赤司のロンパ ~ 超高校級の『天帝』と呼ばれた男~ 作:ばうむくうへん
その日の夜、修学旅行生達の居住エリアである食堂脇にある廃屋にて『とあるパーティ』が行われようとしていた
「さぁ、ジャンジャン作ったからドンドン食べてよね、みんな!」
「うっひょ~!こんな旨そうなものオレ、初めてだぁ~!」
「あ、赤音ちゃん。とりあえずよだれを拭こっか。」
食卓にはこれまでの生活で食してきた以上の料理が山のように盛られていた。料理人の腕の見せ所だと花村が張り切っていたが中々に見事なものである。正に今夜のパーティに相応しいと言えるだろう。
昨日の食堂での会合にて十神白夜が提案した統率者について、俺は立候補した十神白夜こそがリーダーに相応しいであることを告げた。
「お、おいっ!?赤司っ!?お前言ってることおかしくねぇか!?」
「そ、そうだよ!十神君がリーダーになるの反対だって・・・!」
「俺がいつ十神がリーダーになることを反対したと言うんだ、花村?」
「そ・・それは・・!」
つい先ほどまで十神を嘲笑していた男がリーダー就任を認めるとは馬鹿にしているのもほどがある。当人の立候補に加え、推薦までしたにも関わらず、十神のリーダー就任を容認しようとする者はすぐには出てこなかった。
「俺が笑ったのはこの状況でよくも自分がリーダーになると発言した十神を皮肉っただけだ。他意はないさ」
「・・・・くっ!!」
この状況は十神にとって最大の誤算ともいえる結果だろう。あわよくばこの状況を利用し、自身がリーダーとなり『十神白夜』であるという盤石を置ければよし、よしんば他の者がリーダーになったとしても補佐という立場で己が存在感を示すことができればよしだったのだから。だが俺がここまで十神を立てたのには理由がある。そう・・『理由』が。
「では皆のリーダーとなった十神に聞きたい。俺たちの今後の意見を聞かせてもらえないか?」
「・・・・。では、俺から提唱するのはこの島の捜索だ」
「捜索って・・何を探すと言うのかな、十神クン?」
俺のわざとらしい質問にあえて乗ったのか、諦めたのか、十神が提案した内容に狛枝が疑問を返す。
「ま、まさか脱出するとか考えてんのか!?無理だぜ!?空港にあった飛行機のエンジンは全部抜かれちまってんだ!ここに来た初日に俺は確認してんだよ!」
「そういえば左右田さんは超高校級のメカニックでございましたわよね?すっかり忘れておりましたわ」
「そ、ソニアさん・・。そりゃないですよぉ」
ここ南国の孤島であるジャバウォック島からの脱出となると手段は限られてくる。港に船らしきものがない以上、脱出は空路に限られるが、今しがた左右田が述べたようにそれも不可能ということが確認されている。ここで十神の言う探索とは・・。
「そんなことは分かりきっている。探索とはこの島で起きた変化を探すんだと言っているんだ」
モノクマというイレギュラーの登場によってこの修学旅行は異変と化した。ならばそれに伴い島内においてもなにかしらの変化があるのではないかというのが十神の見解である。なるほど、伊達に『十神白夜』を名乗っているわけではないと言う事か。
十神の舵取りによってクラスメイトはそれぞれに島内の捜索を開始した。皆それぞれに表情が硬い。状況を理解している者、できない者、状況を拒否する者など様々だ。・・だがそうでなくてはモノクマが・・いや、俺が面白くないのだがな。
一しきり捜索を終えた後、俺たちは待ち合わせ場所に決めていた場所へと向かう。異変の始まりとなった場所であるジャバウォック公園へと。
「どうじゃあ、みんなぁ?何か見つかったかぁ?」
「見つかったって言うか・・目に入ったと言うかよぉ・・!」
弐大の質問に恐る恐る声をだす左右田。奴がああなっているのは無論、隣接する島への連絡通路をあの大型ロボットが門番のように立ちふさがっていたことだった。
「アレなんなんだよ!?どこにも逃がさねーってか!?この島からの連絡通路全部あの化け物ロボットで封じちまうなんてよ!?」
「オレに任せとけ!あんな奴ら10秒でギタギタにしてやるぜ!」
「あんなのに勝てるわけないっしょ!?キモウサギみたいに消し炭にされるのがオチじゃんっ!?」
各島への移動手段をわざわざあのような門番を立ててまでふさぐか。モノクマの奴め、随分と楽しんでいるようだな。
「・・そんなことは分かっている。そんなことよりもこれを見てみろ、お前達。」
ざわつく面々を前に十神が目をやるとそこには禍々しいデザインの球体型のタイマーであった。これみよがしにタイマー音を刻みながらカウントダウンを始めている。
「な、なんなんだよぉこれぇぇっ!?」
「ま、まさか時限爆弾なんじゃぁぁ!?」
このような露骨なものを見せられれば普通はそう考えるだろう。それにしてもこれは・・・。
「・・余りにもわざとらし過ぎるな。」
「赤司もそう思うか。俺も同意見だ。」
「2人だけで納得していないで、私達にも教えてよぉ~!」
「唯吹もちんぷんかんぷんっす!」
「考えてもみろ。先程コロシアイを開始するという宣言をしてみせたヤツがわざわざ時限爆弾などを設置する意味があると思うか?」
「あ・・・・」
十神が言う事は的を射ている。モノクマが・・正確にはモノクマを操る者があのような嫌悪感を示すロボットを操り、大型ロボットでウサミを粛清するデモンストレーションまでしながら宣言した「コロシアイ修学旅行」そこに主催者側の手による粛清が行われればイベントとして成立しない。
「コロシアイをしなければ皆殺しにするってことにはなんねぇのかよ!?」
「それはない。皆殺しが目的なら即座に出来る事だろう。」
それよりも気になるのが、いかにしてモノクマはこのような巨大なものを数時間の間に誰にも悟られることなく設置できたかと言うことだ。そもそもアイツと大型ロボットの存在、そしてウサミ・・。未だに途切れた記憶の中で何が起こったのか・・。
思考を巡らせていると十神が皆を制し、高らかに声を上げる。
「安心しろ!何が起きようともこの俺が貴様らを導いてやる!」
その声は高慢さはあれども裏はなかった。澪田や西園寺はその言葉に共鳴し、周りの者もその言葉に幾分か励まされたようだった。
十神も西園寺からつけられた「豚足ちゃん」などという不名誉なニックネームを与えられながらも度量の深さを示し、まさにリーダーとしての威厳を見せつけていた。俺の掌の上であろうとも道化を演じ続けるとは見上げたものだ。
「よし、今日の所は解散して、後日探索を・・」
「うぷぷぷ!オマエラ、まだそんな事言ってるのかい?」
「!?」
十神が解散を宣言をしようとしたした矢先にモノクマが姿を現す。相変わらず、醜悪なデザインだ。
「うぷぷ!赤司クン、お目覚めになったんだね?どうだい、気分は?」
「・・少なくともお前を前にして爽快な気分とはいかないな」
「あっはっは!こりゃ手厳しいね~!」
「お、おい!テメェなにしに出てきやがったんだよ!」
俺をからかいに来た・・という訳ではないようだな。このタイミングで出てくるということは・・仕掛けてくるか。
「オマエラが絆だの協力だの甘っちょろいこと言うもんだからさ~!ヤル気にさせるイイ事を教えに来ました~!」
「イイ事だと?なんだ、それは?」
「うぷぷ!赤司クン、君には特別に戻してあげたじゃないか?過去の記憶をさ♪」
「・・やはり、その事か」
モノクマが用意したカード。それは俺たち新入生が過去の2年間の記憶を奪われているというものだった。その記憶を戻してほしければコロシアイをしろとのことだったが・・。
「ふざけんな!揃いも揃って記憶が奪われてたまっか!そんなことして何の意味があるんだよ!?」
「そーだ、そーだ!適当な事いってるんじゃねぇ!」
いつかのように終里と左右田がモノクマにがなり立てる。だがモノクマはあの時のウサミとは違い、にやけた表情のまま、淡々と話し始める。
「信じなくても別にいいよ。2年の間にオマエラの家族や友達に何があったのか、知りたくないって言うならね。」
「に・・2年だなんて・・そ、それじゃあ花村食堂は・・お、お母ちゃんは・・!?」
「2年・・お父様やお母様や臣下の者たちはお元気なんでしょうか・・?」
「ソ、ソニアさんまで・・!?あ、あんなのデタラメですよ!そうだろが、モノクマ!?」
「いや、その可能性は十分にある・・そうだろ、赤司?」
「・・・・・・・・・。」
やはり、というか当然と言うべきか。ここで仕掛けてくると思っていたぞ。お前の中の疑心暗鬼、そして先程のリベンジも兼ねてというところか。
「ちょ、ちょっと!?十神、赤司が何で関係あるのよ!?」
「黙れ、小泉。先程この場所で赤司が倒れる前に俺は確かに聞いた。モノクマが「元に戻してやる」とな。あれは失われた記憶の事だろう?」
「・・・・・・・。」
「あれれ?ボクそんなこと言ったっけな?赤司クン、どうだったかな?」
わざとらしい。そうやって煽り、皆を疑心暗鬼に陥れコロシアイに発展させようという魂胆か。
「どうなんだ、赤司?モノクマの言う通り、キサマは・・」
「ああ、その通りだ。俺はモノクマから奪われた記憶を戻してもらった。それがどうした?」
「なっ・・!?あ、赤司テメー・・!モノクマとグルだったのかよ!?」
左右田の怒りの目と共に、皆の視線がこちらに向けられる。当然か。モノクマが話した奪われた記憶の奪還がコロシアイの動機となるのであれば、既に戻っている俺はモノクマサイドの人間と見られても仕方ない。
「あちゃ~ばれちゃった?赤司クン、どうやらばれちゃったみたいだよ、僕達が仲間だって・・」
「黙れ」
「・・・ッ!あ、アレ?いつものアレは使わないのかい?」
・・ここでモノクマに『眼』を使えば危害を加えたと判断される。それは得策ではない。まずはこの状況を覆すことが先決だ。
「確かに俺はモノクマの言う奪われた記憶が戻っている。だがそれは中学時代からここ最近までのバスケット活動の記憶だけだ。それ以外に何もない。」
「しょ、証拠はあるのかよ!?お前の記憶が戻っている証拠はよぉ!?」
「・・そうだな。途切れる前の記憶が正しければ・・・」
「この中に裏切り者がいるということだけだ。」
「・・・・・・ッ!!?」
俺のその言葉に場の全員が凍りつく。だが、これはブラフ。真実を視るためのな。
「て、テメーがその裏切り者に決まってんじゃねーか!?なに、開き直ってんだよ!!?」
「・・・考えてみろ、左右田。もし俺が裏切り者ならこの状況で自分を不利にする発言をすると思うのか?」
「そ・・それは・・!」
左右田がストレートに物事を聞くタイプであることは分かっている。単純な疑問点を与えてやればすぐにそこに食いつく。まさに読み通りだ。
とにかく、最初に断わっておくが俺は裏切り者ではない。記憶は戻ってはいるがそれも完全ではない。この島に来る経緯は思い出せていない。いや、モノクマに意図的に戻されていない・・ということも考えられる。
「・・へっ!上等じゃねーか!そんな動機がなくったってよぉ・・!俺はやれるぜ?」
と、背後から聞こえた声は九頭龍だった。今の今まで行方をくらませていた者が現れたことで皆の疑念はより激しくなる。
「そ、そうだ!さっきまでいなかったコイツこそ怪しいじゃん!?」
「そ、そうだぜ!大体コイツ極道だろ!?理由なんかなくても人なんか簡単に殺しそうじゃ・・!」
「んだと、てめぇ・・!?マジでぶっ殺されてぇのか・・!?」
九頭龍が登場したことにより状況はますます悪化していく。各々が隣人を睨み、互いに警戒を始める。十神ですらこの状況に言葉が見つからないようだ。やれやれ、こんな時にこそリーダーシップを発揮してもらいたいのだがな。
「うぷぷぷ!監督自らが演出をするのはアンフェアだったかな?赤司クン?」
「いつまでも俺とグルのようなつまらない芝居はよせ、モノクマ。・・・」
「も、もしかして真昼ちゃんも唯吹の事、狙っちゃってんですかぁ?」
「そ、そんなわけないじゃない!?やめてよ、ほんとに!」
「あ・あぅぅぅ・・わ、私はぁぁ・・!愚図で間抜けで何も出来ないゲロブタですぅぅ・・!」
「そ、そんな弱そうなフリして私を殺す気でしょ!?このゲロブタ!」
心の弱い人間から徐々に闇が広がっていくのが視える。モノクマの登場と記憶が戻った俺への不信感、そして九頭龍の発言。事が動くには十分だな。まずはこの場を収めるか。
「お前達、全員・・」
「跪け」
『
「がっ!?」
「ぐあっ!?」
「きゃぁっ!?」
モノクマを除く15名の生徒は俺の前に腰を着ける。本来、この眼は1on1において絶大な効果を発揮するものだが、。ヤツも数名程度ならば発揮できていたようだが俺ならこのような大人数相手でもアンクルブレイクを引き起こすことも可能だ。
「今ここでハッキリと言おう。俺はこのコロシアイ修学旅行において絶対に殺人を行わないと」
「・・・ッ!?」
俺の言葉に根拠はない。その言葉をすぐに信じると言うのは無理というものだ。そこで俺は絶対の証としてさらに言葉を続ける。
「もし、この誓いを破る、もしくはお前たちに疑心を与える真似をしたその時は・・・」
「この心臓を抉り出し、お前達の前に差し出そう」
「なっ!?あ、赤司・・!?」
「ほ、本気なのか、貴様・・!?心の臓を捧げるなど・・!?」
「や、やめてよ!赤司!そんなことする必要なんかないよ!」
嘘ではない。俺は本気でこの誓約を順守する。その想いの強さは目の前にいるクラスメイト達の反応を視れば明らかだ。
「な、なんだよコイツラ・・。フツーそんな事言われて信じちゃうの!?」
「あ、頭イカれてんのか・・!?」
「こ・・これが・・赤司のカリスマ・・なのか・・!?」
モノクマ、九頭龍、十神はその光景を信じられないといった目で見ている。当然と言えば当然の反応だ。出会ってわずか一週間ほどの人間の言葉にこれほどまでに盲目的に信じられるのは異常ともいえる。だが俺はそれを可能にする。そこに理由はない。
何故なら俺は「赤司 征十朗」なのだからな。
「それでは今日のところは解散だ。しっかりと体を休めておけ」
「うん。おやすみ、赤司」
「バイバイ、赤司おにぃ!」
「・・う~、俺今日寝られるか心配だぜ・・」
「左右田君、僕が添い寝してあげようか?」
「いらねぇよっ!?」
皆それぞれに不安はあれどもひとまずは落ち着いたようだな。モノクマは・・いないか。どさくさに紛れて姿を消したようだな。さて・・
「ここに残ったと言うことはお前も理解しているようだな?・・十神」
「・・・ああ」
公園に残されたのは俺と十神の二人。そこで俺は核心に迫った。
「単刀直入に聞こう。お前は『十神白夜』ではないな?」
「・・・その通りだ。俺は『十神白夜』ではない・・」
その返答に力はない。取り繕っても無駄であることをこの男は分かっている。
「・・聞かせてくれ。いつから俺が十神白夜ではないと気づいていた?」
「・・最初からだ」
「なんだと・・!?」
ヤツの記憶から辿ってみたがあの時、教室で相対した時点で違和感・・既視感があった。スタイルは違えど似ている、いや同じであると。『模倣』を得意とするあの男と・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・
「また居残りか?黄瀬」
「あ・・。赤司っち・・」
帝光中学時代、二年生途中でバスケ部へ入部してきた黄瀬 涼太。天性の運動神経と抜群のセンスで瞬く間に帝光中学バスケ部1軍へと上り詰めたまさしく「天才」と呼ぶに相応しい男である。その能力ゆえに積極的な居残り練習とは無縁だった彼がここ数日無人となった体育館で一人練習を続けていた。
「ここ数日精力的だな。何があった?」
「・・別になんでもないっすよ。たまには真面目なトコもアピールしなきゃって思っただけっすよ」
「灰崎の抜けた穴を自分で埋められるか・・そう考えていたのだろう?」
「・・・・・!!」
灰崎 祥吾。以前まで帝光中学バスケ部1軍に在籍していた男。黄瀬同様に高い運動神経とセンスを併せ持っており、現状においては全ての面において黄瀬を上回っているプレイヤーであった。だが怠慢かつ粗暴な面が目立ち、度々チーム内で問題を起こしていた。ゆえに俺が主将に就任した時点で退部を勧告していた。
「悔しいっすけど・・アイツにはまだ届いてないっすからね・・!」
「それで居残り練習か。ふっ、健気なものだな」
「あっ、ひどいっすよ、赤司っち!これでもチームに迷惑かけちゃいけないって真剣なんすから!」
普段から口調の軽い男ではあるが、バスケットへの情熱は本物だ。今の言葉も本心だろう。そしてその為のこの練習もまた、本気なのだろう。
「先ほどのシュートフォーム・・先日の対戦校の・・」
「あ、わかったっすか?あのフェイダウェイ、角度が中々厳しくて長身の紫原っちでもかすってたぐらいすから・・」
「なるほど。それで自分も取り込めば高さのある相手でも応用が利くと考えたわけか」
一見すればプロスポーツ選手に憧れる子供の浅はかな真似事と捉えられるだろうがこの黄瀬という男にはそれを可能とするだけのポテンシャルを秘めている。事実、既にフォームは形になっており実戦で十分使用できるほどまでのレベルに達していた。今でこそ練磨を重ねての習得だが、経験を積めば試合中において相手の技術をトレースできるようになるだろう。
「・・しかし黄瀬。先程から気になっていたがシュートに入る前のその下唇を噛む癖は・・」
「まずは形からって言うっすからね。結構バカにできないもんすよ?」
「・・・・。ふふっ、お前らしいな」
「あ~!今の、絶対バカにしてるっしょ!?赤司っち!」
・・・・・・・・・・・・・・・
「・・俺と十神は過去に一度対面した事がある。もっとも向こうは有象無象の名家の一人にしか見えていないだろうがな」
「面識があったとは・・しくじったものだな」
「いや・・例え面識がなかったとしてもいずれは視抜いていただろう」
「・・なぜそう言える?」
どんなに優れた模倣でも所詮は偽物。オリジナルには及ばない。そう・・WC本戦でもそうだった。
・・・・・・・・・・・・・・・
「・・・ぜぇっ!ぜぇっ!」
「随分と息が上がっているな、黄瀬?もう真似事は終わりか?」
「・・まだまだっすよぉ!」
WC本戦一回戦において洛山高校と海常高校の試合にて黄瀬は目覚ましい成長を遂げていた。キセキの世代のメンバーの技術・スキルを完全に再現する「
「・・やはり黄瀬。お前が一番伸びたな」
「えっ・・・?」
「だが王の力を模倣するなど・・」
「頭が高いぞ・・!」
『
「ぐぅぅっ!ち・・ちくしょぉぉ・・!」
・・・・・・・・・・・・・・・
十神白夜という男は他者を蹂躙し圧倒的なまでの自己至上主義の塊である。そんな奴が入学早々に自ら表立った主張をするなどありえない。ましてや皆を率いるリーダーとは笑わせる。そして・・
「お前は『十神白夜』でありながら『自分』を捨てきれなかった。いや、十神の皮を被ることでひた隠しにしていた自分の本性が現れてしまった」
「・・・その通りかもしれないね・・」
返ってきた言葉にはもうどこにも十神の姿はなかった。俺の目の前にいるのは紛れもなく『本物』だった。
生まれてから他人を、自分をだまし続けた代償としてソイツは本物の自分すらいつのまにか忘れてしまっていた。そんな忌むべき才能を持った自分をスカウトした希望ヶ峰学園。そこで巻き込まれたコロシアイ修学旅行という異常事態。十神を名乗る自分はこれまでの罪滅ぼしにて自分が矢面に立ち、この惨劇から皆を救いたかった・・これがヤツの本心。
「・・でも結局赤司くんには見破られてしまった。『超高校級の詐欺師』は返上しなくちゃね」
「それはどうかな?」
「え・・・?」
「お前にはまだやるべきことがある・・」
そして俺は十神に話す。これから起こるであろう事を。俺の一言一句を聞く度に十神だったソイツは顔を青ざめていく。
「そ、そんな・・!?本当にそんなことが・・!?」
「ああ、間違いない。そしてこの舞台にはお前と言う役者が必要不可欠だ。この意味が分かるな?」
「ぼ、僕にもう一度・・・十神白夜をやれっていうのかい?」
「それを決めるのはお前だ。強制はしない」
しばし深く考えたソイツは覚悟を決めたのか、力強く頷く。
「やるよ・・!それで皆を救えるなら・・!」
「・・決まりだな」
そして夜が明け、食堂エリアに集った皆の前で十神は告げる。
「いいか!お前達!今夜はオールナイトパーティを開くぞ!」
「はぁっ!?こんな時に何言ってんだよ、オメーは!?」
「こんな時だからこそだ!俺たちは互いを疑うことなく協力する必要がある!」
十神の熱のこもった言葉に共感したのか、反論は多少はあったもののこの場にいない九頭龍を除く全員から賛同を得ることが
できた。モノクマに知られないようにとパーティは食堂横にある古い家屋を使用することにも決まった。
「それではパーティの準備と会場の清掃・設置をする者を選ぶか」
「あっ・・!それなら僕、こんなこともあろうかと用意してあったんだよね」
そう言いながら狛枝が取り出したのは16本のロープだった。見れば1本だけ先端に赤くマーキングがしてある。
「なるほどな、これで清掃係を決めようという訳か」
「さすが赤司クン。察しがよくて助かるよ。これで恨みっこなしってことで」
九頭龍を除いた15人が一斉にロープを引く。確率は15分の1。誰も廃屋の清掃など請け負いたくはないだろう。各々が顔をしかめながら恐る恐るロープの先端に目をやる。
「・・・・どうやら清掃は俺のようだな・・」
「きゃっはー!征ちゃんツイてないっすね~!」
「わーい!おにぃ、頑張ってねぇ~!」
貧乏くじを引いた自分に澪田・西園寺を始めとした面々がからかう中で怪訝な表情を浮かべる者が1人。
「・・おかしい・・こんなはずじゃ・・」
・・・どうやら貧乏くじではなく、『当たり』を引いたのかもしれないな。
「・・では、清掃にいってくる」
「よっ!お勤めご苦労さん、赤司!」
「こら、左右田!赤司が手伝いはいいって言ってるのに何よその言いぐさは!?」
小泉の一言がなければ、眼を使って左右田を食堂のオープンラウンジから叩き落としていたかもしれない。救われたな、左右田。
やってきた廃屋の状態は酷いものであり、そのままではパーティはおろか、足の踏み場もないほど荒れ果てていた。この清掃を一人で請け負うことになるのは少々遺憾であるが、文句を言う暇も聞く者もいない。早速と着手にかかる。
「・・・赤司クン」
清掃を開始して小一時間ほどだろうか、狛枝がやってきた。どうやら言いだしっぺでありながらたった一人に重労働を押し付けてしまったのが気まずかったらしい。
「それで僕にも何か手伝わせてもらえないかと思ってさ」
「殊勝なことだな。では床の清掃を頼もう。俺は備品置場をチェックしてくる」
「うん・・・任せてよ」
「・・一つ言っておく」
「な、なにかな?」
「・・床の隙間が所々広い所がある。気を付けておけ」
「あ、ありがとう。十分気を付けるよ」
そして俺は備品の在庫のチェックを済ませると調理室へと向う。そこには花村の姿があった。
「何をしている、花村?」
「赤司くん!何って、もちろんキッチンや調理器具のチェックだよ。パーティなら華やかな料理は欠かせないからね!」
「確かにその通りだ。だが包丁の持ち込みはできないんじゃないか?」
というのも十神の提案ではパーティ中は徹底して凶器になりえるものはすべて事前に没収されていた。料理人の花村にとって包丁を奪われるのは命を取られることと同義だろう。
「まったく十神くんには困ったよ!包丁を使えないから野蛮な肉料理ばかりになっちゃうよ!」
「なるほどな。だが止むを得ないだろう。こういう時こそ料理人の腕の見せどころじゃないのか?」
俺の発破に乗ったのか、花村は意気揚々と調理にとりかかる。・・・楽しみにしているぞ、お前の料理をな。
パーティ会場となるエリアに戻ると既にテーブルクロスを掛けられ、立食式の会場が完成しつつあった。
「あ、おかえり赤司クン。もう向こうの清掃はいいのかい?」
「ああ。お前の方こそ随分と手際がいいな」
「手伝う以上、これぐらいは役に立たないとね、あはは」
残すは装飾だけとなり、俺と狛枝は備品庫から拝借した電灯を配置し、粗末ではあるが今夜のパーティ会場は完成した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「お前達!揃っているな!?」
十神の一斉が会場に響き渡る。乾杯前の挨拶の一言にしては随分と豪気である。
「はやく!はやく!肉を食わせろよ~!!」
「だ、だから落ち着きなって・・!赤音ちゃん!」
危険と思われる物はすべて入場前に没収されてたとは言え、このままでは終里が人を襲いかねない状態になっている。
「十神、そろそろいいだろう?乾杯のあいさつを頼む」
「・・・・そうだな。では貴様ら・・・」
「乾杯だ!!」
そして開かれたささやかな宴。やはり席を外している九頭龍ではあるが「コロシアイ」を宣告されてなお、このようなバイタリティがあるというのは大したものだ。それでこそ・・盛り上がると言うものだがな。
皆の歓談を横目にグラスに注がれたジュースに口をやった瞬間、それは唐突におきた。
バチンという音と共に暗転した世界は瞬く間に闇に包まれた。
「な、なんだよ!て、停電か!?」
「なにも見えないよ~!?」
「み、みなさぁん・・どこですかぁ・・はわわわぁぁ!!?」
「・・おい、キサマ!そこで何をしている!?」
「いてっ!?」
「みんな~!?会場の方も停電してるのぉ!?」
暗闇となった空間でそれぞれの言葉が入り混じる。状況がつかめぬ中でふいに黒の世界に光がともる。
「あっ!ついた!?なんだったのよ、今の・・」
「・・・おい、何か匂うぞ・・こいつは・・血の匂いだ・・!」
再び灯った光に皆が安堵する中で、終里が不吉な言葉を漏らす。
「そこだ・・!そこのテーブルクロスの下からだ・・!」
終里が指刺す方へ俺は静かに歩み寄る。そしてテーブルクロスを開いた先には・・・
「きゃあああああぁぁぁっ!!?」
『ソレ』を見た女生徒達が一斉に悲鳴をあげる。男性陣もその光景に愕然としているようだ。
俺が開いたテーブルクロスの下にはおびただしい血が床へとぶちまけられ、そこに横たわる一人の姿があった。
「な、なにがどおなってんだよぉ・・!?な、なんで・・なんで・・!!?」
「なんで『狛枝』が血まみれになってんだよぉぉぉ!!!??」
左右田の絶叫が響き渡る中、『狛枝だったもの』を見つめる俺の口元は半月に歪んでいた。さぁ・・・舞台の開幕だ・・。
~To be continued~
つづく
次回、学級裁判。天帝の眼の神髄ここに極まり。