赤司のロンパ ~ 超高校級の『天帝』と呼ばれた男~   作:ばうむくうへん

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ダンガンロンパクロスオーバー第二弾です。


プロローグ
やってきた男


 晴れの舞台とはよくいったものだ。空には雲一つない。

 目の前にそびえたつは巨大な建造物。都内の高層ビルと比較しても遜色ないほどである。一見すると一流の大学病院とも取れなくもないが、これで高校の校舎であるという。まぁ全国の優秀な才能を持つ学生のみで構成されている学園というのだからこれくらいは当然といえば当然だろう。なんでもこの学園を卒業したものは人生を成功したも同然・・などと言われているそうだが・・。

 

 僕がこの学園の前に立っている理由は一つ。超高校級の才覚を持つものとしてスカウトされた為だ。スカウト自体はかつて在籍していた洛山高校に進学後しばらくしてから通知はやってきた。が、断った。バスケットボール選手として名門校である洛山にスカウトされた以上、結果を残さなければ周囲に示しがつかない。なによりも手渡されたそれは何の変哲もない白封筒の通知案内。まるで招いてやったといわんばかりの装丁が気に食わなかった。

 

「頭が高いな」

「き、キミ!な、何をするんだ!?」

 

 そう言って内容も見ずに学園からの使者とやらの前で通知を破いて見せた。まさか僕がそんな行動に出るとは思わなかったのか、酷く焦っているようだったがそんなことは関係ない。

 自分のゆく道は自分で決める。何者にも縛られない。僕がルールだ。僕が絶対だ。僕の評価は自らしか下せない。

 

 そう、僕こそは『赤司 征十郎』なのだから。

 

 

 その僕が何故この学園に来ているのか。面倒だが僕自身の名誉の為に語っておこう。

 

 常勝を掲げ無敗を誇っていた洛山高校バスケ部。それを脅かす存在であると謳われたのが『キセキの世代』と呼ばれる者を率いる全国の強豪校であった。「キセキの世代」など大それた名前だが、かつてその世代が集っていた帝光中学は奇跡と呼ぶには生ぬるい、圧倒的、暴力的なまでの強さを誇る正に絶対的王者であった。余談だが僕もその「キセキの世代」の一人である。

 

 もっとも僕自身その呼び方には酷く不満を持っていた。世代など一括りにされるなど心外だ。王者とは一人であるべきだ。他のメンバーも同様のことを思っていたのだろう。決着は高校で付けることになったのだが程なくしてその機会は先の『ウインターカップ』にて訪れた。

 

 幸いにして我が洛山はその『キセキの世代』率いる全ての高校と対戦することが叶った。僕が絶対王者であることを証明するには勝手な潰し合いをしてもらっては困る。自らの手で完膚なきまでに叩き潰す。そう決めていたのだから。

 

 とは言え、「キセキの世代」と呼ばれるからには彼らもそれなりの成長を遂げて臨んでくるだろう。そう思っていた・・・。

 

 

 結論から言おう。ウインターカップは我が洛山高校の圧勝による優勝にて幕を閉じた。決勝までに至る経過については最早語ることさえ些末なものである。僕は強くなりすぎてしまっていた。戦う前から既に絶対的な王者であった。ウインターカップはただそれを確認するための大会にすぎなかったのだ。

 

 正直に言うと、心のどこかで自分を脅かす存在がいるのではないかと期待したが、それは叶わなかった。唯一、ただ唯一その可能性を感じていた『彼』も決勝にて僕に敗れ去った。その時『彼』が何かを言っていたようだが何と言っていただろうか、今はもう思い出せない。

 

 ウインターカップを終えた僕に待っていたのは絶対王者に君臨した充足感・・・ではなかった。

 

「・・・つまらないな。」

 

 口から洩れたその言葉が全てを語っており、呼吸をするに等しく自らに課していた過酷なトレーニングも完膚なきまでに敵を打倒する戦略も戦術も全て色褪せ無価値のものであると僕の中のルールが決めてしまっていたのだ。

 

 そんな時再び僕の手元にあの学園からの通知がやってきた。以前であれば間違いなく破り捨てたであろうその通知の封を切った僕はじっくりとその内容に目をやった。

 

 

 赤司 征十郎 様

 本校は貴方を『超高校級の天帝』と認め、ここに希望ヶ峰学園への入学を許可いたします

 

 

 なるほど、予想通りの上から目線。実に頭が高い。天帝と認める?入学を許可する?・・だが僕には二つの目標ができた。超高校級の才能が集う学園にて自身が絶対的な王者であることの再確認。そして自分を招いた学園の理事たちに頭を垂れさせてやるという野望。

 

 監督やチームメイトからの反発はあったが僕がバスケットボールに対して既に興味を失っていることは感じ取れていたのか、本気で引き止める者は誰一人としていなかった。その事に対して思うことなどは一つもない。

 

 こうして僕は本日よりここ『希望ヶ峰学園』の生徒として通うことになる。この例えようのない虚無感をここでは埋めさせてくれるのか。そんな歪んだ願望であることを自覚しながら門扉をくぐる・・・その時だった。

 

 

「なっ・・・・・?」

 

 

 突然視界が歪む。いや、世界が歪んだ。なんだこれは?この僕が体調不良で眩暈を起こしたというのか?有り得ない。メディカルチェックは常に心がけている。本日も体調は万全なはずだ。だというのにこれは一体なんだ?

 

 気づくと周囲が暗転し闇に包まれた。とにかくこのままここに立っているのはまずい。本当に体調不良であるならば遺憾だが治療の必要がある。闇の中を手探りで足をゆっくりと一歩ずつ踏み出しながら光を求める。

 

 すると唐突に扉が見えてきた。何故こんなところに扉が?まぁいい。とにかく今はこの場から脱しなくてはならない。扉の戸を引くとまばゆいばかりの光が差し込む。いちいち気に入らない。この僕が入学早々にここまで不可解な事態に巻き込まれようとは。次第に慣れていく視界の中で苛立ちを募らせていく。

 

 開けた視界に映ったのは・・教室だろうか。古風な木製机と教卓。黒板に丸時計。設備としては小学校レベルといったところ。まさかあれほどの外観を持ちながら校舎内はこの程度のものなのか?だとすれば張子の虎もいいところだ。小さく溜息をつく。それよりも気になるのが・・。

 

「あの、大丈夫ですか?」

「もしかして、あなたも新入生の方ですか?」

「あれ?こいつどっかで見たような・・・。」

 

 話の内容から察するにこの教室内にいる者たちも新入生ということだろう。その内の中から丸々と太った男性が声をかけてきた。

 

「・・どうやら貴様で最後のようだな」

 

 初対面の人間に向かって貴様とは随分と頭が高い奴だ。いちいち反応するのも面倒であったが、男の見解を先に述べてやった。

 

「そのようだな。僕を含めて人数は16人。教室の机も16。ぴったりだ。それがどうかしたのか?」

「・・・!!」

 

 意表を突かれたのか、男は喉から出掛けた言葉を飲み込むと黙って後ろに引いた。その態度から余程気位の高い奴なのだろう。体型こそ美しくないが身に纏うブランドスーツ。先の言動や挙動の一つ一つ取っても身分の高い生まれであると予見できる。だが先程の狼狽ぶりは解せない。まるで『台詞を奪われた役者』のような・・そんな戸惑いが『視えた』のだが・・・。

 

 他の者たちも現在の状況を飲み込めていないのか、各々に不安を漏らしていると先ほどの男が話を切り出す。

 

「この中にいる全員に聞く。お前たち、どうやってこの教室に来たのか覚えているものはいるか?」

 

 この男・・。自己顕示欲が強いのか?そんなことは分かりきっている。ここで下らない問答をするつもりはない。男の問いに僕は答える。

 

「恐らく全員がこの教室に来た経緯は覚えていないだろう。僕は学園の門扉をくぐった途端に急な眩暈に襲われ、この教室にたどり着いた・・。となるとこれら一連の流れはなにかしら外部の力が働いている。・・これで満足か?」

「・・・ぬぐ・・!!」

 

 苦虫を噛み潰したような表情をすると男は再び口を閉ざした。やれやれ、このような不毛な問答で閉口されては困るのだが・・。

 

「そんなことは大事の前の小事じゃ。問題はこの教室から出られんということじゃろうが。」

 

 そう語るのは屈強な肉体を持つ大柄の男。・・・ほう、この筋肉、永吉と同等かそれ以上・・。さすがは超高校級の才能を持つものといったところか・・。しかし全体的な筋肉量を『視る』限り、特定のスポーツに属しているわけではないようだな・・。と、昔の悪い癖が出てしまったか。男の質問にあわてた数名が教室の扉に駆け寄る。

 

「あ、開かない!開かないよ!?」

「ど、どうなってんのよ、これぇ!?」

 

 一々騒がしい連中だ。扉が開かないことはこの教室に入ったときに確認している。ことさら驚くべきことでもない。外部の力が働いているというのなら尚更だ。この大男が出られないというからには力による開錠は不可と視るべきか・・。

 

「ねぇ、この状況って入学試験の一環かもしれないよ?」

 

 線の細い体躯に夏場に近いこの季節でロングコートを纏った男が口を開く。・・身体能力は高くないようだがこの状況で落ち着きのある声。冷静な男のようだ。だがその質問には各自が疑問に思っていた。この学園はスカウト制。入学試験があることなど聞いていない。思考を巡らせているとふいにこの現場に似つかわしくない声が教室に響き渡る。

 

「あっ、これは入学試験じゃありまちぇんよ?」

 

「・・・なんだ今の不愉快な声は?お前か?」

「・・断じて今の声は俺のものではない」

 

「あのー、あちしでちゅけど?」

 

 その不快な声は教壇から聞こえてくるようだ。全員が教壇に目をやるとそこには・・・・。

 

「はーい。全員集まったようでちゅね。早速はじめるでちゅ!」

 

「・・な、なんですかあれ?」

「・・多分・・ヌイグルミだと思うけど・・・」

「そうでちゅ。あちしはヌイグルミでちゅ。フェルト地なんでちゅ。・・・?あの、あなた大丈夫でちゅか?顔に手を当てているようでちゅが・・気分でも悪いんでちゅか?」

 

「・・・・・・・・・」

 

 ・・この赤司 征十郎。これまで幾度と無く対戦校の奇策やトリックプレイを目の当たりにしてきた。その中にあっても決して動揺することなく冷静に対処する。それはバスケに限ったことではない。赤司家に生まれたものは決して揺るがない・・それが絶対王者に必要たる才覚の一つである。しかしこれはなんだ?どういう状況なのか、まるで理解できない・・。もしやこれが超高校級の学園ならではの洗礼だというのか?・・・・侮れないな。

 

「・・念のため聞いておきたい・・。お前は何者だ?」

「あちしは魔法少女ミラクル★ウサミでちゅ。みなさんの先生なんでちゅ。・・・・あの、やっぱり大丈夫でちゅか。顔色が優れないようでちゅが・・。」

「・・・・・・・なんでもない」

 

 やはり侮れない。「マホウショウジョ」?聞いたことが無い言葉だ。名乗りの前に語っているということは何かの役職か?僕の知らない単語がまだ存在するとは・・。しかし一つだけはっきりしたことがある。

 

「この状況を作り出したのはお前だな?どういうつもりだ?」

「どういうつもりもないでちゅよ。あちしは皆さんの修学旅行の引率の先生なのでちゅから」

 

 修学旅行だと?何を言ってるんだこいつは。他の生徒たちもこの不可解な状況を理解できないのか、戸惑いの声を上げている。

 

「おい、ウサミだかハサミだか知らねーがよぉ!おめー俺たちをどうする気だよぉ!?」

「そ、そうだそうだ!俺たちは修学旅行なんて聞いてねぇぞぉ!!?」

 

 中でもうるさいのはこの2名だ。一方は褐色肌の女性。引き締まったその肉体は相当に鍛えあげられたものであることが分かる。それに・・女性とは思えないほどの粗暴さと言動。・・小太郎と同じ・・いや、それ以上の『野生』の持ち主のようだな。

 

 もう一方の男性はニット帽とチェックが目立つ。その出で立ちからして技術者かなにかだろうが『視た』ところ特筆すべき能力は見当たらない、取るに足らない存在。超高校級とは言え雑兵もいると言うことか。しかし・・・。

 

「おい、なんとか言えよ!コノヤロー!!」

「そうだ、そうだ!テメーコノヤロー!!」

「あ、あの・・落ち着いてくだちゃい。このままじゃ話が進まないでちゅから・・。」

 

 ウサミとやらが諌めているようだがむしろ逆効果だろう。いきなり閉鎖空間に閉じ込められたと思えばあのような不可思議な物体まで現れたのだから。・・とは言え、このままでが収拾がつかない。

 

「・・そこまでにしろ。声を荒げれば状況が変わるわけでもないだろう?」

「んだ、テメーは!?すっこんでろ!!」

「そうだ、そうだ!テメーはすっこんでろ!!」

 

「・・・・・・」

 

 全く・・曲者が多い洛山においてもチームをまとめるのは骨が折れたが・・。初対面の人間に対してこうまで邪険に扱われるというのもなかなかどうして・・・

 

 

「頭が高いぞ」

 

 

天帝の眼(エンペラーアイ)

 

 

「な・・・!!あ、足が・・!?」

「あ、あわわ・・!・・足が動かねぇ・・!?」

「あ、あれ・・?二人ともどうちたんでちゅか!?急に座り込んでちまって・・」

「ま、まさかあの男・・!?ゴルゴンの邪眼を持つ者か・・!?」

 

 

 なにやら包帯を手に巻いた男が意味不明な解釈をしているようだが、二人が動けなくなったのは紛れもなく僕の『眼』によるものだ。僕の『眼』はすべてを見透かす。相手の呼吸・心拍・汗・筋肉の動きまでをも。今のは2人の重心移動の際に、ほんの少し負荷を与えることによって、アンクルブレイク・・つまり転倒させたのだ。もっともこの技術はバスケにおいて使用していたが、今となっては無法者や暴漢などの鎮圧にも行える。このような事に使用したことは不本意ではあるが。

 

「・・よく聞け。この僕に指図をするな。僕に刃向うものは誰であろうと・・そう・・」

「親でも殺すぞ?」

 

「・・・!!」

 

 その言葉にクラス中が沈黙した。これでいい。ようやく話を進めることができる。何名かの女生徒は恐怖した目で僕をみているようだがそれでいい。恐怖は人を支配する。この状況でまた騒ぎを起こされることもない。

 

「・・ウサミと言ったか。修学旅行とやらの件は了解した。それでいつ出発するというんだ?」

「・・えっ、あ、そ、そうでちたね!実はもう準備はできてるんでちゅよ~」

 

「じゅ、準備できてるってどういうことですかぁ・・?」

「バッカ!このゲロブタ!喋んないでよ!あのおにぃに殺されるよ!?」

 

「・・・・・・・・・」

「ひ、ひぅぅっ!?す、すみませぇん・・!こ、殺さないでくださいぃぃぃ・・!」

 

 どうやら相当に恐怖されてしまったようだな。発言まで禁止にした覚えはないのだが。

 

「それではみなちゃん早速修学旅行に出発ちまちょ~」

「・・何をする気だ・・?」

 

 ウサミと名乗るヌイグルミは手に持ったハート型・・だろうか、杖をバトンのように振りかざした。すると天井がドームのように開かれ、四方の壁が倒れた・・その先には・・。

 

「・・・。空と海・・・外か。」

「なに冷静に言ってんだよ、オメェ!?どう考えてもおかしいだろうがぁぁ!?」

 

 開かれたその先は燦々と降り注ぐ太陽の光。雲一つない青空。そして砂浜と海が広がっていた。ヤシの木があるということは熱帯地方・・南国といったところか。

 

 ニット帽の男の質問についてだが最早起こりうる状況に思考することを僕はやめることにした。無駄な情報は即座に切り捨て最優先事項を模索する。これも絶対王者に必要な適応力といえる。閉鎖されていた空間から脱出できた。まずはそれでいい。

 

「みなちゃんにはここで仲良く暮らちていただきまちゅ。」

「・・・はぁぁっ!!?」

 

 ウサミとやらの提案はこうだ。ここで僕を含む16名の生徒たちは共同生活を送ることで互いの親交を深めていくとのこと。ようするにレクレーションだ。超高校級の才能という個性に秀でた集団をまとめるという上で、この行事に対する僕からの異論はない。

 

「・・つまり互いの絆を深め、この・・希望のカケラといったか。これを集めれば帰れるということか」

「その通りでちゅ。赤司君は物分りが良くて助かるでちゅ」

「・・・自己紹介をした覚えはないんだが?」

「・・えっ!えっと・・め、名簿でちゅよ!引率の先生でちゅから生徒のプロフィールはチェック済みでちゅ!」

 

「うっきゃー!海っすよ!海!」

「わーい!海だ海だ~!」

「これは一枚撮っておかないとね!」

 

 他の生徒たちも思うところはあるようだがとりあえずは安全ということを理解したのか、開放的空間に出れたことからか先程より随分とリラックスしている。これで僕の『眼』を使うことも、もうないだろう。

 

 照りつける日差しに胸のネクタイを緩め、空を見上げると、ふいにウインターカップ決勝での『彼』の言葉を思い出した。

 

「・・必ず助けます・・赤司君・・・!!」

 

 助ける?まったく・・何故そんなことを言っていたのかは分からないがその時の返事を空に向ける。

 

 

「僕に助けなど必要ない・・・テツヤ」

 

 

~To be continued~




こんな感じでやってきます。ヨロシクです♫
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