我が魔王は緑谷出久!?   作:夢野飛羽真

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今回から期末試験編です!
こっからさらにオリジナル展開が多くなってきますので楽しんでいただけたら嬉しいです。


期末試験編
第38話 ワンフォーオールの過去


職場体験を終えて最初の登校日

その午後に行われるヒーロー基礎学の授業では、コスチュームに着替えたA組生徒たちが工場地帯を模したグラウンドγに集まっていた。

 

「おや?我が魔王のコスチュームが少し変わってるね。」

 

「うん、グラントリノのアドバイスで色とか装飾を少し変えてみたんだ。」

 

グラウンドに向かう出久のコスチュームは、これまでのものと打って変わって色が濃い緑色になっている。

オールマイト風の頭巾はフードに代わり、口元には金属製のマスクがある。グラントリノからライダーへの変身前でも行動しやすいようにと言われ、一度コスチュームを一新することにした。

 

「似合ってるね、新しいコスチューム。」

 

「ありがとう。」

 

笑顔で話す2人が到着したグラウンドγの入り口にはオールマイトが立っており、その周りにA組メンバーたちが集まる。

 

「はい、私が来た!てな感じでやっていくわけだけどもね。」

 

オールマイトはすでに授業を何度もこなしており、最初の挨拶の"私が来た!"も少し適当になっている。

 

「はい!ヒーロー基礎学ね。久しぶりだな~少年少女!元気か?さて、今回のヒーロー基礎学だが職場体験直後ってことで、遊びの要素を含めた"救助訓練レース"を行うことにする。」

 

「救助訓練なら!USJでやるべきではないのですか?」

 

今回の授業内容は職場体験で学んだ技術を活かすための救助訓練レースであるが、"救助訓練"というワードを聞いて飯田はUSJで行わない理由について質問する。オーマショッカーの襲撃以降、何度か救助訓練の授業をUSJで行う機会があった。それ故に皆、救助訓練といえばUSJという認識を持っている。

 

「あそこは災害時の訓練になるからな~私は何て言ったかな?そう!レース!ここは運動場γ!複雑に入り組んだ迷路のような密集工業地帯!5人3組と6人1組に分かれて1組ずつ訓練を行う。私がどこかで救難信号を出したら、街外れから一斉スタート!誰が1番に私を助けに来てくれるかの競走だ!」

 

今回のフィールドは幾つもの建物が並んでいる密集工業地帯。その複雑な地形の中心部にいる要救助者役のオールマイトの下に、だれが一番最初にたどり着けるかのレースになる。

 

「ここは建物も多い、被害が少ないようにしないとね。」

 

「わーってるよ。」

 

今回のシチュエーションのことも考え、ウォズは爆豪の方を見て爆破をやりすぎてしまわないように忠告する。

勿論そんなことは重々承知していると、爆豪はウォズの言葉に静かにうなずく。

 

「じゃ!早速始めていくぞ…ああ、それから緑谷少年はクロックアップとファイズ・アクセルは使用禁止だぞ。」

 

「はい!それでも頑張ります!」

 

レースということもあり、カブトアーマーのクロックアップやディケイドアーマー・ファイズフォーム等による高速移動は今回は使用禁止となった。

そのまま5人ずつ3組が次々とレースをこなしていき、そして最終レースとして出久、ウォズ、爆豪に加えて瀬呂と飯田、尾白ら6人のチームが準備をする。

 

「さて、私の新技も見せるとしよう。」

 

「俺も負けねえぞ。」

 

「2人とも、すごい気合いだね。」

 

既に出久、ウォズ、爆豪の3名は仮面ライダーに変身して始まりの時を待っていた。

 

「それと、少し気付いたのだがその腕の籠手…君の新しい力かい?」

 

「うん、マイトガントレットって言うんだ。」

 

改めてウォズがジオウの姿を見てみると、彼がワンフォーオールを継承したことでできたマイトガントレットが両手に付いていることに気が付いた。

 

「なるほど、君の中で力が目覚めている証のようなものかな?」

 

「そうかもね。」

 

マイトという単語からウォズ達はオールマイトから継承したワンフォーオールの力が具現化したものではないかと推測する。

 

「では、開始位置に行くとしよう。」

 

ここからさらに、ウォズと爆豪も自身の開始位置に向けて散っていく。

 

『それでは行くぞ!スタート!』

 

そして、オールマイトの合図と共にこの組のメンバーが次々とスタートしていく。

瀬呂は肘から伸ばすセロテープを建物の上に巻き付け、吊り下げられた状態の自分の体をスイングして移動していく。尾白は尻尾を使った跳躍で構造物を乗り越えていき、飯田は足のエンジンで加速しながら走っていく。

 

『フューチャーリングシノビ!』

 

ウォズはその飯田のようにフューチャーリングシノビのスピードを活かして地面を走って進んでいく。

 

「瀬呂君のやり方も真似てみるとしよう。」

 

ウォズもディケイドとの特訓を通して、変身時でもマフラーを活かしてみることにした。

付近にある鉄のパイプにマフラーを巻き付け、瀬呂の動きを真似するようにスイングして前へと進んでいく。

 

「爆速ターボ!」

 

一方のゲイツも爆破の推進力で低空飛行をし、構造物の上を飛び越えていく。

複雑に入り組んだ地形ゆえに、走るだけではゴールにたどり着くのが遅れてしまう。上を越えていくのが定石である。

 

「それ俺の専売特許!」

 

「すまないね。参考にさせてもらったよ。」

 

(ワンフォーオール!フルカウル!)

 

現在は瀬呂と彼のやり方を真似るウォズ、そこに食らいつく爆豪が建物の上を飛び越えていくやり方で上位を争っている。だが、その背後からワンフォーオール・フルカウルを使うジオウが迫ってくる。

周囲の構造物の上を次々と蹴って、ぴょんぴょん飛び跳ねて突き進んで来る。

 

「あれは…?」

 

「出久!?」

 

『アーマータイム!』

 

『タカ!トラ!バッタ!』

 

『オーズ!』

 

さらにその3人を仮面ライダージオウが追い越したかと思えば、このタイミングでさらにオーズアーマーに変身して脚力を強化する。

 

「オールマイト並みだろありゃ…」

 

ワンフォーオールによる身体能力強化で加速していたジオウに、オーズアーマーの脚部にあるバッタスプリンガーによるジャンプする為のばねの強化が加わる。その彼の跳躍力を瀬呂は思わずオールマイトと同等と評する。

 

「私も負けてはいられないね…」

 

ウォズも何とか追いつこうと構造物の上を全力で走っていく。

 

「置いて行かせるかよ!」

 

「ちょ!速すぎんだろ!」

 

更にゲイツも両掌からの爆破を連続で放って加速していく。

瀬呂は3人との距離を離されて唖然としている。

 

(間に合ってくれ!)

 

ジオウ、ウォズ、ゲイツの3人が演習場を駆け抜け、オールマイトの下へ向かう。

そして、一番最初に到着したのは…

 

「ありがとう!そしておめでとう!ウォズ少年!君が1番乗りだ!」

 

「私が…!?我が魔王ではないのかな?」

 

ウォズであった。

出久に先を越されてしまっていたと思っていた彼は、驚きつつもジャンプ力が強力すぎてオールマイトを飛び越えていってしまったのかと推測する。

 

「ウォズくーん!オールマイトー!」

 

ウォズが周囲を見渡すと、どこからか出久の声がしてウォズがそちらの方を見る。

 

「「我が魔王!?/緑谷少年!?」」

 

彼がその方向を見ると、そこには麗日が個性を使った時のように宙に浮かんでいるジオウの姿があった。

だが、麗日や空中移動を可能とするヒーロー達とは違って制御できていないのか体をジタバタさせている。オーズアーマーには勿論飛行できる能力もないし、少なくとも原理がフォーゼアーマーのようなロケット噴射の推進力ではないので出久もパニックになっている。

 

「すぐに助けるよ。」

 

『リバイス!』

 

『投影!フューチャータイム!』

 

『バディアップ!』

 

『フューチャーリングリバイス!リバイス!』

 

咄嗟にウォズはフューチャーリングリバイスへと姿を変えると、バイストライカーをホバーバイク状の形態であるプテラモードに変化させて乗り込む。

 

「こっちだ!我が魔王!」

 

ウォズを乗せたバイストライカーはジオウに向けて浮上していき、あっという間に彼の下にたどり着いてウォズがジオウの腕を掴む。

 

「ありがとう…ウォズ君。」

 

「気にするな。さあ、皆の所へ戻ろう。」

 

ウォズに引かれるように地面に戻っていくジオウ。

オールマイトに辿り着くころには突如発動した"浮遊現象"は収まっていた。

 

「無事か!?緑谷少年?」

 

「ええ、なんとか…」

 

戻ってきた出久に心配してオールマイトも声をかける。

 

「何があったんだい?」

 

「それが…ジャンプしてオールマイトの近くで着地しようとしたんですけど、そこで急に体が浮き上がってしまって…」

 

「浮き上がる…無重力状態みたいな感じかな?麗日君に何かされたのかい?」

 

「ううん、そんなことはないよ。」

 

出久の身に起こった出来事を聞き、ウォズは麗日が人を浮かせている時のことを連想する。

 

「浮遊現象か…まさかお師匠の…?」

 

「どうしたんだい?オールマイト?」

 

「いいや、とりあえず君達3人は放課後仮眠室に来てくれないか?今回のことで少し話がある。」

 

「わかりました。」

 

今はまだ授業中である。

今回の原因について心当たりのあるオールマイトはこの後爆豪も含めた3人を仮眠室に呼び出して話をすることにし、まずは授業を進行し、時は流れて放課後を迎えるのであった…

 

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「それで、話って何かな?」

 

放課後、私達3人はオールマイトの指示で彼が普段使っている仮眠室に来ていた。

 

「ああ、緑谷少年。君と私たちの個性の話だ。」

 

「ワンフォーオールの話ですか…」

 

オールマイトが我々を呼び出したのは、ワンフォーオールの話をする為だそうだ。

先日の職場体験で我が魔王は、完全にワンフォーオールを継承した。その証として手首には緑色の腕時計のようなものもついてるし、ジオウに変身した際の姿も少し違っている。オールマイトが個性の話をするべきタイミングなのかも知れない。

 

「ああ、特別な個性だからね。話しておかなければならない。その成り立ちをね…」

 

「成り立ちッつーことは最初にワンフォーオール持ってた奴の話か。」

 

ワンフォーオールの初代の保持者の話。

この時代から何年遡った頃の話なのだろうか?

 

「ワンフォーオールは元々ある一つの個性から派生したものだ。」

 

「元々あった個性…?」

 

「その名前はオールフォーワン。」

 

ワンフォーオール・オールフォーワン

"一人は皆のために、皆は一人のために"という意味合いの言葉だ。

よくスポーツにおけるチームワークの精神を表す言葉として使われているが、バラバラになれば少し歪な言葉になる。皆のために動く1人に対し、皆の動きに支えられる1人。その後者の名を持つ個性か…

 

「他者から個性を奪い己がモノとし、そしてそれを他者に与えることができる個性だ。」

 

「奪った個性は他の者に与えられるまでの間、どうなるんだい?」

 

「オールフォーワンの中にストックされ、彼自身が使うこともある。」

 

奪った個性を自分で使ったり他の人間に与えられるのか…

言ってしまえばチートな個性だ。

 

「超常黎明期。社会がまだ変化に追いついていない頃の話だ。個性の発現により、人間という規格は崩れ去った。」

 

超常黎明期と呼ばれる時代、個性を持った者は差別を受けてしまった。

突然怪人のように力を持つ者が生まれたのだから社会は混乱し、個性ある者を排斥しようとした。

その結果、個性を持つ者の中には犯罪に走るものが出始めて暴動も起きた。この荒廃した時代により、人類は技術の進歩も止まってしまったといわれている。

 

「そんな時代において、いち早く人々を纏めたものがいた。その男こそ"オールフォーワン"という個性を持つ男だ。」

 

当時の世なら、個性無しで生まれたかったものも居れば、個性という名の戦力を確保したい人間も居ただろう。

個性の奪取や譲渡ができるその男の存在はそういった人々にとっては有難い神のような存在かも知れない。その男の下に人が集まるのは当然と言えるだろう…

 

「勢力を広げた彼は計画的に人を動かし、思うままに悪行を積んでいった。そして、日本の裏社会を支配した。」

 

その男から繋がってくるのが、オールマイトの個性であり我が魔王に継承されたワンフォーオールか。

 

「彼は個性を与えていくことで信頼を得てきたが、複数の個性を与えられて者の中にはその負荷に耐えられず、物言わぬ人形の様になってしまった者も居たそうだ…」

 

ちょうど、脳無のような状態か。

 

「一方、与えられたことで個性が変異し、混ざり合うというケースもあったそうだ。」

 

我が魔王のワンフォーオールとジオウ、爆豪君の爆破とゲイツが組み合わさってそれぞれの姿が変わったような現象か…

 

「彼には無個性の弟がいた。弟は体が小さくひ弱だったが、正義感が強い男だった。兄の所業に心を痛め、抗い続ける男だった。その弟に彼は"力をストックする"という個性を与えた。それは優しさからか、屈服させるためか分からない…」

 

「まさか…」

 

「無個性だと思われていた彼にも、一応は宿っていたのさ。自身も周りも気づくはずがない、"個性を与えるだけ"という意味のない個性が!力をストックする個性と与える個性が混ざり合った!これが…ワンフォーオールのオリジンさ!」

 

兄から与えられた個性と、弟が元々持っていた個性が交じり合って一つの強力な個性が誕生したのか…

 

「で、その個性がオールマイトや出久まで受け継がれていったってことか?」

 

「爆豪少年の言う通りだ。奪った個性の中に成長や老化を止める個性があるのだろうか?半永久的に生き続ける彼を倒すためにワンフォーオールは力を培い、受け継がれてきた。その継承者の1人であり、私の先代でお師匠の志村菜奈…彼女の個性は浮遊であった…」

 

「浮遊…」

 

ここでその言葉が出たということは、先程の我が魔王の身に起こったことに関する話かもしれない…

 

「先程我が魔王の身が"浮遊"してしまった現象と、オールマイトの先代志村菜奈の個性"浮遊"に何か関連性があるのかい?」

 

「ああ、推測でしかないがな…緑谷少年。君は以前に私の師匠と話したことがあると言っていたね。」

 

「はい、このウォッチを手に入れた時と…ワンフォーオールを継承した時です。」

 

そう言いつつ我が魔王はジオウⅡライドウォッチと、緑色の腕時計を我々に見せる。

 

「ああ、君は過去の継承者と話したことがあるそうだが、私にはそう言った出来事はなかった。」

 

「それは、ライドウォッチを通した影響かも知れないね。歴史を継承することのできるライドウォッチが過去のワンフォーオール保持者の歴史や記憶を我が魔王に継承させたということなのかもしれない…」

 

元々は仮面ライダーの力を継承するために使われるのがライドウォッチだ。

本来の遺伝子を使う方法ではなく、ウォッチを経由したことでこれまで培われてきたものが色濃く出たのだろうか…

 

「そうだ、そして緑谷少年。どうやら君には私の師匠の個性が宿ったようだ…」

 

「僕に…歴代継承者の個性が!?」

 

「んなことあり得んのかよ!?オールマイトにも今までんなことは…」

 

「ああ、数十年この力を使ってきたが、歴代継承者の力が芽生えるということはなかった…」

 

オールマイトも爆豪君も、そして我が魔王自身もこの事態には驚いている。

過去の継承者の個性が発現するというのは、本来あり得ないことだろう…

だが、ジオウの力ならあり得るかもしれない。

 

「私の仮説だが、多くのライダーの歴史を継承してきた我が魔王には肉体的なものとは違う器が出来上がっていたのかもしれない。過去の歴史を己の物にすることのできる器がね…」

 

これまで様々なアーマータイムを使ってきた我が魔王の肉体なら、この突然変異もあり得るかもしれない。ジオウの力がワンフォーオールの歴史を継承し、その築き上げてきた力をさらに引き出しているのだろうね…

 

「僕に、過去の継承者たちの力が…」

 

「突然のことで驚いているかもしれないが、今後緑谷少年にお師匠の浮遊の様に様々な個性が発現するかもしれない。」

 

「それでも僕は…頑張ってその力も使って人を…助けます!」

 

我が魔王の意思は固い。さらなる力を手にすることで"ヒーローの王"に近付けるのならとその事実を受け入れた。

 

「私も過去の継承者の情報を集めて提供しよう。」

 

「俺も、テメエが力使いこなせるように手伝ったるわ!」

 

「勿論、私もサポートしよう。まずは浮遊を使いこなすためのトレーニングだね。」

 

「皆…ありがとう!」

 

更に進化し続ける我が魔王の力。その力を使いこなすための日々が始まった…

 




なんと、このタイミングで歴代継承者の1人の志村菜奈の個性が出久に発現しました。
ここからさらにどう出久が強くなっていくのか、乞うご期待です!
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