14代目ねずみ小僧は夢を見る   作:アルムTYPEβ

1 / 2
第一話

喧噪とパトカーのサイレンが光鳴り響き静寂な夜を切り裂き、ボムタウンの夜をいつも以上に照らしている状況の中、ビルの屋上を走り回っている二つの人影があった。一人はおちゃらけている様子で、もう一人はもの凄い剣幕から他人から見てもとても仲の良い風には見えないだろう。

 

「待つであります~!」

 

背後から聞こえる声を尻目に、一つの人影がビルの屋上を蹴り飛ばし空中へ身を投げ出す、高さにしてはビル20、21階分だろうか、落ちたらひとたまりもない状況に臆することも感じさせず、慣れたように体で風を切り向かいのビルへと飛び移る姿が月に照らされていた。

 

「ふふん、今日もボクの勝ちみたいだね~♪」

 

体幹を無駄に揺らすことなく隣のビルに飛び移ったハイレグのように見える赤を基調をした忍び装束を身に纏った漆色のツインテールをした少女は微笑みを浮かべ、自らを追って現在進行形で目の前のビルで足踏みをしている青髪の少女に目を向ける。まるで忍者のような風貌をした彼女は特徴的な目元を隠すような仮面と、某夢の国で親しまれているであろう鼠のようなカチューシャを身に着けていた。

片やもう一人は、綺麗に切りそろえた髪型から生真面目さを感じさせ、大きくふとももを露出するようなミニスカートと学ランのような服の上に青いだんだら羽織を着ており、一際目立つのはそのだんだら羽織の背には、警察の証である「正」の字が刻まれている事と、それともうひとつ、腰の左側にぶら下げた刀であろうか。

 

「また負けるなんて悔しいであります~!!」

 

喚く声を上げ、唸るような声を上げ焼きつくような視線で忍び装束の少女を見つめる青髪の少女は今にも噛み付かんばかりの顔つきだ。と言っても、幼さが見え隠れする顔付きでは少し可愛らしく感じる部分もあるが。

 

「それじゃ、ボクはいつも通りにそろそろ退散させてもらおうかな~」

 

「むむむ…かくなる上は…!」

 

軽く手を振り、忍び装束の少女がまた次のビルへと飛び移りその場を去ろうとした時だろうか、青髪の少女は前傾姿勢を取ったかと思うと、助走を付けビルの端から飛び立った。

 

「や、やっぱり、こわいであります~!!」

 

「アサギ!?」

 

いつもならば諦めているであろう彼女の突然の行動に面食らった漆色の少女は、思わず相手を心配し声を荒げる。そして、追いかけるようにビルを飛び移ろうとした少女は悲鳴を上げながらも、息も絶え絶えながら何とか無事に隣のビルへと降り立つ。

 

「お、追いついたでありますよ!ねずみ小僧!」

 

顔が紅潮し口を震わせながら、ねずみ小僧と呼んだ少女に指を突き付ける。その姿に安堵したねずみ小僧と呼ばれた少女は気づかれない様にホッと胸を撫で下ろした。

 

「アサギ…怖いなら止めておいた方がよかったんじゃないかい?、飛んできたことには驚いたけど、ボクはここで捕まる訳にはいかないんでね!」

 

そう言い残し、また背を向け違うビルへと飛び移ろうとした瞬間だった。アサギは腰を下げ目標との距離を測る為だろうか右手を前に出し、残った手で刀を抜き身にし、肩の高さで刀の切っ先をここから逃げようとする少女に向け構えたと思うと、その場から一瞬にて掻き消えた。

 

「今度こそ逃がす訳にはいかないのであります!、そしてこれこそが、御用改めであります!覚悟―!!」

 

まさに瞬間移動にも見間違える体重移動を前進エネルギーと変え凄まじい縮地により、距離を詰めたアサギは自らが獲物と捉える相手に構えた左手を大きく押し出し突きをくり出した。

 

「えっ、まずっ………!!」

 

思いもよらぬ攻撃を受けた少女は、振り向きながら体を捻り狙いをずらそうとするが、普段であれば対処出来ていたであろう攻撃も自由に移動が出来ない空中に飛んでいるのに加え背を向けていたことにより、上手く避けることが出来ず足を覆っていた布を切り裂き左足首に痛みが走り残った部分の布に赤い染みが作られていく。

その痛みに苦い表情を浮かべ、体勢を崩したねずみ小僧と呼ばれた少女は、このままだと落下してしまうことを悟り、どこからか鉤縄を取り出したかと思うと素早く対岸へのビルへと投げ飛ばした。右手から伸びる鉤縄がビルの屋上へと距離を縮め数メートルになり無事に届くかと思われた時、突如突風が吹き鉤縄は揺られ失速しカンと軽い音を立てビルの壁面に弾かれた。

 

「ビル風…っ!」

 

風速は高さが高いほど強くなる傾向があり、例に出すと地上1メートルに対し、高さ100メートルになると凡そ3倍程度の風速となってしまう。その風エネルギーを側面に受けた鉤縄は失速してしまったのであろう。度重なる誤算により余裕の表情が無くなった少女は次第にビル間の暗闇の隙間に吸い込まれていった。

 

「ね、ねずみ小僧殿…!た、大変であります~!!」

 

ビルの壁面に身を乗り出し下を覗き込むが、目につく灯りが一つもなく月明りさえも差し込まぬそこはただただ闇があるだけだった。

捕まえようとした結果、殺してしまったとなると警察のメンツに関わるのもあるが、それ以上に正義感溢れるアサギは落下した少女を心配し罪悪感を感じながら、踵を返し急いで屋上への扉へと手を伸ばし2度3度、ドアノブをガチャガチャと回し押し引きを繰り返したと思うと、少し考えた素振りを見せ右手に刀を握り瞬く間に扉を切り開いたかと思うと、ビルの中へと姿を消した。そして、ビルの屋上は静寂に包まれ、残すのはパトカーのサイレンと喧噪が聞こえるだけだ。

 

「早くいかなければ…!」

 

鬼気迫った表情で階段を駆け下りていくアサギにねずみ小僧を捕まえることは既に頭に無く、死んでいて欲しくないただそれだけだった。気づいた内には階段は途切れ1Fのホールについており、窓の外はサイレンの赤色と車のヘッドライトが暗闇を照らしていた。逸る気持ちに急かされるように急いでビルから出ようとし先程の屋上と同じく扉が閉まっているのを確認したアサギはまたもや右手に刀を持ち、一瞬の内に道を作り外へと飛び出した。そして落下した少女がいるであろう路地裏に駆けだそうと走り出したその時だった。

 

「アサギちゃん大丈夫!?」

 

アサギは振り返り声のした方向を見るとそこには、アサギと同じ衣装をしたツインテールの女の子が焦った表情で走り寄って来ている所だった。恐らくだが、アサギが扉を切り裂いた音に気付いたのであろう。彼女はアサギと似たような髪色はしているのだが、大きく違うのは頭の中央から左は白色、右半分は青色になっているとこだろう。また暗闇で爛々と輝く赤色の瞳も特徴的だ。その彼女の姿を見たアサギは緊張が少し解れてしまったのか、情けない声を上げてしまう。

 

「ねずみ小僧殿が、ねずみ小僧殿が~!!」

 

「わわっ、ねずみ小僧がどうしたって言うのよアサギちゃん」

 

泣きながら抱き着いてくるアサギを優しく受け止める少女は宥めながらも事の顛末を聞き出していき、起きている状況を理解したアサギの同僚の少女は、次第に表情をしかめていく。そしてアサギに先導される形でねずみ小僧と呼ばれる少女が落ちたとされる路地裏へと足を進めていった。

 

「暗いわね…アサギちゃん、ねずみ小僧は確かにここに落ちたのよね?」

 

「そうであります…。ねずみ小僧どこにいるでありますかー!」

 

「あのねぇ、アサギちゃん、泥棒がはい!ここにいます!って返事すると思う?」

 

「それはそうなのでありますが…心配なのであります…」

 

アサギが路地裏に向かって呼びかけるがもちろん返事は返ってくることは無く暗闇が見えるだけだ。ビルの上から見た通りに灯り一つも無いここを探索するにはこのままだと無理だと判断したツインテールの少女は上ポケットから懐中電灯を取り出しライトを付けた。そして、暗闇へと光を向け「アサギちゃん、いくわよ」と声をかけ路地裏に向け歩き出す。アサギも慌てながらも同じように懐中電灯を取り出し、追従する形で路地裏に入っていくのだった。

 

「ねずみ小僧殿…」

 

お互いのライトでねずみ小僧を捜索するが人影一つ見つからず意気消沈してしまっているアサギ。そしてある程度歩を進めた時、ツインテールの少女が持つ白いライトの光があるものを照らし出す。

 

「…ん?」

 

黒いアスファルト上にポツンと赤い染みのようなものが出来ていたのだ。何だろうと不思議に思い近寄ると、懐中電灯が他にも点々と同じような物があるのを照らしていく。ツインテールの少女は最初に見つけた染みようなもの付近にしゃがみ込み手袋をした右手の人差し指を染みに突っ込んだ後、自分の鼻の前に持ってきたかと思うと臭いを嗅いだ。

 

「ツンとくる鉄臭い臭いってことは血痕…、渇いてないことから前からあったものじゃないわね…」

 

「アサギちゃん、多分、ねずみ小僧は死んでないと思うわよ。ほら、これを見て頂戴」

 

少女はこちらの行動を少し離れた位置から覗き込むように見ていたアサギに手招きをした後、血痕を指し示し、この血痕はねずみ小僧の物で点々と続いていることから、恐らく死んでいないであろう事をアサギに告げる。そして考えられる考察を聞く内に落ち込んでいたアサギの表情は幾分か和らいでいった。

 

「そ、それじゃ…ねずみ小僧殿は生きていて、この点々と続く血痕の先にいるってことでありますか!?」

 

「多分だけどね」

 

「ねずみ小僧殿…!今、アサギが行くでありますよ!」

 

「ちょ、ちょっと一人で行かないでよアサギちゃん!」

 

1人で先駆けるアサギを追いかける形で二人が血痕の後を追いかけて少し経った時であろうか、アサギがビルの壁付近でピタリと止まった。不思議に思ったツインテールの少女も壁付近をライトで照らすと、そこには人影も、そこから点々と続く血痕も無く、他の血痕より少し大きな赤い染みがあるだけだった。




ほぼ初めて小説書くからガバは許し亭許して。
タグは状況に応じて追加します。更新速度は亀。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。