倉田ましろといろんなことがしたい。 作:フロストヴェール
通い妻、って言葉があるけど、今の私はそれだと思う。
学校やバンド練習が終わったらお兄ちゃんの家に行って、ご飯とかを作って、泊まることもあれば、帰ることもある。
そんなだから、お兄ちゃんの家の配置は大体覚えてるし、何があるかっていうのも大体覚えている。
だけど、基本何しててもいいっていうお兄ちゃんでも、秘密はあるみたいで。
お兄ちゃんの寝室のベランダ。
私は一回も入ったことないし、ずっとカーテンが閉まってた。
入っちゃだめだって言われてたから、そこだけは入らないようにしていた。
だけど、ある日、たまたまカーテンが開いてて、そのままお兄ちゃんは出掛けちゃって。
そんな日に、見てしまったんだ。
「お兄ちゃん、タバコ吸ってたんだ...」
コンビニとかで、たまに見る吸殻を入れるゴミ箱。
それが、ベランダに置いてあった。
「匂いとか、しなかったけどな...」
呟いてから気付いた。
私が来てもいいように、最近は吸ってなかったか、消臭スプレーでもかけてたんだって。
「私、何にも知らないや...」
「どうした?」
「わっ!?お兄ちゃん!?」
呟きに返事に来るとは思わなかったのと、返事がお兄ちゃんの声で、二重でびっくりして振り返った。
お兄ちゃんはさっきまで私が見てたところを見て、ため息交じりに呟いた。
「あー...ましろには、見せたくなかったんだけどね」
「お兄ちゃん...」
「まぁ、最近は吸ってないし、そんなに心配しなくてもーー」
「違う、よね」
お兄ちゃんはきっと私がいるから遠慮してるんだ。
だから。
「私のせい、だよね...?」
「え?」
「私がいるから、やめたんだよね?」
「...まぁ、そうだな」
そうなんだ。
私は、お兄ちゃんにとって...。
「あー...違うぞ」
「え...?」
「別にましろが来てからやめたわけじゃなくて、随分前から」
「そう、なの?」
「...だから、泣くな。そんな顔は見たくないぞ」
言われてから、ほっぺたが濡れてることに気付いた。
なんで、泣いてるんだろう。
「泣き止むかな...はい」
「え...鍵?」
渡されたのは鍵。
何の?
「ここの鍵。俺がいなくても入っていいから」
「え...どうして...?」
「隠してたとこも見られちゃったし、別にもう隠すことないしな」
もしかして、お兄ちゃんがデレたってことかな。
そうだよね。
「ありがとう、お兄ちゃん」
「まぁ、なんだ。気に病まなくていいぞ」
「...うん!えへへ」
「やっぱ、笑ってる方が可愛いよ。ましろは」