インターンを一通り終えて、我々インターンに参加した者達は受けられなかった授業の分の補講を受けている。
「壊理ちゃんが緑谷ちゃんに会いたがってる?」
「ああ、厳密には緑谷と通形を気にしている。要望を口にしたのは、入院生活始まって以来、初めてのことだそうだ。」
最近の話題と言えば1つは、我が魔王がインターンの際に救い出した少女のことだ。
名前は壊理と言い、我が魔王曰く個性消失弾と言う弾丸の材料に己の肉体を使われてしまっており、治崎という男から所謂虐待を受けてしまっていたらしい。治崎はあのアナザージオウ・トリニティに変身していた男だ。
彼を無事に我が魔王達が撃破し、彼女を救い出したということだ。
「行ってあげてくれ、我が魔王。」
「うん!もちろんだよ!」
我が魔王も彼女と会えるのが嬉しいのか、満面の笑みを浮かべている。
「しゃーねえ、俺も行ってやんよ!」
「君は…やめておいた方が良いね。」
「なんでだ!」
「君は口が悪いからね、子供の教育に悪い。」
爆豪君もしれっと行こうとしていたが、彼は子供の教育に悪いので止めておいた。
それに事情は中々センシティブそうなので、ここはご指名の2人だけで行く方が良いだろう。
「ったく、仕方ねえな…」
爆豪君も以前に比べればかなり丸くなったとは思うけどね。
さて、一先ず我が魔王が彼女へのお見舞いに行くことが決定した。
「しかしながら、飯田さんが心配ですわ。しっかり皆さんのことを纏められているでしょうか…」
「確かにね。ホームルームでは中々大変なことになっていたからね。」
勉強を進めつつ、八百万君がため息をついて呟く。
最近のもう1つの話題、それは文化祭が近づいているということだった。
今日のホームルームでも出し物に関する話し合いが行われたのだが、収集がついていなかった。
「私の提案した大食い対決も早々に反対意見が出てしまったね…」
「私が提案した勉強会もダメでしたわ…」
結局ホームルーム内の話し合いでは全員が違う意見を出して、まとまることはなかった。
更に、明日までに決めれなければ相澤先生による公開座学になるかも知れないとのことで、補講組以外で話し合いをすることになった。我々補講組の総意としては決まったことに従うということにはなったが、飯田君、上手くまとめてくれているだろうか。
「飯田さんならきっと大丈夫ですわ!」
「そうだね、彼を信じるとしよう。我々も、課題を早く終わらせて彼らの下へ向かおう。」
「そうですわね!」
ということで、一先ず今は課題の方を進めていくとしよう。
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「「壊理ちゃん」」
文化祭に向けて動き出していく中、出久とミリオは壊理のいる病室を訪れていた。
「あ…」
「会いに来れなくてごめんね。」
「フルーツの盛り合わせ、良かったら食べて!好きなフルーツある?俺当ててもいい?桃でしょ!ピーチっぽいよね!」
ミリオは持ってきたフルーツの盛り合わせを壊理に渡しながら、明るくユーモアを交えながら話しかける。
「リンゴ…」
「だと思った!」
なお、彼女のお気に入りのスイーツを当てることはできなかったが、一先ずリンゴを向いて食べやすくして更に置く。
「ずっとね…熱出てた時もね…考えてたの。助けてくれた時のこと…でも、名前が分からなかったの…ルミリオンさんしか分からなくて…知りたくて…」
「緑谷出久だよ。ヒーロー名はジオウ!けど、デクって呼び名もあるよ。」
出久は彼女の要望に応えるために名前を答えるが、短くて覚えやすい方が良いだろうと判断してあだ名のデクを名乗る。
「ジオウ?デク?」
「あだ名みたいなものだよ。」
「デクさん…」
「うん!そう…」
「デクさん…ルミリオンさん…他にも色んな人…」
壊理は徐々にあの場に居たヒーロー達のことを思い浮かべていく。
「出久の奴、しっかりと子供相手に接してて偉いのさ!」
「そうだな…」
そんな出久の様子を、窓の外から各々のライドガジェットに精神を写した万縄と煙が見ていた。
彼らはかつてプロヒーローをしていたこともあり、子供と接するヒーローらしい活動をしている出久に感心していた。
「当然だ。彼の優しさ、それもヒーローとして必要なものだ。」
そんな彼らのもとに新たなライドガジェットが飛んでくる。
赤い鷹のような姿をしているが、タカウォッチロイドではなく、アカネタカアニマルというもので、響鬼・紅ウォッチが変形したものであり四ノ森の精神が宿っている。
「しかしながら、彼女はまだあまり笑みを見せていない様だな…」
「あんな生活をしていたのだから当然なのさ!」
「それに、皆が怪我したことを自分の責任だと思ってしまっているらしい。」
ある程度の話を出久から聞いていた彼らは、心配そうに壊理の方を見ている。
「私の、私のせいでルミリオンさんは力を失って…」
彼女はミリオが個性を失ってしまった事も自分の責任と思い込んでしまっており、申し訳なさから涙を流す。
「壊理ちゃん、苦しい思いをしたなんて思ってる人はいない。皆こう思ってる。壊理ちゃんが無事で良かったって。」
ミリオは優しく彼女の頭を撫でて、慰めの言葉をかける。
「存在しない人に謝っても仕方ない。気楽に行こう。皆、君の笑顔が見たくて戦ったんだよ。」
「うう…み…うぐぐぐぐ…」
ミリオの言葉を聞き、笑おうとする壊理だったが、上手く笑えず無理矢理自身の頬を引っ張って笑おうとする。
「ごめんなさい、笑顔ってどうやればいいのか…」
(壊理ちゃん…)
治崎による恐怖が未だ彼女の中に残っており、笑顔を作ることができずにいた。
笑顔になれない生活も数年ほど続いていて、心の傷はまだまだ残っていた。
楽しいことや、笑うことを知らないまま過ごしてきていた。
(何か、壊理ちゃんが笑えるようなことを…)
出久もそのことに気付いて、何か彼女を笑顔にできる方法が無いかと考えを巡らせていた。
(「サプライズ☆」)
その時ふと、出久は先日の青山との会話を思い出した。
サプライズは嬉しいという彼の言っていたことを思い出し、出久は何か考えを思いつく。
「相澤先生!壊理ちゃん、1日だけでも外出できないですか?」
「できるはずだが…というか、この子の引き取り先は今雄英だ。」
現在、両親や身内が居ない彼女のことは雄英が引き取り教師陣が親代わりになる予定だ。
「じゃあ!壊理ちゃんも来れませんか?」
(なるほど…)
出久の意図を読み取り相澤も感心した様子を見せる。
「文化祭!壊理ちゃんも来れませんか?」
出久が思いついたことは、彼女を文化祭に連れて行くことであった。
文化祭には楽しいイベントが多く、彼女を笑顔にすることができるかも知れないと考えた。
現状、彼女の角は小さくなっていて力も弱まり暴走のリスクも少なく、文化祭も今年は厳戒態勢の為関係者と学生、教員しかおらず外部からやって来る人も少なく危害を加えられる心配もない。彼女を文化祭に連れて行くには最高の条件であった。
「文化祭…?」
「壊理ちゃん!これは名案だよ!文化祭っていうのはね、俺達の学校で行われるお祭りさ!学校中の人が、学校中の人に楽しんでもらえるように出し物をしたり!食べ物を出したりするイベントだよ!りんご!りんご飴もあるかも!」
文化祭と言う言葉にポカンとしている壊理に、ミリオが文化祭がどういうものなのか説明する。
「りんご飴…」
「りんごをあろうことかさらに甘くしちゃったスイーツさ!」
「さらに…」
ミリオの口から出たりんご飴というワードに興味を示し、彼女の表情は少し明るくなりよだれも垂らしてしまっている。
「分かった。校長に掛け合ってみよう。」
相澤も彼らの様子を見てすぐに校長に連絡し、出久の提案を承諾してもらおうとする。
「それじゃあ…壊理ちゃん!どうかな?」
「私…考えてたの…助けてくれた人のこと…ルミリオンさん達のこと、もっと知りたいなって…」
「嫌って程教えるよ!校長先生に良い返事がもらえるように俺達も掛け合ってみるよ!」
「はい!」
壊理も文化祭に行くことを了承し、各々も彼女が文化祭に行けるように動き始める。
「俺は今休学中だから、壊理ちゃんと付きっ切りデートできるね!」
「デート?」
「蜜月な男女の行楽さ!」
「蜜月な男女の行楽…?」
「先輩、何言ってるんですか…?」
なお、ミリオのユーモアはまた空振りであった。
壊理を文化祭に連れて行く計画が動き始めていく裏で、1年A組の文化祭での出し物がバンド演奏とダンスに決まったのであった。
アカネタカアニマル
響鬼・紅ウォッチから変形するライドガジェット
ディスクアニマルのアカネタカをモデルとしており、飛行能力がある。
また、音波で攻撃することが可能である。
主に四ノ森避影が憑依する。