそうだ。

兄の剣は父が振る剣に比べるとまだまだ甘さが残っている。

それでも、俺は兄の振る剣の方がずっと綺麗だと感じた。

 

「拓海、お前もやってみるか?」

 

兄、朝月珊瑚の稽古を見ていると、こちらを向き木刀を手渡してきた。

 

「良いの?」

「遠慮するようなものじゃないだろ」

 

木刀を握ると、不思議と体に気合いが入った気がした。

見よう見まねで兄がやっていた様に動いてみる。

斬り下しや袈裟斬りなどやってみるが、空を斬るだけだと自分が上手くできているのかよく分からない。

 

「……拓海、俺と打ち合ってみてくれ」

「えっ?」

 

兄は木刀をもう一本持ち出し、構える。

 

「大丈夫だ。寸止めで抑える」

 

言われるがままにこちらも構える。

慣れない雰囲気に体が強張り、敵にだけ集中している。

先に動いたのは珊瑚だった。

こちらから見て左から迫る攻撃を咄嗟に防ぐ。

手に振動が伝わり、その振動は痛みとして肌に浸透していく。

そんなこちらの都合はお構い無しに剣は振るわれる。

こちらは剣を振るのすら初めてだと言うのに、攻撃は止む様子が無い。

 

「上手いな…そうだ、お前も始めないか?」

 

答える余裕なんて無い。

いつも見ているからってそれに完璧に対応出来るわけではない。

今の俺がやっているのは真似だけだ。

珊瑚が積み上げてきた剣を俺の身体で再生する事しかできていない。

ならば先を見る。

珊瑚の癖、得手不得手を把握し次の行動を想定し活路を見いだす。

珊瑚が初めて剣を握った日からその成長を見ていたならばできるはずだと自分に言い聞かせる。

捉えきれない剣を、珊瑚ならここに打ち込んでくると信じて対応する。

耳を貫く木と木のぶつかる音。

手から体に迸る痛み。

それを聞いた、感じた瞬間、防戦一方だった状況は、たった一度剣を弾いた一瞬だけ逆転していると確信した。

ならば次の行動は、するべき事は明確だ。

身体は止まらない、確実に相手に打ち込む。

 

「おぉっ!!!」

 

剣が珊瑚の喉に吸い寄せられる。

完全に熱が入ったこの身体は最後までやるつもりだ。

 

「っ!」

 

珊瑚も負けじと弾かれた剣を無理矢理こちらに振り下ろしてくる。

それは今まで見たことの無い速さだった。

状況はまた一転した、確実に殺せたはずの俺の剣は、俺が先に殺されて不発に終わる。

間に合わない、俺の剣では届かない。

 

「──────────あっ」

 

間抜けな声が漏れる。

そこにある死をただ待つだけになってしまった。

鮮明な敗北が頭に浮かぶ。

しかし、その思考はすぐに霧散した。

 

 

「はいやめ」

 

二本の木刀を白い手が掴む。

静止のために間に入った手の主は俺の祖母、朝月響だった。

 

「本気になり過ぎだよ二人共」

 

そう言われハッとしたように祖母の方を向いていた珊瑚はこちらに向き直し、兄が頭を下げる。

 

「すまん拓海、やっていて途中で楽しくなって寸止めで止めるという事を忘れてしまった…」

 

「いやいいよ…俺も熱くなっちゃったし、それとさっきの返事だけど…遠慮しとく、剣は振るより見る方が好きだ」

 

答える余裕ができたので、剣を始めないかという誘いへの返事をした。

それを聞くと、少しだけ残念そうな顔をして「そうか」と返事をし、俺の手から木刀を受け取ってまた稽古を始めた。

 

「意外だな。拓海ならやりたいって言うかと思ったよ。打ち合ってる時楽しそうだったしなにより…」

「俺がおじいちゃんに似てるから?」

 

祖父の写真を何回か見せてもらったが、祖母の言う通り似てるところはあるかもしれないが、騒ぐ程ではないと思う。

祖母は隣に座った

 

「そうだね、あの人はいっつも刀を持ってたから、拓海が剣を始めたらさらに似るね」

「そんなに似てるかな?」

「───拓海はあの人にとてもよく似ている、まるで生き写しでも見ているかの様だよ」

 

目を細めて当時を懐かしむように言う。

祖父は祖母とその腹に宿った子供…俺の父親を残して亡くなったらしい。

祖母が出会った時は五体満足だったらしいが、当時の戦争で使った兵器を使用した際の後遺症で手足が不自由になっていき、最終的に戦う時以外は自分で食事すら出来ない状態になった。

だからだろうか、戦う以外に何も出来なくなった祖父はその命を犠牲にして終戦に貢献したらしい。

 

「拓海はあの人みたいになったらダメだよ。大切な人を守る為とか言っても死んじゃったらダメだ」

 

表情は変わってないが、祖母が怒っているのはすぐに分かった。

兄は話が聞こえていないからか気にせず鍛錬を続けているが、隣に座る俺は少しだけ気まずい。

 

「おばあちゃんは引っ越したらなにか見てみたい物はある?」

「曾孫…かな」

「随分気が早いね」

 

俺達家族は広島から高知に引っ越す。

両親が田舎暮らしに憧れており、高知にちょうどいい物件が見つかったので引越しする踏ん切りがついたのだ。

部屋の荷造りは既に始まっており、部屋の隅にはダンボールが積まれ、本や物でひしめきあっていた本棚はすぐに寂しげな雰囲気に包まれた。

 

「俺、おばあちゃんはここから離れないと思ってた」

「それも良いと思ったんだけどね…」

 

祖母、響は一拍置いた。

 

「ここにいると、来るはずのないあの人をいつまでも待ってしまうからね」

 

白い髪が風に揺られている。

あの人、というのはおそらく祖父の事だろう。当時祖父が使っていた兵器は大破した状態で見つかったが、身につけていた刀と遺体だけは見つからなかったのだと言う。

祖母はもう、見ないふりはやめたのだろう。

 

♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢

 

新しい家は思っていたよりも広くて綺麗だった。

それはいわゆる日本家屋と言うやつで、広島に住んでいた時の家と似てて、初めて来た場所じゃないように感じた。

一方、珊瑚は虫が発生している事がお気に召さないらしく、家の中を徘徊して虫を見つけてはぷちぷち潰して回る駆除マシーンになっている。

父は祖母と一緒に物置に物を運び、母は食器などの荷解きをしている。

俺は家に関しては文句は一つも無いのだが…どうにもこの村の雰囲気を好きになれなかった。

空気は澄んでいて、村人への印象も"今"のところは悪くない。

だと言うのに何が気に入らないのか、自分でも分からない。

 

「まぁ、気にしても仕方ない……か」

 

違和感を無理矢理振り払い、俺は部屋の荷解きを終わらせた。

 




見ただけで技をだいたい真似できるオリ主くん、能力的には実質身稽古ですね。
評価、お気に入り登録、感想、誤字脱字報告などしていただけたらモチベが出ますので何卒何卒m(_ _)m
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