赤司のロンパ ~ 超高校級の『天帝』と呼ばれた男~   作:ばうむくうへん

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CHAPTER1 絶望ステージ
詐欺と模倣


 俺は恐怖していたのかもしれない。あの日、初めて教室で相対した男の持つ気配に。何もかもを見透かしたかのような、そう・・俺の『正体』も。

 

 

 

「赤司!しっかりしてよ!ねぇ!」

「うゆぅぅ・・。こ、小泉さん、揺らしちゃダメですぅぅ・・!」

「おい、赤司はどうなっちまったんだよぉ!?ま、まさか死んで・・!?」

 

 ジャバウォック公園にて突如「コロシアイ修学旅行」などとふざけた事を抜かしたモノクマというロボット。ソイツに教諭であるウサミはバラバラにされ、前に立ちはだかった赤司は何らかの方法で激しく苦しんだ後、昏倒していた。クラスメイトが揃って赤司に駆け寄る中、この俺『十神白夜』はその光景を静かに見ていた。傍観者のように。

 

「うぷぷ!心配しなくても赤司クンは死んでませんよ。ただ目覚めるには時間がかかるかもね。『戻す』のに結構手間取っちゃったしね。」

 

 まただ。また『戻す』と言った。コイツは赤司が倒れる前に『元に戻す』と言っていた。その直後に赤司は倒れたわけだが、このことが意味するのは・・。

 

「そういう訳でオマエラは今から「コロシアイ修学旅行」の参加者となりました。殺害方法は問いません!さぁドンドンやっちゃってくださいね!あーっはっはっは!!」

 

 高笑いを残し、モノクマはいずこかへと姿を消した。同時に取り巻きの大型ロボットもいずこかへと飛び去って行く。一瞬にしてその場は静寂と化した。後には赤司を心配し、すすり泣く女生徒らと理不尽な暴力に怒りを露わにする者、現状が呑み込めず混乱する者など様々だ。・・今のこの状況・・『好機』だな。

 

「お前ら、戸惑っている暇はないぞ。まずは赤司を連れてコテージに戻るぞ。」

 

 その言葉に従い倒れている赤司を弐大が抱え上げ、足取りは重いが皆その場を後にしようとする。その中で一人、声を荒げる者がいた。

 

「ふざけんじゃねぇぞ!コロシアイなんて宣言された以上、テメーらなんかといられるか!」

「何だと・・!?九頭龍、キサマ・・!!」

 

 その男の名は『九頭龍 冬彦』。日本国内において最大規模の指定暴力団「九頭龍組」の跡取りであり、『超高校級の極道』でもある。先の修学旅行中においても皆と積極的な交流は行っていなかったがやはりというべきか、この状況で問題を起こすであろうことは予見できた。・・これも俺にとって『好都合』ではあるがな。

 

「待て、九頭龍!こんな状況だからこそ俺たちは行動を共にする必要がある!勝手なことは許さんぞ!」

「オレに命令するんじゃねぇ!好きにやらしてもらうぜ!」

 

 そう言い放つと九頭龍はいずこかへと去って行った。概ね、『計画通り』といったところか。九頭龍を除く残りのメンバーでコテージに戻った俺たちは赤司の看病を罪木に任せると、食堂の前に集合することになった。

 

「・・・私達、これからどうすればいいの?」

「こ、小泉おねぇ、大丈夫?」

「ちくしょう、あのクマ野郎!訳のわかんねぇ事言いやがって!ぶっ飛ばすぞ!」

「落ち着かんか、終里!このしおりにも書いちょるじゃろうが!モノクマに手を出すことは禁じると!赤司があんな目にあったんじゃ。このしおりに書いちょることはハッタリじゃなかろうが!」

 

 場所が変わっても皆の精神状態は変わらなかった。依然として不穏な空気の今、俺が『十神 白夜』として行動することは一つ。

 

「お前らに聞く。この中でコロシアイなどとふざけた事をしようと考えている奴はいるか?」

「・・!!?」

 

 余りにもストレートに「コロシアイ」という言葉を口にしたためか。皆の視線が一斉に俺に向けられる。・・いいぞ、その目だ。

 

「そ、そんなこと考えてるわけねーだろうが!」

「そ、そうだよ!なんでぼくたちがそんなことをしなきゃいけないのさ!てゆうか、ぼくはあんなの全然信じてないんだけどね!?」

 

 当然、コロシアイを肯定する者はいない。仕込みも大詰めだな。俺はさらに言葉を続ける。

 

「ではさらに聞く!俺たちがコロシアイをせずに生き残るにはどうするべきか!?それが分かるか!?」

「・・やっぱり絆・・かな?ボク達が希望を持っていればコロシアイなんて起きないよね?」

「絆・・それも重要だ!しかし!そのために必要不可欠なものがある!それは・・・!!」

 

 

「皆を率いる指導者・・リーダー・・だな?」

 

 

 ふいに俺の言葉を遮る。・・・やはりお前か。今度もまた俺の前に立ちふさがると言うのか。その言葉の方へ皆が一斉に振り返る。

 

 

「・・・・・・・・・」

 

 

「あ、赤司!もう起きて大丈夫なの!?」

「赤司おにぃ急に倒れるんだもん!ビックリしちゃったよ!」

「流石は赤司じゃのう!タフさも一級品じゃあ!がっはっは!」

 

 赤司の元に駆け寄る一同。その光景がすべてを物語っていた。皆が求めるべきリーダーは誰かと言うことを。俺はやはり傍観者のようにその場に立ち尽くしたままだった。

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 目を覚ますと、そこには蜜柑の顔があった。どうやら心配で覗きこんでいたらしい。目には涙を浮かべている。それにしても・・

 

「・・近いぞ、蜜柑」

「ふぇぇっ!?す、すみませぇぇんっ!?」

 

 額がやけに冷たい。蜜柑が氷で冷やしたタオルを当ててくれていたようだ。今しがた視線が近かったのもそのためか。

 

「どうやら手間をかけてしまったようだな。『罪木』」

「い、いいぇぇっ!わ、私なんか全然お役に立てなくてぇぇ・・!・・?赤司・・さん、今・・なんて・・?」

「・・手間をかけたと言っただけだが、何か不思議な物言いだったか?」

「い、いえ・・その・・な、何でもないですぅ・・!すみませぇぇん!!」

 

 世話になっておきながらでなんだが、彼女は自虐性が強い女だ。それも病的に近い。自分は世界の全てに否定されている、そんな疑心暗鬼を覗かせている。こうして看病をしてもらったことに感謝している一方で度が過ぎる態度に少しばかり不機嫌になる。

 

「・・・他の皆は?」

「あ、あの・・!他の皆さんは食堂に集まっていますぅ・・。今後の事を話し合うとか・・」

「そうか、ならば行くか」

「あっ、赤司さん?まだ安静にしていなくちゃダメですよぉっ!?」

「問題ない」

 

 制止を振り切り、食堂へと向かう。その後ろを蜜柑がパタパタとついてくる。

 

 食堂に向かいながらあの時フラッシュバックしたイメージを思い起こす。あの日、あの時、あそこで何が起こったのか・・。まだコマ送りのようですべては思い出せていない。モノクマが言っていた「元に戻す」という言葉が何を意味するか分からないが、その時の記憶に関係するものであるということだけは理解できる。なぜモノクマは「元に戻す」という言葉を放ったのか?そしてその宣告の後に合図を受けたかのように襲われた強烈な頭痛。そしてあいつらの顔と声。様々な疑問が浮かぶ中で食堂の戸を開くと、ふいに声が耳に入ってきた。

 

「ではさらに聞く!俺たちがコロシアイをせずに生き残るにはどうするべきか!?それが分かるか!?」

 

白夜か・・。鬼の居ぬ間にとはよく言ったものだな。今のうちに点数稼ぎというところか?そうだろうな・・お前は。

 

「・・やっぱり絆・・かな?ボク達が希望を持っていればコロシアイなんて起きないよね?」

「絆・・それも重要だ!しかし!そのために必要不可欠なものがある!それは・・・!!」

 

 用意された言葉に乗ってやる事はない。教室内であったように白夜の言葉に答えを返す。

 

「皆を率いる指導者・・リーダー・・だな?」

 

 その言葉に食堂内の面々が一斉に振り向く。皆それぞれ身を案じてくれたようだ。労いの言葉をかけてもらう。

 

「あ、赤司!もう起きて大丈夫なの!?」

「赤司おにぃ急に倒れるんだもん!ビックリしちゃったよ!」

「流石は赤司じゃのう!タフさも一級品じゃあ!がっはっは!」

 

「どうやら心配をかけてしまったようだな。すまなかった」

「えっ!?」

「あの赤司がすまなかっただってよ・・!?」

「この前のバーベキューで和一ちゃんにソースぶっかけても『気にするな、服が汚れただけだ』って言ってたのに珍しいッスね!」

 

 

 何を驚く必要がある?素直に謝罪しただけなんだが。しかしどこか引っかかる。そんな事を律儀に行えただろうか?・・・僕は。

 

「・・・先程の話の続きをしても構わないか?」

 

 落ち着いたところで、白夜が切り出す。先程の話とは無論、今後の活動におけるリーダーについての話だろう。

 

「・・喜べ、俺がそのリーダーを買って出てやろう。」

 

 大胆不敵に自らリーダーを買って出るとは。その態度に少なからず不満をぶつける者もいたがこの曲者ぞろいの連中、自分がまとめるのだと他に立候補する者もいないようだ。だが白夜の言葉には「実」がなかった。予め用意していた台詞に意味や価値を感じ取れない三流の演者のような、ただ読み上げただけの言葉。それにしても・・お前がリーダーか。なるほどな・・。

 

「・・くくっ。クックック・・・!」

 

 意見が硬直して静かになった食堂で乾いた笑い声が響く。このような笑い声をするのは不可解な言葉を放つ『超高校級の飼育委員』である『田中 眼蛇夢」だけだ。この場にふさわしくない笑い声をあげた男を叱責せんと視線をむけるが、そこには眼蛇夢をはじめ、驚愕の表情を上げる皆の姿があった。

 

「・・・・?どうした、皆?」

「い、今の笑い声って・・赤司・・なの?」

「き、キサマ・・!この状況で俺様を真似るとはどういうつもりだ・・!?」

 

「・・なんだと?」

 

 今の笑い声を上げたのは僕?あのような下卑た笑い声をあげたと言うのか?・・馬鹿な。

 

 と、急に周囲がブラックアウトする。これは・・以前学園の門扉をくぐった時と同じ・・皆はどこだ?周囲を見渡すが辺りは完全なる闇と化しており、もはや自分の立ち位置さえ分からなくなっていた。

 

 あの時と同様に、闇の中を手探りで歩く。再び同じ状況を繰り返すモノクマの意図が分からずに歩き続けると、そこには以前のような扉ではなく、人影が見えた。クラスメイトの誰かか?背を向けたその人物の肩に手を置く。振り返ったその人物の顔は・・・

 

「・・・僕?」

 

 瓜二つではない。まぎれもなくそれは「僕」だった。直感で分かる。目の前にいるのは偽装されたなにかではなく「赤司 征十郎」そのものであることが。

 

「・・やっとここまで来たか。ここまで連れてくるのに苦労したぞ」

「・・どういう・・意味だ・・?」

「モノクマに聞いただろう?・・元に戻すと・・」

「どういう意味だと聞いている・・!?」

 

 全く同じ顔、同じ声の者同士が言葉をぶつける。目の前にいる人物が自分自身と理解しながらも僕は戸惑いの感情を隠せずにいた。

 

「お前も薄々と気づいているはずだ。・・お前は俺から生まれたコピーだということに」

「コピーだと・・?ふざけるな、赤司 征十郎は僕一人だ。貴様のような者の戯言など信じられるものか」

「信じられないのも無理はない。お前のその感情・思考・行動はすべてこちらが与えたのだからな。」

「なにを・・言っている・・?貴様は何を・・?」

 

 僕と同じ顔をしたソイツは言葉を続ける。その言葉が一つ一つ僕の体の芯に突き刺さってくる。それがこの男の言葉が真実であると言うことを本能的に理解してしまっていた。

 

「ふざけるな・・!赤司征十郎は僕だけだ!消えろ、偽物め!」

 

そいつが偽物でないことは僕自身が何よりも分かっていたが否定の言葉を向けるしかなかった。そんな僕にそいつは酷く冷めた眼で語りかける。そう、僕が敗者を見る眼と同じように。

 

 

「・・・・創造主に刃向うか・・俺のコピーとは言え・・」

「頭が高いぞ」

 

 

「・・・がっ!!?」

 

 

 これは・・「天帝の眼(エンペラーアイ)」だと?馬鹿な・・!?この僕が・・相手を見上げるなど・・!

 

「これが俺とお前の差だ。・・そろそろ時間だ。お前には舞台から降りてもらう。」

「ま、待て・・!僕は・・僕は・・!」

「先程は中途半端に意識が混じってしまったがこれでコピーとしてのお前は消える。・・そうだ。洛山高校の入学、そしてIH優勝おめでとう。WC予選もご苦労だったな。」

「なん・・だと・・?それでは・・あのWC本戦の記憶は・・!」

「それをお前が知る必要はない・・さらばだ」

「待っ・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 そして、『僕』は消えた。

 

 そして、『俺』は目覚めた。

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「・・し!・・・赤司ってば!?大丈夫なの!?」

 

・・・『アイツ』を介さないで生の音を聴くのは随分と久しぶりだな。かれこれもう3年近くなるのか。自身に流れる血の脈動を感じながら、静かに深呼吸をする。そうして久しぶりに『表』に出てきた自分を馴染ませる。

 

「ねぇっ!?赤司!?しっかりしてよ!?」

「・・黙れ。先程からやかましいぞ、小泉」

「・・・ッ!?」

 

目頭を押さえたまま立ち尽くしているのを心配した彼女であったが、久方ぶりの外の音にしては耳触りが過ぎる。怒気を交えた声でそう告げると小泉を含むその場の全ての者が口を閉ざした。

 

「な、なんだよ・・!?赤司のヤツ、なんか雰囲気変わってねぇか・・!?」

「い、イメチェンだよ、きっと!さすが赤司君だなぁ、ぼ、ぼくもワイルド系になろうかなぁ!?」

「あ、赤司おにぃ・・?ど、どうしちゃったの?」

 

戸惑いを露わにする面々。その中でも俺の『変化』を感じ取ったのか、毅然とした態度でこちらを覗く者がいる。

 

「オメー・・ホントに赤司か・・!?さっきまでのアイツと気がちげぇぞ・・!?」

「落ち着かんか、終里!赤司もどうしたと言うんじゃっ!?」

「・・・赤司君。」

 

野生に長けている終里やマネジメントによる観察力を持つ弐大はともかく、七海まで俺の変化に気付くか・・。まぁ至極当然と言えば当然か。

 

「赤司、キサマ・・この状況でなんのつもりだ・・!?」

 

場を乱した俺に向かってくるのは十神。先程までは呆けた演者だったヤツがこの状況を場面の変化とでも認識したのか?やれやれ・・。

 

「いや・・。済まない。お前がリーダーを名乗り出るのがあまりに滑稽だったものでな。つい声にして笑ってしまったよ。クックック・・。」

 

再び食堂内に響く乾いた笑い声に周囲の空気はより一層張りつめたものになった。さぁ、十神白夜・・。お前の好きな舞台は用意してやったぞ?

 

「赤司・・!この超高校級の御曹司であるこの俺を愚弄すると言うのか?生まれながらに頂点に立つべく宿命を背負ったこの俺を!?」

「なるほど、それが今回のお前の役どころという訳か?」

「き・・キサマ・・!?や、やはり・・気づいていたのか・・!?」

 

俺の言葉に激しく動揺する十神。その様はさながら本番の舞台で台詞を忘れたように実に滑稽なものだった。

 

「あ、あのぉ・・お二人が話している意味が分からないんですけどぉ・・?」

「唯吹もさっぱりっすよぉ?」

「俺様には分かるぞ。あの二人が醸し出す漆黒のカタルシスが!」

 

周囲から見れば俺と十神の会話の意味など分かるはずもない。だがこの余興には意味がある。そろそろ仕掛けるとするか・・。

 

「誤解をするな。俺は十神をリーダーだと認めている。お前こそが相応しいとな。」

「なん・・だと・・!?」

 

その言葉に十神を含むクラスメイトが戸惑いの表情をあげる。なぜあのような事を言っておきながら十神をリーダーに推薦する発言をしたのか?その疑問がこの舞台を次のステージへと運んでくれる。そうだろう・・・モノクマ?

 

 

モノクマ「うぷぷぷ!赤司クン、君は役者ではなくて脚本家なんだよね。さしずめボクはこの舞台の監督ってことになるのかな?あーっはっはっはぁ!」

 

 

などと、ほくそ笑んでいることだろうな。・・・モノクマ。お前は大きな誤解をしている。俺はこの舞台の脚本家でもなければ監督でもない。俺には全てが『視えている』。それをこの第一幕を持って見せよう。お前と、クラスメイトと・・『アイツら』にもな。

 

 

~To be continued~




前回より少し日が空いてしまいましたが、今後は週一ペースでやってきます。
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