我が魔王は緑谷出久!?   作:夢野飛羽真

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いよいよ体育祭も佳境です。
今回は轟君のお話からスタートです。


第21話 昼休み

「話って…何…?」

 

騎馬戦を終えた直後、轟に呼ばれた出久とウォズは通路の様な場所で彼と向かい合っていた。

 

「早く話したまえ…私は腹が減った。」

 

黙って2人を見つめている轟に、お腹が空いてきたウォズは少しイライラしている。

 

「気圧された…自分の制約を破っちまうぐらいによ…」

 

「それは、左側の炎のことかな…?」

 

轟の制約、それは騎馬戦の終盤でしか使われなかった炎のことだと2人は察していた。

 

「ああ、そうだ…俺の親父は"エンデヴァー"知ってるだろう?万年No.2ヒーローだ。爆豪もだが、お前らがNo.1に近い実力を持ってるなら、俺は…猶更勝たなきゃいけねえ…」

 

騎馬戦で直接対峙した2人を呼び出した轟だが、彼が越えなければいけない人間は多い。爆豪もその内の一人だ。

 

「親父は極めて上昇志向が高い奴だ…ヒーローとして破竹の勢いで名を馳せたが、生きる伝説オールマイトが目障りで仕方なかったらしい…自分では自分ではオールマイトを超えられねぇと悟った親父は、“次の策”に打って出た。」

 

「何の話だよ、轟君…僕に何を言いたいんだい…?」

 

轟の左腕に関する話をしていた筈が、突如彼の父親の話を聞くことになり出久は少し困惑してしまっている。

 

「"個性婚"知ってるよな…?」

 

「知ってるさ…過去に歴史の授業で学んだよ。超常第2第3世代の頃に社会問題になったことだったね…」

 

轟の口から出た"個性婚"という言葉に、出久達は思わず表情を曇らせてしまう。

 

「自身の個性をより強化して子供に継がせるために配偶者を選び、結婚を強いる…欠落した前時代的発想…実績と金だけはある男だ。親父は母の親族を丸め込み、"母の個性"を手に入れた。俺をオールマイト以上のヒーローに育てることで自身の欲求を満たそうってこった…」

 

「No.2ヒーローがそんなことをしているとはね…」

 

エンデヴァーの所業を知り、出久とウォズは唖然としている。

輝かしいNo.2ヒーローが裏では人を道具としか思っていない行動をしていることに、2人は驚きを隠せない。

 

「鬱陶しい…そんな屑の道具にはならねえ…記憶の中の母はいつも泣いている…『お前の左側が醜い』と、母は俺に煮え湯を浴びせた。」

 

轟の顔はクラス内でも特に整っている方だが、その左目の付近には醜い火傷の痕が出来てしまっていた。

その理由というのも、彼の家庭環境が故に起きたトラブルによるものであった…

 

「ざっと話したが、俺がお前らに突っかかんのは見返すためだ。クソ親父の個性なんてなくたって…いや、使わず1番になることで奴を完全否定するッ…!」

 

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「なるほどね。それが君が本気を出さない理由か…」

 

轟君のバックボーンは中々衝撃的であった…

だがしかし、それは人を救えない時の言い訳にはならない。

 

「本気…?」

 

「ああ、半分の力しか使わない。それで困っている人たちを助けられるか否か…」

 

そう言って私は彼にクイズミライドウォッチを見せる。

私は嘗て、フューチャーリングクイズの姿で彼に同じ問いかけをしたことがあった。

 

「それは…」

 

その答えは否である。その現実は彼も心のどこかで分かってしまっているのだろう…

というより、以前の戦いで私に思い知らされてしまったのだろうね。

 

「最初に言っておく、私達はかなり強い。半分の力しか出さない君じゃ勝てないだろうね。そして強力なヴィランにも…」

 

以前のUSJに現れたオーマショッカーにアナザーライダー。

彼らのような強力な敵が来た時、轟君は氷結の個性だけで勝てるのだろうか…?

厳しい現実だが、制約付きの彼ではNo.1ヒーローなんぞ程遠いだろうね。

 

「……」

 

「あの…轟君は何でヒーロー目指してるの?お父さんに復讐したいならヒーローにならずに他の土俵から見返すことだってできるはずだよ…?」

 

確かに、我が魔王の言う通りだ。エンデヴァーに嫌がらせをしたいのであれば、No.1ヒーローの競争に名乗り出ないというのが一番有効的…自分の進路をヒーローに絞るということは…ましてやその中でも1番を目指すということは復讐という動機だけでは為せないだろう。

 

「それは…」

 

「本当は轟君も好きなんじゃないの?ヒーローのこと、例えば…オールマイトとか!」

 

「…!」

 

我らもよく知るオールマイトという名前に、彼はハッとさせられたかのような表情を見せる。

私自身、この世界に来てから彼の名を耳にする機会や、彼の活躍を目にすることも多かった。

勿論、学友とオールマイトの話をすることも多い。我が魔王含め、オールマイトに魅せられた同級生は少なくはない。恐らく轟君も例外ではないのだろう…

 

「轟君はオールマイト好き?」

 

「好きだ…」

 

「僕もだよ。」

 

まるで恋バナをする少女のような明るい表情を見せる我が魔王。

少し仮面ライダーの先輩方に影響を受けたのか、以前に比べて明るい笑顔を見せることが多くなった気がする。

 

「だったら、自分に正直に…もっとまっすぐにヒーロー目指せばいいんじゃないかな?」

 

「愚直に突き進めばいいさ。多くの悪に打ち勝ち、多くを救うことができるヒーローを…」

 

我々の言葉を聞き、彼は少し俯く。

 

「わりいけど、俺にはできねえ…こんな運命背負っちまってんだ…お前らには分かんねえよな…」

 

我々の言葉を聞いても彼の表情は曇ったままであった。捨て台詞を吐いてこの場から去っていく。

恐らくまだエンデヴァーの呪縛に囚われてしまっているのだろう…

 

「彼がどう言おうと私達は全力で戦うだけさ…次の競技は私も…轟君に爆豪君、それに君ともタイマン張らせてもらうよ。」

 

「うん、受けて立つよ…」

 

轟君の意思がどうであろうと、この後の戦いでは皆が心の内に秘めた思いを爆発させて戦うだろう…

私達とて、乗り遅れるわけにはいかない。

 

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『さあ!昼休憩を終えて最終種目発表!』

 

昼休みを終えていよいよ午後の部が始まろうとしていた。

 

『と、その前に予選落ちの皆に朗報だ!あくまで体育祭!ちゃんと全員参加のレクリエーション種目も用意してるのさ!本場アメリカからチアリーダーも呼んで一層盛り上げ…ん…?』

 

『何やってんだ…』

 

体育祭午後の部の序盤はレクリエーション種目

生徒全員が再びグラウンドに集まっているのだが…

 

『どーしたA組!どんなサービスだ!』

 

何故かA組女子たちはチアリーダー姿でグラウンドに立っていた。

 

「峰田さん!上鳴さん!騙しましたわね!」

 

そう、彼女らはA組の変態峰田と上鳴に"午後はチアリーダーの衣装で応援合戦がある"と騙されてこの場に来たのだが…そんなものはなく他クラスの女子は普通に体操服でこの場に来ていた。

 

「何故こうも峰田さんの策略にハマってしまったのですか私…」

 

「アホだろ!コイツら!」

 

落ち込む八百万と不機嫌な耳郎。そんな2人にウォズが歩み寄る。

 

「とは言っても応援するのも大事なことだ。チアー、応援する…私の好きな言葉だ。こういう張り詰めた時こそ互いに鼓舞して、緊張をほぐすのも良いだろう…」

 

「そうだね!やったろう!」

 

「透ちゃん、好きね…」

 

ウォズの言葉に賛同した葉隠や芦戸はノリノリだ。

 

『さあさあ!楽しいレクリエーションの後は最終種目!第二種目を通過した4チーム16名によるトーナメント!1対1のガチバトルだ!』

 

「最終種目はサシでのトーナメント…毎年テレビで見てた舞台に立つんだ!」

 

最終種目の内容に切島は胸を躍らせている。

 

「去年トーナメントだっけ?」

 

「形式は違ったりするけど例年はサシで競ってるはずだ。」

 

「それじゃあ、組み合わせ決めのくじ引きしちゃうよ!組が決まったらレクリエーションを挟んで最終種目開始になります。レクに関しては最終種目進出者16人は任意での参加になります。息抜きしたい人も温存したい人も居ると思うしね。」

 

ミッドナイトからレクリエーションや最終種目に関する説明がされる。

レクの時間をどう過ごすかも最終種目進出者にとっては、その後の自分の調子を左右する要素になるだろう。

 

「じゃあ、一位のチームから…」

 

「あの、すみません…俺、辞退します。」

 

くじ引きを始めようとした時だった。突如A組の尾白が挙手し、辞退を申し出た。

 

「尾白君!なんで!?」

 

「折角プロに見てもらえる場なのに…」

 

彼の行動に多くの者が疑問を感じてしまう。

折角のチャンスを無駄にしてしまうその行動に、出久達も困惑を隠しきれない。

 

「騎馬戦の記憶…終盤ギリギリまでボンヤリとしかないんだ…多分、彼の個性で…」

 

(尾白君と組んでたの…確か…)

 

彼の言葉を聞き、出久の視線は自然とC組心操の方を向く。

普通科からは唯一の騎馬戦と最後のトーナメント出場者となった男だ。

 

「チャンスの場だってのは分かってる…それを不意にすることも…」

 

「尾白君…」

 

「でもさ!皆が力を出し合って争ってきた場なんだ…こんな…わけわかんないままここに並ぶなんて俺にはできない!」

 

「気にしすぎだよ…本選でちゃんと結果を出せばいいんだよ!」

 

「そんなん言ったら私だって全然だよ…」

 

深く考え込んでしまう尾白を葉隠と芦戸が励ます。

騎馬戦がチーム種目だったため、爆豪の様な実力者と組めた芦戸や心操に利用されてしまった尾白の様な者も最終種目に進めてしまう。ここは葉隠の言う通り、次の個人戦でしっかり結果を残せばいいのだが…

 

「違うんだ…俺のプライドの話なんだ…俺が…嫌なんだ…」

 

(なんとも誇り高い男だ。私の様に君に感心する人は多いだろうね…報われて欲しいものだ…)

 

尾白の様子を見てウォズも静かに頷いている。何もせずにつかんでしまったチャンスを活かすことで自身のプライドが傷付くことを拒む誇らしさに思わず感心してしまっている。

 

「後なんで君らチアの格好してるんだ…」

 

「「「……!」」」

 

(ツッコむのが遅いぞ、尾白君…)

 

チアの格好をしていることにまたもツッコまれてしまったA組女子達。

その一方で、もう1人ミッドナイトにある申告をしようとする者が居た。

 

「B組の庄田二連撃です。僕も同様の理由から辞退したい。」

 

彼の名は庄田二連撃。尾白と共に心操のチームに属していた者だ。

 

「実力以前に、何もしていない者が上がるのはこの体育祭の意思に反するのではないだろうか…?」

 

「なんだよコイツら!男らしいじゃねえか!」

 

そんな2人の行動に切島は思わず感動している。

 

『なんか妙なことになってるが…』

 

『ここは主審、ミッドナイトの采配がどうなるか…』

 

くじ引きの前に2人の最終種目辞退希望者が出てしまい、判断がミッドナイトに委ねられた。

 

「そういう青臭い話はさあ…好み!庄田!尾白の棄権を認めます!」

 

(((好みで決めた!?)))

 

最終的には青春大好きというミッドナイトの趣味趣向により、2人の熱い思いが受け入れられた。

 

「まあ私は、残りますが。」

 

一方、同じく心操チームであった発目は棄権はしない模様…

そもそも彼女は洗脳されずに心操に協力していたため至極当然のことであるが。

 

「となると…2名の繰り上がり出場者は騎馬戦5位の拳藤チームからになるけど…」

 

さて、決勝進出は16人の枠があるのだが、尾白と庄田の辞退により2人分の枠が余ってしまった。

 

「そういう話で来るなら…騎馬戦で途中から動けなかった私らより…あれだよな。」

 

「うん。」

 

「最後まで頑張って上位キープしてた鉄哲チームじゃね?」

 

拳藤らのチームは騎馬戦の中盤、轟の攻撃に巻き込まれて凍結により動けなかったが、運よく鉢巻を奪われなかったために5位であった。だが、このチーム全員の意思は終盤まで動き、高いポイントを持っていた鉄哲チームの方がふさわしいというものだった。

 

「拳藤…」

 

「馴れ合いとかじゃなくてさ。普通に…」

 

「おめえら…うおおおおお!!」

 

拳藤に権利を譲渡してもらった鉄哲は思わず感極まってしまう。

そして彼らの間で話し合いが行われ…

 

「というわけで鉄哲君と塩崎さんが繰り上がって16名!くじ引きの結果組み合わせはこうなりました!」

 

ミッドナイトの一声と共に対戦確定されたカードとトーナメント表がスクリーンの表示される。

 

第一試合 緑谷出久VS心操人使

第二試合 瀬呂範太VS轟焦凍

第三試合 上鳴電気VS塩崎茨

第四試合 飯田天哉VS発目明

第五試合 魚津圭介VS八百万百

第六試合 芦戸三奈VS常闇踏陰

第七試合 切島鋭児郎VS鉄哲徹鐵

第八試合 麗日お茶子VS爆豪勝己

 

試合決定…!

 

「私の相手は君か…全力でやるまでさ…」

 

「望むところですわ!」

 

八百万との試合が決定したウォズは彼女を見据える。

そして出久は…

 

(一回戦は第一試合か…僕と轟君が勝ったら…)

 

昼休みに言葉を交わした轟との対戦が近いことを察するが…

 

(その前に…!心操君って…)

 

「アンタだよな、緑谷出久って…」

 

その前に戦わなければいけない心操について考える。

彼の個性までは把握できておらず、騎馬戦で尾白らと組んでいたことしか分からなかったが、そんな彼が突如話しかけて来た。

 

(この人…!)

 

その少年に出久は見覚えがあった。

体育祭前に彼はA組の教室に宣戦布告しに来たことがあった。

"体育祭のリザルトでは普通科からヒーロー科への昇格ができる。その逆も然り…"

 

「一回戦、よろしく。」

 

「よ…」

 

「緑谷!」

 

彼の言葉に応えようとした出久の口を、尾白の尻尾が塞ぐ。

 

「尾白君…どうしたの?」

 

心操がその場から去り、出久は尾白の行動について問う。

 

「奴に応えるな…」

 

出久と最初に戦うことになった男、心操人使。

自身の言葉に応じた物を洗脳してしまうという彼の個性は非常に厄介で、障害物競走と騎馬戦で彼の術中にハマってしまった者は多い。

尾白と共に彼の対策を考えるのに、出久はレクリエーションの時間全てを使うことになったのであった……




迷いがある人にアドバイスする時の出久がソウゴ君に似てきたのは気のせいだろうか?
とりあえず3月も頑張って書くので皆様応援よろしくお願いします!
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