赤司のロンパ ~ 超高校級の『天帝』と呼ばれた男~   作:ばうむくうへん

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洛山高校バスケ部VS誠凛高校バスケ部

俺の前に敢然と立つ七海は背に掛けていたリュックを下ろすと何かを探すように手を入れる。あれ程の気迫を持って俺にゲーム勝負を挑んだのだ。さぞや白熱できるものなのだろう。だが俺の期待とは裏腹に七海がリュックから取り出したのは掌大のカセット筐体だった。

 

「七海・・それは一体なんだ?」

「赤司君でも知らないものってあるんだね。これはTVゲームのカセットだよ」

 

TVゲームだと?もちろんその存在なら知っている。ハードとなる筐体に七海が手にしているようなソフトの筐体を取り込むことで様々なジャンルのゲームが体験できるものだ。もちろん俺はそんなものなどやったことはない、否やる必要がなかった。赤司家に生まれついた者に必要なのは純然たる『結果と成果』のみ。知識も技術も必要なく自己満足にしかならぬ娯楽など興味も無い。

 

「・・失望したぞ七海。お前からの決意の眼・・只のゲームではないと思っていたがまさかTVゲームなどという下らないものを持ち出すとはな。悪いが降ろさせてもらう」

「・・・逃げるんだね?赤司君」

 

その言葉に振り返ろうとした体を止めた。安い挑発だ、乗ることはない。だがこの俺が逃げるとは聞き捨てならん。たとえブラフであろうがその言葉、斬らせてもらおうか。

 

「いいだろう・・受けて立つ」

「そうこなくちゃね。それじゃあ準備するから下まで降りようか」

 

食堂の下にある娯楽室に七海が移動する。それに俺が続くと左右田のヤツが妙に騒ぎ立てたせいか食堂内にいた者がこぞって集まってくる。余計な事を・・と言いたいが七海にもコイツラにも今一度誇示をする必要がある、俺こそが王の器足りえる者だということを。娯楽室へと向かうと筐体にコードを差しゲーム開始の準備を終えた七海が待ち構えていた。

 

「準備はできたようだな、七海。では今回のゲームジャンルはなんだ?」

「安心してよ、赤司君ならとても馴染みのあるゲームだから。」

 

手渡されたコントローラーを手にする。なるほど、老若男女の手に馴染むようにバランスよく設計されているようだ。両手の指を動かし配置されているボタンを軽く押してみる。ふむ、扱いやすいようではあるな。

 

「それで俺の馴染みのあるゲームとはなんだ?」

「それはこれだよ・・画面を見てみて」

 

映し出された画面にはバスケットボールが飛び交う映像が流れる。なるほど、そういうことか。バスケットボール部である俺にバスケットボールのTVゲームで負かせて辛酸を舐めさせようと言うのか。見損なったぞ七海、お前はもう少し切れる女だと思っていた。だがこんなチャチなヒステリーを起こすとはな、もはやこの勝負に価値はない。手に持ったコントローラーを手放そうとしたその時、『見慣れた』ものがその画面に映し出されていた。

 

銀色の髪と水色の瞳が特徴的な少年がバスケットボールを片手に視聴側から対面になるように立っている。それは紛れもなく・・

 

「・・・黒子・・だと?」

 

見間違えるはずがない。画面に映し出されたのはかつての帝光中学において『キセキの世代』と呼ばれた者達の中で『幻の6人目(シックスマン)』と呼ばれた男・・名は『黒子 テツヤ』。その男がなぜTVゲームの画面に映し出されている?疑問に思っていると画面内の黒子の頭部に文字が浮かび上がる。タイトルロゴとでもいうのか?そこに描かれていたタイトルにはこう表記されていた。

 

「黒子の・・バスケ・・」

「そう・・これは彼を中心としたバスケットゲームなんだ」

「なんだと・・?説明しろ七海、何故お前が黒子を知っている?このゲームは一体なんだ?」

 

俺の質問に視線を寄越した七海であったが画面に向き直ると何かの操作をしたのだろうか。画面が切り替わるとそこにはメニューの選択肢のような画面に切り替わっていた。

 

「私が黒子君を知っているのは私がこのゲームを作ったからなんだ」

「なん・・だと・・?」

 

『超高校級のゲーマー』である七海がゲームを自作したというのは十分理解ができる。だが一高校生に過ぎない黒子を主眼にしたゲームを制作するとはどういう意図なのか?あまりに不可解な状況は次に表示された画面を見てさらに混迷を極める。

 

そこには昨年度のWC本戦に出場したチーム全てが表記されていた。無論かつての学び舎でもある洛山高校も。

・・・抜かった。七海千秋、やはり相当に食えない女だ。まさかこのような手段で揺さぶりをかけてくるとは思わなんだぞ。だが所詮はTVゲーム、モチーフになったのがWC出場高であるに過ぎない。

 

「赤司君は初心者ってこともあるしステータスが最も高い洛山高校がいいと思うな。なんと言っても自分がいるチームだもんね」

「・・いいだろう。七海、お前は・・と言っても決まっているのだろう?」

「うん、私は誠凛高校バスケ部を使わせてもらうよ」

 

やはり・・な。どういう訳かは不明だがコイツは昨年のWC決勝を知っている。しかしそれをただ準えるだけの為にこのような回りくどいをしたとも思えない・・。何が狙いだ・・?

 

ゲームを始める前に七海からチュートリアルを受けると練習モードとして各選手を操作していく。葉山はドリブル力に長けており、根武谷はフィジカルやパワーに優れる。実淵はシュート力・バランスが共に高く黛は平均的な能力ではあるが特定化の条件で相手プレイヤーに探知できないスキルを備えている。ふっ、正に洛山高校そのものという訳か。肝心の俺自身の能力は全体的に高水準であり、『眼』も条件次第で使えるようだ。

 

対照的に七海が選択した誠凛高校は『キセキならざるキセキ』と呼ばれるパフォーマンスを誇る『火神 大我』のステータスは抜きんでてはいるがその他選手のパラメーターは平均的、いずれも我が洛山の選手1人1人と比較しても見劣りをする。

 

七海め、ハンデという訳か。だが結果は『あの時』と同じだ。あのと・・き・・・

 

何故だ・・思い出せない・・・?いや・・確かに我が洛山は勝った・・はずだ・・。そうに決まっている。あの試合で『ヤツ』が追いつめられ、『俺』が顕現してからは一方的な試合展開だったのは覚えている。だがその後の記憶がコマ落ちしたように抜け落ちている。これは一体・・なんだ?

 

「赤司君?そろそろ試合を始めたいんだけどいいかな?」

「・・・いつでも構わない」

 

試合開始前の演出が流れると観衆であるクラスメイトが声を上げる。先程まで空気が張りつめていたが迫力のある演出と久方ぶりに興じる娯楽にいくらか気持ちが開いているようである。

 

そして試合開始のブザーが鳴りひびく。俺は根武谷を、七海は火神をジャンパーに設定していたが跳躍については右に出る者がいないと言わしめるだけのことはある、火神がボールをカットするとそのままボールを確保した誠凛高校の攻撃が始まる。PGである伊月を起点に素早い動きで切り進んでいく。流石はラン&ガンに長けたチームといったところだろう。ゲームとは言えよく再現されている。とパスコース上に無人だったボールの軌道が突然変わる。これは黒子の・・!軌道を変えたボールを空中で受け取った火神はそのままボールを豪快にリングに叩きつけた。試合開始後初のシュートにしてアリウープとは・・

 

「中々に派手なプレイをするじゃないか?七海」

「そうかな?黒子君と火神君のコンビならこの程度は造作もないと思うな」

 

顔はゲーム画面を見つめたまま言葉を返す七海。その眼は瞬き一つすらしていない。どうやら無駄口を叩いている暇はないようだな。俺は自身のコントローラーを握る力を少しばかり強くした。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「す、すげぇ・・!ホントに赤司のヤツ初心者なのかよ・・!?」

「七海さんが操作するチームとほぼ互角の戦いを繰り広げておりますわ・・!」

「むぅぅ・・!流石は操作するチームのモデルなだけはあるのう!選手一人一人の動きに全く無駄がないぞ!」

 

後ろで聞こえるクラスメイト達の声を余所に俺と七海の戦いは白熱したものとなっていた。第3Qを終了してスコアは俺率いる洛山が98に対して七海率いる誠凛高校は108。残り10分においてスコア10点差はかなり追いつめられていると言えるだろう。

 

「流石だな、七海。ここまでのポテンシャル差をテクニックのみで埋めるとはな」

「それはこちらも同じだよ、赤司君。初めてでピーキーな選手たちをここまで扱えるなんてね」

 

発動タイミングが難しいとされるゲーム内の天帝の眼(エンペラーアイ)ではあるが所有者である俺にそのタイミングが捉えられないはずがない。要所要所で潜在能力を全て解放する『ゾーン』に突入した火神の進行を阻止する。しかし七海もまたディフェンスラインを巧みに張ることで決定的なチャンスを作らせずにいた。残り10分で10点差と言う状況において無理なオフェンスは仕掛けないのは道理だがゲームとは言えここまで冷静に対処できるとはな・・。ゲームメイクに関しては桃井や誠凛高校の女性監督よりも秀でているかも知れない。

 

「おい・・見ろよ、赤司の顔・・」

「笑って・・らっしゃいますの?あの赤司さんが?」

「あの赤司がゲームをやりながら笑うとはのぅ・・。」

 

何やら後ろで声が聞こえるが既に耳には入ってこない。たとえゲームであろうとも俺に負けは許されない。だがなんだこの高揚感は・・?たかがTVゲームでここまでの興奮を味わえるものなのか・・?

 

「・・楽しいでしょ、赤司君。バスケットボールって」

「・・七海・・・俺は・・『僕』は・・」

 

「・・・うぷぷぷぷ!お楽しみの所失礼するよぉ♪」

 

画面の前に突如として降り立ったのはモノクマだった。このタイミングで現れるなどわざとらしいにも程がある。

 

「・・モノクマ、今すぐにそこを退け。さもなくば・・」

「おおっとぉ!学園長であるボクに手を出すのは禁止ですよぉ赤司くん?」

「・・何しに来たのかな、モノクマ?」

「ダメだよぉ~、七海さん!せっかくの修学旅行なのにTVゲームばっかりして!良い子はお外で遊びましょ~!」

 

そう言うとモノクマはどこから取り出したのか赤いスイッチが付いたボタンを押す、するとゲーム機が突然爆発を起こし周囲のクラスメイトは悲鳴と共に身を屈める。俺と七海は互いに殺気を感じていたのかソファーの後ろへ身を移すことで難を逃れていた。

 

「はいは~い!そうゆうことなのでゲーム機は没収、もとい爆破しちゃいました~!あ~はっはっは!」

 

そう言い残すとモノクマはいずこかへと消えて行った。ヤツめ・・急に現れたと思えばこのような暴挙に出るとはどういうつもりだ?・・あのままゲームを続けていては何か不都合があったということなのだろうか。

 

思案する俺の前に七海が顔を出す、どうやら怪我はないようだ。後ろにいる連中にも大事ない。コロシアイ修学旅行を宣言している以上主催者側から直接危害を加えるつもりはないというわけか、してやられた。

 

「・・結局勝負は付けられなかったね」

「下手な言い回しをするな。あのまま続けていれば俺の負けだった・・。完敗だ、七海」

「・・それじゃあ勝者の私から一つお願いをしてもいいかな?」

 

勝者のお願いだと?・・なるほど最初からこれが狙いだったと言う事か。自分から敗北を宣言した以上聞かない訳にもいくまい。

 

「ああ、言ってみろ」

「それじゃあ・・小泉さんに謝って。それでちゃんと小泉さんと話をしてあげてくれないかな?」

「・・・・ああ、分かった。勝者からの命令だからな、従うさ」

 

自分でも何を言っているのか不思議だ。負けたというのに敗北感がない、それどころか充足感すらある。そうだ・・この感覚は帝光中学の時に・・・

 

突然モニターがブツンと音を立てる。ノイズを走らせながら映し出されたのはモノクマの姿であった。わざわざモニターに姿を現したと言うことは・・・まさか。

 

「死体が発見されました!一定時間の捜査の後、学級裁判を開廷します!」

 

その瞬間、場の空気が凍りつく。またしても発生してしまったコロシアイに左右田、ソニアは悲鳴を上げ弐大もまた歯を噛み締めながらワナワナと震えている。食堂で食休めをしていた十神、終里とハムスターの飼育をしていた田中も慌てて駆け下りてきた。遅れてやってきたのは左腕を抑えた辺古山と水着姿の西園寺・罪木・澪田の4人だった。その表情はとても青ざめている、ということは・・

 

「お前達か、死体の発見者は?どこだ、誰が殺された!?」

 

いずれも口を開こうとするが冷静さを欠いておりまともに会話が出来ない。すると周囲を見渡した七海が口を開く。

 

「ねぇ・・小泉さんと九頭龍君がいないよ・・?二人はどこに・・?」

 

それを聞いた西園寺が堰を切ったように泣け叫ぶ。罪木もそれに釣られるように泣きじゃくる。2人が感情を爆発させたおかげでなんとか冷静さを取り戻したのか、澪田が深呼吸を繰り返しながら声を絞り出した。

 

「ま・・真昼ちゃんが・・真昼ちゃんが・・!!」

「落ち着け、澪田!小泉がどうした!?」

「プ、プライベートビーチがある更衣室で・・真昼ちゃんが・・!!」

「・・小泉さん!!」

 

澪田の言葉を聞くなり、七海が外へと駆けだすとそれに合わせて俺たちも七海に続く。5分ほど走ったのかプライベートビーチに建てられた小屋の元に辿り着いた俺たちは若干開きかけている戸に近づく。そして一歩前に踏み出した七海が戸に手をかけ扉を開いた先に見えたものは・・・・

 

「小泉・・さん・・・?」

 

 

 

そこには両膝を折り茫然自失となった状態の小泉の姿があった。

 

その両手には血塗られた金属バットが握られ、

 

視線の先には夥しい出血とともに既にこと切れているであろう九頭龍 冬彦らしき 肉塊が散乱していた。

 

 

 

~To be continued~




次回、相当な鬱描写となると思いますので予めご了承ください。
ご感想・評価頂ければ幸いです。
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