赤司のロンパ ~ 超高校級の『天帝』と呼ばれた男~ 作:ばうむくうへん
「なんで『狛枝』が血まみれになってるんだよぉぉ!!?」
左右田の絶叫が響き渡ると、会場隣の厨房にいた花村、電源設備がある部屋に待機していた辺古山。そして廃屋前の玄関にてモノクマからの妨害を防ごうと待機していた七海が集まってくる。いずれも床に横たわる狛枝を見て驚いているようだ。
「な、ななな!なんで狛枝くんが死んでるのォォ!?」
「お、落ち着け!花村!赤司、一体なぜこんな事になったんだ!?」
「・・それはこれから分かることだ。そうだろう、モノクマ?」
「あらら!バレちゃってましたか!さすがは赤司クン!」
俺が眼をやる方向に全員が振り向くと会場の隅にいつからそこにいたのかモノクマが現れていた。ようやく始まったコロシアイに歓喜しているのか、その表情はとても明るい。
「いや~!ようやく始まったね!コロシアイがさ!さて、それでは気を取り直して~!」
モノクマの合図と共に校内アナウンスのようなものが開かれるとモニターにモノクマが投影された。
「死体が発見されました!これより一定時間の捜査の後、学級裁判を行います!」
学級裁判・・。しおりにも書いてあったがこのコロシアイ修学旅行は殺人を行った者がすんなりと島を脱出できるわけがない。クロである犯人を学級裁判によってあぶりだせばクロは処刑。逆にクロを暴けなかった場合はクロ以外全員が処刑されると言うシステムだ。
「そ、捜査って・・!?何をどうすればいいのよ!?」
「け、警察呼んだ方が良くないっすか!?」
「み、澪田さん、ポリスメンはここにはいませんわよ?」
やはりと言うべきか、実際に目の前で殺人が起きたのだ。皆の動揺も無理はない。モノクマから狛枝の死因が記されたタブレットが配布されたがそこに眼をやるものは少なかった。現状で冷静なのが俺と七海くらいと言ったところか。
「くそっ!!なんてことだ!俺が居ながら殺人が起きてしまうなど・・!!」
「と、豚足ちゃん・・!」
十神は頭を掻きむしりながら膝をついて嘆いている。その姿に居た堪れなくなったのか会場内は急に静まり返った。
「・・・その学級裁判までの時間は分からないがまずは捜査を開始するか」
「あ、赤司!?あんた何言ってんのよ!?」
「も、もしかして征ちゃん、唯吹達のこと、疑っちゃってんですかぁ~!?」
「当然だ。俺も含めてこの島にいる全員が容疑者なんだ。やらなければやられる。始めから分かっていたことだ」
俺のあまりにも淡々とした物言いに皆愕然としている。だが事実を述べただけだ。このままではクロを除く全員が処刑される。その事実は変わらない。
「・・罪木」
「ひゃ、ひゃい!?」
「お前に狛枝の検死を頼みたい。引き受けてもらえるか?」
「は、はわわわぁぁ!?け、けけ検死ですかぁぁ!!?」
「赤司!?なんて事蜜柑ちゃんにやらせようとしてんのよ!?」
「罪木は超高校級の保健委員だ。検死ぐらいはできるだろう」
「そういう問題じゃないわよ!?お、女の子に死体を触らせる気なの、アンタ!?」
・・先ほどから小泉の言葉が非情に耳障りだ。平時であれば口やかましいクラス委員長のような存在として癖の強いこのクラスを引っ張っていたことだろう。だが最早この修学旅行は「ただの修学旅行」ではなくなっているのだ。
「小泉、現実を見ろ。今ここで狛枝が血まみれになって死んでいる。そしてこの島にいるのは俺たち15人だけだ」
「で、でも・・!でも!」
「ならばお前はそのまま喚いているがいい。だが俺の邪魔はするな。殺人は行わないと誓ったが、捜査の邪魔立てをするようなら・・容赦はしない」
「・・・ひっ!?」
眼を使わずともその威嚇だけでも小泉には十分だろう。ようやく静かになったところで改めて捜査開始を宣言する。だがその前に・・
「たった今から誰一人としてこの廃屋からの外出を禁じる。いいな?」
「な、なんでだよ!?」
左右田をはじめ、この場にいるほとんどの者が疑問を返すが答えはシンプル。俺たち全員が容疑者である以上、迂闊な行動は許されない。証拠隠滅の可能性も十分に考えられる。
「それとモノクマ、捜査において頼みがある」
「ぶっぶ~!先生は捜査については手は貸せませんよ~!」
「元より、お前の助けなど期待していない。頼みとはここにいない容疑者をもう一人連れて来いと言ってるんだ」
その一人とは当然、九頭龍。ヤツは結局このパーティには姿を現さなかった。玄関前にいた七海の話では途中顔をのぞかせたそうだが、そのまま去ってしまったらしい。
「そーゆーことならお任せだね!ちゃっちゃっと連れてくるよ~!」
「手早くな」
「・・・征ちゃんなんだかんだでモノクマちゃんを手懐けてるッすね・・」
さて、九頭龍を連れてくるまでの間に露払いもできた。捜査を開始するに当たり、俺は検死を罪木に任せると、会場の外に出る。
「・・む、厨房との間に何か降りていたのか?」
床を視ると廊下に一直線の線ができている。埃をかぶっていた廊下の上に何かが乗ったことを意味していた。
「それでしたら私がブレーカーを上げようと外に出ましたら何かザラザラした壁がそのあたりにあったと思いますわ」
ソニアが言うザラザラしたものとは・・防火壁かなにかだろう。火の元である厨房から遮るようになっている。床の線の厚みからしてかなり重厚な防火壁のようだな。
続いてブレーカーがある部屋に向かう。そこは『超高校級の剣道家』である辺古山がパーティに慣れぬ場ということで待機していた部屋でもあった。早速辺古山に尋問を開始する。
「辺古山、お前は停電時にこの部屋にいなかったな?」
「な、何故それを・・!?」
「簡単な事だ。ブレーカーが落ちたのであればあの部屋にいたお前ならすぐにブレーカーを上げれたはずだ。それができなかったということはあの時、お前は部屋にいなかったことを証明している」
「う、うう・・!」
俺の言葉に明らかに動揺を示す辺古山。と、この部屋から同行していた七海が割って入る。
「待って、赤司君。辺古山さんがたとえ部屋にいたとしてもブレーカーをあげるのは簡単じゃなかったと思うよ?」
「・・ほう、何故そう言える?」
「この部屋のブレーカー・・結構高い所にあるよね?弐大くんとかなら届くだろうけど辺古山さんの身長じゃ座椅子でも使わないととても届かないと思うんだ」
・・正直、この女については『ヤツ』がチェスで煮湯を飲まされていたこともあって着目していた。が、やはり相当に『切れる』ようだ。
「さすがだ、七海。俺も辺古山がブレーカーを上げるのはもとより無理であることは分かっていた」
「・・ということは赤司君はゆさぶりをかけたんだね。あの時、辺古山さんがどこにいたか」
「ああ。だがそれも予測がつく。辺古山・・あの時お前は花を摘みに行っていた。違うか?」
いくら捜査とは言え、淑女への配慮はわきまえているつもりだ。比較的遠回しな言い方だったが辺古山の顔色を見る限り、間違いないようだ。
「ど、どうして気づいた・・?」
「顔色が優れないからな。体調が悪いのではないかと思っていた」
「そ、そうか・・私もまだまだ甘いな・・」
しかし辺古山は結局花を摘みにいけなかったようだ。いまだにその場所を占有している者がいるからだそうだが・・。
「恐らく弐大だな。思い返せばパーティ開始直後から姿が見えなかった」
「この修学旅行でもよくお腹を壊してたしね」
「そ・・その通りだ・・だ、だから私は結局・・行けずに・・!」
辺古山の顔色がどんどん青ざめていく。事態は火急のようだ。自分から口にしたとは言え、これは酷か。
「・・よく分かった。辺古山、外の施設で花を摘みに行っても構わない」
「い、いいのか・・!?だが・・!」
「お前が犯人ではないことが分かった。ならば問題はないだろう」
「・・・済まない!」
そう言うなり、辺古山は駆け出していく。限界も近かったのだろう。もっともそのようなことを憂うこと自体、失礼に値するためこれ以上考えることはしない。
「赤司君、優しいね?」
「・・どういう意味だ、七海?」
「さっきは誰も出ることを許さないって言ったのに、ああして辺古山さんを自由にさせてあげたし」
「・・そんなことか」
「昨日からちょっと様子が変わっちゃったかなって思ってたけどきっと皆を心配しての事なんだよね?きっとそう・・」
「黙れ」
『
「あっ!?」
俺の眼によって七海が尻餅をつく。そうして不快な会話にピリオドを打った。
「勘違いするな七海。お前も容疑者の一人なんだ。当然俺自身もな」
「赤司君・・」
「先程の辺古山の件はこれまでの捜査と推理からヤツが容疑者から外れたと認識したからだ。もしこの尋問でヤツに疑いを向けていたらそれこそ糞尿を垂れ流そうとも、泣いて媚びようがこの場からの外出は許さなかった」
「そ・・そんなのって・・!」
七海の顔から焦燥が浮かぶ。これまで見せたことのない顔。いや、これが『本物』かもしれない。
「七海、一つだけ言っておく。俺は殺人はしない。だが殺人を犯した者には然るべき罰を与える。そして犯人を追いつめる為なら俺はどんな手段も厭わない。・・・凶器を隠している疑いがあれば全員を裸に剥くこともする。無論お前もだ」
「・・・・・ッ!!」
その言葉を聞くなり、七海は部屋を飛び出していった。当然今の言葉も本気だ。だからこそ七海も普段のような対応ができずに逃げ去ったのだ。
「・・赤司」
「十神か」
七海が居なくなったのをまるで見計らったかのように十神が顔を出す。実際その通りなのだろう。
「・・いつまでこんな茶番を続けるつもりだ?もう分かっているんだろ?」
「何のことだ?」
「・・とぼけるな・・何もかも君のシナリオ通りじゃないか・・」
急に十神の口調が柔らかくなる。ここで素を晒されても困るのだがな。だがまだだ。舞台の演者達はまだ揃っていない。すべてはそこからだ。
会場に戻る前にいくつか部屋を巡り一応の『確認』をする。・・・やはり間違いはなかった。いや、狙い通りだった。
そして会場へ戻るとそこには九頭龍の姿がいた。辺古山、そして腹痛で籠っていた弐大も戻ってきている。
「赤司クン!お待たせ~!九頭龍クンを連れてきましたよォ~!」
「くそっ!離しやがれ!テメェ!!」
「ご苦労だったな、モノクマ」
「やっぱり飼いならされてるっすよね・・」
これで全員が揃ったか・・頃合だな。
「では、全員が揃ったところなんですがそろそろ学級裁判のお時間です~!」
モノクマが高らかに宣言すると、会場内の全員の顔が強張る。無理もない、これから生死をかけた裁判が始まるのだから。
「学級裁判の舞台に相応しい場所を用意しましたよ~!それではオマエラ・・」
「その必要はない」
「・・ッ!!」
モノクマの言葉を遮るのは俺の言葉。全員が俺に向き直る。
「・・どうゆう意味かな?赤司クン?」
「言葉通りの意味だ。わざわざ場所を移動する必要がないということだ」
「赤司君・・それってもしかして・・・」
「ああ・・・・」
謎は全て視抜いた。
それでは舞台のお披露目だ。演者達は上手くワルツを踊れるだろうか? 心の中で俺は笑みを浮かべた。
~To be continued~