タイトルは『我が魔王は緑谷出久、ロングホープフィリア』になりました!
第44話 ロングホープフィリアpart1
雄英高校も夏休みに入り、後半に控える強化合宿の前に各々トレーニングをしつつ自由な時間を過ごしていた。
そんな彼らの中でトレンドになっているのはI・アイランドで行われるI・エキスポである。
I・アイランドは世界中のヒーロー関連企業が出資し、個性の研究やヒーローアイテムの発明などを行うために作られた学術研究都市でありその警備システムは監獄タルタロスに匹敵するといわれている。
その人口島で行われる科学技術の展覧会であるI・エキスポが行われることになっており、そのプレオープンとその後のレセプションパーティーに参加するために、とある3人が日本からI・アイランドに向かう飛行機に乗り込もうとしていた。
「いよいよ出発だね。既にワクワクしているよ。」
「ああ、飛行機は初めてか?」
I・アイランドに向かう飛行機に乗っているのはウォズと爆豪だ。ウォズは窓側の席に陣取り、その隣に爆豪が座っている。
既に機内からワクワクしているウォズに、爆豪がそんなに興奮しているということは初めて乗るのかと思い問いかける。
「いいや、数年ぶりだ。I・エキスポが楽しみすぎてね、気持ちがかなり高揚しているよだ。」
だがウォズは過去に家族旅行で乗ったことがあるだけでなく、転生前も何度かフライトを楽しんでいる。
彼に関しては単純にI・エキスポで展示されるサポートアイテムや、I・アイランドでの食事が楽しみなだけである。
「俺もエキスポ楽しみだぜ!マジで誘ってくれてありがとな!」
爆豪のもう片方の隣、通路側の席に座っているのはこちらもテンションが上がっている切島だ。
彼は、ウォズの持つ招待枠で爆豪と共にエキスポに行くことになっていた。
「我々が行くプレオープンは人もまだ少ない。よりアトラクションや展示を楽しめるだろうね。」
「ああ!瀬呂からも一般公開には行くって連絡あったけど、その日は混んじまうかも知れねえな。」
「そうだね、今日の内に楽しんでおこう。」
瀬呂を始めとするA組生徒達も、エキスポの一般公開に合わせてI・アイランドに向かうと言っており、ウォズや切島、爆豪らは混雑していないプレオープンを楽しめる等の特典がある。
それでウキウキの2人に対して爆豪は冷静であった。
「そろそろ飛ぶぞ、静かにしとけ。」
「「おう!/ああ!」」
「声がデけえわクソが!」
と注意する爆豪の声が一番大きかったのはさておき、飛行機は空港を離陸してI・アイランドに向かっていくのであった。
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「うおおぉぉぉぉ!!」
一方、こちらは出久とオールマイト。
彼らが乗っていた飛行機はI・アイランドに到着し、空港を出た出久は目に飛び込んでくるI・アイランドの風景に甲高い歓喜の声を上げる。
「一般公開前のプレオープンでこれほどの来場者がいるとは…」
プレオープン中ということで、招待されたお客さんしかいないのだが、既にエキスポ会場は盛り上がっている様子を見せている。
「実際に見ると本当にすごいですね!」
「I・アイランドは日本と違って個性の使用が自由だからね。パビリオンには個性を使ったアトラクションが多いらしい。後で行ってみるといい…」
「はい!」
この島にあるアトラクションの多くは、個性の使用が自由なI・アイランドならではのものが多く、例えば水が浮かび上がって文字を形成したり、大型のハープのような楽器を動かしたりと五感で来場者を楽しませるものが多い。
「さて、ホテルの場所は…」
「I・エキスポへようこそ!…ってオールマイト!?」
「オールマイト!?」
「本物だわ!」
今日はかなりお客さんが入っており、その中でもオールマイトはNo.1の有名ヒーローということで注目が集まる。
彼が来ているということで、コンシェルジュやアナウンサーを含めた多くの客がオールマイトに押し寄せていく。
「ハーッハッハッハッハッ!!サインは順番にね!!」
出久もオールマイトもファンにもみくちゃにされつつ、しっかり彼らにファンサービスをするオールマイト。
「あそこまで足止めされるとは…約束の時間に遅れてしまうとこだったよ。」
そこから抜け出すのに数十分ほどかかってしまったが、何とかファンたちを捌き切った。
そのオールマイトの顔には女性ファンのキスを受けた後だからか、大量の口紅の跡が残っている。
「約束…?」
「ああ、久しぶりに古くからの親友と再会することになってね!少し付き合ってもらえるかい?」
「オールマイトの親友…もちろん喜んで!」
オールマイトがここに来た目的の一つは、I・アイランドに住む親友との再会。
そこに立ち会えるということで出久も目を輝かせている。
「彼にはワンフォーオールや緑谷少年に個性を譲渡したことは話してないから、そのつもりで…」
「親友にも話していないんですか?」
「ワンフォーオールの秘密を知る者には危険が付きまとうからね。」
なお、その友にもヴィランの危険を回避するためにワンフォーオールのことは話していないと出久に小声で説明するオールマイト。ウォズや爆豪の様に様々な事情でワンフォーオールの秘密を共有することになった者もいるが、基本的には一般人等には話さないようにしている。
「おじさま~!」
するとそこに、赤色のホッピングで飛びながら金髪と碧眼が特徴的な如何にも外国人と言った顔立ちの美女が元気よくやってきてオールマイトに声をかけて飛びつく。
「マイトおじさま!」
「oh!メリッサ!」
その女性メリッサと呼ばれるとオールマイトが抱擁を交わし、2人共嬉しそうな表情を見せる。
出久はその様子に、2人が久々の再会を果たしたのだと推察をする。
「お久しぶりです!来てくださって嬉しい!」
「こちらこそ招待ありがとう!しかし見違えたな!もうすっかり大人の女性だ!」
「17歳になりました!昔と違って重いでしょ!」
「なんのなんの!」
以前オールマイトに会った時は幼い年齢だったであろう彼女も、すっかり成長していて出久よりも年上の女性となったが、それでもオールマイトは軽々と彼女のことを持ち上げている。
「あ、それで。デイブはどこに?」
「研究室にいるわ!長年やってきた研究が1段落したらしくて、それでお祝いとサプライズを兼ねて、マイトおじ様をこの島に招待したの。」
「おお、そうか。」
そんな2人の会話から、出久はオールマイトの古くからの親友が話に出た"デイブ"という人物なのではないかと考えている。だが、彼も少しずつ2人の会話に置いていかれてしまっている。
「おお、そうだ緑谷少年。彼女は私の親友であるデイブの娘で」
「メリッサ・シールドです!初めまして。」
「初めまして!雄英高校ヒーロー科1年、緑谷出久です!」
そう言って出久はコスチュームの手袋を外し、明るい笑顔でメリッサと握手を交わして挨拶する。
「雄英高校?じゃあ、マイトおじ様の。」
「はい!生徒です!」
「未来のヒーロー候補さ!」
とその後も出久のコスチュームに夢中なメリッサであったが、3人は早速デイブの下へ向かうのであった。
「博士。デヴィット博士。こちらの片付けも終わりました。」
研究室内でオールマイトの写真を眺める茶髪の男に、小太りで金髪の男が声をかける。
「そうか、ご苦労様。サム」
茶髪の男の方はデヴィットという名で、小太りの男の方の名はサムである。
「たまにはお嬢さんとランチでも行ってきては如何ですか?」
「今日はアカデミーに行ってるよ。」
「I・エキスポ中は休校では?」
「自主的に研究してるんだよ。」
「だって、パパの娘ですもの!似ちゃったのかな?」
サムとデヴィットの会話に入ってくるメリッサ。こちらのデヴィットこそメリッサの父でありオールマイトの嘗ての親友である男だ。
「メリッサ…?どうしてここに?今日はアカデミーに行ってるんじゃ…」
部屋にやって来た彼女に、今日はアカデミーに行ってるはずがなぜここにいるのかと問いかけるデヴィット博士。
「私ね。パパの研究が1段落したお祝いに、ある人に招待状を送ったの!」
「ある人?」
「パパの大好きな人よ!」
「お!」
メリッサがサプライズで読んだという人物を見て、デヴィットは思わず目を見開く。
「私がー!再会の感動に震えながら来たァ!!」
その人物こそ、オールマイトである。
「トシ…オールマイト!?」
「本物…?」
この場に本物のオールマイトが来ているとは信じられず、サムもデヴィットも驚きの表情を見せている。
「ハハハハ!わざわざ会いに来てやったぜ!デイブ!」
オールマイトも親友との再会が嬉しくて、デイブを抱き上げる。
「どう?驚いた!」
「あ、ああ…驚いたとも!」
「お互いメリッサに感謝だな!」
オールマイトとデヴィットが再会を果たすことができ、メリッサのサプライズは無事に成功となった。
2人はお互いのことを懐かしく思い、笑顔で会話に花を咲かせているが、ここでふとオールマイトが後ろにいる出久にもデヴィットのことを紹介しようと一度横に掃ける。
「緑谷少年!紹介しよう、私の親友デヴィット・シールド…」
「知ってます!デヴィット・シールド博士!ノーベル個性賞を受賞した個性研究のトップランナー!オールマイトのアメリカ時代の相棒で…」
デヴィットは著名な個性研究者の1人であるとともに、オールマイトの親友でありながらアメリカ時代にいたころのサイドキックでもあり歴代のヒーローコスチュームの開発者という側面を持っている。それ故に出久の様なオールマイトファンにもよく知られている人物であり、彼に会うことができた出久は目を輝かせて喜びながらデビットに関して知っている情報をマシンガンの様に話していく。
「まさか本物に会えるなんて!感激です!!」
「紹介の必要はないみたいだね。」
「すみません!なんか…」
デヴィットの一言に、話過ぎてしまったと出久は深く頭を下げる。
「いや、構わないよ。」
その出久に頭を上げるように言うデヴィットだったが、ふと隣にいるオールマイトが咳をしているのに気付いてそちらに目を向ける。
「オールマイトとは久しぶりの再会だ。すまないが、積もる話をさせてくれないか?」
「あ、はい!」
「メリッサ、緑谷君にI・エキスポを案内してあげなさい。」
デヴィットも、オールマイトがとあるヴィランとの戦いで力を失いつつあることを知っている。
マッスルフォームを維持し続けるのがしんどいという事情も知っているからか、一度オールマイトと2人だけにしてほしいと言い、出久やメリッサ、それにサムから一度部屋を出るように言う。
出久も事情を察しつつ、メリッサにエキスポを案内してもらうこととなった。
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「では、案内させていただきます。」
一方ウォズ達3人もI・アイランドに到着して、エキスポのスタッフに案内されながらパビリオンを見て回っていた。
「便利そうなサポートアイテムがいっぱいだな~!」
現在彼らがいるパビリオンでは、不整地走行ロボットや耐熱ドローンなどが展示されており、それを見て切島は目を輝かせている。
「どちらのロボットも、大規模災害の時に我々を助けてくれそうだね。」
ここに展示されているロボット達は、全て災害時の特殊な事態でも動くことができて、要救助者を発見してヒーローに知らせることができる。
これらのロボット達の機能に、ウォズも感心しつつ将来的に役立つだろうと感心している。
「こちらのロボット達は、災害時の要救助者発見だけでなく支援物資の運搬もできるように製造されています。」
「ん?アンタは?」
「失礼致しました。私はここの研究主任をしている近本と言います。」
パビリオンを見るウォズ達に話しかけた白衣を着た中肉中背で30歳ぐらいの男に、爆豪が名前を問いかけるとその男は自身の名を名乗った。I・アイランドは国際色豊かであり、こちらの近本の様な日本人もいる。
「私はウォズと言います。こちらは爆豪君と切島君で、雄英の…」
「知っているよ。雄英体育祭の映像はしっかり見せてもらったからね。」
「見てくれてたんすか!?アザッス!!」
自分達のことを紹介しようとするウォズだが、近本は既に体育祭で3人のことを知っていた。自分達のことを知ってくれてただけでなく、体育祭後も覚えていてくれてたことに切島は感激し、勢い良く頭を下げて感謝の言葉を放つ。
「ところで、ここの研究主任ということはこちらのロボット達はあなたが?」
「ええ、すべて私のラボで作りました。昔からサポートロボットに興味がありまして、色々な種類を設計、開発しています。」
「他にはどんなのがあるんだ?」
I・アイランドに研究室を構える近本が制作したロボットは多種多様で、それらを代表する機体たちがこのパビリオンに並んでいる。
「まずはこちら!フロッグドロイドです!蛙の様に跳ねるだけでなく、水中移動も可能だ!」
まず近本が彼らに見せたのは、カレー調理などでよく使う圧力鍋ほどの大きさの蛙型ロボットだ。
後両足がジャッキの様に折れ曲がっており、この部位を使っての跳躍や、水中での推進力付与ができているのだと推測される。
「水害ん時に使えそうだ。」
「梅雨ちゃんにピッタリだな!」
1台目のマシンを論評する爆豪と切島。彼らの視線は羽が生えたライオンの姿をしたロボットの方を向く。
「こちらはキメラドロイドで、その名の通りライオンと複数の生物が合体した幻の生物であるキマイラがモデルです。」
「こちらの機能は?」
「飛行機能に加え、盾を装備しております。常に使用者を守るために地面や空を駆けます。」
「ファンネルのような使い方ができそうだね。面白い。」
防御に不安のあるプロヒーローにはお勧めのサポートアイテムになりそうだ。
近本曰く飛んでくる銃弾などにも対応できるとのこと。
「溜め攻撃とか持ってる奴には丁度良いかもな。」
「八百万君に教えてあげたいね。彼女が物を創造する時間等にこのロボなら守ってくれるだろう。」
その活用法の例として、八百万の名前を挙げるウォズ。
「なあ、なんかアイツ最近ヤオモモの話多くねえか?」
「気になってるらしいんだ。アイツのこと」
切島ら複数名のクラスメイトは、ウォズの会話の中で八百万の名前が増えているのに気付いてきている。
その理由を分かっている爆豪が切島に補足しつつ、近本が次のロボットを指し示す。
「そしてこちらが大型ロボのギガントドロイドさ!全長は15mで、瓦礫撤去等の重機がする役割をこなせるだけでなく、巨大ヴィランの戦闘でも活躍できる!」
続いて紹介されたロボットはこのパビリオンで最も目立っていた、全長15mの巨体を誇るものであった。
「中々デけえ…」
「確かに、重機としても使えそうだね。」
巨大ヒーローと言えばマウントレディが有名だが、このロボットは彼女に匹敵するほどの大きさだ。
「そしてこちらが、小型4足歩行ロボのフォックスドロイドだ!」
大きいものの次は、小さいサイズのロボットを紹介しようと近本が見せたのは数体のキツネ型ロボットだ。
こちらは掌サイズの4足歩行ロボットで、その見た目は狐にも似ている。
「こちらは偵察に使える小型ロボで、体育祭でジオウさんが使っていたものにも似てますね。」
「言われてみると、ライドガジェットにも似ているね。」
そのサイズ感や機能から近本博士やウォズ達は、タカウォッチロイドやコダマスイカアームズを連想する。
「もし宜しければ、こちらのフォックスロイドを1つプレゼントしましょうか?」
ライドガジェットは体育祭で出久が1度使用したことで、一部のマニアの間では知られた存在になっている。それを知っているウォズにと、フォックスドロイドを一体手に取って渡そうとする。
「良いのかい?」
「ああ、こいつはもう量産体制が整っていて今後プロヒーロー向けに販売する予定だ。こちらは試作機なんだが、雄英体育祭の戦いに感動させてもらったお礼さ。」
「ふふ、では有難くいただくよ。」
フォックスドロイドを受け取ろうとするウォズの手に、近本はちゃっかり名刺も乗せておく。
サポートアイテムのメーカーとしては、プロヒーローとのつながりは重要だ。
それ故に、名門の雄英生でありつつ、期待の若手であるウォズに自分のことを売り込もうとしている。
フォックスドロイドを渡したのも、自分達のラボの売り込みのためだろう。
「おう、あっちの方も見てみるか。」
爆豪と切島も近本が作ったロボットに興味が出ており、他のロボットを紹介してもらおうとしていた。
その時だった。
「ギーツ?」
近本から受け取ったフォックスドロイドをカバンにしまおうとした時だった、ウォズの持っているギーツミライドウォッチが発光し始めたのは…
「なんだ…?」
右手にミライドウォッチ、左手にフォックスドロイドを持っていたウォズだが、ギーツミライドウォッチから飛び出した赤い光がフォックスドロイドの方に移る。
『ギーツ・マグナム!』
『ギーツ・ブースト!』
すると元々のウォッチが白色のギーツマグナムミライドウォッチに、フォックスドロイドが赤色のギーツブーストミライドウォッチに変化した。
「おう?どうしたんだ?」
「それが、フォックスドロイドが…取り込まれた?」
立ち止まるウォズに爆豪が声をかけるが、ギーツミライドウォッチが起こした変化にウォズは驚いて体の動きが止まっているが、彼の左手に乗っていたギーツブーストミライドウォッチがフォックスドロイドの様な小型4足歩行ロボットへと変形する。
「コイツ、ウォッチの力でライドガジェットになっちまったんか?」
「ああ、そうなのかもしれない。」
近本から受け取ったフォックスドロイドがギーツブーストミライドウォッチ改め、フォックスブーストロイドへと姿を変えた。その現象に驚きつつも、プレオープンの時間は有限ゆえに3人はエキスポ観光に戻っていくのであった。
ギーツブーストミライドウォッチ
ウォズが門矢士から受け取ったギーツミライドウォッチが分裂してできた赤いミライドウォッチ。
I・エキスポにあった小型の4足歩行ロボット(フォックスドロイド)を吸収しており、ブーストライカーギーツモードを模しらライドガジェットのフォックスブーストロイドへと変形する。