我が魔王は緑谷出久!?   作:夢野飛羽真

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第73話 緊急会議

「今日はテメエらも一緒なんか。」

 

「おう!今日は集合場所がいつもと違うみてえだ。」

 

9月も半分を過ぎた頃、サーに呼ばれてインターンに行くことになった出久と爆豪。

だが、本日はいつもと違い切島、麗日、蛙吹も一緒にいる。

寮を一緒に出て、向かう方向が同じだからか5人で同じ電車に乗って向かっている。

 

「お!」

 

同じ電車に乗り、同じ道を歩き、同じ曲がり角で曲がって5人が目的地に近付くと、そこにはビッグ3のミリオ、波動ねじれ、天喰環らもいた。

 

(グラントリノ!?それに相澤先生!)

 

出久達が集合場所のビルに入っていくと、そこにはグラントリノや相澤、さらにはリューキュウやファットガムと言った有名プロヒーロー達も多くいる。

 

「ファットガム、あなた方に提供していただいた情報のお陰で調査が大幅に進みました。死穢八斎會という小さな組織が何を企んでいるのか、知り得た情報の共有と共に、協議を行いたいと思います。」

 

「俺、完全に置いてけぼりなんですけど…」

 

これから始まろうとしている会議だが、インターン生であまり事情を分かっていない切島達はまだ状況を把握しきれていない。

 

「悪いこと考えてるかもしれへんから、皆も煮詰めましょの時間や。お前らも十分関係してくるで。」

 

切島のインターン先のヒーローであるファットガムが、切島と共にインターンをしているBIG3の天喰環の腕に視線を落とす。そこには包帯が巻かれており、彼は先日とある特殊な弾丸を被弾して腕を負傷していた。

 

「えーそれでは初めて参ります。我々ナイトアイ事務所は約2週間前から死穢八斎會という指定ヴィラン団体について独自調査を進めています。」

 

サーのサイドキックの1人であるバブルガールが、司会進行を務める形でその会議は始まった。

 

「とある強盗犯と死穢八斎會の若頭である治崎廻の間で起きた車の接触事故をきっかけに、気がかりな点を見つけて我々は調査を開始しました。」

 

「私が追跡調査をしたところ、彼らは他の構成員や指定ヴィラン団体との接触が増えてきており、組織の拡大や資金集めに動いているとみられます。そして先日オーマショッカーとの接触も確認されました。」

 

サーのサイドキックの1人であるセンチピーダーがタブレットを操作すると、スクリーンにはオーマショッカーの1人であるトゥワイスと件の中心人物である治崎が2人で歩いている写真が映し出される。

 

「オーマショッカーが絡んでいると言うことで、俺や塚内にも声がかかったんだ。」

 

現在、グラントリノは塚内警部と共にオーマショッカー関連の事件を追っており、この件にも関わってくると思われて会議に召集されていた。塚内は今日は別件でこの場に居ないが、出久はここで職場体験の際に世話になったグラントリノと再会することとなった。

 

「八斎會は認可されていない薬物の売買をシノギにしている疑いがあり、その道に詳しいファットガム氏に協力を要請しました。」

 

「昔はゴリゴリにそういうのぶっ潰してました!そんで先日の烈怒頼雄斗のデビュー戦!見たことない種類のモンが環に撃ち込まれたッ…!"個性を壊すクスリ!"」

 

「「個性を壊す!?」」

 

飴玉を握って壊しながら、特殊な弾丸のことを話すファットガムに、周囲のヒーロー達は驚きの表情を見せる。

 

「個性を壊すって…!環、大丈夫なんだろ!?」

 

「ああ、寝たら回復したよ。見てよ、この牛の蹄。」

 

「朝食は牛丼かな?」

 

大阪でファットガム、切島、天喰が追っていたヴィランによって個性を壊す力を持つという弾丸が天喰に撃ち込まれた。だが、その効果はすでに消えたようで彼は自身の個性で腕を牛の蹄に変化させていた。

 

「回復するなら安心だな。致命傷にはならねえ。」

 

「いえ、その辺りはイレイザーヘッドから」

 

その弾丸を撃ちこまれたことで天喰は一時的に個性が使えなくなってしまっていたが、回復しているなら問題ないとプロヒーローのロックロックが推察する。だが、そう一筋縄でいくような話でもなさそうだ。

 

「俺の抹消とはちょっと違うみたいですね。俺は個性を攻撃しているわけじゃないので、人の身体に宿る個性因子を俺は一時停止させるだけで、ダメージを与えることはできない。」

 

「環が撃たれた直後!病院で診てもらったんやが、その個性因子が傷付いとったんや!幸い今は元通りやけど!体の方も他は異常無しや、ただただ個性だけが攻撃された!」

 

「個性だけを狙ったクスリか…」

 

その特殊な弾丸の特性を聞きつつ、その異様さに爆豪は目を細める。

 

「その撃ち込まれたものの解析は?」

 

「環の身体に痕跡は無し!撃った連中もダンマリ、銃はバラバラ、弾も撃ったきりしか所持してなかった!ただ、切島君が身を挺して弾いたおかげで中身の入った一発が手に入ったっちゅうことや!」

 

「俺っスか!?」

 

大阪での事件の時、その弾丸が切島にも撃たれたが、彼は個性の硬化でその弾丸を弾き飛ばし、残った中身を手に入れることができていた。

 

「そしてその中身を調べた結果、むっちゃ気色悪いモンが出てきた!人の血や細胞が入っとった!」

 

(人の…血液…)

 

「他の奴の個性因子を攻撃する個性持ちの血で弾丸を作ってやがったのか…!」

 

人の血が弾丸に入っているという惨い事実を聞き、雄英生と一部プロヒーローが動揺する中、爆豪はその血の持ち主の個性が他人の個性を壊す要因なのかと察する。

 

「個性による個性破壊っていうのはわかるけど、どうやって八斎會と繋がってくるのかしら?」

 

「今回切島君が捕えた男が使った違法薬物。その売買にかかわる組織と八斎會に繋がりがあった!」

 

「それだけか?」

 

リューキュウの投げかけた疑問に対し、ファットが応対するが、その根拠ではまだ証拠不十分と云えてしまう。

 

「先日リューキュウ達が対処したヴィラングループ同士の抗争を始めとする多くの組織的犯罪に彼らが絡んでいる。だが、それだけでは決定的な証拠とはならない。」

 

その時、スクリーンに治崎の顔が表示される。

 

「若頭、治崎の個性はオーバーホール。対象の分解、修復が可能という力です。分解、一度壊し治す個性。そして個性を破壊する弾。」

 

((…!?))

 

治崎の個性と個性破壊弾の話の点と点が繋がった時、出久とミリオの身体に寒気が走る。

 

「治崎には壊理という娘がいる。出生届もなく詳細は不明ですが、ミリオと緑谷が遭遇した時は手足に夥しい包帯が巻かれていた。」

 

「まさかそんなおぞましいことを…」

 

「クソだな…」

 

「それってどういう…」

 

リューキュウや爆豪は事実を察している一方、切島はまだピンと来ていない様子だ。

 

「こういうことはあんま言わせんなよ、つまり治崎って野郎は娘の身体を銃弾にして捌いてんじゃねえかってことだ。」

 

「そ、そんな…」

 

ロックロックの口から語られる治崎の容疑に、切島らは動揺の表情を見せる。

 

「今出回っている物は中途半端な性能だが、もし完成すればこの社会を一転させれてしまうだろう…」

 

「んな惨いこと…!こうなったら今からガさ入れじゃ!」

 

治崎の残酷な行いに、ファット達は怒りを露にしている。

 

「こいつらが子供保護してりゃ解決だったんじゃねえの?」

 

「すべて私の責任だ。2人を責めないでいただきたい。知らなかったこととは言え、2人共その子を助けようと行動したのです。緑谷はリスクを背負いその場で保護しようとし、ミリオは先を考えより確実に保護できるように動いた。」

 

(何が…ヒーローの王だ!)

 

(何が…ミリオンを救うルミリオン!)

 

目の前で助けを求める少女を救えなかったことの後悔が、個性破壊弾の事実を聞いてより大きくなる。

そして彼らは、自身のヒーローとしての意思を遂行できなかったその時の自分自身を恨む。

 

「今この場で1番悔しいのはこの2人です。」

 

「今度こそ必ず壊理ちゃんを…」

 

「「保護する!」」

 

そして2人は同時に立ち上がり、少女を救う決意を口にする。

 

「そう、それが私達の目的となります。」

 

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その後も会議が続いたが、すぐに壊理を救けに行くという結論は出なかった。

一つ目の理由は救うべき少女である壊理がどの拠点にいるか特定する必要があったからであり、もう一つの理由はその特定を早めるためのサーの個性の使用を彼が拒んでしまったからだ。

誰かが死ぬ未来を予見するのをサーが恐れたためだ。

出久達は救いたい少女がいるのに、手を伸ばせないもどかしさを感じながら日常生活を過ごすこととなった。出久、爆豪、切島、麗日、蛙吹の5人は壊理救出に向けて奮い立っていたが、目の前で壊理を救えなかったショックは日を追うごとに大きくなっていった。

 

「では、お互いの健闘を祈ってるよ。」

 

更にインターンのことは口外禁止となり、出久が抱えたもどかしさを相談できない状況だった。

そんな中でウォズも自身のインターンで寮から離れてしまった。

マイナスな出来事が次々と出久に降りかかり、彼の心はグチャグチャになりつつあった。

 

「食わねえのか?」

 

「く、食うよ!食う!」

 

飯田と轟の2人と共に食堂に来ていた出久であったが、好物のカツ丼を前に箸が止まってしまっていた。

 

「大丈夫か?」

 

「インターン入ってから浮かない顔が続いてる。」

 

「そうかな…」

 

インターンが始まってからの出久は多くの壁にぶつかってしまった。目の前で助けを求めた少女を救えなかったこと、その少女が治崎から身体を切り刻まれて悪事に利用されているという事実を知ってしまった事、さらには自分達が治崎と接触したことで調査やカチコミを慎重に行わなくてはいけなくなってしまったこと、その心のダメージを飯田や轟でも察してしまうほど今の出久は暗かった。

 

「本当にどうしようもなくなったら言ってくれ。友達だろ?」

 

そんな出久を見兼ねて飯田が出久に声をかける。

その言葉は、飯田がステインへの復讐に駆られてしまった時に出久が彼にかけた言葉と同じであった。

 

「いつかの愚かな俺に、君が駆けてくれば言葉さ。職場体験前の…」

 

「……」

 

その時、食堂のテーブルに温かい水滴が落ちる。

 

「あああああ!お、おい!」

 

「緑谷…」

 

それは出久の目から零れ落ちた涙であった。

 

「ゴメン…大丈夫…何でもない…」

 

零れ出る涙をこらえようとしながら、出久はカツ丼を口の中に掻き込む。

内容を話すこと自体はできないが、心配てくれただけでも出久にとっては嬉しいことであった。

それと共に、出久の中の複雑な感情が涙となって漏れ出てしまった。

 

「ヒーローは泣かない…!」

 

「ヒーローも泣くときは泣くだろ。多分。蕎麦、半玉やろうか?」

 

「ビーフシチューもやろう!」

 

「ありがとう…」

 

飯田と轟はその事情を知ることはできないが、自身の食事を少し分けて出久を元気付けようとする。

 

「ネギもいるか?」

 

「いただきます…」

 

「ワサビもいるか?」

 

「う、うん!」

 

そこから数日後の夜、眠りにつく出久達の携帯電話の1つの連絡が届く。

 

「…!」

 

スマホに届いたメールを見た出久はすぐに談話室に降りていく。

麗日、爆豪、蛙吹、切島も続々と集まって来る。

 

「皆、来たか!」

 

「ああ…」

 

「うん!」

 

「来たわ…」

 

あの会議に参加したインターン生全員にそのメールが届いている様子だ。

 

「決行日!」

 

そのメールの内容は、この日の朝から壊理を救うためのアジトへの突入をすると言うものであった…




次回、ようやくアクションが書ける…
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