赤司のロンパ ~ 超高校級の『天帝』と呼ばれた男~   作:ばうむくうへん

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日向創のポジションが赤司征十郎になります。


その男、修学旅行につき

「・・・ふむ。この食材も大丈夫のようだな」

 

 そうして手に持ったバケットに採取したキノコを詰める。我ながら手慣れたものだなと思う。様々な書物を読み漁ってはいたがまさかサバイバルの知識がこんな形で役に立つとは思わなかった。一見しただけでは分からない毒性の食材の見分も僕にとっては造作もない事である。

 

「お~い、赤司ぃ!コイツは食えるのかぁ!?」

 

 僕を呼ぶその声の先にはニット帽とチェックが目立つ青年。その右手にはまだら模様のキノコが握られている。

 

「そのキノコは毒があると言っただろう。傘の裏を見てみろ。特徴的な紋様が出ているだろう」

「えっ!?あ、本当だ!あぶねーあぶねー!」

 

「まったく・・先程教えた筈だが僕の気のせいだったか?和一」

「こ、今度は間違えねーって!大丈夫だよ!」

 

「・・・ふぅ」

 

 声ではなく鼻息で小さく溜息をつく。この島に来てから早くも3日目が過ぎようとしていた・・。

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・

 

 希望ヶ峰学園入学式の初日に半ば監禁状態となった僕を含む16名の新入生であったが、突如現れたウサミと名乗る不可思議な物体から『修学旅行へ出発する』と告げられると、ここ南国諸島である「ジャバウォック島」へといつの間にか足を踏み入れていた。

 

 観光名所として知られるジャバウォック島であるが、僕も実際に足を運ぶのは初めてである。修学旅行先に世界有数の観光名所を選択するあたり、さすがは政府公認の高校と言うべきだろう。・・・そこに至るまでの過程には様々な疑問が浮かぶが・・・。ウサミが言うには新入生同士の絆を深め、原理は不明だが手元にある「希望のカケラ」とやらが全員分溜まるとそこで修学旅行は終了となるらしい。

 

 経緯はともかく有名観光地で修学旅行を行えることに満足したのか、周りの生徒たちも徐々に事態を受け入れているようだ。一しきり各所を巡っては、誰が号令をかけることもなく自然と海岸の一箇所に集合していた。

 

「それではみなちゃん、落ち着いたところで自己紹介といきまちょーかー!」

 

 この不愉快な声の持ち主こそ「ミラクル★ウサミ」という珍妙な物体。これでも教諭という。外部からの操作にしてはあまりに精巧すぎる駆動に技術者とみられる青年も驚いているが、確かに油断はできない。僕の知らない「マホウショウジョ」という肩書を持つ以上、このウサミ本体はともかく操作している者には注意を払う必要がある。

 

「はいは~い!それじゃあ唯吹っから言っちゃうっすよぉ!!」

 

 誰から名乗りを上げるのか、初対面の人間同士では得てしてそんな奇妙な緊張感が走る中、突然の大声で名乗りを上げた少女。『超高校級の軽音楽部』である自身の名前を『澪田 唯吹』と名乗る。頭の角らしきものはヘアースタイルだそうだ。その他にも奇抜なファッションセンスが見て取れる。かつてミリオンセラーを達成したガールズバンドに所属していたそうだが、クラシックを嗜む僕にとってはまるで縁がない。『視た」ところ身体的な特徴はないが、ミュージシャンであるという彼女の言葉を信じるのであれば『聴覚』には優れているのだろう。

 

 彼女をきっかけに各自が自己紹介を始めた。超高校級の保健委員・飼育委員・ゲーマー・極道・・等と果たして才能と呼んでいいものか分からない者。超高校級の剣道家・写真家・体操部・日本舞踏家といった活動的な者。そして先の教室内においてその屈強な肉体に目をやった男は名を『弐大 猫丸』、そして自身の才能を『超高校級のマネージャー』と語った。

 

 それほどまでの肉体を持ちながらマネジメントだと?その疑問に眉を細めたのは僕だけではなかったようだ。だが高校スポーツ界においてあらゆるジャンルでそれまで無名だった弱小校が急速に力をつけてきたという話は聞いたことがある。我が洛山高校バスケ部も昨年のI.H予選においてそれまでとは見違えるほどに成長を遂げたチームがいたのを覚えている。あれは確か・・・

 

 ・・・・・・・・・・・・・・

 

「マッスルダンクッ!!」

「うわぁぁ!!」

 

 洛山高校バスケ部 2年生 センター 根武谷 永吉。高校生離れした巨漢とその筋力により「キセキの世代」の影で呼ばれていた「無冠の五将」の一人、「剛力」の肩書を持つ男である。彼がダンクシュートを決めたゴール下には対戦校の選手3人が尻餅をついていた。

 そのパワーは同世代はもちろん、恐らくプロでも通用すると言われ、事実その日の予選においても圧倒的な力を誇っていた。だが・・・

 

「・・・永吉」

「あぁっ?なんだよ、赤司?」

 

「今のダンク、切り返しからの捻転が甘かったな。力で強引にねじ伏せたようだが」

「しょうがねぇだろ?奴ら芋虫みてーに縮こまって張り付いてんだよ。邪魔ったらねぇよ!」

 

「・・・・・・」

 

 重心を低く保つことはスクリーンの基本とも言える。しかしそれを永吉のパワーに押し負けることなく実行することは相当な足腰の鍛錬が必要となる。『視た』ところどの選手も過去のデータからは比較にならないほどの成長が見て取れる。もっとも脅威と呼ぶには全く足りないが。

 

 

「試合終了!」

「あざっした!」

 

 

 結局その試合は我が洛山のトリプルスコアという圧勝に終わった。この結果の相手選手のベンチは決まって沈みかえっている。勝者がいれば敗者がいる。当然の事。僕は試合後に必ず相手選手の顔を見て「勝者と敗者」の境界線を確認することにしている。ふと相手ベンチの方に目をやるとその光景は今までに見たことがないものであった。

 

「ちっくしょー!根武谷の野郎、マジで当たりがツエーよ、びくともしなかった!」

「俺も超吹っ飛ばされた!畜生!」

「がっはっは!まぁ力の差は歴然じゃった!おんしらはようやったぞ!帰ったら『アレ』してやるわい!」

「・・マジかよ!?よっしゃー!!」

 

 

「・・・・・・・・」

「んだありゃ?ボロ負けで高笑いしやがって、ハナから諦めてたんじゃねぇか」

 

 違う。選手である彼らは敗北の悔しさを抱えていた。それを吹き飛ばすほどの豪気を持つ男の一言がそれを打ち払ったのだ。彼は選手なのか?ユニフォームは着ていないようだが・・。

 

「うは、向こうのベンチの人、ウチのゴリラと同じくらいマッチョじゃん!」

「誰がゴリラだ、こらぁ!!?」

 

「征ちゃん、どうしたの?」

「いや・・なんでもない」

 

 ・・・・・・・・・・・・・・

 

 そうか、この男があの時の彼だったか。『超高校級のマネージャー』・・俄かには信じられないが確かに彼はマネジメントのスペシャリストと言えるだろう。その記憶が蘇ったせいなのか、男の自己紹介が終わると、僕は自身の口を開いた。

 

「・・・次は僕から自己紹介しよう。洛山高校から来た 赤司 征十郎だ。宜しくお願いする。」

 

「赤司ってあの・・・?」

「や、やっぱり赤司君だったんだ・・!」

「がっはっは!合縁奇縁じゃのう!まさかおぬしと学友になるとはのう!」

 

 どうやら名前や顔は知られているようだな。ならばこれ以上、語ることはない。そのまま後ろに引こうとする僕であったが・・

 

「ねぇ、キミの才能はなにかな?教えてよ。」

 

 振り向くとその声の主はロングコートの男。閉鎖された教室内で周囲が動揺する中、沈着冷静を保っていた彼からそのような興味本位の質問が飛んでくるのは意外であった。

 

「ねぇ、僕たちに教えてよ、キミの才能がなんなのかをさぁ?」

「・・・・・・・・」

 

 その問いにしばし考え込む。ボクのスカウトされた才能は『超高校級の天帝』つまり絶対的な王者としての才覚を認められて今この場にいる。しかし今自分たちが置かれている状況においてその才覚は足枷になるのではないだろうか?自ら王者と名乗る者に絆を深め親睦を図ることなど土台無理な話だ。

 

 僕が出した答えは・・

 

「僕の才能は・・・『超高校級のバスケットボール部』だ。全国優勝の経験がある。これで満足か?」

「・・・・教えてくれてありがとう、赤司クン」

 

 ・・ひどく腹が立つ。この僕が世間体を気にするあまり自分自身を偽ってしまった事に。なによりもあのロングコートの男にこの返答を誘導されたような、そんな感覚がある事に。

 

「あれ、おかしいでちゅね。赤司君の才能はたちか・・」

「・・黙れ」

 

 

天帝の眼(エンペラーアイ)

 

 

「あ、あわわ・・!足が動かないでちゅ・・!」

「それって動物にも効くのかよ!?」

「や、やはりこの男、邪眼使いか!おのれぇ・・!」

 

 僕の『眼』を下らない事に二度も使うことになるとは。いずれにしてもウサミとやらには後程、口封じをする必要があるな。

 

「ひぅぅ・・!さ、逆らいませんから殺さないでくださぁぁい!」

「だ、大丈夫だよ・・罪木さん・・多分だけど」

「あのおにぃ、マジヤバいよ・・」

 

・・まずいな。先の教室では場を諌めるために「少々」威嚇したつもりだったが、女生徒には想像以上に恐怖を与えてしまったらしい。特に『超高校級の保険委員』である『罪木 蜜柑』はまるで僕を殺人鬼を見るような目で全身を震わせている。面倒であるが今後の為にも弁明はしておくか。

 

「・・先ほどの教室では失礼をした。僕も突然の事態に気が動転していたようだ。あのような事を口走ってしまい、皆に恐怖を与えてしまったことをお詫びする」

 

軽く頭を下げ謝罪の意を示す。形式ばったものではあるが本人の口からはっきりと応えたためか、その場の全員が納得し受け入れてもらえたようだ。

 

「よ、よろしくお願いしますぅ・・赤司さぁん・・」

「ああ、宜しく。蜜柑」

「うは、いきなり名前呼びなんておにぃってフランクなんだね!私も赤司おにぃって呼んでいい?」

「・・好きにしてくれ」

「うっきゃ~!じゃあ唯吹は征十郎ちゃんって呼ぶっすね!征ちゃんでもいいっすよ!」

 

思いがけず自己紹介の場で目立ってしまったが、とりあえず状況は落ち着いたな。一部男性陣がなにやら敵意の視線を向けてくるようだが気にすることはないだろう。

 

「でわ、次は私の番ですね。私の名はソニア・ネヴァーマインド。ヨーロッパの小国ノヴォセリック王国から留学生としてやってまいりました。才能・・と言うのか存じませんが『超高校級の王女』と呼ばれております。ヨロシクお願い致しますわ」

 

 今、何と言った?『超高校級の王女』だと?ノヴォセリック王国と言えば世界に影響力を持つ国家だと聞く。その一国の王女が希望ヶ峰学園からスカウトされはるばるやってきたというのか?・・馬鹿な。希望ヶ峰学園・・どれほどの力を持っているというんだ。今回の修学旅行といい、不可解な点が多すぎる。それにしても・・

 

「そ、ソニアさんと言うんですか!?お、俺左右田和一って言います!」

「は、はぁ・・先ほど自己紹介されてましたよね?たしか『超高校級のメカニック』の・・」

「王女様なんてかっけ~っすよ!唯吹感激っす!」

 

「・・・・・・」

 

 このような反応であるならば、わざわざ自分の才能を隠す必要などなかったわけか。面倒なことになったものだ。やはり慣れないことはするべきではないな。その後も滞りなく自己紹介は進み、残り二名となったところで先程のロングコートの男が力のない声で喋り始める。

 

「最後のトリって言うのも恥ずかしいから僕から言わせてもらうよ。僕の名前は狛枝 凪斗・・。才能っていうのは皆の才能と比べたらゴミのようなものなんだけど・・その・・『超高校級の幸運』なんだ。ヨロシク頼むよ」

 

 幸運・・か。聞けば、希望ヶ峰学園は毎年1名無作為に一般的な生徒を選出し『超高校級の幸運』として招いているらしい。希望ヶ峰学園へ入学できるのだから選ばれた者はまさしく『超高校級の幸運』と呼べるのだろう。それが才能と呼んでいいものなのかは分からないが。先程僕の才能が何かと固執していたのは自身の才能故・・といったところだろう。

 

 十人十色というように、様々な才能を持った者たちで迎える修学旅行。このまま最後の一人の自己紹介を終え、今後のカリキュラムを確認して目標を達成し帰還する。ただそれだけのことで済むはずだった。彼の名乗りを聞くまでは。

 

「最後は俺だな。ふん、貴様らに自己紹介などもったいないが・・。俺の名は『十神 白夜』、『超高校級の御曹司』とは俺の事だ。分かったか、愚民ども。」

「・・・十神白夜・・か・・。」

 

 人の発言は聞くことではなく『視る』ことである。僕はそう学び、そして実践してきた。今この男・・十神白夜を『視た』僕は一つの確信を得た。だがそれは今ここで明らかにするべきではない。その時が来ればいずれ分かる。この男の真意も・・・希望ヶ峰学園がどのような『組織』かということも。

 

 ・・・・・・・・・・・・・・

 

『皆、お疲れ様~!夕食の準備ができてるよぉ~!』

 

 採取を終え、自室エリアに戻った僕達を待っていたのは食卓に盛られた豪勢な料理の山々であった。『超高校級の料理人』の才能を持つ『花村 輝々』がこしらえたものであるが、和洋折衷の見事な彩である。先程僕たちが採取したキノコもそうだが地産地消に拘る彼の計らいで南国諸島にいながら各国の料理に舌鼓を打つことができるのは皆の大きな楽しみでもあった。

 

「おいしぃ・・こんな料理我が国でも食べたことがありません。」

「んぐんぐ・・!うめぇ・・!こりゃうめぇぞぉ!!」

「おい、終里!俺の肉を取るな、この愚民が!」

 

 育ちの良し悪しは食事の際に表われると言うが・・。ソニアの上品な箸使いと比較して『超高校級の体操部』である『終里 赤音』は両の手で鷲掴みにしながら頬に料理を詰め込んでいる。白夜に至っては名家の生まれであるとは思えないほど豪快な食べっぷりであり、その様は赤音とさして変わらない。この二人の食事を見るだけでこちらの食欲が失せてくる。

 

「・・ほう、この料理は『しょっつる』を使っているのか・・興味深いな」

「あ、赤司君、よく分かったねぇ。ま、まぁ僕みたいな都会派料理人でも古今東西の調理法は大事にしなきゃだからね!」

 

 将来を青山・麻布に店舗を構える有名シェフとして名声を得る、非常に明確な目的だ。そして彼にはそれを実現できるだけの力と野心がある。その影にやや『焦燥』が視えるが・・。

 

「赤司君、これもどうだい?これを食べれば元気10倍、精力100倍だよぉ!」

「・・・いや、遠慮する」

 

 

食事を終えると、そのまま食堂にて雑談を交える者。自室のコテージに戻り休息する者。夜の歓楽街に繰り出そうとする者など各自が自由行動を開始する。絆を深めるという目的の元、日中は常に行動を共にしているがこの時ばかりは束の間の休息の時間である。僕はというと3日目にして娯楽施設で、ある生徒とボードゲームを嗜むのが日課になっていた。

 

「・・・チェックメイトだ」

「わ!・・・ついに負けちゃったね」

 

瞬きしながらボード盤を見つめるのは『超高校級のゲーマー』の才能を持つ『七海 千秋』。初日の夕食後に棋譜を打っていた僕にボードゲームの対戦を持ちかけてきたのが彼女であった。自慢ではないが、ボードゲームに関しては相当の自信がある。盤面という限られた空間の中で交わされる戦略と戦術のせめぎ合い。中でもチェスを得意としていた。彼女の申し出に応えたのはそれ故のものであったのだが、結果については割愛させてもらう。『3日目』にして初めて白星を挙げたと言う事だけは正直に語っておこう。

 

「赤司君、すごいね。一昨日とは全く手が違って読めなかったよ。」

「これだけ対局を続ければ指し手の癖も視えてくるさ。」

 

「む~・・、負けたままで終わるの悔しいからもう一回やろうか?」

「いいだろう」

 

そうして今日もまた深夜までチェス盤に駒の音を響かせる。思えばこのように自由な時間を持つことはなかった気がする。帝光や洛山では学校行事には参加せずバスケに明け暮れ、自宅では勉学に励み己を高めてきた。それは今も昔も変わらない。僕は常に前を、高みを目指している。希望ヶ峰学園へ足を運んだのもすべてはそのため。そう、そのためなのだから。

 

「チェックメイト。私の勝ちだね。ふぁぁ・・」

「・・・もう一戦だ」

「zzz・・」

「・・・寝るな、千秋」

 

超高校級の才能が集う修学旅行か・・中々に退屈しないで済みそうだ。

 

 

~To be continued~




今のところ『ツンデレ赤司』です。この時の彼をよく覚えていてください。
恐らくそうそう見れなくなるので・・・・・
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