どうなる!?職場体験先
第30話 ヒーローネーム
雄英体育祭とそれに関する連休が明け、久々の登校日を迎えた。
「やっぱりテレビで中継されると違うね~超声かけられたよ来る途中!」
「あー俺も!」
朝の教室では芦戸や切島が体育祭の影響で町中のいろんな人から声を掛けられたという話をしており、他のクラスメイトもそう言った話題で持ちきりだった。
「俺なんか小学生にいきなりドンマイコールされたぜ…」
「ドンマイ」
「うわー!!」
なお轟に大氷結を喰らった挙句客席からドンマイコールを浴びせられていた瀬呂は、しばらくそのトラウマを掘り返されることになりそうだが…
「たった1日で一気に注目の的になったなー!」
「流石雄英だな~」
雄英体育祭の影響を実感しているのは出久やウォズも例外ではなくて、道で小学生に変身してるとこを見せて欲しいとよくお願いされていた。そんな話をしつつも朝礼が始まる時間には、全員大人しく自分の席に座っている。
「おはよう。」
「「「おはようございます!」」」
始業と同時に入って来た相澤に、生徒たちは元気よく挨拶する。
「ケロ、相澤先生包帯取れたのね。良かったわ…」
「バアさんの処置が大袈裟なんだよ。」
USJで大怪我を負ってしまっていた相澤だが、その頭部を覆っていた包帯は完全に取れていた。
「んなことより、今日のヒーロー情報学、ちょっと特別だぞ。」
(もしや、抜き打ちテストか…!?体育祭で気が抜けた後だし、十分考えられるだろうな…)
"特別"という言葉に生徒達は抜き打ちテストでもあるのではないか?と身構えてしまう。
「コードネーム、ヒーロー名の考案だ。」
「「「胸膨らむ奴キター!!」」」
特別なことが自分のヒーロー名を決める授業と分かると、A組生徒達のテンションが一気に上がる。それを相澤がギロリと睨んで、その場を静かにさせる。
「と言うのも、先日話したプロヒーローからのドラフト指名に関係してくる。使命が関係してくるのは、経験を積み、即戦力として判断される2~3年から。つまり、今回お前達1年に来た指名は将来性に対する興味に近い。」
今回の指名は今後の指標にもなる。この指名を減らさないようにするどころか、数を増やすのが理想的だろう。
「で、その集計結果がこれだ。」
そう言いつつ相澤が黒板に指名の集計結果を表示する。
一番多いのは出久の約4000票で、そこにウォズ、爆豪が200票近くで続いていく。
他にも轟や飯田、常闇も票数が多い方だ。
「例年はもっとバラけるんだが、今年はベスト8に票が集中したな。」
「シロクロ付いた!」
「見る目ないよね~プロ。」
轟や常闇の様なベスト8入りメンバーにも指名が集まっているのに対し、最終種目の一回戦で負けてしまった生徒や、第二種目で敗退してしまった生徒は自分の指名数が少なかったり0であることに不満そうだ。
「わ~指名来てた~」
「あまり揺らさないでくれるかな?少し酔いそうだ。」
自分に指名が何件か来ている麗日は、喜びの余り後ろからウォズの身体を揺らしてしまっている。
「この結果を踏まえ、指名の有無に関係なく職場体験ってのに行ってもらう。」
前々から生徒達は話を耳にしていたことがあったが、ヒーロー科1年向けに行われるプログラムであり、1週間ほどプロの現場に行って彼らの仕事を現場で学ぶというものだ。実りある訓練になることは確実だ。
指名が来た生徒は、自分に指名をくれたヒーローの下に行くことになっている。
因みに、指名がない生徒は雄英が用意してくれたリストにあるヒーローを選んでそこに職場体験に行くことになっている。
「それでヒーロー名か!」
「俄然楽しみになってきた!」
「まあその、ヒーロー名は仮になるんだが…適当なモンは」
「付けたら地獄を見ちゃうよ!」
突如教室に入って来たのは、18禁ヒーローでありながら雄英の教師も務めるミッドナイトだ。
そのセクシーなコスチュームに一部の男子生徒は鼻の下を伸ばしている。
「学生時代に付けたヒーロー名が、世に認知されてそのままプロヒーロー名になってる人も多いからね。」
「「「ミッドナイト!?」」」
「ま、そう言う事だ。その辺のセンスをミッドナイトさんに査定してもらう。俺はそういうのは出来ん…」
因みに相澤のヒーロー名、"イレイザーヘッド"は同級生のプレゼントマイクに付けてもらったものである。
「将来自分がどうなるのか、名を付けることでイメージが固まりそこに近付いていく。名は体を表すってことだ、オールマイトとか。」
と言い残して相澤は残りをミッドナイトに任せて、寝袋の中で寝始める。
ミッドナイト主導でヒーロー名を記入する様のボードと、サインペンが渡される。
10分後
「じゃあ、そろそろ。出来た人から発表してね。」
「前に出て発表するのか…まあ、発表できないような名前を付けてはいけないということだね。」
「その様だな、ここで付けるヒーロー名は外でも使う物、先生方が言うように安易なものはつけられないな。」
考えたヒーロー名を前に出て発表しなければいけないということに、クラスメイト達は困惑しているが、その目的をウォズと飯田は冷静に分析する。そんな状況で青山が教壇に立ち、自身のヒーロー名を発表する。
「いくよ…輝きヒーロー『I can not stop twinkling!』訳して、キラキラが止められないよ!」
(((短文!?)))
だが、トップバッターを務める青山のヒーロー名はかなり型破りなものであった。
「そこはIを取ってcan'tにした方が呼びやすい。」
「それね、マドモアゼル。」
(((いいのかよ!?)))
しかもそれを訂正しつつも容認するミッドナイトに、A組一同驚きを隠せない。
「じゃあ!次はアタシね!ヒーロー名『エイリアンクイーン!』」
「2!血が強酸性のアレ目指してんの!?やめときな!」
(((馬鹿野郎!最初に変なの来たせいで大喜利みたいになってるじゃねえか!!)))
青山、芦戸ととんでもないヒーロー名を発表する2人に、場の空気が固まってしまう。
「ケロ、じゃあ次、私良いかしら?」
「はい!梅雨ちゃん!」
そんな空気の中、蛙吹が名乗りを上げて壇上に上がる。
「小学生の時から決めてたの、梅雨入りヒーロー『フロッピー』!」
「かわいい!親しみやすくていいわ!皆から愛されるお手本のようなネーミングね!」
「「「フロッピー!フロッピー!フロッピー!」」」
(((ありがとうフロッピー!空気が変わったよ!)))
大喜利のような空気を、蛙吹の考えたヒーロー名のお陰で緩和することができた。
そして、次にウォズがヒーロー名を発表するために皆の前に出る。
「では、私のヒーロー名は…インテリジェンスライダー!『ウォズ』!」
ウォズは雄英体育祭でプレゼントマイクに付けられた2つ名を冠し、名前そのものは普段からの呼び名を選ぶことにした。
普段からウォズと呼んでくれと言ってる彼のヒーロー名に一同納得するように頷く。
その後も、多くの生徒達が自分に付けたヒーロー名を発表していく。
「『爆殺王』!」
「そういうのは止めた方が良いわね。」
「なんでだよ!」
なお、爆豪の考えたヒーロー名はあまり評判は良くなかった…
「爆発さん太郎にしろよ!」
それに対して切島が弄る中、ウォズが爆豪に1つの提案をする。
「ヒーロー名、ゲイツにはしないのかい?」
「確か、ライダーの方の名前よね?」
「まあな、けどあれはまだ完全に俺の力じゃねえ…」
仮面ライダーの力を完全に使いこなせていない。
体育祭でもディケイドから指摘されてしまっていたことだが、それ故に元の自分の個性に肖ったものを付けたいというのが爆豪の希望であった。
爆豪が席に戻り、その後も何人かが発表をしていく。
「緑谷君。できた?」
「はい!」
そして、出久もいよいよ自分のヒーロー名を発表する時が来た。
「ヒーローの王『ジオウ』です!」
出久の中で幾つか迷いがあった。自分の憧れであるオールマイトをインスパイアした名前。爆豪に付けられ、麗日にポジティブな意味に変えてもらった名前"デク"。様々な選択肢があったが、出久はNo.1ヒーローと仮面ライダーの力の集大成であるヒーローの王に相応しい名前を選んだのだ。
「『爆殺卿』!!」
出久のヒーロー名が決まった一方、爆豪だけは授業中に名前が決まらなかったのだった…
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「ん~どの事務所にするか迷うなー」
「私も指名をしてくださったヒーローの事務所リストに目を通すだけでも、1日かかりそうだよ。」
その日の放課後、どのヒーロー事務所に行こうか迷っている出久とウォズが、家に帰ろうと教室の扉を開けた時だった。
「私が独特の姿勢で来た!!」
彼らの前に腰を直角に折り曲げた、前傾姿勢のオールマイトが登場する。
「オールマイト、どうしたんですか?そんなに慌てて!」
「ちょっとおいで…」
「は、はい。」
「俺も行っていいか?話てえことがある。」
「ああ、構わんよ。」
オールマイトに声を掛けられて出久とウォズに加えて爆豪が仮眠室に向かう。
「単刀直入に言うと、緑谷少年、君に私の師匠からの指名が来ている。」
「オールマイトの師匠?」
「ああ、その名はグラントリノ。嘗て雄英で1年だけ教鞭を取っており、私の担任だった方だ。」
グラントリノは雄英高校で1年だけ教師を勤めており、その期間にオールマイトを鍛え上げた男だ。
先代のワン・フォー・オール継承者である志村に次ぐ第二の師匠ともいえるような存在だ。
「ワン・フォー・オールの件もご存知だ。そのことで君に声を掛けたのだろう…」
「そんなすごい方が!」
オールマイトの師匠と聞き、出久はやや興奮気味だ。
「ワン・フォー・オールの件を知っている人はまだ居たということかな?」
「グラントリノは先代の盟友。とうの昔に隠居なさっていたが、まだ活動を続けていたらしい。」
ウォズは自身の問いかけに対する答えから、そのグラントリノがオールマイトよりもかなり世代が上のヒーローなんだろうと推察する。
「手紙を書いた時に君のことを書いたからか…それとも私の指導不足を見かねての指名か…かつての名を出して指名してきたということは!こええ!こええよ!震えるなこの足よ!」
(オールマイトがガチ震いしてる!)
だが、彼のことに関して話すオールマイトは怯えているのか震えている。
その様子に、グラントリノが只ならぬ人物なんだろうと3人は察する。
「君を育てるのは私の仕事だがッ…!折角の指名だ!存分に扱かれてくれッ…!!」
(どんだけ恐ろしい人なんだ!)
「で、彼からの指名がウォズ少年!君にも来ているんだ。恐らく緑谷少年とのセットだろう。」
「な、なるほど…」
オールマイトが恐れる人物から指名が来ていたと聞き、ウォズは少し身を引く。
「ところで、かっちゃんの話しておきたい事って…?」
「ああ、俺も指名の件だ。」
ここで出久は、話をしたいと付いて来た爆豪の方に話を振る。
「体育祭ん時にも声かけられたんだけど、ディケイドって奴から指名来てた…」
「「ディケイド!?」」
「ああ、多分このディケイドだ。」
体育祭の時に声を掛けてきた男の話をしつつ、ディケイドライドウォッチを爆豪は取り出す。
「仮面ライダーディケイドが爆豪君に指名か…どういう意図なんだ?」
仮面ライダーディケイドは平行世界を巡るヒーローで、その変身者である門矢士は訪れた世界で何らかの役割を与えられる。
そのことを理解していたウォズは、もし本物が居るのならプロヒーローになってこの世界で活動していてもおかしくないと考える。
「テメエらは指名来てたか?」
「ちょっと見てみるよ。」
爆豪に言われて出久とウォズは自身の指名リストを確認する。
50音順に並んでいるため、どのページにディケイドの名前があるのかがすぐに分かった。
「僕のとこには無かったよ…」
「私には指名が来ているね。」
確認した結果、出久には指名が無かったが、ウォズの下には来ていた。
「俺はディケイドんとこに行ってもっと強くなる。テメエらはどうするんだ…?」
「僕はグラントリノのとこに行ってみるよ。他にも凄い人たちから指名来てるけど、オールマイトの先生の所で鍛えてみたいよ。」
「ウム、良い心がけだ!2人共!ウォズ少年はどうするんだ?」
爆豪と出久はさらに強くなるための覚悟を決め、その思いをオールマイトも受け入れる。
一方のウォズは出久と共に行くか、爆豪と共に行くか、それとも他のヒーローの所に行くか迷っていた。
「我が魔王の特訓を見届けたい気持ちもあるが、ここは爆豪君に付いて行くとしよう。プロヒーローディケイドの姿を私も一目見てみたい…そちらに付いて行くとしよう。」
グラントリノもディケイドもウォズにとってかなり気になる存在であった。
だが、元々仮面ライダー好きなウォズは元から知っている仮面ライダーディケイドの方が気になっている。
「すまないね。今回は別行動になってしまって…」
「ううん、大丈夫だよ。しっかり鍛えて戻ってくるから!」
「つーことで、テメエも一緒か…ウォズ。よろしくな!」
こうして出久、爆豪、ウォズの職場体験先が決まり、その当日を迎えるのを待つこととなったのだ…
次回から門矢士が本格登場!
出久の特訓含めてお楽しみに!