我が魔王は緑谷出久!?   作:夢野飛羽真

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第2話 英雄の夢

最初にオーマジオウの口から緑谷出久の名を聞いた時は驚いた。

私の友人に"僕のヒーローアカデミア"という漫画のファンが居て、彼からその少年の名を何度も聞いていたからだ。

私自身、その漫画やアニメを見たことはなかったが、彼の名前だけは何故か頭の片隅にあった。

 

(超常社会か…)

 

どうやらこの世界では、人口の約8割が"個性"と呼ばれる特殊な能力を持っているらしい。

特に私の世代ともなれば、個性を持たない人間の方が珍しいらしい。

私もこの世界に"魚津圭介"と言う名の赤子として転生し、両親に育てられながら幼稚園や小学校に通ったが、周囲の人には個性を持っていない人は居なかった。

 

「父さん、引っ越しの準備は完了した。先に車に乗っておくよ。」

 

「おう、スマンな。急に静岡に行くことになってしまって…」

 

「問題ない。向こうでの暮らしも楽しそうだ。」

 

さて、私の新たな父、魚津一真と母の魚津瀬里奈は宮城県の服屋で働いていたのだが、上の命令で急遽静岡県の支店で働くことになってしまったようだ。

丁度小学校の卒業式を終え、中学校に進学するという時期だが、家族3人で静岡県に転居することになった。

だがこれも、運命なのかも知れない…

我が魔王、緑谷出久が引っ越した先にいるのかも知れない。そう思うと小学校の友人達との別れもあまり悲しくはなかった。

新天地での生活に胸を躍らせ、家族の乗用車に乗り込んだ。

 

(待っていてください。我が魔王…)

 

私はその手にウォズミライドウォッチを握りしめ、我が魔王に会えることを祈る。

因みに、私はオーマジオウからこのウォッチを含めた4種類のミライドウォッチとビヨンドライバー、それに逢魔降臨歴と伸縮自在のマフラーと、地球の本棚へのアクセス権を与えられており、この世界では私の個性として扱われている。

 

「その本、何書いてるか分からないけど、飽きないわね~」

 

車の中で逢魔降臨歴を開いていると母さんが話しかけてくる。

 

「ここには20年分の英雄の伝説が記されているからね。寧ろ飽きる方法を教えて欲しいものだよ…」

 

この逢魔降臨歴を通して、私は平成ライダーの歴史を見ることができる。

つまりは平成ライダーのテレビを見返している様なものだ。早く我が魔王に会ってこの歴史も見せてみたいものだ…

 

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それから数週間後…

 

「おいクソデク!テメエ最近何調子こいてんだ!?」

 

「か、かっちゃん!?」

 

ある日の折寺中学体育館裏、茶髪の少年爆豪勝己とその取り巻き達は、緑谷出久を数名で囲んで詰め寄っていた。彼は出久の幼馴染であり、幼少期から彼を虐めていた男だ。

彼の個性は爆破、汗腺からニトロの様なものを出して爆破することで攻撃や移動に転じれる中々強力な個性を持つ少年だ。一方の緑谷出久は個性を持たない"無個性"、それ故か爆豪によって普段から虐げられている。

 

「俺の知らねえとこで、変な奴連れて来やがって!」

 

「僕だってあの人のこと良く知らないんだよ!」

 

「うるせえ!!俺に口答えすんな!!!」

 

出久が口答えしようとしたのが気に入らなかったから、爆豪が彼の制服の襟首を掴み腕を振り上げたその時だった。

 

「その辺にしたまえ!」

 

その時、どこかから伸びて来た布の様なものが爆豪の腕に絡みつき、腕が出久に向けて振り下ろされるのを阻止する。

 

「またテメエか…」

 

「う、魚津君!?」

 

「ウォズで良いと言っているだろう。我が魔王…」

 

爆豪から出久を守った者の正体はウォズであった。

爆豪の腕を拘束したのも、彼の首に巻かれているマフラーであった。

 

「チッ…行くぞ…!」

 

ウォズによって出久から引きはがされてしまった爆豪は、舌打ちをして不機嫌そうな顔で取り巻き達と共にこの場から去ってしまう。

 

「我が魔王、このことを先生に伝えなくていいのかい?」

 

「ううん、大丈夫。実際に殴られたわけじゃないし…」

 

「ホント、君は少々優しすぎる。魔王たるもの、たまには厳しく切り捨てる冷酷さも必要だというのに…」

 

ウォズは爆豪によるイジメ行為を認知こそしているが、出久の頼みでそのことを先生に言いつけてはいなかった。彼からすれば早々に排除してしまいたい人物ではあるが、出久からすれば幼稚園からの幼馴染で、憧れの存在でもある。彼のことを言いつけて、彼がヒーローになることを邪魔してしまうことも恐れて、いじめのことは自分の中にしまい込んでいた。

 

「それに、僕がなりたいのは魔王じゃなくてヒーローだから…」

 

出久からすれば、ウォズは初めて自分のことを理解し虐げない良き友人であるのと同時に、彼の言っている魔王関連のことに関しては理解することができなかった。

 

「そうは言っても、君が王の力を手に入れる日はいつか必ず訪れる。私は君を最高最善の魔王にしてみせるさ。」

 

また、ウォズも出久のヒーローになりたいという夢に疑問を感じていた。

周りのヒーローになりたいと言っている者達は個性を持っている。爆豪の様に派手なものもあれば、そうではないが鍛えることで実用性が上がるものもある。だが、出久にはそれが無い。

そんなハンディキャップを抱えているのに、ヒーローになるというのは無茶な話だ。諦めて他の道を選ぶ方が無難だ。

 

「あの…う、ウォズ君!」

 

「なんだい?我が魔王…」

 

出久に背を向けてこの場を去ろうとしたウォズを、出久が呼び止める。

 

「何で君が僕のことを"魔王"って呼んだり王様にしようとしてるのか分からない…けど、これだけは言っておきたいんだ…」

 

振り返ったウォズの目に入ったのは、出久の真剣な眼差し。

それを見てか、ウォズの身体も自然と彼の方を向きなおす。

 

「僕は昔から、オールマイトに憧れてて…オールマイトが…災害やヴィランで困っている人達を助ける姿が僕は大好きで!僕も…そうなりたいってずっと思ってて…ダメかな…?僕が皆を笑顔で救けるヒーローになったら…」

 

無個性ゆえに周りから否定された夢。実現しないかもしれない夢。

そうであったとしても出久は、ヒーローになることをずっと夢見てきていた。

それは彼が幼い頃に見たオールマイトの動画がキッカケだった。

大災害の中、笑顔で次々と人を救うヒーローの姿。今やNo.1ヒーローと呼ばれているオールマイトというヒーローの雄姿である。出久はずっと"彼の様になりたい"と考えてヒーローの分析などをやりまくっていた。

 

「確かに、オールマイトの笑顔は人を救う。それに、その話をしている君も自然と笑顔になっているようだね。」

 

オールマイトについて語る時、出久の顔は自然と笑顔になっていた。それほど彼のことが好きで憧れていると分かり、ウォズも彼に微笑み返す。

出久のオールマイトやヒーローに対する熱い気持ちが、彼の表情や言葉からウォズの心に伝わっていった。

 

「ならば、私も君の夢を応援しよう。君の憧れや夢を否定してしまっていたことを詫びなければいけないようだな…」

 

「ちょ、ちょっと!頭を上げてよ!」

 

出久の真摯な思いに、自分が内心で思っていたことを恥ずかしく思っていたウォズは深々と頭を下げ、それを出久は必死に止める。

 

「けど、僕のことを応援してくれるって言うのは嬉しいよ…ありがとう…」

 

「いいや、ただ私は君が最高のヒーローを目指すことで、最高最善の魔王になる道がより開けると思っただけだ…ただし道はかなり険しいだろう…私が特訓を付けよう。」

 

「特訓…?」

 

「そうだ、少し厳しいかも知れないが、いずれにせよ必要なこと。放課後私と共にその場へ向かうとしよう…」

 

「うん!」

 

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私は我が魔王の夢を受け止め、あることを考えた。

我が魔王が夢を叶える道の中で最高最善の魔王になればいい。

彼の思う最高のヒーロー、そのビジョンと私が求める最高最善の魔王はどこか近い気がした…

それに、夢を否定することで、彼が壊れてしまう気もしていた…

 

「まだッ…まだ!!」

 

さて、今は我が魔王の特訓を行っている。

ヒーローになるにせよ、魔王になるにせよ、体を鍛えておく必要がある。ということで今は海岸の粗大ゴミの清掃をしていただいているところだ。

この海岸にはかなりの量の粗大ゴミが不法投棄されているが、これらを清掃することで体の様々な筋肉を使い鍛えることもできるだろう…

 

「言っておくが、無理は禁物ですよ。」

 

始めてまだ数日だと言うのに、我が魔王は想定以上のペースで清掃を勧めている。

 

「分かってる…けど僕は、他の人より頑張らなくちゃ!」

 

無個性故に他の人に遅れを取っている。それで少し焦っているのだろうか…

もう少し様子を見てみるとしよう。

 

「ねえ、ウォズ君。」

 

「どうしたんだい?我が魔王。」

 

ある程度清掃を行い、休憩している時に我が魔王は私の隣に座って問いかけてきた。

 

「ウォズ君はヒーローになりたいとかって思わないの?」

 

それは私の目標に関する問いかけであった。

 

「生憎、今の私には君を魔王に導く以外の目標は無いからね…」

 

「ウォズ君はそれでいいの…?僕を導くだけって言っても、それで変わるのは僕だけだ。ウォズ君自身がどうありたいとか、どう変わりたいかって…そういう夢は無いの……?」

 

そう私に問いかける彼の顔は、どこか悲しそうだった。

確かに、私の今の目標に私自身の勘定は入っていない。それは我が魔王や、多くの人からすれば空っぽにも見えてしまうのだろう…

 

「ウォズ君だって、良いヒーローになれると思うよ。だって僕、ウォズ君に会ってから笑ってる時が増えた気がするよ…」

 

そう言って我が魔王は清掃に戻る。

"ヒーロー"ねえ…確かに私はその存在が好きだ。

昔は仮面ライダーだけでなく、スーパー戦隊にウルトラマン…色々なヒーロー達を見てきていた。

彼らに憧れてその活躍を見続けた日々、私にとっては幸せな時間であった。

人々の笑顔を守るヒーロー達、私もそうなりたいと思わなかったわけではない…

我が魔王と違って私はその夢を諦めて普通に生きようとしていた。

 

「けど、今の私なら…」

 

この世界の住民に生まれ変われたのは、私にとってチャンスかもしれない。

オーマジオウから託された使命を果たすことも大事だ。

だが、与えられた第二の生で夢を追うのも悪くない…

我が魔王がオールマイトを目指すのなら、私も大好きな仮面ライダーを目指すとしよう…

 

「私も手伝うとしましょう…」

 

我が魔王を導くだけではダメだ。私も我が魔王と共に、ヒーローを目指してみるのも悪くない。

そう思うと自然と体が動き、私も粗大ゴミを運び始めていた。

 

「ウォズ君!?」

 

「"切磋琢磨"私の好きな言葉です。範囲は広くなるかもですが、共に頑張りましょう…」

 

「うん!ありがとう!」

 

オーマジオウがなぜ彼を選んだのか分かった気がした…

まっすぐな彼の心、それに優しさや思いやり…

彼ならばきっと、常盤ソウゴとはまた違う最高最善の魔王になるだろう。

だが今は鍛える時。私も彼もしっかり強くなって、共に覇道を歩むとしよう…




魚津圭介
個性:ウォズ
仮面ライダーウォズに変身できる。
使用出来るミライドウォッチはウォズ、シノビ、クイズ、キカイ
スカーフを伸ばしたりして本家ウォズの様に立ち回ることもでき、平ジェネForeverの時と同様地球の本棚へのアクセスも可能
逢魔降臨歴
この書の中には平成ライダーの歴史と常磐ソウゴが歩んだ覇道が書かれている。
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