14代目ねずみ小僧は夢を見る   作:アルムTYPEβ

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第二話

 

「う、うーん…ボクはビルから落ちてそれから…んっ…!」

 

個室のベッドに横たわる少女は、開いた目の奥に映る眩しさに痛みを感じ目を細めるが、眠っていた意識が浮上するにしたがって左足の痛みを感じ顔をしかめてしまう。そこで左足に目をやるが、傷跡は露出すること無く、歪な形だが包帯で手当てされていることが目についた。そして状況を確認する為、周りを見渡そうとし、ある一点でその首は止まった。PCに向かい椅子に座って作業音を鳴らす謎の人物がいたからだ。物音に気付いたのであろう中肉中背の青年は、付けていたヘッドフォンを外し書類が乱雑した机に置いたかと思うと、椅子を軽く回転させ少女の方に向き直った。

 

「あー…、起きた?」

 

「………」

 

「まあ警戒されちゃうよな」

 

首を前に少し倒しながら短髪の頭を搔きながら困ったように青年は苦笑する。知らない部屋に知らない人物、これで警戒するなというほうが無理であろう。睨むように見る少女に怯むようにうーんと唸った青年は、「あ、そうだ」と呟き、胸ポケットから年季の入った名刺入れから名刺を取り出すと、それを少女に差し出した。

 

「はいこれ」

 

手渡された名刺を受け取り、目を通す少女、そこにはこう記載されていた。

 

─弧谷探偵事務所─ ─所長 弧谷深紅─

 

「探偵…!?それじゃ君は、ねずみ小僧14代目のボクを依頼で捕まえに来たってことかい!?」

 

「いや、全然違うよ。そうだなあ、言うとすれば偶々だよ偶々」

 

「ほんとかい?だったら、ボクを助けることで恩を着せる算段があったりして…」

 

「疑われるのは仕方ないけど、何で助けたか説明するよ」

 

そこから孤谷は弁明の言葉を紡いでいく。歩いていると偶然倒れて気絶していたねずみ小僧を見付けたこと、それに怪我をしていた少女をその場に放置するのは流石に忍びなかったことを。「まあ、流石に話題のねずみ小僧を見付けた時は驚いたけどね」とへらりと笑う。

 

「ふーん…でも、警察を呼んでその場で待ってれば良かったと思うんだけど」

 

「それはそうなんだけど、どうせ第一発見者として事情聴取されたり、下手すると怪盗ねずみ小僧ウルシの仲間扱いされて面倒になる可能性も考えられるし。それに警察は苦手なんだよ…」

 

思った疑問をぶつけて帰ってきた返答は警察の相手をするのが面倒臭いという回答だった。最後の方は警察に思うところがあるのか小さくボヤいていたが。

 

「そういうことなら恩に着るよ、警察に捕まる訳にはいかないからね、でもどうやって警察の目を盗んで包囲をすり抜けられたんだい?」

 

「仕事上足で稼ぐことが多いからかなあ、だから、それなりには裏道には詳しいんだ」

 

得意顔で語る弧谷に対し、探偵上歩くことも多いのだろうかとウルシは納得していると、ふと探偵の孤谷が自分の顔をじっと見つめていることに気が付き、恥ずかしくなり目をそらしてしまう。

 

「さっきからボクの顔を見ているけど、何か可笑しいのかな…?」

 

「いや、巷で騒がれているねずみ小僧の素顔だけど、可愛らしいもんだなって思ってつい」

 

「す、素顔!?」

 

悪びれるさまもなく答える弧谷とは裏腹に、ウルシは焦ったように両の手を顔に当てるといつもそこにあるべき仮面の感触が無く、普段より若干視界が広いことに気づいた。素顔が知られてしまった事より、自分は今まで素顔のままでこの男性と話していたことを意識し顔が徐々に紅色に染まっていく。

 

「ちょ、ちょっと見ないでくれるかな…?後、何で君は勝手に仮面を外しているんだい!?」

 

慌てて顔をそらし、恥ずかしいことを誤魔化すように質問をぶつけるウルシ。

 

「ん?、単に寝返りとかうった場合に危ないから、眼鏡とかも寝る時外さない?」

 

「確かにそうなんだけどさ、君には躊躇いとかそういうのはないのかい!?、そ、それより、ボクの仮面は何処にあるのかな!?」

 

「あー、そこのテーブルの上に付けてたカチューシャと一緒に―」

 

弧谷が言い終わる前に部屋の中央にあるテーブル上に置かれている仮面とカチューシャを確認したウルシは目にも止まらぬ速さでそれらに手を伸ばしたかと思うと、急いで素顔を隠すようにそれらのアクセサリーを身に着ける。

 

「おー、凄い、流石ねずみ小僧ウルシって所か、しかし、痴女みたいな恰好なのにそういうのは恥ずかしいんだな」

 

「そういうことじゃないんだよ!、後、痴女って言わないでくれるかい!!」

 

息を荒げながら視線で人を殺せそうなレベルで反論するウルシだったが、ふとあることに思い至り質問を投げつける。

 

「あ、あれ…そういえば君が助けてくれたってことは、君がここに運んで来てくれたってことだよね…?」

 

「そらそうよ」

 

「そらそうよってどこの野球の監督だよ…、つまり、その…どうやって運んできたのかなー…?」

 

「背中に担いで、俗に言うとおんぶだな、あ、見た目に反して思ったより重かったから吃驚したよ、ああ、勿論悪い意味じゃなく筋肉質でいい体をしてるってことで―」

 

「き、君にデリカシーというのはないのかー!」

 

女性に対し体重の話をするだけで無く語り始めた小谷に業を煮やしたウルシは手裏剣を取り出すと、たちまちに杜撰な探偵に向かって放り投げた。高速で回転する手裏剣は弧谷に当たること無く壁に突き刺さるが、弧谷の頬を浅い切り傷を作ると同時に冷や汗を出させる結果となった───。

 

「で、この手当も君がしたのかい?」

 

「はい…そうです、私めがさせて頂きました…」

 

包帯を指差し尋ねるウルシに対し、覇気が無くうなだれながら答える弧谷。年齢は弧谷が上なのだが力関係を思い知らされたこともあり下手に出ながら、ウルシの顔をチラチラと伺う。

 

「あの、不躾で申し訳ないんですが、何であんな所で倒れていらしたのですかね?」

 

「はあ…もう許すから、普通に話してくれないかな。あそこにいた理由はちょっとしくじっただけだよ」

 

畏まった態度をとる弧谷に嘆息し詳細な内容は隠し簡潔に伝え、自分の中で失敗した状況を思い返し苦虫を潰す。

 

「成程ね…、そういえば、時間は大丈夫なのか?」

 

右手の親指を立て作ったグッドサインと目線の先にある掛け時計は午前4時を回ったすぐの時間を指し示していた。

 

「別段問題はないけど、どうやら数時間はお世話になってたみたいだね。まあでも、そろそろお暇させて貰おうかな。後、助けてもらったのは本当に有難かったよ。でも、ボクの正体をバラさないように頼むよ!」

 

「しないって…、それじゃ玄関はこっちだから案内する」

 

先導する弧谷に付いて行くため、腰かけていたベッドから立ち上がり部屋をでようとしていたウルシだったが、ふと先程まで弧谷が作業していた乱雑した机に目がいき、ある物を捉え、部屋の出口で足が止まってしまう。

 

「おい、どうした―」

 

「こ、これは、よく見るとPozeの最新モデルのヘッドフォンじゃないか!ボクはまだ持ってないけど、デザインもスタイリッシュだし、あとやっぱり高級感もさることながら、独自のテクノロジーであるトライポート・テクノロジーも…あっ!」

 

興奮しながら饒舌に喋り出したウルシを見て唖然としていた弧谷だが、先程の光景を思い浮かべクスクスと笑ってしまう。

 

「もう、笑わないでくれるかい自分でも恥ずかしいよ…」

 

「いや、悪い悪い、ヘッドフォン好きなんだな。あ、玄関はこっちだから」

 

実物のヘッドフォンに名残惜しさを感じながらも先導する弧谷に連れられ開けられた玄関を出るウルシ、そこはある雑居ビルの一角だった。

 

「気を付けて帰れよ」

 

「それじゃ、達者でね!」

 

お互いに軽くお別れの挨拶をすませた後、弧谷は玄関をゆっくりと閉め、肺の空気を一旦吐き出すと誰にも聞かれることの無いようにポツリと言葉を零した。

 

「いや、どう見ても痴女だろ…」




オリ主の名前は一応元っぽいのはある。
Poze:ポーズだから多分セーフ。
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