朝月は鋼鉄纏う勇者である   作:ミートソースカブトムシ

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クソ早い更新です(当社比)


第三話 刀に引かれる

森の中、泥に塗れて地に伏している。

身体は動かなくて、視界の隅には地面に突き刺さった刀が見える。

どこか懐かしいと感じさせるその刀は一般的なイメージとは違う物だった。

刀身の色が異常なのだ。

名刀は青いと言うが、刀身に直接塗料でも塗ったかのように青かった。

それでも、その刀身は金属特有の輝きを持っている。

あんな色の金属は見た事も聞いた事も無い。

──────ふと、その刀に手を伸ばそうとしていた。

あの刀に触れてみたい。

なにかに取り憑かれたように一心不乱に手を伸ばそうとするが、身体は言う事を聞かない。

まるで石になったような、身体の機能をどこかに落としてしまったかのような。

それでも、地面と癒着したような腕を無理矢理動かし─────

 

「何をしている?」

 

兄の声で一瞬で夢から覚めた。

玄関のドアに手をかけている。

自分が何をしようとしていたのか分からない。

 

「あれ?何やってんだろ、俺」

「…寝ぼけていたんだろう、時間ももう遅い、寝るぞ」

 

時計を見ると、時刻はちょうど午前二時三十分だった。

 

♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎

 

珊瑚の稽古を眺める。

休日は決まってそうして過ごしている。

夏休みというのもあって、最近はそれしかしてないんじゃないだろうか。

いつにも増して綺麗な剣筋には惚れ惚れする。

…のだが、そろそろ退散した方がいいだろう。

この前打ち合ってから、長い間見てるとしつこく勧誘されるからだ。

『俺以上に強くなれる』とか『その才能は咲かせるべきだ』と言われるが、やはり俺は見る方が好きなので断る。

とはいえ、趣味という物を持っていないので、趣味に没頭して時間を潰すという事はできない。

宿題なんてとっくに終わらせている。

ふと、夢で見た刀を思い出す。

海の底の様な刀身は記憶に焼き付いている。

そういえば、夢という物は見た事のある物しか出てこないらしい。

だとするなら、あんな奇怪な刀を俺はどこかで見たという事になる。

 

「どこにあるんだろ」

 

引越しの作業中にその様な物は見なかった。

少なくとも俺と珊瑚の部屋にある物では無いだろう。

だとするなら、それの場所を知っているのは両親と祖母くらいだ。

 

「おばあちゃんならしまった場所知ってるかな……って、うちにあるって確定してないのに何言ってんだ俺…」

 

響の部屋に行き、ノックする。

しかし、返事も反応も無かった。

悪いと思いながらドアを開けると、中には質素な部屋が広がっていた。

あるのは机と小さな箪笥のみ、唯一飾られているのは写真だけだ。

写真には四人の少女がいた。

一人目に黒髪で帽子を被った少女、二人目に白髪で帽子を被った少女、三人目に茶髪のボブヘアの少女、四人目に茶髪のアップヘアの少女。

写真に写る少女達は拓海と同年代か少し上だろう。

 

「どうかしたのかい?」

「わっ!?」

 

後ろからぬるりと現れた響に驚く。

響は写真を見ながらこちらに聞く。

 

「どれがおばあちゃんか分かる?」

「えっ?」

 

どうやら、その写真の少女達の中に響がいるらしい。

考えて、昔見せて貰った写真を思い出す。

たしか響は昔から白髪だったはずだ。

 

「右から二番目の、白髪の女の子がおばあちゃんだろ」

「正解、褒美にお小遣いをあげよう」

 

五百円玉を俺の手に握らせた。

 

「また母さんに怒られるよ?あんまり息子達を甘やかさないでくださいって」

「拓海が秘密にしてくれればいいだけの話だよ」

 

そう言って座布団を二つ用意し床に置いた。

片方に座り、もう一つに俺が座るように促してくる。

それに従って座布団に座った。

 

「それで、別にお小遣いをねだりに来たわけじゃないだろう?何かあったかい?」

 

まったく、うちの祖母には頭が上がらない。

 

「夢でさ、刀身が青い刀を見たんだよ。それがどうしても気になって、おばあちゃんなら何か知ってるかなって」

「そうか…どうして気になったの?」

「分からない。触ってみたいとは思ったけど…」

 

響はしばし考えるような素振りを見せる。

何か知っているが言おうか、言わないかを迷ってるような様子だ。

 

「……見るのはいい。でも、触るのはダメだ」

 

絶対に、と強調される。

俺がそれを了承すると、ついてきてと言われて物置へと歩を進めた。

若干立て付けの悪い引き戸を開けると、既にホコリっぽくなった物達が姿を見せる。

中には何に使うのか分からない物や趣味の悪い飾り物が置いてある。

 

「昔、おじいちゃんが身につけていた刀と遺体は見つからなかった、と言ったね。実はあれは嘘なんだ、刀だけは見つかっている」

 

物の分別がつくようになってきた今ならいいだろう。

そう言って物置の奥から布に包まれた箱を持ってきた。

布から木で作られた箱が出てくる。

出てきた箱を開けると、鞘に納められてはいるが、夢で見た刀と瓜二つのソレが出てきた。

 

「…これ、おじいちゃんが使ってたの?」

「使ってたよ……もう一度言うけど、触ったらだめだよ」

 

夢で見たようなあの刀に触れてみたいという取り憑かれたような感覚は無い。

ただ少し、ほんの少しの恐怖心があった。

この刀を拒絶している。

俺の身体が、俺の魂がこの刀を恐れている。

その恐れを自覚した瞬間、刀から青い光が放たれた。

 

「っ!が、あぁ!?」

 

右腕が痛い。

蛇が腕を這っているような、虫が肌の下を蠢いているようなそんな感覚に襲われる。

右手を見ると藍鉄色の刀身を露にした刀が右手にあった。

 

「拓海!」

 

腕には無数のナニかが巻き付き、その一本一本が肌を貫いて身体の中を侵食している。

 

「早くそれを離して!」

 

離したくても離せない、そんな言葉を口にする事ができないほどに痛みが体内を迸る。

俺の意識はそこで切断された。

 

♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎

 

深海に沈む。

身体中に手が絡まっている。

ゆらゆらと揺れている怪物達。

それはきっと、おじいちゃんが斬ってきたものだろう。

少女の形をしたソレらは、写真で見たおばあちゃん達と似ていた。

 

『なんで響より先にこっち来てるんだよ』

 

青い光が怪物達を切り裂いた。

その光は暖かくて、安心できた。

俺の周りを少し漂うと、また声が聞こえてくる。

 

『なるほど、まだ深海の連中の呪いは衰えてないわけだ』

 

これが人なのか、神様なのか、俺には分からない。

 

『そんな状態で触ったんだよな…なら、少しの間お邪魔するぞ』

 

そう言って光は俺の中に入った。

さっきの身体を傷つけながら侵食してくる呪いとは違う、穏やかに浸透していくソレは、やっぱり暖かかった。




今回は最近のに比べたら短めです。
最近モチベ出てるので一話書いて失踪になってないのえらい(自画自賛)
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