倉田ましろといろんなことがしたい。 作:フロストヴェール
とある平日、俺こと
決してサボりではない。
これにはれっきとした理由がある。
「ケホッ、ケホッ…あー…マジかぁ…」
脇に差し込んでいた体温計が示したのは「38.2」という数字。
俗にいう、風邪である。
最近の流行病には特に気を付けていたのだが、やはりディフェンスが甘かったようだ。
今度からは顔にマスクではなくガスマスクをつけて外出しようか。
「ゲホッ…痛ってぇ…」
咳をするときに微妙に体が反応し、それをちょっとでも抑えようとすると腹のあたりで爆発するあの感覚。
わかる人間は一定数いるはずだ、高評価チャンネル登録よろしく。
ま、それはさておき。
「今日体育だったんだよなぁ…行きたかったなぁ…」
自分が好きな教科の時に体調不良を引くなんて、乱数おかしいんじゃないのか?
どっかで運命力落としてきたか?
まぁ、こうなれば仕方あるまい。
数週間やる気が起きなくてログイン勢してたゲームでも進めますか。
「いやマジかよこの□ーランドマジのクソエイムかよ」
「トラ□ックでもウィツィ□ポチトリでもどっちでもって…」
新規加入勢絶賛トンチキイベント適性ありそうで俺歓喜。
続いては〜
「んー…お前ら絶対バストサイズ逆サバしてんだろ80ちょいがこんなでけえわけあるか!!」
しかもチャレンジイベントのタコは強いし。
そして。
「だぁ!んのくそおも携帯がっ!タイトルコールから2分後に落ちんな!」
うちのア□ナは今日も不機嫌です。
え、伏字が仕事放棄?
うるせぇうるせぇ。
一通りログインを終わらせて、仰向けに寝転がる。
相変わらず咳は出続けるし、痰も絡んで苦しさは2倍。
「はぁ...熱はこの際いいから、咳だけでも止まってくんねぇかな...ケホッ...」
そんなわけはなく。
むしろ熱が出て体から異物を吐き出すかなんかの反応で咳が出ているのだから、熱が下がらなきゃ咳も消えず、何なら下がったとて咳が消えるとは限らない。
とかよくわからん思考を展開していると、家の呼び鈴が鳴った。
「誰だ...こんな時に...」
文句を垂れながらマスクをして、ドアスコープを覗くと、
「...倉田?」
クラスメートの倉田がいた。
なんでいるんだ?
とりあえず寒いだろうから用件だけでも聞くか。
「よぉ、どうした?」
「あ、葉代くん...元気、じゃなさそう、だね」
「おう、だからどうしたって聞いてんだ」
「今日の分の、プリント...届けに、きました」
...こいつ、優しさの塊か?
いや、こういうのって大概は教師に言われてやるものだろうけど、それでもだろ。
異性の家によく来れるもんだ。
「あぁ...わざわざ悪いな...お礼なしもあれだしな、ちょっとゆっくりしてけよ」
「え?」
「届けもんしてもらっといて、「お疲れ、はい帰った帰った」なんて言わねえよ...まあ予定あるんならあれだけど」
「じゃ、じゃあえっと...お邪魔、します」
...いつの間にか咳が収まってることに、俺は後にようやく気付いた。
「あ、あの。お家の人とかって...」
「出張中。今は誰もいないよ」
自分の部屋に招こうとして、それはまずいかと思いとどまる。
「そこのソファ座ってゆっくりしててくれ。なんか暖かいもんでも淹れてくる」
「え...でもその、葉代くん、風邪大丈夫、なの?」
「別に歩き回るぐらいなんも問題ねえよ、心配してくれてありがとな」
言いつつ、キッチンに入ってココアのスティックを出す。
お湯を沸かしてコップを用意。
「おし、できたぞ。ココアでよかったか?」
「うん、ありがとう...葉代くんの分は?」
「俺は別にいい。見ての通り暖かい格好してるからな」
倉田にココアを出して、俺はその反対側に座る。
カップを両手で包んでちびちび飲んでる倉田を見ると、なんだか小動物に見える。
「うまいか?」
「うん。あ、そうだ」
倉田はカップを置いて、カバンを漁りだす。
「さっき、渡す途中でお邪魔しちゃったから。これ、どうぞ」
渡されたのは今日のプリントの束。
...こんなあんのか。
「あぁ、さんきゅ」
パッと見で修学旅行のしおりぐらいの厚さ。
「期限、明日までのものとか入ってるから、気をつけてね」
「明日ァ!?...バカか、教師共は...」
と、倉田が立ち上がる。
「あれ、帰るのか?」
「うん、いっぱいいちゃったし、そろそろ帰らないと、心配されちゃう」
「そうだな。じゃあ、気をつけて帰れよ」
「うん。お邪魔しました...えっと」
玄関前でもじもじする倉田。
「風邪、明日には治るの?」
「まぁ、治るんじゃないか?」
「じゃあ、また、明日」
小さく手を振って、倉田は出て行った。
「また明日、ねぇ...」
俺もアイツも風邪をひいてなければ、の話だけどな。
なーんで3回もワクチン打ったのにかかるかね...
もうやだ