倉田ましろといろんなことがしたい。 作:フロストヴェール
ましろ、誕生日おめでとう
お兄ちゃんから、期待しててと言われた、バレンタインのお返し。
――まさか、今来るとは思わなかった。
「え、お返し?」
「あー、うん」
私の手に、何かが入った箱を置いて、目線を遠くに向けて返事をする。
どこか無気力なお兄ちゃんの返事、少し寂しい。
勝手に一か月後に大きいお返しがもらえるって思ってた私も、少しは悪いのかもしれないけど。
「...ましろ?」
「ううん、なんでもない」
何でもない訳ないから、少しだけそっけなく返事をしてみる。
お兄ちゃんはこうでもしないと分かってくれないから。
「...悪かったよ、誕プレが5日前のお返しとか言って」
そこだけど、そこじゃない。
血は繋がってないとはいえ、もっと渡し方とかあるんじゃないのかなって。
「この頃、なんか距離取られてる気がしたから、お返しとか言わないと受け取ってもらえなそうだったから...」
「...お兄ちゃ」
「俺馬鹿だから、何が悪いか全然わかんなくてさ」
自虐しながら笑うお兄ちゃん。
やめてよ、そんな顔しないでよ。
「もっとさ、ほんとのお兄ちゃんみたいに」
「やめてよ、そういうこと言うの」
自分でもびっくりするぐらいに低い声が出た。
お兄ちゃんもびっくりしてる。
――私の中のお兄ちゃんは、強くてかっこいいヒーローみたいな存在で。
ずっと、私を守ってくれる、王子様みたいな存在だった。
だけど、バレンタインの日に泣いてるお兄ちゃんを見てから。
私は、お兄ちゃんへの接し方がわかんなくなっちゃった。
「私、私は...!」
「ごめんな」
抱きしめられてる、なんで?
「ましろが思ってるほど、俺は強くないんだ。ごめん」
耳元で囁かれる謝罪の言葉は、私をはっとさせるのに十分で。
「や、めて」
「だから離れてっちゃうんですよ、って桐ヶ谷にも言われた」
「...っ」
「ちゃんと手綱握っとかないとって」
そう言って、お兄ちゃんは離れた。
「それ、開けてくれる?」
「...うん」
箱を開けると、紫の石がはまってるネックレス。
「練習とかでも、そんな外さなくていいから、良いかなって」
「...お返し期待しててって、これ...?」
「や、それは別。食えるもの作るし」
「...そっか。ね、お兄ちゃん。つけて」
ネックレスをお兄ちゃんに渡して、つけてもらう。
なんだか、お兄ちゃんに全部握られてる気がしてる。
「...ついたかな。動いていいよ」
「ありがとう...わ、綺麗だね」
「そのリアクション、開けた時じゃない?...まあいいか」
「ね、お兄ちゃん。この綺麗な石、なんて言うの?」
聞くと、お兄ちゃんは少し視線を外して答えた。
「アメジスト。ましろって、紫も似合うな」
「そう、かな。えへへ、ありがとう」
アメジスト:誠実・心の平和・高貴
ネックレス:独占欲や束縛、支配の意味
お兄ちゃん的にはそんな重い考えは無いけど、ずっと一緒にいてほしいっていう意味なのかもしれない